【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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突貫作業だから、誤字多かったらすみません。


銃口の行方

 

 

 デュランダルも工廠(こうしょう)で話を続ける気はなかったらしく、彼なりに簡単にデスティニーとジャスティスの紹介を済ましたあとは、全員とも近くにある宿泊施設…ザフト軍保養施設に場所を移していた。

 

 デュランダルやラクス・クラインのような要人も使用しているというだけあり、この街でも一際豪勢(ごうせい)な場所だ。テラスから見える景色が美しい。

 

「艦長! それにルナまで」

 

 そこには既に先客が来ていた。

 出されたカップに口をつけるタリアとこちらを見て手を挙げるルナマリア。アスラン達が移動するまでの間にこちらに来ていたのだろう。

 

「どこ行ってたのかと思ったら…」

「悪かったわね。だって、まさか議長に呼ばれるなんて思いもしなかったんだもの。じゃなきゃメイリンと街へ行ったりしないわよ」

 

 この様子を見るに出頭命令の際にシンは相当ルナマリアを探したのだろう。

 どこか非難(ひなん)するような視線を向けるシンに対して、彼女も自覚があるのか、どこか罰が悪そうにそっぽを向いていた。

 

 そんな会話を微笑ましく思いつつ、アスランやハイネも席へ着く。正面にいるのがデュランダルとタリアであり、アスランとハイネのフェイス二人が左、シンやレイ、ルナマリアが右側の席だ。

 

「さて、色々とまわりくどいことをしてすまなかった。口でいうよりも見てもらった方が早いと思ったものだからね」

「議長…次からは事前にお伝えくださいな」

「ハハ、気をつけよう。タリア」

 

 ため息混じりにタリアが苦言(くげん)を申したが、デュランダルも穏やかな笑みを崩さない。アスランは、この二人には単なる上司と部下という関係ではない何かを感じていた。

 

 その後、話は現在の戦況(せんきょう)に向かう。

 

「ともかく今、世界中が実に複雑な状況でね」

 

 デュランダルが嘆息(たんそく)まじりに言うと、タリアが誰もが気になっていたことをたずねる。

 

「宇宙の方は今、どうなっていますの? 月の連合軍などは」

「あいかわらずだよ」

 

 デュランダルはうんざりしたように答える。

 

「時折、小規模な戦闘はあるが…まぁ、それだけだ。()()の存在が良くも悪くも抑止となっているのだろう」

 

 それを聞いてシンも少しだけ安堵(あんど)する。

 少なくともプラント本国に危険がないというだけで、本国に家族のいるルナマリアやヨウラン達には何よりもいい知らせになる。

 

「–––––そして地上は地上で、何がどうなっているのか、さっぱり分からん。この辺りの都市のように連合に反抗し、我々に助けを求めてくる地域もあるし…」

 

 デュランダルは小さく肩をすくめながら、続ける。

 

「一体何をやっているのかね、我々は…」

「停戦、終戦に向けての動きはありませんの?」

 

 タリアがたずねると、デュランダルは苦笑して彼女に目をやる。

 

「そうだね…実のところ、ないわけでもない」

「えっ!?」

 

 意外な言葉にシンはつい声を上げたが、全員がその事実に驚いていた。停戦、終戦を望みつつも、軍人として最前線で戦う彼等にとっては夢のまた夢のようなことに思えたからだ。

 

「君たちは連合といえば前大戦のブルーコスモスなどを思い浮かべるかもしれないが、実際のところ戦争などしない方がいいと思うのは彼等も同じだ…」

 

 デュランダルが静かに席を立った。彼はゆっくりと手すりに歩み寄りながら、語り始める。

 

「そうだな…私が言うまでもないが、君たちもソレスタルビーイングの存在によって、既に戦争が戦争として成り立っていないのはわかるだろう?」

 

 その言葉にシンは彼等の存在を思い出す。

 圧倒的な力で戦闘に介入し、力づくで争いそのものを破壊してしまう…そんな存在。

 

「君たちも知っている通り、連合は開戦に伴っていきなり核兵器をプラントに撃ち込み、地上でも次々と新たな戦力を投入しているわけだが、その尽くが失敗に終わっている。彼等のお陰でね」

 

