【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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お久しぶりです。
ちょっと、この小説に関して心に傷を負うメッセージがありましてね。筆が止まっていました(涙)

ただ、止めている間に評価・お気に入り登録してくれた人も多くいましたし、最後までやり遂げようかと思いまして、ゆっくりですが進めていこうと思います。

久しぶりなので文体が少し変わっているかもしれませんが、ご注意を。


オーブの姫獅子

 

 

 ロード・ジブリールが戦力として利用しようとしている国––––––オーブ連合首長国は揺れていた。

 

 長年守ってきた中立の理念を捨て、同盟を結んだ大西洋連邦から来た最初の命令は、ザフト軍艦ミネルバを落とす為に黒海へ軍を派遣しろというものだった。

 

「この状況で黒海へ軍を出せだと!? 馬鹿を言うな! そんなことに何の意味がある!?」

 

 カガリが感情的に叫ぶ。

 以前はここで一人、孤独な戦いを強いられたカガリだったが、しかし、今この場においては彼女の意見に同調するものが多かった。

 

 確かにオーブは大西洋連邦と同盟を結んだものの、彼等の言いなりになると(ちか)った覚えはない。シャーロット・アズラエルと結んだ条約からしても、両領土への侵略時やテロリスト––––ソレスタルビーイングへの対応などに限ってオーブは軍を動かすと言うものであり、このようにプラントへ積極的に攻撃する姿勢を受け入れたわけではないのだ。

 

「そもそも、この状況でザフトへ攻撃する理由が我々のどこにある!?」

 

 今、ユニウスセブン落下の影響によって世界各地では被害が出ているはずだ。宇宙でも戦闘行為は(ほとん)ど行っていないというのに、なぜわざわざザフトの軍…それもミネルバを攻撃しなければならないのか…。

 

「うぅむ…」

「確かに開戦後の連合の動きは少々強引と言わざるを得ませんな」

 

 政治の経験がまだ少ないカガリからしても、ここ最近の大西洋連邦の動きは奇妙(きみょう)だと分かる。

 

 声高にプラントへの攻撃を叫びながらも、実際に起こっているのは反発するユーラシアとの内紛行為ばかり。初戦から()み外した宇宙の月基地は沈黙し、地上でも一部を除いてザフト・連合間の戦闘は小規模なものになりつつある。

 

 ソレスタルビーイングが(かか)げている紛争根絶は、着々と進められているのだ。その手段が完全に悪だとしても、事実として世界は変わっていく。オーブも、この変わりゆく世界の中で正しき道を選ぶ必要があった。

 

 ラクスもキラも…そして、アスランもみんな自分にできることをやっている。だから、カガリもオーブ連合首長国の代表として、国のため、国民のために本当に何が必要なのかを真剣に考えるようになっていた。

 

「まぁまぁ、いいじゃないですか。連合に恩を売っておけば、戦後のオーブの地位も安泰ですし…」

「ユウナ…お前、正気か?」

 

 対して、段々とメッキが剥がされてきているのがこの男、ユウナ・ロマ・セイランだ。

 

 始めは現実的な思考を持つカガリとは対極(たいきょく)的な将来有望なオーブの政治家として注目されていた彼だったが、いざ大西洋連邦との同盟を可決させたと思うと、それ以降はやや自己中心的…というよりもむしろ彼の方が現実を見据(みす)えていない発言が目立ち始めたのだ。

 

「正気もなにも、私たちは大西洋連邦と同盟を結んだじゃないですか。彼等の要請に従うのに何の間違いがあるんですか、代表?」

「………」

 

 少し前までは厳かに感じていたユウナの言葉だったが、自分を見つめ直したカガリには何も恐れるものはない。むしろ、このような男の発言に踊らされていた過去の自分に怒りすら()いてくる。

 

「それとも、代表はまだこの同盟にご反対されるおつもりで?」

「……いいや」

 

 あれから暫くの間、この同盟についてカガリなりに真剣に考えた。

 オーブの中立の理念か、国民の安全か、何が大切なのか。亡き父は何を考えていたのか…と。

 

「私もあの同盟は仕方のなかったものだと、今は受け止めている」

 

 その言葉に数名の議員たちがホッとしたような表情をする。またカガリが感情的に否定すると思っていたのだろう。

 

 勿論、カガリの中に大西洋連邦との同盟について、未だに納得しきれないものがあるのも事実だ。尊敬する父が築いた中立を守れなかったことに対する無念の気持ちもある。

 

 しかし、父の決断とて絶対ではない。

 結果としてシン・アスカのような被害者を生んでしまったのは事実なのだ。二度と彼のような生まないためには、このような決断も仕方のなかったものなのかもしれない。

 

 何より、既に同盟は結ばれてしまったのだ。

 後からあれこれ言っても議員たちは納得しないだろうし、何も変わらない。ならば、代表首長としてオーブの未来について考えることのほうが重要だった。

 

