【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

27 / 90
深海の剣

 

 大小の島影(しまかげ)が散らばるインド洋上に、巨大な艦影(かんえい)が浮かんでいる。地球連合軍が海洋にて運用する空母、J(ジョン).P(ポール).ジョーンズだ。

 

〈J.P.ジョーンズは○9(マルキュウ)○○(マルマル)出航。第一戦闘配備発令。整備各班、戦闘ステータススタンバイ〉

 

 J.P.ジョーンズの艦内にアナウンスが響き渡った。全ての機体とパイロット達に発進命令が出され、艦内が慌ただしい雰囲気に包まれる。艦橋(ブリッジ)ではネオ・ロアノークが通信機の向こうと交渉(こうしょう)していた。

 

〈––––––当部隊のウィンダムを全機出せだと!? 何をふざけたことを…〉

 

 こちらの正気を疑うかのように通信の相手は怒鳴(どな)り声を上げる。きっと怒鳴れば己の意思を貫き通せると考えるような連中(てあい)なのだろう。

 だが、ファントムペインのネオはその手の効く相手ではない。

 

「ふざけてんのはどっちさ。相手はボスゴロフ級にあのミネルバだぞ」

 

 彼はぞんざいな口調で返す。相手に自分が誰に向かって話しているか分からせてやるために。

 

「…それでも墜とせるかどうか怪しいってのに。戦闘になれば、噂のガンダムって奴らが介入してくるかもしれないんだぜ?」

〈そういうことを言っているのではない! 我々はここに対カーペンタリア前線基地を造るために派遣された部隊だ! それを…〉

 

 そんな言葉をネオは鼻で(わら)った。

 

「その大事な基地をこの間ガンダムに破壊された奴がよくいうぜ。とにかく、寝ぼけたこと言ってないで、とっとと全機出せ!」

 

 今度はネオが相手を頭ごなしに怒鳴りつける。何故なら、この場でそれができるのはネオの方だからだ。

 

「ここの防衛にはガイアを置いていってやる」

〈いや、しかし…〉

「命令だ。急げよ!」

 

 相手の反論を黙殺し、ネオは一方的に通信を切った。

 

「カオス、ガイア、アビスは?」

 

 彼の言葉に、モビルスーツ管制担当兵が答える。

 

「全機、発進準備完了しています」

「よぉし、ジョーンズは所定の場所を動くなよ」

 

 艦長に命じた後、ネオはもう一度モニターを見下ろし、仮面の下の顔に楽しげな笑みが浮かべられる。全ては、自分の楽しみを追求するために、彼はパイロットらしい身軽な動作で艦橋(ブリッジ)を後にした。

 

 

▽△▽

 

 

 アスランとハイネが命令書を(たずさ)えて到着するのと前後して、カーペンタリア基地にも本部からの正式な指示が届き、ミネルバはつい今朝方、ボスゴロフ級潜水艦"ニーラゴンゴ"と共にカーペンタリアを出立した。

 

 そして、それからわずか数時間後、索敵担当のバートが緊迫(きんぱく)した声を上げたのだ。

 

「艦長!」

 

 彼の前にある熱源感知モニターが、ミネルバに接近しつつある光点を複数、(とら)えていた。その声に一気に艦橋(ブリッジ)の空気が張り詰める。

 

「敵? 数は?」

「熱紋照合––––ウィンダムです。数、30!」

「30ですって!?」

 

 バートが口にした数字を、思わずタリアは聞き返した。

 

 連合の最新鋭量産機であるウィンダムが30機もいるということは、偶然(ぐうぜん)付近を哨戒(しょうかい)していた訳ではないだろう。

 完全に待ち構えていた。敵は必勝の構えで攻撃してきている。

 

「うち一機はカオスです!」

「あの部隊だっていうの!?」

 

 ボギーワンという不明艦によって強奪された機体。それが地上に降りてきた。ウィンダムと共にいるのを見るに、彼等はやはり地球軍だったのだ。

 

