【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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リターン

 

 

 かつては伝説とまでに(うた)われたキラ・ヤマトのフリーダムと現在世界を混乱に(おとしい)れているソレスタルビーイングのガンダムによる戦闘。

 まさに夢のカードともいえる両者の戦闘は、互いに決定打を得られないまま終結を迎えた。

 

 

 きっかけは両者に入った通信からの情報だった。

 少しずつフリーダムの動きに慣れ始めたフェイトの元に、ガンダムサルースからの通信が入ったのだ。モニターに映ったのはアキサム。

 

〈フェイト、ミッションは完了した。撤退するぞ〉

「撤退?…だってまだ!」

 

 フリーダムを倒せていない。

 ようやく動きにも慣れてきて、次こそ奴を倒すチャンスだというのに…!

 

〈セイラン側の艦隊も降伏したみたいだし、俺たちの任務は終わりだ〉

「でもっ!」

〈撤退する相手を後ろから撃つのがソレスタルビーイングのやり方なのか?〉

 

 チラリと海岸を見ると、白旗を上げたタケミカヅチ級母艦がアスハ派のオーブ軍に(ひき)いられていくのが確認できた。もう戦闘…というよりはクーデターを続ける意思がないのだろう。

 フリーダムもそれに気がついたのか、こちらとの戦闘を放棄(ほうき)して離脱していく。

 

 ここで強引に戦闘を続行すれば、それは「戦争根絶」を掲げるソレスタルビーイングの理念に(はん)するだろう。命令無視は重罪。最悪ガンダムのパイロットから降ろされる可能性もある。

 

 それは誰よりも戦争を憎むフェイトとしては望まないこと。折角手に入れたガンダムパイロットの座を手放したくはなかった。

 

「……了解」

 

 ガンダムマイスターならば、任務に私情を(はさ)んではいけない。フェイトは()き上がる激情を()み込み、(ほこ)を収めた。

 だが、モニターの向こうにいるアキサムにはその不満顔はお見通しだったようだ。

 

〈どうした、そんなに戦いたかったか? 『ヤキンのフリーダム』と〉

「…いえ」

 

 戦いたかった…?

 いや、違う。そんなのじゃない。戦わずに済むなら戦わない方がいいに決まっている。

 

 でもあの時、自分は確かにフリーダムのパイロットを殺そうとした…。それは何故? 怒り? それとも憎しみ?

 

 フェイトの瞳に光が戻った。

 同時に取り戻した冷静で沸騰(ふっとう)した頭が冷めていく。

 

〈相手も新型らしいが、まさかガンダム相手に競り合うとは…噂に恥じない強さってやつかな〉

「アキサムさん……わたし–––––」

〈…ん? なんだ、どうした?〉

 

 夢から()めたような気分だった。

 オーブ軍と戦った時のあの感覚、あれは一体何だったのだろうか。ガンダムの隠された機能というわけでもなく、疑問は()きない。

 

「……いえ、大丈夫です」

〈そうか…まぁ、お前はよくやったさ。ここ暫く作戦続きだったんだし、少し休めよ〉

「…はい」

 

 確かに、あの時の反動だろうか。身体がどことな気怠(けだる)く、その疲れを表すように一筋の汗が(ひたい)を伝っていった。

 

「アキサムさん、次のミッションは?」

〈暫くはなし。いくら物騒な世の中でもそんな頻繁に戦争しているわけじゃないからな。今は」

「そうですか…」

 

 今は、という言葉に含みを感じたが、フェイトは()えて触れなかった。いや、それに()れる余裕もなかったというべきだろうか。重苦しい疲労感が彼女の身体を(むしば)んでいたのだ。

 

〈疲れたなら自動(オート)操縦に切り替えておけ。後は基地へ帰還するだけだ〉

 

 それだけ言うと、アキサムは通信を切った。

 後は好きにしろ、ということだろう。もしくはこちらに気を遣ったのか…。

 だが、今はその気遣いがありがたかった。

 

「…はい、今はそうします」

 

 GN粒子の制御モードを戦闘から粒子散布モードに切り替え、操縦を手動(マニュアル)から自動(オート)に変更したフェイトはそう小さく呟くと、ようやく肩の力を抜いた。

 

