【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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天使降臨

 

 

 C.E.(コズミック・イラ)70

 プラント所属のコロニー"ユニウスセブン"に対する核攻撃"血のバレンタイン"に端を発する、地球・プラント間の戦争は、当初は物量(ぶつりょう)において(まさ)る地球連合軍が圧倒的な戦力差で持って勝利すると思われていた。

 しかし、プラント防衛軍ザフトが実戦投入した新型兵器モビルスーツ"ジン"は連合に対して目覚(めざ)ましい活躍を示し、戦線は泥沼化したまま、1年半の長きに渡り続けられる事になる。

 

 

 そして、一年半に渡った地球・プラント間の戦いは多大な損害と戦死者を出した末、両陣営の実質的なリーダーであったパトリック・ザラとムルタ・アズラエルの戦死を以てようやくの終結をみた。

 やがて双方(そうほう)の合意の下、かつての悲劇(ひげき)の地、ユニウスセブンにおいて締結(ていけつ)された条約は、今後の相互理解努力と平和とを誓い、世界は再び安定を取り戻そうと歩み始めている。

 

 しかし、戦争は終わっても、この世界から争いが消えたわけではない。冷戦の(ごと)く睨み合う地球とプラントの関係も悪化したわけではないが、良くなったわけでもないのだ。

 その優れた能力故にナチュラルを見下すコーディネーターと遺伝子操作によって生まれた彼等を()(きら)うナチュラルの構図はC.E.70以前から何も変わっていない。

 

 確かにヤキン・ドゥーエ戦役後に定められた"ユニウス条約"によって、保有兵器数や使用禁止技術のいくつかが定められ、(おおやけ)には両陣営共に軍縮(ぐんしゅく)という形で戦争は終結した。

 

 しかし、争いはなくならなかった。

 

 所詮(しょせん)は痛み分けという形で終わった戦争。地球・プラント共に争いの火種(ひだね)は未だに(くすぶ)っている。まさしく冷戦状態といえるような、お互いの腹を探るような緊迫(きんぱく)した空気が世界には(ただよ)っていた。

 

 勿論、それだけではない。

 地球には紛争があった。宇宙にはテロリズムがあった。各地で続く小競り合いのような内乱(ないらん)もあった。

 

 人は争うことをやめられない。そう言ったのは一体誰だったか。

 C.E.(コズミック・イラ)73年10月現在もなお、世界には戦争の影が色濃(いろこ)く残っていた。

 

 だからこそ、このような小さな火種一つで世界は簡単に戦争の道へと辿ってしまうのだろうか。

 

 

▽△▽

 

 

 アーモリーワンで行われたセレモニー。現プラント最高評議会議長のギルバート・デュランダルも来訪(らいほう)しているというこのパレードはザフト軍における新造戦艦の進水式(しんすいしき)を祝う目的で行われたものだ。

 

 新造艦は軍用艦と言っても実戦に投入するのはまだ先の話。あくまでザフトの軍事力は未だに健在(けんざい)だということをアピールすることが目的であり、それ故にプラント本国からこのパレードに(おとず)れる民間人も少なくなかった。

 

 また、関係者のみに知らされている情報ではあるが、ここにはオーブ連合首長国代表であるカガリ・ユラ・アスハが非公式に会談(かいだん)に訪れている。デュランダルがアーモリーワンに来た目的もこちらが主である。

 

 そんな数々の思惑(おもわく)渦巻(うずま)く現状の中で行われたアーモリーワンでの式典パレードだったのだが……。

 

〈発進急げ!〉

〈六番ハンガーの新型だ!何者かに強奪(ごうだつ)された!〉

〈モビルスーツを出せ!取り押さえるんだ!〉

 

 先程まで(にぎ)わっていたアーモリーワンは火薬(かやく)と返り血の(にお)い。そして、耳をつん裂くような爆音と悲鳴(ひめい)が響き渡る地獄のような有り様であった。