「一体どこから?……ニーラゴンゴに回線を繋いで!」

「はい!」

 

 タリアは通信機を手に取り、僚艦(りょうかん)であるニーラゴンゴへの回線を繋いだ。

 

「––––付近に母艦は?」

《まだ確認できん! すぐにグーン隊に捜索させる!》

「お願いします」

 

 同時にミネルバの隣に浮上したニーラゴンゴから、次々と"グーン"や"ディン"が発進していく。

 

 それを横目で確認し、タリアはすぐに頭を切り替えて戦闘の指示を出そうとするが、そんな彼女にバートが強張った表情で補足(ほそく)する。

 

「それとアンノウンモビルスーツ…これは、ストライクです!」

「なんですって?」

「えぇ! まさかあの!?」

 

 "ストライク"

 それは前大戦において、地球軍で伝説を作った機体であり、バルトフェルド隊やモラシム隊など多くのザフトの精鋭(せいえい)部隊を壊滅させた恐るべき敵。ザフトでは未だに恐れられている存在だ。

 何せ、ストライクがそこまでの強敵だったからこそ、それを討ったアスラン・ザラが英雄として扱われているのだから。

 

 思わぬ機体の登場にミネルバの艦橋(ブリッジ)がざわめくが、タリアは冷静だった。ストライクはモビルスーツだ。再建造されていてもおかしくない。それよりもここを突破することに集中しなくては…。

 

「出てきたものは仕方ないでしょう。あれこれ言っている暇はないわ。ブリッジ遮蔽、対モビルスーツ戦闘用意。彼等へも応援を頼んで!」

 

 艦内に警報が鳴り響き、艦橋(ブリッジ)が戦闘ステータスへ移行する。それと同時に格納庫では艦載機の発進準備の指示を出す。

 モビルスーツ部隊の指示は、フェイスの彼等に任せればいいだろう。そう思い、タリアは目の前の戦闘へ意識を集中した。

 

 

▽△▽

 

 

〈インパルス、セイバー、グフ、発進願います。ザクは別命あるまで待機〉

 

 メイリンの声が告げる。

 シンは発進シークエンスに従って、コアスプレンダーの中で発進の準備を行なっていた。並行してセイバー及びグフがカタパルトに運ばれていく。見慣れない機体が通り過ぎるのを横目に見ていると、シンの元に通信回線が開いた。

 

〈シン・アスカ〉

 

 画面に映ったのは、アスラン・ザラの顔だった。専用の赤紫色のパイロットスーツを身につけた彼の声に、シンは反射的にビクリとしたが、アスランはそんな彼の表情を気にすることなく、きびきびとした口調で告げた。

 

〈発進後の戦闘指揮は、俺たち…いや、ハイネが執ることになった〉

「え…?」

 

 困惑の声を上げたシンだったが、そこで新たにグフ––––ハイネ・ヴェステンフルスからの通信が入る。

 

〈まぁ、そういうことになる。基本的に俺の指示、状況次第でアスランの指示にも従ってもらうぜ〉

「……はい」

 

 どこか釈然(しゃくぜん)としない気持ちであったが、シンは頷いた。アスランはともかくハイネは正真正銘のフェイスである。自分よりも年上だし、経験も技量も上回っているのだ。仕方がない。

 

〈それと、今回の戦闘でもガンダムが現れる可能性が高い。気をつけておけよ〉

 

 –––––ガンダム!

 

 脳裏に自分たちを助けてくれた少女の声が思い出される。彼女はこの戦闘にも介入するのだろうか。戦争をなくすために…。戦争をなくしたいという思いはシンも同じはずなのに…一体何故?

