【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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オリキャラ、オリ設定による原作キャラの経歴の改変があるので、そういうのが苦手な方はブラウザバックをお願いします。



リユニオンⅡ

 

 

 幼少期、アスランは両親の(すす)めもあって月面都市コペルニクスにある幼年学校に3歳から13歳までの10年の間通っていた。

 

 その為、プラントで働く両親と共に過ごした思い出は限りなく少ない。

 父親であるパトリックは地球からのプラント独立のためにシーゲル・クラインと共に尽力(じんりょく)していたし、母親であるレノアは"プラントの食糧問題の改善"のためにその能力をフルに使って働いていたからだ。

 

 寂しくなかったと言えばそれは嘘になるが、幼なくとも既にある程度完成された頭脳と早熟(そうじゅく)した心を持っていたアスランは、プラントの為に働く両親を(ほこ)りに思い、自分の中にある"甘え"を徹底的に押し留めてきた。

 

 そんなアスランにとって、転機となったのが4歳の時に出会った少年、キラ・ヤマトだ。キラの母であるカリダとアスランの母親レノアが親友同士だったということもあり、2人は何かと行動を共にすることが増えた。

 家を留守にしがちなレノアに代わってアスランの面倒を見てくれたのはカリダたちヤマト家であり、アスランにとっては第2の家族のような存在となっていた。

 

 キラはまさに年相応の子供であり、早熟のアスランからすれば手のかかる弟のようなものだった。

 だというのにその能力だけはアスランにも匹敵(ひってき)するほど高かったものだから、2人は兄弟のようでありながら、切磋琢磨するライバルであり、心から通じ合える親友になれたのだ。

 

 

 

 

 それから3年後、2人が7歳の時のことだ。

 コーディネーターの中でも一際(ひい)でているアスランとキラは学校内でもそれなりに有名となり、飛び級と称して多学年の授業に参加することが増えた。

 当時のコペルニクスにはナチュラルも多くいたため、歳下でありながら自分よりも高い能力を持つ2人を(ねた)むものも多くいたが、特に嫌がらせだとか、排斥(はいせき)運動とか、そのようなものは決して起きなかった。

 

 何せ、クラスをまとめるリーダーがそれを許さなかったからだ。

 

 リリベット・ホワイト。

 アスランたちよりも2つ年上であり、地球からやってきた留学生。ナチュラルでありながら、そのトップクラスの能力でクラスのリーダーに君臨していた白銀の少女。

 彼女は地球出身のナチュラルであっても、コーディネーターにそこまで偏見(へんけん)の目を持たない珍しい人物であり、飛び級で授業を共にすることの多いキラとアスランのことも弟のように面倒を見てくれていた。

 

 それに、何より彼女は優秀だった。

 2年離れているとはいえ、その成績は両親に最高のコーディネートを施されたアスランを上回るものである。

 素直に(なつ)いたキラとは対照的にアスランは彼女に少しの対抗心を抱きながらも、初めての自分と同格以上の歳上の友人ということでその存在は年々大きなものとなっていた。

 

 その後、リリベットとの付き合いは、キラとアスランが機械工学を専攻してからも続いた。何せ2人の進む先には、常に彼女が『先輩』として存在していたからだ。

 

 きっかけは、アスランが作った"トリィ"という鳥型ロボットと"ハロ"という小型ロボットの存在である。

 

 アスランとしては趣味で偶然に作成した物なのだが、キラもリリベットもそれらを大層気に入ったようであり、アスランは日頃お世話になっているという意味も込めて、キラには"トリィ"を、リリベットには"ハロ"をプレゼントしたのだ。

 

 それがきっかけでリリベットも機械工学に興味を持ったようで、アスランたちが機械工学を選択した時には、ハロに更なる改良を加えマルチタスクに対応するように改造していたほどだ。

 

 

 

 

 しかし、そんな3人の関係は今から6年前、アスランが12歳の頃に終わりを告げた。

 

『お父さんもお母さんも、ちょっと気が早すぎると思うのよね』

 

 別れの日、彼女は14歳とは思えない大人びた口調で言った。雪のような白銀の髪、どこか勝気そうでいて、大人っぽくなってきた顔立ち、()き通るような瞳が印象的だったのを覚えている。

 

『大西洋連邦か…地球に帰るのは久しぶりだけどさ』

 

 理由は彼女が地球にある大学に進学することが決定したことだ。両親が決定したことらしく、明らかな奇才(きさい)を持つリリベットをさらにいい学校に入れようという考えなのだという。

 

 プラントにある大学に来ればいいじゃないか、とアスランは言った。それはきっと、あまりにもリリベットが優秀すぎる故にナチュラルということを忘れていたからだ。

 

『気持ちは嬉しいけど…私、ナチュラルだし』

 

 当時は今ほど厳正されてはいなかったけれど、ナチュラルがプラントに入国することなんて、やはり禁止されていた。アスランは、それとなくレノアに尋ねてみたが、母は悲しい顔で首を横に張るだけだった。

