転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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自由の名の下に

 

 

 突如として襲来した何かによって海へ落とされたアステリア。

 

「なんで!? 一体どこからっ!」

 

 衝撃に揺れるアステリアのコックピットの中でフェイトは声を上げながら体勢を立て直す。

 

 素早く操縦桿(レバー)を操作して海上へと浮上する。

 その目前に、白い天使を確認した。十枚の翼、白いボディに装甲の隙間に輝く金色の間接部。

 

 これは–––––このモビルスーツは……?

 

 フェイトは突然現れたモビルスーツを(にら)みつけた。この機体がアステリアを海へ叩き落としたのだろう。何というスピードだ。全くもって気付けなかった。

 

 データバンクに眼前の機体の照合データはない。

 だが、その特徴的な外見はデータなどなくても分かる。

 

 あれは…間違いない。

 幼き頃見た機体であり、連合・ザフト問わず伝説と言われるオーブの守護天使…。

 

「–––––フリーダム」

 

 その機体についてはよく知っている。

 オーブ解放作戦においては、オーブを守るための戦力の一つとして戦っていた…つまりフェイト(マユ)達からすれば味方の立場だったということも。彼等が祖国を守るために戦場に立っていたということも。

 

 だが、理屈で納得できるほど家族を失った悲しみは小さくない。例え味方だったとしても、彼/彼女の砲撃によって両親が死んでしまったのは事実なのだから。

 

 それが今目の前にある。

 何もせずにこのまま表舞台に姿を現さないのなら、フェイトとて胸の奥にしまっておくつもりだったが、彼/彼女はわざわざこうやってフェイトの前に姿を現したのだ。

 

「ヤキンのフリーダム……!」

 

 ならば好都合。

 ミッションの妨害をする敵機体ならば、攻撃しても何の問題もない。ここで父と母の(かたき)を…!

 

 GNソードを構え、ライフルモードでビームを放ちながら機体を飛翔(ひしょう)させる。

 もはや他のオーブ軍など有象無象(うぞうむぞう)、視界にも映らない。目指すはフリーダムただ一機。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

 しかし、フリーダムは放たれたビームを左腕から展開したビームシールドで防ぐ–––––旧フリーダムには見られなかった武装だ。

 大きさ・角度を自由に設定できるそのシールドは、とても通常の射撃兵装では突破できないだろう。

 

「…だったら!」

 

 左腕でGNビームサーベルを取り出し、近接戦闘を仕掛ける。射撃主体のフリーダム相手なら、非常に有用な戦術だ。

 

 …相手が普通のパイロットならの話だが。

 

 光の刃が敵機を()()かんとしたその瞬間、フリーダムの動きが変わった。腰に備え付けられたサーベルに手をかけた瞬間、それが引き抜かれる。

 

「なっ!?」

 

 フェイトは目を見開いた。

 フリーダムと(つば)迫り合いに持ち込んだと思ったのも一瞬、GNビームサーベルの(つか)の部分が綺麗に斬り裂かれていた。ドロリとした音と共に崩れ落ちる。

 

 何という天才的な操縦センスなのだろうか。サーベルの柄だけを狙い斬るなど普通のパイロットにできるものではない。

 

 間違いなくマシンポテンシャルはこちらの方が上。

 不思議なことにフェイト自身もかつてないほどに好調である。

 

 だというのに、フリーダム相手に押し切れない。

 力そのものはこちらが優っていても、決定打に至るような攻撃は(ことごと)(さば)かれている。

 

「まだ終わってないっ!」

 

 両手に剣を構えたアステリアが突撃し、フリーダムは回避に集中しつつ時々反撃する。そのような争いが続いた。

 

 側から見ればそれは、暴れ回るフェイトを何とか止めようとしているように見えただろう。

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 フェイトがフリーダムを強敵と感じたように、何とかガンダムと対等に渡り合っているキラもまた、敵のその力に舌を巻いていた。

 

 既にあの感覚(SEED)は発動済みであり、今持てる力の全てを使って戦闘を行っている。手加減して戦える相手ではないことは分かっていたからだ。

 

 やはりガンダムの力は脅威(きょうい)であり、気を抜けば直撃を喰らいかねない。キラの卓越(たくえつ)した反射神経と操作技術のお陰で、回避に集中することで何とかガンダム相手に互角の戦いになっているのだ。

 

 それでも、あの時の敗戦とは違う。

 それはあの時とは戦うガンダムが違ったり、キラ自身に戦闘の心構えができているということもあるが、一番の理由はこの新しい機体だろう。

 

 –––––ストライクフリーダム

 

 それが彼の新たな剣の名前であった。

 中破したフリーダムを元にモルゲンレーテが改修・再設計を行なった機体であり、既に二年前の旧式と化していたフリーダムを今持てる技術を使ってアップデートした改修機である。

 

 更に完成した機体はキラ専用にカスタマイズされており、旧型のフリーダムと比べて倍近く性能が上昇。既にフリーダムでは追いつかなくなっていたキラの反応速度について来れるだけの力を手に入れていた。