 

 シンは小さな不安を抱きながら、操縦桿(スティック)を握った。

 

「シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!」

 

 射出時のGが身体をシートへ押し付けるのも慣れたものだ。続けて、射出されたパーツとの合体をすますと、フォースシルエットのスラスターを全力で蒸して戦闘宙域へと機体を突っ込ませた。

 

 

▽△▽

 

 

「ん?」

 

 迫り来るディンの弾幕を回避し、ミネルバへと接近するスティングは、眼下の戦艦から発進された三機のモビルスーツに気がついた。見慣れた合体野郎(インパルス)の他に、紅い機体とオレンジ色の機体。コンピュータでの照合すると、『不明機』という答えが返ってくる。

 

「何だ、あの機体は?」

「へぇ、また新型か。カーペンタリアか? ザフトはすごいねェ」

 

 軽薄(けいはく)に自分たちの敵を称賛する指揮官(ネオ)の言葉を聞き、スティングはムッとする。

 

「ふん! あんなもの…!」

 

 ––––新型だろうが何だろうが、全部自分が墜としてやる!

 

「おいおいスティング!…ま、いいか」

 

 急加速して集団から突出するスティングだったが、ネオは放っておくことにした。止めようと思えば止めれるが、敵の新型を引き付けてくれるならそれはそれでいい。

 

「俺はあっちの白いのをやらせてもらおう!」

 

 ネオは今回、地上で行動するにあたって、宇宙用のエグザスに変わる機体––––ストライクEを受領(じゅりょう)していた。

 かつての大戦で活躍したストライクを再設計した機体であり、ファントムペインにおいて一定数使用されているものだ。背部には専用のストライカーパックであるソニックストライカーが接続されており、大気圏内における高機動戦闘を可能としている。

 

 ストライクというこのモビルスーツは、まるで昔からの愛機だったかのように不思議とネオの操縦に馴染んでいた。

 

「さぁて、俺と一曲円舞(ワルツ)でもいかがかな!」

 

 既にウィンダムを二機撃墜している白い機体へ、ネオは獲物を狙うハイエナのようにビームライフルで奇襲する。相手が回避することを予測した正確な二射だ。

 

 案の定、敵は突然の攻撃に回避を選択し、それを読んでいたビームはその特徴的な主翼の一部を()かす。

 その(すき)にネオはソニックストライカーの主武装である"オルキヌス2連装ビーム砲"でミネルバを狙うが、それは展開されたアンチビーム爆雷に(はば)まれた。

 

「チィ、この距離からは難しいか…おっと!」

 

 復帰したらしい白い機体が背後からビームを浴びせてくるが、それをネオは全て回避。両腰部から取り出した"ビームライフルショーティー"を連射して敵の動きを(しば)る。

 

「敵の動きが止まるぞ!囲い込め!」

 

 動きの止まった白い機体を囲むようにネオの背後からウィンダム部隊が現れる。

 

「悪いな…これも戦争なんでね」

 

 そして、ウィンダム部隊が次々とビームライフルを連射した。その精度はネオからすればお粗末(おそまつ)だが、これだけのビームの嵐ならば掠らせるくらいは出来るだろう。

 

 ネオは不敵に笑ったあと、目標であるミネルバへ向けて機体を飛翔させた。

 

 

▽△▽

 

 

「…シン!」

 

 複数のウィンダムに囲まれたシンを見て、アスランはセイバーを変形させ、インパルスの方向へ向ける…が。

 

「ええい! カオスか!」

 

 先程からしつこくこちらを狙ってくるカオスがそれを邪魔する。カオスの兵装ポッドからミサイルが発射され、アスランはそれを回避せざるを得ない。

 ミサイルを全て迎撃したものの、カオスはライフルで執拗(しつよう)に攻撃を仕掛けてくる。アスランの技術とセイバーの機動力があれば問題のない攻撃だが、決して余裕があるわけでもない。

 

〈––––アスラン!〉

 

 その時、セイバーに通信が入る。

 それは、ミネルバの近くでウィンダムの相手をしているハイネからのものだった。

 

「ハイネかっ!」

〈こっちは少し落ち着いた!そっちはどうだ!〉

「俺は大丈夫だ! しかし、シンが…」

 