 

 キラは泣いていたし、アスランも今だから言えるが、こっそり自室で泣いていた。

 

 何せ、その理屈で言うのなら、コーディネーターである2人とナチュラルであるリリベットがまた会える確率は著しく低いものだったからだ。

 

『大丈夫。地球とプラントが戦争になんてならなければ、月でも地球でも…それこそプラントでも会えるわ』

 

 うん…とキラは頷いていたが、アスランはそれが難しいんじゃないかとそれとなく勘付(かんず)いていた。たまに会う父から、それはもう大西洋連邦のめちゃくちゃな言い分に対して漏らす愚痴(ぐち)を聞いていたから。

 

『もう、キラもクヨクヨしない! 今生の別れってわけでもないんだから』

 

 リリベットは(うつむ)いたキラを励ますように言った。

 

『きっとまた会えるわ。また、3人で…きっとね!』

 

 その言葉に込められた希望が、少しだけキラとアスランを慰めてくれた。やっと目を上げて見ると彼女は綺麗(きれい)な銀の目を細めて笑った。

 

 –––––きっとまた、会える。

 

 そう信じて別れた。

 だから、キラもアスランもまた会えると信じて2人きりの時を過ごした。

 

 あの"ニュース"を聞くまでは–––––。

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 潮の匂いが混ざる海風が吹く街、ディオキア。

 その一角に、モダンな雰囲気を(かも)し出す一件のカフェバーがあった。内装も外装も、今どき(めずら)しく、全て天然の木材で(そろ)えられている。

 照明の光量は絞られ、()茶色のニス塗りが(ほどこ)された店構えは、敷居(しきい)の高そうな(おもむき)があった。

 

 木製の扉を開け、アスランは店内に足を踏み入れた

 

 そのまま数歩足を進めると、サングラスを外して店内を見渡した。サングラスをしていては薄暗(すうぐら)い店の中が殆ど見えないからだ。ほどなく、アスランは待ち合わせの相手を見つけた。

 

 アスランは白銀の髪を持つ女性の座るボックスシートまで行くと、その向かい側に腰を下ろした。

 

「待たせてすまない」

「お姫様はちゃんと届けてきたの?」

「…ああ。できれば、彼女のことは、黙っていてくれると嬉しい」

「ふーん、訳ありみたいね」

 

 ま、いいけど––––とリリベット・ホワイトは微笑んだ。その姿が幼少期の思い出に重なり、アスランはどこか目を細めながらも「助かる」と頭を下げる。

 

 ここディアキアの街並みで思わぬ再会を果たした2人は、とりあえず居場所を変えてこのカフェで語り合うことにした。

 アスランとリリベットの関係を知らぬミーアには、基地で彼女のプロデューサーに引き取ってもらっている。ミーアは不満げだったが、必ず埋め合わせはすると約束して何とか納得してもらった。

 

 ウェイトレスが注文を取りに来たので、リリベットはコーヒーを、アスランは紅茶を頼んだ。テーブルにそれぞれの飲み物が並ぶのを待ち、それからアスランが言った。

 

「それで、リリー。単刀直入に言うが、君は今までどこにいたんだ?」

「…いきなりね」

 

 リリベットは困ったように苦笑(くしょう)する。 

 

 背が伸び、一人前の大人として成長したアスランの姿は、しかし、記憶にある性格と全く変わらない。一人称が『僕』から『俺』に変わったのも、時間の流れゆえの変化なのだろうと、彼女は思った。

 

「あの日、ニュースで君の乗っているシャトルが事故で行方不明になったと聞いて、俺もキラも、クラスのみんなもすごく心配していたんだぞっ!」

 

 あの別れの日の後、リリベットの乗ったシャトルが事故で行方不明になったというニュースがコペルニクスに流れているのを見て、学校に通う誰もが言葉を失った。

 すぐに捜索隊が向かったものの、シャトルの痕跡ひとつ残っておらず、この件はそのまま行方不明事故として終わってしまったのだ。

 

 当時、アスランは納得できずに、無理を承知で父に話をした結果、その事故に人為的な事情が(から)んでいる可能性が高いという話をされた。ナチュラルとコーディネーターの共存が進む月をよく思わない人間の仕業なのかもしれない…と。

 

 今思えば、そこにブルーコスモスによる人為的なテロが関係していた可能性が高いという報道が、アスランがナチュラルへの偏見を持つ始まりだったのかもしれない。ザフトへ入隊する理由の一つにも…。

 

「…それは悪かったと思ってるわ」

 

 少し怒鳴(どな)り気味になったアスランの声に、リリベットも少しの罪悪感を込めて謝罪した。

 

「私だって、最初は後から連絡くらい入れるつもりだったの。でもまさか、地球とプラントで戦争が起こるとは思ってもみなかったから」

 

 それはそうだが、とアスランは言葉に()まった。

 