 

 次々と破壊されていく"ジン"や"ディン"、"シグー"といったザフトのモビルスーツ達をバックにその特徴的なツインアイを光らせる3機のモビルスーツ。

 

〈くそっ、ガイア、アビス、カオスが…!〉

 

 それらはかつて圧倒的な力を見せつけたフリーダムやジャスティスの開発の流れを()むザフト軍の次世代機"セカンドステージシリーズ"と呼ばれる機体群の内の3機である。

 

 しかし、本来ならばザフトの(つるぎ)となるべき3機の機体は逆に守るべきザフトへと牙を()いていた。

 

 モスグリーン色に変色した"カオス"、スカイブルー色の"アビス"、漆黒(しっこく)の"ガイア"。それぞれが圧倒的な機動性と火力でザフトのモビルスーツ群を破壊する。

 

「ハハハ、(もろ)い…脆過(もろす)ぎるぜ!」

 

 舞うように空中を飛行するカオスが同じく空中を戦場とするディンと交戦する。操縦するのは、偶然にも機体の装甲色と同じライトグリーン色の短髪を逆立(さかだ)てた少年スティング・オークレー。

 

 カオスはディンの銃弾を華麗(かれい)にかわすと、両肩に備えられた二基の機動兵装ポッドを展開し、内蔵(ないぞう)された"ファイヤーフライ 誘導(ゆうどう)ミサイル"とビーム突撃砲を発射し、ディン3機をあっという間に殲滅(せんめつ)する。

 

「ごめんね…強くてさっ!!」

 

 それに対して、地上で向かってくるシグーやゲイツRなどのおよそ6機に対応するのは、半紡錘(ぼうすい)形状の肩部が特徴的なアビス。操縦するのは、まだ幼さの残る顔立ちで無邪気に笑うアウル・ニーダ。

 

 連携(れんけい)して攻撃を仕掛けてくるザフトモビルスーツに対して、アビスは両肩の武装ユニットを展開。"カリドゥス複相ビーム砲"・"バラエーナ改2連装ビーム砲"・"3連装ビーム砲"の計9問にも砲撃で迎撃し、ザフトのモビルスーツをまるでシューティングゲームのように()としていく。

 

「えぇい!!」

 

 そして、かつてのザフトの地上用モビルスーツ"バクゥ"を思わせる四足歩行形態へと変形したガイアが棒立(ぼうだ)ちの"ガズウート"を背部の"ビーム突撃砲"で貫き、上空からしつこく銃弾を浴びせてくるディンを展開した"グリフォン2ビームブレイド"で一閃(いっせん)、真っ二つにする。

 

 暴れ回る3機の新型モビルスーツを相手にザフトの旧式量産機では全く相手にならず、残骸(ざんがい)と爆炎を増やすことしかできない。

 

「これで終わり…ん?」

 

 ガイアをまるで昔からの乗機のように操縦するパイロット、柔らかな金髪と幼げな顔立ちが目立つステラ・ルーシェは、全滅させたはずの周囲のレーダーに一つの反応があることを確認して眉を(ひそ)めた。

 

 瓦礫(がれき)の山から起き上がるようにして立ち上がった一機のモビルスーツ。レーダーでは『ZGMF-1000 Zaku Warrior』と表示されており、先ほどまでステラ達が戦っていたディンやゲイツ等とは全く異なる機体であることが(うかが)える。

 

「…邪魔」

 

 だとしても、なんであれステラには関係のないこと。機体奪取の邪魔になるものは排除するだけ。スティング達に遅れを取るわけにはいかない。

 

 牽制の意味も込めてビームライフルでの攻撃を行ったガイアだったが、目の前の"ザクウォーリア"はそれをぎりぎり避けた。

 

「なに?」

 

 続けてビームを連射するもそのどれも当たらない。まるでCPU相手から対人相手になったゲームかのようなズレがステラを困惑させる。

 