 ハイネと通信を行いながらも、眼前のカオスから注意は外さない。撃ってくるビームをかわして撃ち返し、上昇させる。

 

〈チッ、ならお前は? カオスを振り切れるか!?〉

「大丈夫だ!」

 

 アスランはセイバーの変形を繰り返しながら攻撃を加え、カオスを翻弄(ほんろう)する。どちらもモビルアーマー形態への変形機構を持つ同じ型番号の機体だが、宇宙用のカオスと違い、セイバーは大気圏内でもその機動力は健在である。

 

 結果として、アスランはカオスを圧倒していた。

 

「ハイネ、そっちは!」

〈ダメだ! 何だこいつ…ストライク!?〉

「なっ!」

 

 ストライクだって?

 アスランは動揺した。機体を寄せればその姿が確認できる。ミネルバの付近でグフと交戦しているのは、細部こそ異なっているものの、確かにかつて親友が乗っていたストライクに似ていた。

 

 そして、動揺したアスランの隙を狙ってカオスが攻撃を加えてくる。それをかわし、撃ち返しながらもアスランの脳裏には嫌な思い出が浮かんでいた。

 

 敵は地球軍のストライク、自分はザフト所属のパイロット。それがかつての親友との殺し合いの悪夢を思い出させる。

 

「くっ!」

 

 敵はキラではない。

 ストライクといえど、同じモビルスーツなどいくらでも作れるのだ。

 

 アスランは迷いを振り払うようにセイバーをカオスへと走らせた。

 

 

▽△▽

 

 

 インド洋でのミネルバ隊とファントムペインによる戦闘は、彼等も確認していた。戦闘の背景が見えるほどの位置で海面を飛行する二機のモビルスーツ…ガンダムアステリアとガンダムサルースだ。

 

 先頭を飛行するアステリアの両腰には大小二本の実体剣が装備されている。今回、アステリアにはオプション装備として、GNロングブレイドとGNショートブレイドが装備されていた。

 

「ポイント228へ到着。アステリア、潜水します」

〈了解。空は任せな〉

 

 先行するアステリアがゆっくりと海中へと潜水していくと同時にサルースが速度を上げて戦闘空域へと介入を開始した。

 

 空と海。

 その二つの戦場をソレスタルビーイングは、アステリアとサルースで分担することで対応した。ガンダムは放出するGN粒子によって、宇宙や大気圏内にとどまらず、海中での自在に行動することが可能なのだ。

 

 とはいえ、ガンダムといえども海中でのビーム兵器の使用は難しい。大きく威力が減衰してしまうのだ。

 

 そこで、GNソードやGNブレイドといった実体剣を持つアステリアが海中でのミッションを担当する役として決まったのだ。海中で動きが鈍くなるといっても、運動性に優れたアステリアならば問題もない。

 

「…ミッションスタート」

 

 目標はザフト艦ボスゴロフ級及びその艦載機のグーン。またはファントムペインの運用するザフトから奪取した機体…アビスだ。

 

 日の光が届かず、どこまでも暗い海中の中、緑色の粒子を輝かせながら、アステリアは水中を進んでいった。

 

 

 





>ストライクE+ソニックストライカー
VPS装甲の色は I.W.S.Pと同じ。
ネオ・ロアノークの正体を考えれば、悪堕ちストライクも似合うと思って。

>ソニックストライカー
形式番号
AQM/E-00S1
武装
ES04B ビームサーベル
M105 オルキヌス2連装ビーム砲
Mk1323 無誘導ロケット弾ポッド

ジェットストライカーの発展型で大気圏内の機動力マシマシ。フォースインパルスと同程度は動ける。近接用がノワールストライカーなら、こっちは中距離用。

>M105 オルキヌス2連装ビーム砲
強奪したアビスのバラエーナ改のデータを流用したもの。
意味はラテン語で「シャチ」
アニメだったら、太っとい緑ビームが出てる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。