【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

38 / 90

先日、念願の免許を取りました。
年齢的に乗る機会は少ないですが、安全運転を心がけたいですね。



リユニオン

 

 

 先月が初陣とは思えないほどの貫禄(かんろく)を身につけ、ディアキアのザフト軍基地に入港したミネルバ。その格納庫(ハンガー)では、ミネルバの整備士達が(せわ)しなく艦載モビルスーツのチェック作業に追われていた。

 

「注文通り、センサーの帯域を変えてみた。確認してみてくれ」

 

 整備主任であるマッド・エイブスがレイに言い、レイが身軽な動作でリフトに飛び乗り、コックピットに向かう。その機体は見慣れたザクファントムではなく、ディアクティブモードになっているセイバーだ。

 

「ザラ隊長とお前では操縦に違いがあるからな。OS以外に変更が必要になったらいつでも伝えてくれ」

 

 エイブスの言葉に小さく頷き、レイはキーボードを取り出して機体設定(OS)を書き換えていく。

 

 その頃、セイバーやグフの隣に並ぶ見慣れないモビルスーツの前ではヨウランとヴィーノが楽しげに会話しながらキーボードを操作していた。

 

「–––––でも、すげえよな。この新型!」

「インフィニットジャスティスとデスティニーだっけか? よくやるよ、インパルスやセイバーも十分に新型だったのにさ」

 

 見慣れない機体…インフィニットジャスティスとデスティニーを前にヨウラン達のテンションも高くなっていた。整備士だからこそ分かる、その機体性能の高さゆえにだ。

 

「ジャスティスがすげーのはなんとなくわかるけどよ、デスティニーも中々だよな」

「単純な機体スペックだけでもインパルスの倍以上なんだろ? こんなのに勝てるモビルスーツなんてあるの?」

「そりゃ仮想敵はガンダムなんだから、性能は高いに越したことはないってことだろ」

 

 どちらかというと口の方がよく動いて、手の方はお留守番になっているようだが、現在は休暇なためにエイブスもゲンコツを落とすことはなかった。

 

 新たにミネルバに配備されることになったジャスティスとデスティニーは、最低限の整備を済まして後は機体の主による調整を待つ状態となっている。

 

「で、ジャスティスは勿論ザラ隊長が乗るんだろうけど…デスティニーは誰が乗るんだっけ?」

「おいおい、聞いてないのかよ…」

「仕方ないだろ。あの時はラクス・クラインのライブ見に外出たたんだから」

 

 ヨウランもそうだろ? というヴィーノの言葉にヨウランは喉を詰まらせた。

 ラクス・クラインの生ライブということで艦から飛び出したはいいものの、肝心(かんじん)の仕事が中途半端だったため、こめかみをひくつかせたエイブスにしょっぴかれたのは苦い思い出だ。

 

「ああもう、パイロットはシンだよ、シン!」

「シン?…ハイネ隊長じゃないの?」

 

 ヤケクソとばかりに放たれたヨウランの言葉に疑問を浮かべるヴィーノ。彼の中ではデスティニーのパイロットはハイネを想定していたようだ。

 

「知らね。エイブス主任が言うには、デュランダル議長直々にこれはシン・アスカ専用機だって運ばれてきたものらしい」

「え、議長直々!? それってすごいじゃん!」

「まぁ、最近のシンの活躍とデスティニーの武装構成を考えれば…」

 

 機体データを閲覧(えつらん)したが、デスティニーの機体コンセプトはインパルスの各シルエットの統合のようだ。それを()まえれば、インパルスを使いこなしているシン以上に相応(ふさわ)しいパイロットはいないだろう、とヨウランは考えた。

 

「あ、じゃあインパルスは?」

「そっちはルナマリアが乗るんだとよ、ほら」

 

 二人が視線をチラリと向ければ、コアスプレンダーのコックピット内にて、技術者からインパルスについての機体運用説明を受けるルナマリアと付き添いのメイリンの姿がある。

 

「へぇ…じゃ、ハイネ隊長は?」

「あの人はグフのままだとよ。本国に新型を発注しているらしいが、まだ未完成らしい」

「えぇー」

「グフも十分最新鋭の機体だろ。というか、いつからお前そんなにヴェステンフルス隊長と仲良くなったんだよ」

「へへへ…この間、ラクス・クラインのライブでね」

 