 ソレスタルビーイング。

 彼等の理念は極端(きょくたん)で単純なものであり、シンにとって心の底から望んでいるものだ。

 

 ––––––戦争の根絶。

 

 ならば、今この状況は…少なくとも宇宙においては、彼等の目的は達成しつつあるということなのではないか…? 力で以て力を制すという彼等の考えは本当は正しいのではないだろうか。

 

 複雑な現実に対して思い悩むシンをよそに、デュランダルは(かわ)いたような口調で続けた。

 

「確かに始めは我々への敵意から始まった戦争かもしれないが、この状況では戦争などしようがないだろう」

 

 ようは警察のようなものだ。

 いくら連合が戦争をしようと思ってザフトに戦闘を仕掛(しか)けても、それはすぐにソレスタルビーイングの耳に届き、ガンダムによる武力介入で全てが無に帰すことになる。

 

「数が自慢の連合といっても、それは無限ではない。このまま戦いを続ければいずれ限界が来るのは間違いない」

 

 兵器は無限に近い数を作れるかもしれないが、人員には限界がある。仮にソレスタルビーイングを退(しりぞ)けることができたとしても、そんな状態でザフトと争おうとするのは難しい。

 

 だからこそ、そこが停戦の落としどころだとデュランダルは言っているのだ。

 

「時間頼り、他人任せだと笑ってくれて構わんよ。しかし、この情勢を前に今の我々にできることは遥かに少ないのだよ」

「議長…」

「連合が攻めてくる以上、我々は身を守るために銃を取ることしかできない。だが、連合の強大な物量は勿論、ソレスタルビーイングのガンダムの前に我々はあまりにも無力だ」

 

 (なげ)くかのような議長の言葉にシンは心の中で同意した。

 インパルスやセイバー、グフといった新型の機体が配備された新造艦のミネルバでもガンダムには太刀打(たちう)ちできていない。撤退・時間稼ぎが精一杯であり、それでは守るものも守れない。

 

 何かを守るためには力が必要なのだ。ソレスタルビーイングのガンダムのように。

 力なき正義など、世界には通じない。あの時のオーブのように…!

 

「だから議長は、あの機体を私たちに…?」

 

 デュランダルの言葉の余韻(よいん)がまだ残っているところへ、アスランの低い声が入り込む。その目には不安と小さな不信感が宿っていた。

 

 "デスティニー"と"インフィニットジャスティス"

 

 対ガンダム戦の切り札であり、ザフトの最新鋭のモビルスーツ。それがシンとアスランが受領することになった機体である。

 

「それはつまり…これからソレスタルビーイングと戦っていくために……ということですか?」

 

 ジャスティス。

 その機体はアスランにとっては頼れる機体であると同時に、復讐に取り()かれた亡き父、パトリック・ザラが開発を推し進めた禁忌(きんき)の機体でもある。

 

 それが再び目の前に現れたことにアスランはシン達とは全く別の意味を(さと)っていた。

 

 前大戦の折、フリーダムとジャスティスのデータが流出したことにより地球軍は核を発射し、ザフトは"ジェネシス"を撃ち返すという悲劇の連鎖が繰り広げれられることになった。

 

 例えソレスタルビーイングを退(しりぞ)けられたとしても、アスランはそれが再び起きるのではないかと危惧(きぐ)していたのだ。

 

「ふむ…そうだな。アスラン、君の思うところも分かる。君の不安もね」

 

 だが、デュランダルはそんなアスランの内心を見透かしたように微笑んだ。

 それから鋭い表情でアスランの瞳を見つめ返す。

 

「だが、彼等はテロリストだ。以前、オーブの姫が言ったことを覚えているかね?」

 

 強過ぎる力はまた争いを生む、そう言ったのはカガリだ。

 

 デュランダルは冷ややかに言い放つ。

 

「ザフト軍最高責任者として、私はあんな訳のわからない強大な力を、ただ野放しにしておくことはできない」

 

 そう、強大な力だ。

 ザフト軍も連合軍も敵わない最強の力を持つモビルスーツを運用するのは戦争根絶を(かか)げるテロリスト。確かに彼等をそのままにしておくことはできないだろう。

 

「しかし、彼等の目的は戦争の根絶…こちらが銃を取らなければ–––––」

「何故彼等の目的が戦争根絶などと信じられる?」

 