 そして、そんな一瞬の(すき)を相手は見逃さなかった。

 

 戦闘形態に入ったザクが行ったのは、ビームライフルによる攻撃でも携帯する"ビームトマホーク".による接近戦でもない。

 その特徴的な左肩に備え付けられたシールドを武器にしたタックルという極めて原始的な攻撃。だが、それ故にステラはその動きを見切(みき)ることができなかった。

 

「うぅっ…こいつ!」

 

 大きく吹き飛ばされるガイアだが、直接的なダメージはない。しかし、コックピットにダイレクトに伝わる衝撃はパイロットのステラから冷静さを(うば)うには十分過ぎるものだった。

 

 素早く体勢を戻したガイアはビームサーベルを抜き、白兵戦(はくへいせん)を仕掛けようとし、それを見たザクもシールドに収納(しゅうのう)されたビームトマホークで迎え撃った。

 

 

▽△▽

 

 

『こんなところで君を死なせるわけにいくかっ!』

 

 ガイアと斬り結ぶザクウォーリアを操縦するパイロット"アレックス・ディノ"改め"アスラン・ザラ"はそんな断腸(だんちょう)の思いで二年ぶりに再びモビルスーツに乗った。

 

 初めはただのボディーガードのつもりだった。「こんな自分でも戦う以外に彼女の何か役に立てれば」とこの役職に()くことを希望したのだ。

 しかし、時代はアスランに闘う以外の道を許さない。どこまで行ってもアスラン・ザラは"戦士"であった。

 

「アスラン…っ!」

 

「捕まっていろ!」

 

 手にしたビームサーベルで切り掛かってくるガイアの斬撃を機体を下げることで回避。こちらの近接武装であるビームトマホークでカウンターを仕掛(しか)けるが、それはあちらの対ビームシールドで防がれる。しかし、ガイアの体勢は(くず)れた。

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

 その隙にアスランはザクを再び突進させる。完全に(きょ)を突いた一撃は無防備(むぼうび)なガイアにモロに直撃し、瓦礫の向こうへと吹き飛ばす。

 

「早く離脱を…敵襲!?」

 

 そんなガイアをよそに、ここからの離脱を(はか)ろうとしたアスランだったが、突如としてザクに向けてビームの嵐が飛んでくる。

 身体が無意識に反応したというべきか。すぐにその場から離れたものの、ザクの目の前をビームの雨が降り注ぎ、地を焼いた。

 

「カオスにアビス…味方は全滅したのか!?」

 

 アスランの坂の目の前に立ち塞がったのは、カオスにアビスの2機。かつてのGATシリーズやZGMF-Xシリーズを思わせるツインアイのそれらは、またもや何者かに強奪(ごうだつ)されて敵に回っている。

 

 かつての自分の所業(しょぎょう)を思い出させるようなこの現実にアスランとしては苦笑(にがわらい)の一つでもしたいところだが、懐に守りたい少女(カガリ・ユラ・アスハ)がいる以上はそんな余裕はない。

 

 牽制のためにビームライフルを発射するが、カオスとアビスはそれを素早く回避。倍以上の火力で反撃してくる。アスランはそれを卓越(たくえつ)した操縦技術で回避、時に防御するが、新型機相手にはそう長く持たないことを感じていた。

 

「くそっ…ジャスティスがあれば」

 

 大火力のアビスに正確無比な射撃のカオス、機動性のガイアの攻撃。一つでも直撃すれば、PS(フェイズシフト)装甲も持たないこのザクというモビルスーツでは終わりだ。

 

 あまりにもの無理ゲーぶりにアスランの口からはかつての愛機(ジャスティス)を惜しむ声が漏れるが、自ら手放(てばな)した今となってはどうしようもない。

 このザクウォーリアという機体もカタログスペックは最初の乗機(イージス)をも上回る優秀な機体なのだ。ただし、相手の新型機がそれを上回る性能を持っている以上は力不足と言わざるを得ない。