 そして、オーブ連合首長国代表首長として、今回の大西洋連邦からの要請に首を縦に振ることは、どうしてもできなかった。

 

「だがしかし、黒海への軍派遣はやはり許可することはできない」

「代表…いつまでも子供じみたことを言うのは––––」

 

 ユウナが呆れたように口を開いたが、そんな彼の発言を遮るようにカガリは立ち上がった。そして、真っ直ぐな視線でユウナを睨むように見据(みす)える。

 

「ユウナ、お前は前線に出たことがあるのか? 軍事訓練の経験は?」

「は?…」

 

 突然のカガリの言葉に、ユウナは目を丸くする。周囲の議員たちも何事かと言わんばかりに騒めき出したが、カガリはそれを無視して言葉を続けた。

 

「皆の知っての通り、私は学生時代に士官学校で正規の訓練を受けている。戦の経験については前大戦を思い出して欲しい」

「代表…何を…?」

 

 そして、ユウナにそのような経験はないだろう。客観的に見ても甘やかされて育った彼は銃すらまともに撃ったこともないのではないだろうか。

 

「今、政治家になったからこそ分かることがある。……お前たち、私たち政治家の一言でどれほどの軍人が戦い、死して行くかを知っているか?」

 

 無論、彼等も数値上では知ってはいるだろう。

 しかし、その過程にある悲しみと苦しみ、恐怖は本人にしか分からないものだ。

 そして、残された者に残るのは言いようのない怒りと憎しみ。ミネルバで出会ったシン・アスカが(あか)い瞳に抱くような(ぬぐ)いきれない感傷だけ。

 

「黒海へ行けば、ザフトと戦闘になる。そして、戦闘になればソレスタルビーイングもやってくるだろう」

「……っ!」

「そうなれば、精鋭たるオーブ軍の彼等でも無傷ではすまない。最悪、地球軍と心中することになる可能性もある」

 

 士官学校へ通ったカガリだからこそ、分かることがある。彼等がどんな思いで軍へ志願したのかを…。

 全ては中立という理念を持つオーブを守るため、愛する人がいるこの国を守るためだと。

 

 国家元首となった今でも、あの時の光景は昨日のように思い出せる。

 

「この要請、要はオーブ軍を尖兵として利用しようという魂胆なのだろう。そんなことでいいのか、お前たちは!」

「カガリ様…貴女は」

 

 そんな彼等が地球軍の使いっ走りとなって意味もなく戦闘に参加し、命を落とすなど、そんな寂しいものがあっていいのだろうか。

 

「私が父の理念に固執しすぎていたのは認めよう。中立を注視するあまりに視野が狭くなっていたのも認める––––––しかし!」

 

 父が守った中立と父が守れなかった国民。

 それを天秤にかけ、カガリは後者を選んだ。娘として、後継者として、父には申し訳なく思う気持ちもあるが、それでも後悔はしない。

 

「軍人だろうとオーブの国民であることに変わりはない。そんな彼等の命を国のためにでもなく、誰かを守るためにでもなく、ただの使い捨てとして利用することなど、私にはできない」

「カガリっ!」

 

「(…代表、とも呼ばなくなったか。お前の余裕のないところを見るのは初めてだ)」

 

 ユウナが立ちあがろうとして、父であるウナトに制止されているのが見える。カガリの言葉に胸を打たれたような反応を見せる議員たちが多い以上、不利をさとったのだろう。

 

「(どういうつもりだ!…とでも言いたそうだな)」

 

 目線でこちらに(うった)えかけてきているのが分かる。

 だが、キラ(フリーダム)やアークエンジェルの件で弱みを握ったと思っているのなら、それは大間違いだ。弟が覚悟を決め、懸念点であったラクス達が国を脱出した今、カガリに恐れるものはない。

 

 こちらを睨むセイラン家の視線を無視して、カガリは議員たちへ深く頭を下げる。

 

「これも私の我儘なのかもしれないが、今一度よく考えて欲しい。本当にオーブのためを思うのなら、何が正しい選択なのかを–––!」

 

 カガリのその言葉は、静まり返った議会室に小さく響き渡った。

 

 

 

▽△▽

 

 

 

「––––––というわけで、何とか軍の派遣は押しとどめることができた」

「…すごいね、カガリは」

 

 疲れたようにそう言った(カガリ)の言葉に、キラは心底感心したという風に呟いた。

 

 そこに先日の戦闘で負った怪我の様子は見られない。流石はコーディネーターというべきか、キラの身体の傷は順調に回復していた。もうモビルスーツに乗れるくらいにはなっている。

 

「まぁ、こんなことをしでかして、セイランが何を言ってくるか…頭が痛い」

「でも、カガリの言ったことは決して間違いじゃないと思うよ」

 

 カガリが大西洋連邦との同盟の可決を認めると言ったとき、キラは裏切られたような気持ちになった。

 

 それでは、今までの戦いで自分たちが戦ってきた理由は? 