 デュランダルがピシャリとアスランの言葉を(さえ)った。彼らしくない言葉の強さにアスランだけでなくシン達も呆気にとられる。

 

「戦争根絶など今までの人類史の中で多くの人間が唱えてきたことだ。しかし、そのいずれも達成することなく人類は新たなる戦争を引き起こしている。それをどう解決しようというのかね、彼等は」

「議長…いえ、それは」

「争いへ武力介入をしたところでまた新たな争いを生むことになる。それが分からない彼等ではあるまい」

 

 だが、それに気付かずにデュランダルは少し熱の入った言葉を続けた。そこにはアスランにとって初めてのデュランダルの人間らしい感情が垣間見えた。

 

「私は彼等が戦争根絶ではない何かを狙っていると思っている。そもこの武力介入も彼等にとっては–––––」

「議長!」

 

 表情に困惑を浮かべるシンやルナマリアをはばかるように、タリアが声をあげる。まるで父親が、子ども達の前ですべきでない話をした時の母親のように。

 

「…む、すまないタリア。少し熱くなってしまった」

「らしくないですよ、議長」

「ハハ、最近私も色々あってね。彼等の前だということを忘れていたようだ」

 

 まさか、と言った表情で謝罪するデュランダル。

 そこにはいつもの政治家らしい雰囲気など全く感じさせない、一人の男性の姿があった。

 

「考え込んでしまうのは私の悪い癖でね。彼等については私にとっても悩みの種なのだよ」

 

 背後でタリアが呆れたように溜め息を吐いた。まるで夫婦のような会話にシン達が別の意味で呆気に取られる。

 

 デュランダルは再びその顔に議長としての仮面を貼り付けると、アスランに向き直った。

 

「アスラン、確かに君には思うところもあるだろうが、どうか私を信じて受け入れてほしい。あれだけの力、リスクはあるが君ならばその使い道を理解していると信じているよ」

「…はい」

 

 ジャスティスについて思うところのあったアスランであったが、先ほどのデュランダルの言葉を聞き、その関心はソレスタルビーイングの目的へと移り変わっていた。

 

「これからの情勢、ますますその混乱は増していくだろう。何が起きるか分からない状況だ。しかし、どうか頑張ってほしい。そのために私にできることならば、なんでもする予定だ」

 

 その言葉にシンは身体が(ふる)い立つのを感じた。

 それはかつてインパルスのパイロットに選ばれた時と同じ。誰かに認められている、応援されているという事実が彼に力を与えていたのだ。

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 デュランダルとの会談を終えた後。

 なんとシンとルナマリア、アスランは、議長の勧めでこの施設に一泊泊まっていくことになった。

 

 アスランは辞退しようとしたのだが、彼を立てたレイの発言によってそれもできなくなった。謙虚(けんきょ)なレイの言葉を、アスランもこのときばかりは恨んだ。

 

 だが、それも仕方ないと思い、デュランダルに先程の会話の続きを願おうとしたそのとき。

 

「アスラ〜ン!」

 

 こちらに走ってくる少女の姿を見た途端、アスランは硬直(こうちょく)した。ラクス––––のフリをしたミーア・キャンベルだ。

 

「ミ……」

 

 どうしたらいいか分からず立ちつくすアスランに、ミーアは真っ直ぐに()け寄って抱きついた。流石にこの場でミーアの名を出すわけにもいかず、なんとか彼女の身体を押し戻す。

 

「ホテルにおいでと聞いて、急いで戻ってまいりましたのよ! 今日のステージは? 見てくださいました?」

 

 声を弾ませて、いかにも嬉しそうに話しかけてくるミーアに、アスランはぎくしゃくと頷く。

 

「え…ああ…まぁ」

「本当に!? どうでした?」

 

 なんとか自然に振る舞いたいが、じっとこちらを見つめるシンやルナマリアの視線が気になってどうしようもない。アスランの困惑を(あお)るように、デュランダルがにこやかに声をかける。

 

「彼等にも、今日はここで泊まってゆくように言ったところです。どうぞ久しぶりに、お二人で食事でもなさってもらおうかと…」

「議長!?」

 

 議長を見れば、隣のタリアと共にニコニコと笑っている。ミーアのことを知っている癖に…酷い裏切りを受けた気分だ。

 