 

 とはいえ、ガンダムを相手にすれば分が悪いのには変わりはなく、足りないところはキラの操縦技術で補っている状況である。

 

 今は対等に渡り合っているが、そう長くは持たない。

 

 そう思ったキラは手早く通信のスイッチを押した。その先はユウナ・ロマ・セイランのいるタケミカヅチ級空母である。

 

「何してるんです!?  早く退艦してください!」

〈な…なんだと!?〉

 

 コックピット上部のモニターにただでさえ白い顔色を青白く染めたユウナの姿が(うつ)る。

 

 何だとは何だ。まさか彼は援軍として自分が来たと思っているのだろうか。カガリの弟である自分が姉を()めようとしている相手を助けるために動くと?…そこまで単純な頭をしているというのか。

 

「このまま戦ったら全滅しますよ! 軍を引かせてくださいと言ってるんです!」

 

 勘違いしてもらっては困るが、キラは別にセイランを助けに来たわけではない。むしろ、当初はこのフリーダムを使ってセイラン相手に一機で足止めと時間稼ぎをするつもりであった。

 

 だが、キラが現場に到着した時、セイラン側の軍は既にソレスタルビーイングに武力介入を受けていた。それも壊滅的な被害を受ける形でだ。

 

 それだけならキラも静観していたのだが、その光景があまりにも凄惨(せいさん)で残酷なものだったから……決めたのだ。そこに助けられる命があるのなら、自分は助けたいと思ったから。

 

「僕が彼を止められているうちに、早く!」

 

 キラがセイラン側へ呼びかける間にも、ガンダムはその刃をこちらへ向けてくる。その攻撃は先ほどよりも激しい。

 

「…くっ!」

 

 敵が振りかぶった大剣を機体をそらせることで回避し、ビームライフルで牽制(けんせい)することで距離を取る。

 

 不幸中の幸いか、ガンダムはこちらに狙いを定めているらしく、その剣先がオーブ軍に向けられることはないだろう。

 

 そう思ったのも束の間、キラの元へ帰ってきたのは信じられない返答だった。

 

〈そ、そんなことできるか! そんなことをしたら僕は!〉

「な、何を言って…このままじゃ」

〈僕は…僕はオーブの代表だぞ!〉

 

 ユウナは錯乱(さくらん)していた。

 敗北を知らない彼に訪れた初めての不都合な展開に加えて、初めての死の気配。そして、このまま行けば自分は反逆者として父共々処分されるという恐れ。

 それらが彼から冷静な判断力を奪っていたのだ。

 

〈ハハ…僕は…僕は!〉

「ああもう…どうして!」

 

 キラは両腕に持ったビームライフルを連結させて放つが、ガンダムはそれを紙一重で回避し、こちらへ向かってくる。今までの荒っぽい動きと比べて洗練された動きにキラは戦慄(せんりつ)した。

 

 ––––––学習している!?

 

 間違いなく、相手はキラの動きに慣れ始めている。

 そうなれば、マシンポテンシャルで劣るキラには勝ち目どころか、逃げ切ることすら難しいだろう。

 

 こうなったら仕方がない。

 キラは通信に乗せて、らしくもない大声をあげた。

 

「もう一度言います、全軍退却! …確かマホロ二佐でしたね。早く退艦の準備を!」

〈ハッ…しかしそれは〉

「えっと、これはカガリ・ユラ・アスハ代表首長の言葉として受け取ってもらって構いません!」

〈それは…わかりました!〉

 

 そこまで言って、ようやくセイラン軍は退却(たいきゃく)の準備を始めた。色々文句を言うユウナがああなっているなら、彼等の行動を邪魔するものはいないだろう。

 

「よし、後は……速い!?」

 

 ホッと息を吐いたのも束の間、いつの間にか至近距離にまで近づいていたガンダムが剣を向けていた。

 

 即座に盾にしたライフルを犠牲(ぎせい)にすることで危機を脱したが、ガンダムは左腕にもう一本の剣を握ると、「逃がさない!」とばかりにフリーダムに向けて振り下ろしてくる。回避は難しい一撃だ。

 

 キラが反射的にビームシールドでそれを受け止めた……その瞬間。

 

「ぐっ…何だこれ?」

 

 鋭く頭を刺すような…まるで電流の矢に(つらぬ)かれたような感覚が走った。

 ただ、それは痛みというわけでもない。何かに干渉されている…?

 

「この感覚は…」

 

 誰かが心で泣いている…?