 用が済んだ二人はわいわいと盛り上がりながら格納庫(ハンガー)を後にする。

 

「そういえば、シンは?」

「あいつも休暇。ザラ隊長はラクス・クラインとデート…らしいぜ」

「え、何それ!?」

 

 その後ろ姿を主を待つデスティニーが静かに見送った。

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 かつて"ジャスティス"を駆った伝説の英雄であり、現在はザフト軍"フェイス"でミネルバのモビルスーツ部隊の指揮官でもある男、アスラン・ザラは生来の苦労人(くろうにん)である。

 

 それは彼が非常に人当たりがよく、面倒見が良いこととか、その(くせ)に言葉が足りなくて余計な誤解を生むとか、一人で何でも抱えすぎるとか、彼の持つ性格に由来しているのは間違いない。

 

 例えば月での幼年学校での幼少期。

 当時から天才と言われていたアスランは"優秀な癖にいい加減"な親友のキラ・ヤマトの面倒(めんどう)を自発的にみていた。それは彼等の母親同士が親友であったこともあるが、個人的に気が合う相手だったからということもある。

 だから、これはいい。問題は次だ。

 

 時は流れてザフトのアカデミー時代。

 血のバレンタインの悲劇を見て、何かをせねばとザフトに入隊したアスランに待っていたのは、優等生としての待遇(たいぐう)と厄介なライバル達の存在であった。

 勿論成績がある以上、常に成績トップのアスランを目の敵にする人間がいるのは当然のことであったが、その中でもアスランにとって非常に手を焼く人間が一人いた。

 

 それがイザーク・ジュールだ。

 同じくプラント最高評議会の親を持つ彼は、何かとアスランに突っかかってきた。しかも、なまじ優秀なものだからアスランにとっても無視できるものではない。

 おまけに何かとアスランを敵視する彼は、アスランが隊を率いると同時にキリキリと嫌味の応酬を浴びせてくる始末。まさに手に負えなかった。

 

 だが、アスラン自身も彼を意識していた節はあったし、皮肉にも戦争を通じて彼とは分かりあうことはできた。だから、問題はない…はずだ。

 

 

 そして、問題は二年後。

 様々な理由があってザフトに復隊(ふくたい)した彼を待っていたのは、個性豊かな後輩達と中々本心を読めない議長、そして頭痛の種である歌姫の存在。特にシン・アスカとミーア・キャンベル。この二人が最近のアスランを悩ませていた。

 

 シンはどこかイザークを思い出させる苛烈(かれつ)な性格をしているため、やはりアスランにとっては相性の悪い相手だ。

 しかも、歳下といえば、温和(おんわ)で穏やかなニコル・アマルフィくらいしか関わってこなかったアスランにとって、どうやって接すればいいかが難しいところにいる後輩なのだ。

 

 対してミーアは、見てわかるようにラクス・クラインを名乗る偽物である。容姿も歌もそっくりなので皆気づいていないのだろう。…いや、本物のラクスを知っていればすぐに気づけるほど性格に差があるのだが、アイドルという偶像ゆえに一般の人間では気づけようもない。

 

 そも、ラクス・クラインとアスラン・ザラが婚約関係にあったことは有名だが、二年前にそれが自然消滅したことを知っている人間はかなり少ない。

 ヨウランとヴィーノなんかは露骨に婚約者だとヒソヒソ話をして(うらや)んでいたし、何故かメイリンとルナマリアのホーク姉妹はミーアとアスランが一緒にいると機嫌が悪くなる。

 

 二年前にラクスとの諸々の関係は終わったと思っているアスランにとって、ミーアは過去のラクス・クラインの虚像であり、それ故にザフトに所属する以上は厄介な存在であった。

 

 そんなミーアだが、本物のラクスと似ているところもある。

 それは、常に彼女の方からアスランを引っ掻き回しにくるということだ。

 

「その…やはり基地へ戻った方がいいんじゃないのか?」

 

 潮風(しおかぜ)の吹き込むディオキアの街にて、アスランは遠慮がちにラクス…いや、ミーアに問いかけた。二人きりということで敬語は外している。何よりミーアがそう望んだのだ。