 

 それ故、生き残るためにアスランも多少乱暴な操縦をするしかなかったのだが……。

 

「うわっ!?」

 

「カガリ!?」

 

 このコックピットにはアスランの他にも人間が乗っているのだ。それも一人用のコックピットに無理矢理入れたためにシートベルトも何も付けていない状況で。

 アスランと一緒に乗っていたカガリ・ユラ・アスハは、モビルスーツの搭乗経験はあれどベルトもなしにここまで激しい戦闘の衝撃に()えられるほど頑強(がんきょう)な少女ではなかった。

 

「カガリ!大丈夫か!」

 

「私は大丈夫だ…うっ」

 

 衝撃で強く頭を打ったのだろう、頭から血を流す彼女を見て、声を荒上げたアスランだったが、その間動きが止まったザクウォーリアは誰がどう見ても無防備だった。

 カガリを気遣(きづか)うアスランにコックピットからの緊急のアラートが()(ひび)くのが聞こえてくる。見れば、体勢を立て直したらしいガイアがビームサーベル片手にこちらへと突進してくるのが確認できる。

 

「…しまったっ!」

 

 すぐにビームトマホークを構えたザクだったが、それを腕ごとガイアのビームサーベルが切断し、更にカオスからの援護射撃がザクのメインカメラを破壊する。

 

「ぐぅぅぁ!」

 

 衝撃からカガリの身を守るアスラン。体勢を崩したザクをガイアが蹴り飛ばし、ザクは地面へと吹き飛ばされる。更にそこへアビスからの砲撃が周囲に着弾する。

 

〈これで終わりね!緑のも!〉

 

 倒れ伏すザクを見下ろすガイアが(とど)めのビームサーベルを構える。

 気絶したカガリを守るように抱き、アスランは(せま)()る死を思って歯を食いしばった。

 

 ガイアのパイロット、ステラもまたこれで完全に終わりだと思った。

 

 しかし……、

 

〈何っ––––––!〉

 

 ガイアとザクの間に赤白いピンク色の光の槍が突き刺さった。ついでカオスやアビスを牽制するように次々と光の槍が周囲に降りかかる。

 

「なんだ…?」

 

 降りかかるであろう死の衝撃に備えていたアスランはそれがやってこないことに疑問を覚えて閉じていた目を見開く。

 

 初めに見えたのは視界全体に広がる緑色の光の粒子。そして、それを排出する丸みを帯びた円錐(えんすい)形の推進部(すいしんぶ)と思われる機関。

 

 振り返った際に機体の全貌(ぜんぼう)を確認することができた。

 

 ジンやザクなどのザフト量産型モビルスーツとは違い、より人型に近い形状。頭は丸く、額には鋭角(えいかく)なブーメラン状のV字アンテナ。黒で縁取られた二つの碧眼。口から顎の部分にかけては赤い突起物(とっきぶつ)がある。人間でいう鎖骨(さこつ)の部分から飛び出している2本の白いアンテナ状の突起。胸部は鮮明(せんめい)な青色、それ以外は無垢(むく)な白色。右腕には盾と長い刀身のような装備がされている。

 

「あれは……」

 

 それは"ガンダム"と呼ばれるモビルスーツ。

 

 彼等の登場によって、この世界がどのような(うね)りを見せていくのか、今のアスランには知る由もなかった。

 





インパルス「俺の出番は?」
→次で用意するで(スマン)


また、この小説における戦闘能力は

純粋種 > スーパーコーディネーター = イノベイド ≧ 超兵 > エクステンデッド ≧ コーディネーター ≧ ナチュラル

です。これはあくまで種族間における能力の差であり、個人の力は含まれていません。クルーゼやムウ、サーシェスやグラハムのようなスーパーナチュラルもいるので、あくまで参考です。
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