 ウズミの意思はどうなる? 

 

 そんな思いの数々が胸を巡ったものの、カガリの言葉に納得せざるを得なかったのも事実。

 

《二年前のオーブ解放戦線で…連合のモビルスーツと青い翼を持った機体の戦いの中で》

《いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす…!》

 

 自分が戦った結果で大切なものを失った人がいる。中立を貫こうとすれば、自分はまた戦うことになる。

 

 そうなったときに、また彼等のようなものを生み出すという事実に、キラは自分が耐えられるとは思えなかった。

 

 だからこそ、刃を向けずに、ウズミのものではない自分なりの理念を持って平和を願い戦うカガリのことをキラは誇りに思っていたのだ。

 

「とはいえだ。私の身柄をセイランが握っているのも確か。こうやって元首の立場にいられるのも後どれほどか…キラ、お前も」

「僕は大丈夫だよ。覚悟はある…つもりだし」

 

 あの日、セイランはいくつかの条件をつけてフリーダムやアークエンジェルの件を黙認すると言った。

 

 その内の一つが、フリーダムのパイロットであるキラの徴兵である。

 前大戦の英雄であるキラの力を手に入れようと考えたセイランがカガリを人質にして、キラを自分たちの強力な兵器として好き勝手運用しようとしている。

 

 勿論、カガリはそれを否定した。

 前大戦でのキラが負った戦争の悲しみを知っているからこそ、彼をこれ以上戦争に関わらせることだけさせたくなかったのだ。

 

「セイランが設けた期限も後少しか…私たちも身の振り方を決めなければならないな」

「そんなの…答えは一つ、決まってるでしょ?」

 

 カガリが自分を戦いから遠ざけようとしていることくらいはキラにも分かっている。彼女なりの弟への思いやりなのだろう。

 

 だが、カガリがまだまだ未熟な女の子だということもキラはよく知っている。誰よりも国のことを思う彼女のことだ。きっと本当は不安でたまらなかったのだろう。

 

「(僕もいつまでも昔のままじゃいられないんだ)」

 

 想いだけでも、力だけでも駄目なのだ。

 キラにできないことをカガリはしているのかもしれないが、カガリにできないことがキラにはできる。

 

 ならば、今の自分にできることをするだけ。

 それが今はいないアスランの代わりなのだとしても、今は側で彼女を支え続けよう。

 

 だって、自分は弟であると同時にカガリの兄なのだ。

 なら、妹を守るのは兄である自分の仕事だ。

 

 

 

▽△▽

 

 

 

「くそっ、どういうつもりだ! カガリのやつ!」

「ふむぅ……」

 

 同時刻、ユウナ・ロマ・セイランとウナト・エマ・セイランの二人は困窮した様子を突き合わせていた。

 

 それは当初想定していたものと違う方向に舵取りが進んでしまったからだ。

 

 ()()()()()から手に入れたフリーダム及びアークエンジェルの情報。それと共に促されたオーブ政権の奪還方法。

 

 未熟なカガリ相手であれば、なんとでも言いくるめることができると思っていた。だからこそ、その為に邪魔なアスラン・ザラやキラ・ヤマトを排除しようとしたのだ。

 

 幸いにして、アスランは自分からオーブを去り、理由は不明だがキラはソレスタルビーイングに敗北して寧ろ弱みを(つか)み取ることができた。

 

 完全に自分たちに流れが来たと思っていたのに。

 

「連合からは相変わらず黒海への軍の派遣を要求されているが…」

「ここで連合に逆らえるわけない! 父上!」

「うむ…」

 

 とんだ誤算だ–––––ウナトはズレた眼鏡をもと通り掛け直しながら、(ほぞ)をかむ。

 

 連合についておけば間違いはないと思い、強情なカガリを言いくるめて同盟条約に可決させた。

 

 息子のユウナは知らないが、この同盟の裏にはロゴスの一人であるブルーコスモスの盟主、ロード・ジブリールからの圧力があったのだ。

 現在オーブにいるシャーロット・アズラエルは、それを強めるものなのだろう。

 

 ジブリールは以前、ロゴス幹部の集会の元で顔を合わせたことがあるが、親交があったわけではない。命令通りに動く()れはないが、無視するにはジブリールの力は大きすぎる。

 

 一度その手を取ってしまった以上、彼の言う通りにするしか、ウナト達が生き残る道は残されていないのだ。

 

「これ以上、返答を無視すればこちらが危うい…か」

「父上!」

 

 もはや後戻りはできない。

 今更、馬を乗り()えることなどできないのだから。

 

「ユウナ、例のプランを発動する。軍を動かすぞ」

 

 そうして、セイランの二人は悪魔の手を取ったのだった。

 

 

 





次回予告
「オーブ内戦! 乱入、ソレスタルビーイング!」

00でいうアザディスタン編みたいなものですね。

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