 

「確かにここはザフトの管理下にある街だが、安全というわけじゃないぞ」

 

 きっかけは朝の騒動(そうどう)にある。

 久しぶりにしっかりしたベッドで眠れたかと思えば、朝起きると隣にはミーアが寝ていたり、それを運悪くルナマリアに目撃されたりとだ。

 不幸中の幸いなのは、ラクスとアスランの婚約関係が一部のミネルバクルーに(いま)だに信じ込まれており、ルナマリアもその一人であったことだ。

 

 だが、その一件以降ルナマリアの機嫌はただ下がりであり、アスランに対して(とげ)のある言葉遣いをするように…。まるでシンがもう一人増えたかのようだとアスランは胃が痛くなった。

 

「でもアスラン、いっつも顰めっ面ばかりしてるんですもの。少しは気分転換した方がいいに決まってるわ!」

「それは…そうだが」

 

 その原因は君にある…とは言えない。

 悪いのは状況と巡り合わせであり、ミーアは本当に善意で行動しているのだろう。ラクス・クラインを演じていることも含めて…。

 

「ほら、ちゃんと変装もしてきたのよ!」

 

 自信満々と言った表情のミーアだが、ちょっとフードを(かぶ)りメガネをかけたからといって、ラクス・クラインの姿を隠し切れているとは思い(がた)い。

 一般人相手ならともかく、アスランのように軍で訓練を受けた相手には少し観察すれば見破られる程度のものだ。流石にこの街は安全だと思うが、プラントではない以上絶対はないだろう。

 

「それにちゃんと私を守ってくれるでしょ? アスランは!」

 

 フードの下から(のぞ)く彼女の顔は、いつもと違って見える。それは今の彼女がラクス・クラインではなく、ミーア・キャンベルとして振る舞うことが許されているからだ。

 

「あ…あぁ」

 

 ラクスとしてのミーアと接する分には疲れるが、ただのミーアと接する分には特に何もない。むしろこちらの方がいいに決まっている。

 

 自分を偽り続ければ、きっとどこかで限界が来る。アスランがアレックス・ディノでは何もできなかったように。

 

「…まぁ、こういうのも悪くないか」

 

 本物のラクスがプラントに戻るようなことがあれば、ミーアもこうして普通の女の子に戻ることができるのだろうか。

 

「(ラクス…君は今、どこにいる?)」

 

 アスランは居場所の分からない、かつての婚約者へ思いを()せる。

 キラが側にいるなら大丈夫だと思っていたが、それももういない。おそらくバルトフェルドや旧クライン派の人間と行動を共にしているのだろうが、そうなれば今のアスランに彼女を探し出す術はない。

 

「アスラーン、こっちに面白そうなお店があるわよ!」

 

 顔を上げると、手を振りながらアスランを呼ぶミーアの姿が映った。どうやら考え事をしすぎて、歩くスピードが遅れていたらしい。気を引き締めなければとアスランは自身を()じた。

 

「ミーア、声だけは隠せないんだからそう大声を出すな。誰かに気づかれたら––––ん?」

 

 危ないじゃないか––––と続けようとして、アスランの視界に何か気になる物が映り込んだ。それは人混みに紛れた一つの人影であり、より正しく言えばカメラのレンズが反射した光だった。

 

「あれは…まずい!」

「きゃっ!? ちょっと、アスラン!?」

 

 アスランはミーアの手を取って抱き込むと、彼女を連れて急いでその場を後にする。ミーアは驚きと困惑の声を上げているだろうが、それはこの際仕方(しきた)がない。

 

 あれはアスランがオーブに復隊する前、プラントへ行った時のことだ。イザークとディアッカに案内され、ニコルの墓参りに行った際、ディアッカがこんなことを言っていた。

 

 ––––アイツ、戦場カメラマンになるって聞かなくてさ。それで揉めて揉めて…そのまま、さ。

 ––––フンッ、いつまで女のことでメソメソしているディアッカ! 情けない!

 ––––イザーク! 女のことでお前にだけは言われたくねえっての!