 そうして、オーブ領空を抜けた二機のガンダムは、美しい緑色の光の()を引きながらその場を後にした。

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 ガンダムがオーブを後にするのを見送りながら、キラはフリーダムをタケミカヅチ級母艦1番艦"タケミカヅチ"へ着艦させた。

 格納庫(ハンガー)にて、出動することのなかったM1アストレイやムラサメの隣にフリーダムが並び、キラも機体から降りた。

 

 その顔には強い疲労の色が浮かんでいる。

 それもそのはず、新型のフリーダムとはいえ、本来の機体ポテンシャル以上の動きで強引に操縦していたのだ。パイロットにかかる負担は例えスーパーコーディネーターといえども大きい。

 

「よく帰ってきた。大丈夫か?」

「はぁ、はぁ…大丈夫ですよ、なんとか」

 

 ぐらりとよろついた身体をキサカに支えてもらい、医療室まで移動する。港に戻ってきた"タケミカヅチ"の内部は(あわ)ただしく人が歩き回ってきたが、今のキラにはそれを気にする余裕もなかった。

 

「…キサカ一佐。それで、カガリは?」

 

 軽くベットに横になり、身体も回復してきたところでキラは姉の所在について尋ねた。

 

 –––––カガリが見つかった。

 

 そのような情報がキラの元に届くと同時に二機目のガンダムが現れた際にはキラも死を覚悟したが、幸いにして彼等もこのクーデターの終了を(さと)ったらしく、撤退していったのだ。

 

「それが––––––」

 

 念願のカガリ保護の(しら)せだったのだが、キサカの説明ではそこに意外な付録(ふろく)がついていたのだ。

 

「ソレスタルビーイングが!?」

「ああ、ソレスタルビーイングを名乗る人物から国防本部にメッセージが届いてな。先程無事保護された」

 

 キラは困惑した表情でキサカを見る。

 

「どうして、ソレスタルビーイングが…」

「さぁな。カガリを保護した方がこの内紛が早く終わると判断したのかもしれん」

「なら、先程の戦闘は…」

「おおよそお前と同じ目的で止めようとしたのだろう。やり方は過激だったが」

 

 キサカの言葉を聞き、キラはあのガンダムのパイロットへ思いを()せた。

 

 怒り、憎しみ…そして悲しみ。

 ガンダムのパイロットが持つ鮮烈(せんれつ)なまでの感情の暴力をキラは感じ取っていた。

 

 理由は分からない。

 ただ、何となく分かるのだ。相手はきっと本来は優しい心を持っていて、それでもなお堪え切れない感情の嵐が殺意となってこちらを狙っているのだと。

 

 まるで、互いに殺し合うしかなかったあの時の自分とアスラン、忘れようにも忘れられない仮面の男(ラウ・ル・クルーゼ)のような言葉にし尽くせない憎悪の感情。

 

「…っ」

 

 それが自分へ向いているという事実にキラは震えた。

 

 誰かを殺す以上、誰かに恨まれるというのは2年前に分かっていた。それが真理なのだから互いを滅ぼすまで戦争が終わらないのだと砂漠の虎(バルトフェルド)は言ったし、それを繰り返したくないから中立を維持するのだとオーブの獅子(ウズミ・ナラ・アスハ)は言った。

 

「僕は…」

 

 キラは己の両手を見つめた。

 その手は女性のように白く(つや)やかだが、実際は多くの血で染まっている。

 キラも多くの大切な人を失ったが、それ以上に誰かの大切な人の命を奪っているのだ。

 

 それに耐えられなくて、この2年間をラクスと共に過ごした。時が傷を(いや)してくれると信じて。

 

「ソレスタルビーイングは撤退したか…。だが、まさかあれほどの力だとは。あれが本気で武力介入をしてきたらオーブはどうなるか…」

「–––––っ!」

 

 何気なく呟いたキサカの言葉にキラはハッとした。

 

 そうだ、きっとまた銃を取る時が来る。

 それはオーブのためか、カガリのためか、ラクスのためかは分からないが、きっと何かを守るための戦いであることは確かだ。

 

 誰かのために戦うことは決して間違いではないとラクスは言った。奪った命はあれど、それ以上に救えた命もあるのだと。

 

 彼女の言葉を思い出して、キラは自分に力がみなぎるのを感じた。

 例え偽善者と呼ばれようとも、救える命を救いたいと思うことは間違いじゃないのだと…。

 

 そう思えば、自分はまだ戦えるから。

 