 あの頃は、キラもアスランもまさか本当に戦争が起きるとは思ってもいなかった。今は亡き父パトリックにしても、当時はそこまでナチュラルに対して敵意も憎悪(ぞうお)も向けていなかったのだ。

 各地で小さな小競り合いが起きるにしても、まさかそれが国同士の本格的な武力衝突に発展するとは誰が想像できただろうか。

 

「あの状況でナチュラルの私がプラントに行こうなんて言っても誰も許してくれないし、仮に私が生きていたと知ったとしても、貴方も私に会いにこれる状況じゃなかったでしょ?」

「…そうだな」

 

 あの時の父はもはや"ナチュラル"という単語にアレルギーの(ごと)く反応していた。例え息子の旧き幼馴染といえども、ナチュラルであるというだけで関係を断つことを命令するだろう。

 

「今まで、ずっと地球へ?」

「ええ、運のいいことに戦争に巻き込まれることはなかったわ」

「…そうだったのか、それはよかった」

 

 なら尚更(なおさら)、2年前に"ジェネシス"の発射を止められてよかったと思う。復讐に狂ったとはいえ、リリベットと交友のあった父に幼馴染を撃たせるなんて真似をさせるわけにはいかなかった。

 

「それでアスランは? やっぱりザフトにいるの?」

 

 リリベットの言葉にアスランは小さく頷く。

 

「そう…。何故、とは言わないわ。色々あったんですもの」

 

 色々とは『血のバレンタイン』や『ヤキン・ドゥーエ攻防戦』のことを指しているのだろう。リリベットの表情に苦いものが浮かぶ。

 

「…怒らないのか?」

「ん? 何をよ」

「俺が…僕が戦争しているということをだ」

 

 2年前、ヘリオポリスで友と再会した際に、ザフトに所属して戦争をしていることを強く批判(ひはん)されたことを思い出す。

 当時のザフトといえば、ナチュラルを滅さんとする勢いで地球軍と戦っていたのだ。それをナチュラルのリリベットによく思われないことは覚悟している。

 

「…はぁ、やっぱりアンタの頭ハツカネズミは治ってないようね」

 

 しかし、彼女はそんな様子は見せずにこれ見よがしに大きなため息を吐いた。

 

「私だって、プラントに行けなくてもアンタの情報くらい調べられるわ。ラクス・クラインと共に戦ったジャスティスのパイロットさん?」

「お前、それは…っ」

 

 自分の経歴を言い当てられ、アスランは胸がドキリとした。

 プラント…特にザフトの人間に知られていることは、ルナマリア等の反応で理解していたが、まさか地球に住むリリベットにまで自分のことが知られているとは思ってもいなかった。

 

 だが、リリベットはあっけらかんとした様子で当たり前のことのように言った。

 

「ザフトならみんな知ってることでしょ? なら、私だって知ってるわよ」

 

 それは逆にいえば、ザフトに所属してでもない限り知り得ないということでもある。それを地球住まいのナチュラルであるリリベットが知っているということは………。

 

 その時、アスランの脳裏に、幼少期の思い出が(よみがえ)った。

 月の幼年学校で、その頭脳ゆえに教師に内緒(ないしょ)で彼女がこっそり行っていたことといえば…。

 

「お前…まさかハッキングしたのか!?」

「"もう"してないわよ!? 人聞き悪いこと言わないで、たまたまプラントの知人にヤキンの話を聞いただけよ!」

 

 が、そんな最悪の考えは本人よって即座に否定された。

 それを聞いて安心する。もしそんなことをしていたとなれば、"フェイス"として彼女を見逃す訳にはいかなかったからだ。

 

「まったく、失礼しちゃうわね」

「それは…悪かったな。どうしても6年前のイメージが抜けきらなくて」

 

 目を()じれば、今にもあの頃の記憶を思い出せる。

 もうあの時の3人が揃うのは叶わぬことだと(あきら)めていたが、こうして再会することができた。

 

「あれから6年か…あ、そういえばキラは? プラントにいるのかしら?」

「ああ、あいつは…」

 

 ––––キラ、死んだと思っていたリリーに会えたぞ。

 

 アスランは、遠き地にいるであろう友に思いを()せる。

 あの時から一番リリベットに会いたがっていたキラに、すぐにでもこの再会のことを伝えたいと思いつつも、ザフト軍"フェイス"という身がそれをなかなか許してくれない。

 

「–––––あいつなら、今はオーブさ」

 

 だからこそ、今のアスランは友の居場所をそれとなくリリベットに伝えることしかできなかった。

 

 

 

 

 





>リリベット(フブキ)
愛称はリリー。
アスラン視点が主な時は、リリベット表示。
それ以外ではフブキ・シニストラ表示として書き進めていきます。

>アスラン、キラ、リリベット
コペルニクス幼年学校の天才トリオ。
リリベットと別れた一年後、アスランがプラントへ避難。キラはヘリオポリスへ。
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