 それはきっと、目の前のガンダムのパイロット。

 

 無理をして、心で泣いて、そして––––––。

 

「一体君は…っ!」

 

 だが、それを考える時間も()しい。

 キラは不可思議(ふかしぎ)な現象に疑問を問う(ひま)もないまま、オーブ艦隊が撤退するまでの時間稼ぎの戦闘を続行した。

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 同時刻、オーブ連合首長国においては比較的市街地の少ない島…アカツキ島にて、日の光の届かない薄暗(うすぐら)い森林地帯にある廃屋(はいおく)に怪しげな集団がいた。

 

 武装した集団だ。

 軍用のジャケットとパンツを身に(まと)い、手にはマシンガンを抱えている。仲間全員で六、七人といったところか。オーブの人間でないことは一目で分かった。

 

「…っ!」

 

 彼等に取り囲まれるようにして、全く異なる体勢の二人の金髪の女性がいた。

 

 その内の一人、それは誘拐されたカガリだった。

 誘拐される際に乱暴に(あつか)われたものの、目立った外傷はなく意識もしっかりしている。彼女はいま後ろ手に(しば)られ、廃屋を装った誘拐犯の拠点の中に監禁(かんきん)されていた。

 

「はぁ……ねぇ貴方たち、雇い主はいつになったら私たちを解放してくれるのかしら?」

 

 カガリは窓際(まどぎわ)の席に座る彼女に視線を向ける。

 そこにいたのは、カガリと違って特に身体を縛られることなく、自由の状態で椅子(いす)に座っているシャーロット・アズラエルだった。

 

 カガリとの会談中に巻き込まれる形で誘拐されたという彼女は、その端麗(たんれい)な顔立ちを不機嫌そうに歪めている。

 

「いえ…申し訳ないがそれには答えられません」

「ハッ。下っ端とはいえ、こんなお粗末な誘拐…ファントムペインも落ちぶれたものね」

 

 ファトムペイン…? 聞き慣れない単語だ。

 シャーロットが知っているのをみるに、大西洋連邦の手の物だろうか。だとすると、この誘拐には連合の手が関わっている…? いや、となると大西洋連邦の人間であるシャーロットも誘拐したことが()に落ちない。

 

 その後もシャーロットがいくつかの言葉を投げかけていたが、相手は会話する気はないものの、無視することもできないのか適当な返事で(かたく)なな態度を崩さなかった。

 

 

 変化が訪れたのは、日が沈もうと空が夕暮れ色に染まり始めた時のこと。

 窓の外で慌ただしそうに男たちが怒鳴(どな)り合う声が聞こえたかと思えば、地響きのような音が振動(しんどう)として伝わってくる。

 

「何事だ!?」

〈敵襲らしい! 未確認のモビルスーツが一機。こちらも予備の部隊を動かしたが相手になってない! 早く移動を–––––〉

「おい、返事をしろ!––––––チッ、オーブ軍は全部海じゃなかったのか?」

 

 どうやら助けが来たらしい。

 まさか誘拐犯がモビルスーツまで持っているとは思わなかったが、連合の手の者だとすれば分からなくもない。だとすれば、この地響きはモビルスーツの足音か。

 

 外で異常事態が起きたからなのか、男たちは次々と外へ出ていき、廃屋の中にいたのは一人の男のみであった。

 

「あら、どうやら助けが来たみたいね。貴方も早く降参したらどうかしら」

「なに–––––をぉ」 

「…お休みなさい」

 

  その隙をついたのがシャーロット。

  その華奢(きゃしゃ)な外見からは想像できない蹴りで男の意識を()り取ると、男の(ふところ)から奪い取ったナイフでカガリを縛るロープを切断する。同時に口元を縛っていた布も外され、新鮮な空気がカガリの元に返ってきた。

 

「カガリさん、大丈夫ですか?」

「…あぁ、助かった。だが、この男たちは…」

「心当たりはあります–––––が、まずはここから脱出しましょう。助けが来ているみたいですし」

 

 カガリはその言葉に深く頷いた。

 事態が事態ならば、今国には重大なピンチが迫っている可能性が高い。キラやキサカがいるとはいえ、いち早く自分が戻らなければ…。

 

 そう思って廃屋から外に出れば、そこには倒れ()す男たち。その中心には二丁(にちょう)のライフルを持つパイロットスーツの男がいた。その顔はバイザーか何かで遮られており、顔も表情も読み取ることはできない。

 

「おっと、お目覚めかい。お姫様方」

 

 だが、カガリは男のことなど視界に入らなかった。

 それよりももっと目を引く存在が、男の後ろに立っていたからだ。

 

 そこにいたのは、白と黒のモノトーンカラーが特徴的なモビルスーツ。

 頭頂部から()り出している(えい)利的なトサカのようなパーツに加えて、額の部分にある黄色いV字型のパーツ。左肩にはランチャーを、右肩には身の(たけ)ほどの大剣を装備している。

 

「あれは……」

 

 見間違いようもない。

 知る由もない機体名はガンダムサルース––––––カガリが以前目撃したのとはまたタイプが異なるが、それはまさしくガンダムだった。

 

 

 





>キラ
覚醒しかけの脳量子波。
SEED覚醒同士だと……?

>ストライクフリーダム
原作よりも早期での登場。
その分、デスティニーやジャスティス等も早期に登場させる予定です。旧フリーダムやインパルスはゴメンね!

※ストフリは原作版ではなく、旧フリーダムのチューン版なので性能は少し劣ります。

>シャーロット・アズラエル
ナチュラルの男程度なら不意打ちで倒せるお嬢様

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