「(だから、僕は大丈夫だよ。ラクス)」

 

 自分は自分にできることをする。

 だから彼女も彼女の戦いを…どうか自分がそこへ向かうまで。

 

 キラは宇宙(そら)へ思いを馳せた。

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 一方、解放されたカガリは誘拐されたということを全く思わせない的確な指示で混乱する行政府を取りまとめると、セイランから主権を奪還(だっかん)した。

 

 主犯であるウナトはその場で拘束、息子のユウナも帰港次第(しだい)身柄を拘束。ユウナに関しては一度…いや、二度ほど顔面をぶん殴ったが。

 とはいえ、事態が事態のためにセイランに対する正確な処分は後回しになっている。

 

 何せカガリには、セイランや国のことよりも優先すべき相手がいたのだから。

 

「今回は我が国の問題で貴女を巻き込んでしまって本当に申し訳ない」

 

 アスハ家の所有する屋敷の部屋の中、カガリは真っ直ぐに頭を下げた。

 正面には、出された紅茶を受け取るシャーロットの姿がある。同じ良家の出身でもカガリと違い、カップに口をつけるその姿も様になっていた。

 

 やがて、彼女はカップをテーブルに戻すと、頭を下げるカガリを見つめて(つぶや)いた。

 

「頭を上げてください、アスハ代表」

 

 その言葉にカガリは頭を上げる。

 カガリの金色の瞳とシャーロットの水色の瞳が交差した。

 

「確かにそちらの問題に巻き込まれたのは事実ですが、今回の件はただ単にセイラン家のクーデターとは言い切れないのでしょう?」

「…ええ、まぁ」

 

 どこか(ふく)みのあるシャーロットの言葉に頷く。

 

 ウナト・エマ・セイランとユウナ・ロマ・セイランの二人が主犯となって行われたクーデター。

 国家元首のカガリを誘拐して強引に主権を握ろうという、その現実性のない反逆方法は彼等らしくあったが、その過程にはどこか違和感を覚えざるを得ない。

 

 後情報だが、セイラン家は水面下で連合との深い(つな)がりがあったと聞いている。加えて、自分達を誘拐したあの男たちのシャーロットへの態度を考えれば、可能性は一つに(しぼ)られる。

 

「"ファントムペイン"と聞いたが、アズラエル理事は彼等について何か心当たりが?」

 

 誘拐されたあの時、シャーロットは彼等について何かを知っている様子だったし、男たちの方も彼女にだけは特殊な扱いをしていた。そこにはセイランとはベクトルが異なれど、決して小さくない繋がりがあったのだと推測できる。

 

「後の調査によると誘拐犯が使用していたのは黒色に塗装されたダガーらしい。しかも、その機体色はアーモリーワンでの強奪部隊が使用していたものと同一とのことだ」

 

 故に、カガリは少し失礼ながらも問い詰めるような形でシャーロットに(たず)ねた。

 

 ダガーだから連合…と素直に結びつける訳にもいかないが、今の連合に色々ときな臭いものを感じるのも確かだ。

 オーブを支配する為に邪魔なカガリを排除して扱いやすいセイランをトップに()えようという考えもなかったとは言い切れない。

 

 そして、その答えはシャーロットの口から知らされることとなった。

 

「ファントムペイン…それは連合の非正規特殊部隊のことですわ」

「……やはりか」

 

 当たって欲しくなかったが、やはり今回の件は連合が裏で糸を引いていたらしい。

 

 だが、大西洋連邦の要人であるシャーロットまでも巻き込まれたのはどういうことなのか。いや、誘拐犯の反応を見るに彼等も不本意といった様子だった…となると。

 

「その、非正規部隊というのは?」

「正式名称"第81独立機動群"…あまり大声では言えませんが、彼等は"ロゴス"が部下として運用する私兵集団です」

「…ロゴス?」

 

 聞き覚えのない単語だった。

 頭を(かし)げるカガリの様子を待て、シャーロットは小さくため息を吐いた。

 

「知らないなら知らない方がいいんですが……まぁ、アスハ代表にはお話しておいた方がいいでしょうね」

「…あ、ああ」

「いいですか? ロゴスというのは––––––」

 

 シャーロットから語られた内容は、カガリの戦争に対する認識を変えるには十分なものであった。

 

 "ロゴス"

 自らの利益のために地球とプラント間の戦争を求める死の商人。あのブルーコスモスすら金(もう)けに利用されているに過ぎず、この長らく続く戦争の最大の原因。

 

 –––––信じられない…!