 

 彼女はミリアリア・ハウ。

 キラの友人であり、ディアッカと一時的に付き合っていた女性の名だ。アスランとも深い因縁のようなものがあり、アスランはミリアリアのことをよく覚えていた。

 

「全く、なんてタイミングだ」

 

 戦場カメラマンとなって世界を飛び回っているとは聞いていたが、まさかディアキアにも来ていたとは。世界は(せま)いというか何というか…だ。

 

 幸いこちらには気づいていなかったようだ。

 本物のラクスを知る彼女にミーアを知られるのはマズイ。

 いや、ミーアにこんなことは辞めさせるべきなのは分かっているが、それにもタイミングがある。バレれば問題となるのは議長だけはない。

 

 何せ議長が自軍すら騙して(おこな)っている所業だ。

 きっと議長はそんなことをしないと信じてはいるが、アークエンジェルから降り、ただの民間人になったミリアリアが真実を知れば無事で済むとは思えない。

 

「ちょっとアスラン!」

「あ…すまない」

 

 人気(ひとけ)の薄い通りへ出た後、アスランは謝罪混じりにミーアを解放した。

 そんなアスランを不審そうにミーアが見つめる。

 

「一体、どうしたのよ?」

「…いや、ちょっと昔の知り合いがいてな」

 

 知り合いといっても、自分は彼女の恋人を殺した人間である。親友(キラ)の友人であり、友人(ディアッカ)の元恋人。そんな複雑な関係だ。

 

 が、それを馬鹿正直に言うわけにもいかず、アスランは若干言葉を(にご)して伝えた。

 しかし、ミーアはその懐疑的な表情を崩すことなくたずねる。

 

「…ねぇ、もしかして、それって女の人?」

「え? あぁ、そうだけど」

「…へぇ」

 

 それがどうかしたのか?と、軽い気持ちで答えたアスランだったが、彼女の表情が見る見るうちに不機嫌そうに歪んでいくのを見て、己の語弊(ごへい)を招く発言を悟った。

 

「いや、ちょっと待てミーア。彼女は…!」

「ふーん、ラクス様ともあろうお方がありながら…へぇ」

「だからラクスもだなっ」

 

 必死に弁明しながらも、アスランの脳裏では今朝(けさ)もこんな会話をルナマリアとしていたな…と早朝の記憶を思い出していた。

 

 ミリアリアは論外であり、ラクスに至ってももう違う。何とか理解してもらおうと四苦八苦(しくはっく)するアスランだが、ミーアはツーンとした表情を崩さない。

 

「–––––あら、こんなところでカップルの喧嘩かしら?」

 

 そんな時、アスランの背に声がかけられた。女性の声だ。どこか愉悦混じりなその声にアスランは少しの苛立ち混じりに振り向く––––その時。

 

「なんだ、冷やかしなら帰ってくれ…ない……か?」

 

 そこにいたのは、白銀に煌めく銀髪が特徴的な少女だ。

 シックな装いに身を包んだ彼女を見て、アスランの脳裏にノイズが走る。

 

『きっとまた会えるわ。また、3人で…きっと』

 

「–––––()()()?」

 

 アスランの口からその名が、意識しないうちにこぼれ落ちる。その声に、相手の瞳が揺れるのを感じ取れた。

 

 意思の強そうな銀の瞳が、アスランの姿を映して見開かれていた。

 

「––––––嘘、まさかアスラン?」

 

 その声もあの頃と変わっていない。

 暗い思い出と共に記憶の奥底に封じ込められていた少女が成長した姿で目の前にいる。

 

 その名をリリベット・ホワイト。

 アスランとキラが月の幼年学校に通っていた際の先輩であり、ナチュラルでありながら常にアスランの壁であり続けた()()()()()()()

 

 実に6年ぶりとなる再会に、二人の間は時間が止まったように凍りついていた。

 

 

 

 

 





>アスラン
元カノ(ラクス)のそっくりさん(ミーア)と寝て、それが原因で後輩の女の子(ルナマリア・メイリン)が不機嫌になって、その後セカンド幼馴染(リリベット)と再会するというラノベ主人公。
なお、今カノ(カガリ)は放置したまま出張している模様。

>ミーア
終盤空気。
自分含めてもアスランの女性関係の広さにビックリ。

>リリベット・ホワイト
フブキさんの本名判明。
実はアスランやキラとも知り合いでした。詳細については次回。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。