「しかし、ラクス。その前に少しアスランとお話しさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「はい…?」

「はい! 私も議長とお話ししたいことがありまして、いい機会かと」

 

 ミーアの不思議そうな表情をよそに、アスランは真っ先に彼に従った。ミーアから離れたかったのもあるが、彼と話すにはいい機会だったからだ。

 

 

 

 

 いつの間にか日が落ち、藍色(あいいろ)の闇が下りた庭園に、デュランダルはアスランを連れ出した。

 

「実はラクス…いや、本物のラクス・クラインのことなのだがね」

「ラクス?」

「君もオーブのことは聞いているだろう?」

 

 アスランはハッと表情を変えた。

 

「…はい」

 

 オーブでクーデターが起きた。

 まさかと思ったが、自分がいない間にことはかなり進んでしまっていたようだ。カガリのピンチに、何もできないでいる自分の無力さに拳を強く握った。

 

「彼女はオーブにいる…いや、いたというべきなのかな?」

「ええ。今、ラクスがあの国にいるとは考えにくいです」

 

 大西洋連邦と手を結んだオーブの中では、ラクスは危険だ。フリーダムが現れたというのを聞くに、キラはオーブにいるのだろうが、ラクスはバルトフェルドらが避難させたはず。

 

「そうか…」

「あの議長、ラクスのことは…」

「ああ、我々プラントも確認していない。今、どこで何をしているのやら」

 

 もしかすると本当にオーブに潜んでいるということも考えられる。だとすると、敵国であるプラントのトップであるデュランダルやアスランでは彼女に会いにいくこともできないだろう。

 

「こんな情勢のときだ。彼女が戻ってきてくれれば…と思わざるを得んよ」

「ええ。しかし、それではミーアは?」

 

 視線が退屈そうにベンチで待つ、ラクスと瓜二つの容姿の少女に移る。本物のラクスが戻ってくるとしたら、彼女はどうなる?

 

「ああ、ラクス…ミーアも頑張ってくれてるのだがね。この情勢では彼女に求められるのはアイドルではなく、かつての彼女…ということになりかねない」

「それは…」

 

 それは難しいと言わざるを得ないだろう。

 確かにミーアはラクスそっくりだし、歌もパフォーマンスも彼女と同等以上だ。

 

 だが、二年前のラクスのように立ち上がれるかと言ったら、立ち上がれない。良くも悪くも彼女は普通の少女なのだ。

 

「彼女がこれ以上追い込まれる前に、本物のラクスには戻ってきてもらいたいものだ。私も彼女を支援…いや、この議長の座を譲るくらいの覚悟はできているからね」

「いえ議長、それは––––!」

 

 そのとき、アスランとデュランダルの間に、赤いハロが飛び込んできた。

 

〈ハロー、ハロー、グッバーイ!〉

 

 待ちくたびれたミーアが向かわしたものだろう。デュランダルが苦笑した。

 

「いや、すまなかったね、引き留めて。だが、私自身も二年前はクライン派…そう呼ばれる陣営に属していた身だ。彼女の影響力の大きさは理解している。もし今後、彼女達から君の元に連絡が入った時は、私にも教えてくれたまえ」

 

 確かに、議長はラクスにちゃんと事情を説明する必要があるだろう。そして、力を貸してもらいたい。だから、彼はラクスの行方が知りたいのだ。

 

「はい、分かりました。議長の方も何か分かったら、お願いします」

「ああ、分かった。そうしよう」

 

 議長がいつもの微笑みを浮かべて、その場を去る。

 途端にベンチから立つように駆け寄ってくるミーアをぼんやりと見ながら、アスランはまた、友と愛する人たちのことを思った。

 

 ––––––キラもラクスも、カガリも放っておいて、いったい自分は何をしているのか、と。

 

 

 





>デュランダル
真っ黒な議長から灰色な議長にチェーンジ!!
例のプランのことを考えなくて良くなったので、50%くらい胡散臭さが抜けたよ。

>デスティニー
パイロットは原作通りシン。
これはデスティニーの武装構成がインパルスの各シルエットを統合したものだから。

>アスラン
俺は一体何をやっているのか…(迷いマイマイ)

>ミーア
カワイイね。それだけ。
放送当時は議長の駒としてモビルスーツ乗ってくるかと疑ってました。
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