 

 カガリは呆然(ぼうぜん)としていた。

 自分たちの利益のために戦争を起こす? 金儲けのために、他人を蹴落(けお)としたり、環境を破壊したりする人がいるのはカガリも知っていたが、これはそんなのとは次元が違う。

 

 戦争なのだ。

 破壊されるものは物ではなく命なのだ。そんな理由で何千、何万もの人間を殺して、そいつらは平気なのだろうか? 人の血で(しぼ)った金で生きていくことに何も感じないのか?

 

「信じられないかもしれませんが、事実です」

「………そのようだな」

 

 あまりに理解を()えた話に、カガリは怒りさえ覚えなかった。代わりに感じたのは、(はだ)(あわ)立つような気持ちの悪さだけだ。そんな理由と比べれば、コーディネーターだから、という理由を持つブルーコスモスの方がまだ理解できる。

 

「カガリさんは、私の兄…ムルタ・アズラエルのことをよく知っていると思いますが…」

 

 ムルタ・アズラエル。

 その名はカガリもよく知っている。目の前の女性の実の兄であるということと同時にかつてオーブを焼くことを指示したブルーコスモスの盟主。

 

 ––––––口で分かるならこの世から戦争なんてなくなります…分からないから敵になるんでしょう?

 

 かつてコロニー・メンデルで初めてその存在を認知した男。アークエンジェルの同型艦であるドミニオンに乗り込み、最期はマリューによって討たれた。

 

「兄はブルーコスモスの盟主でしたが、ロゴスの中ではその地位は非常に低かった。あの兄ですら、ロゴスの前では一方的に利用されていたに過ぎないのです」

 

 カガリは言葉を失っていた。

 父はアズラエルこそが地球軍を支配している男だと言っていたが、実際はそのアズラエルですら利用されていたのだ。あの地獄のような核による滅し合いも、彼等にとっては金儲けの過程に過ぎなかったというのだろう。

 

「…ロゴス。戦争で商売をする人間か」

 

 初めはとても信じられないと思っていたが、アーモリーワンでの強奪に始まり、その後の強引な開戦の展開を考えれば、十分にあり得る話だった。

 

「…彼等がいる限り、地球とプラントが互いに争い合うことは止められないでしょうね」

 

 シャーロットが心底(あき)れたような様子で言った。

 彼女のプラントへの対応といい、そのファントムペインの誘拐に巻き込まれた事といい、もしかすると彼女はロゴスと敵対関係にあるのかもしれない。

 

「こんなことでは世界は変わらない……だからこそ–––––」

 

 小さく呟いたその言葉はカガリには聞き取れなかった。

 

 しかし、ここで彼女と話せたことは大きかった。

 

 世界の真の敵…ロゴス。

 戦争を商売道具とする彼等の()の手は、セイランを通じて既にオーブにまで()びているのだ。オーブの代表としては、そんな集団を野放しにしておくことはできない。

 

 きっとカガリ一人では対処できない相手だ。

 だが、今のカガリはデュランダルとシャーロットという各陣営における穏健(おんけん)派の人物と友好関係を(むす)んでいる。きっとかつてのような滅し合いにはならないだろうし、させるつもりはない。

 

 –––––戦争を商売の道具にはさせない!

 

 真の平和を守り通すことを思い、カガリは力強く拳を(にぎ)り、そう(ちか)った。

 

 





>キラvsフェイト(マユ)
時間切れによる引き分け。
あのまま続いていたとしたら、長い戦いの末に機体性能でフェイトの勝ち。

>デュランダル&シャーロット
穏健派(笑)
実はどっちも真っ黒。カガリはまだまだですね。

>ストライクフリーダム(今作オリジナル)
形式番号:ORB-02F
装甲材質:ヴァリアブルフェイズシフト装甲
 動力源:核分裂炉
  武装:MMI-GAU2 ピクウス76mm近接防御機関砲
     73W2式改ビームライフル「ライメイ」×2
     73J1式試製ビームサーベル
     PS-03T ビームシールド
     71R式改電磁加農砲×2
     (クスィフィアレスレール砲改)
     71R式改高エネルギービーム砲×2
     (バラエーナ改・プラズマ収束ビーム砲)
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