【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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皆さんの高評価のおかげで続けての投稿です。
まぁ、今回は原作通り…というより省略できないでしょってところを書きました。

一方、その頃…ってやつ。


さまよう眸

 

 

〈私は、過ぎたことをいつまでもネチネチという男ではないがね…〉

 

 モニターの向こうで、言葉に反して男はねちっこい調子で言った。

 

〈……だが、失敗にいつまでも寛大なわけでもない〉

「は……」

 

 地球連合軍空母"J.P.ジョーンズ"の中に与えられた自室にて、ネオは神妙(しんみょう)そうな面持ちを作ってその言葉を聞いていた。通信の相手はロード・ジブリール。ブルーコスモスの盟主にして、ネオたち"ファントムペイン"の『主人』だ。

 

〈ここ最近の戦果も、まあ、仕方ないさ。戦闘となれば敵も必死だ。そうそう君の思った通りには行かんだろう。それも、分かってはいる〉

 

 だが––––と来るのだろう、とネオは白けた気分で思う。ジブリールは目を上げ、モニター越しにネオを睨むように見据(みす)えた。

 

〈だが、目的は達せられなければならないのだよ? 全ての命令は、必要だから出ているのだ。遊びでやっているわけではない〉

「ええ、そのことは充分に––––」

 

 言いかけたネオの言葉を横取りして、ジブリールは嫌味っぽく言う。

 

〈––––分かっているというのなら、さっさとやり遂げてくれないかね。言われた通りのことを。でないと、こちらの計画もみな狂う〉

 

(計画ねぇ…)

 

 ネオは正直、うんざりしながら思う。

 『勝負は水物』と、誰かこういう口だけの偉い人たちに教えてやってはくれまいか…と。

 

 大体、脅威の戦力(ガンダム)を持つソレスタルビーイングの登場は、この人たちの計画表には書かれていたのか? ユーラシア西側の反乱は? ザフトの対応の早さは?

 

 自分たちに都合のいい青写真を引いて、それに現実が合致(がっち)しないからといって、(した)()を責めるのは勘弁(かんべん)して欲しい。

 

 だがジブリールは徐々(じょじょ)に怒りを募らせ、語気を荒くする。

 

〈あの"ミネルバ"は今や、正義の味方のザフト軍だなどと、ソレスタルビーイングに対抗できる唯一の勢力として祭り上げられ、ヒーローのようになってしまっているじゃないか。全く、コーディネーターどもの艦だというのに!〉

 

 まるで口にするのも汚らわしいといった調子で、ジブリールは吐き捨てる。その言葉に連合やファントムペインは含まれておらず、現状においていかに連合が小さな戦力と化しているかが(うかが)える。

 

「しかし…それほどまでに"ガンダム"は強敵です。ザフトなどよりもはるかに」

 

 ネオは意味ありげに返した。

 それが事実だからだ。前線で一度刃を(まじ)えたが、ネオのストライクEは勿論、ザフトから強奪したカオス等でも相手にならないガンダムという存在は指揮官の立場からして十分に脅威だった。

 

 ジブリールは一瞬ムッとした表情になったが、すぐにせせら笑うように言う。

 

〈ネオ、確かに君の言うことも分かるが、相手はたかがモビルスーツ四機だ。コーディネーターどもを始末した後にどうとでも料理できるさ〉

「それは…」

 

 ネオとしては賛成しかねる発言だ。

 ジブリールは"たかが4機"というが、その"たかが4機"で世界を混乱させているということに気がつかないのか。そもそも敵が四機だけと誰が決めたのか。

 浅慮(せんりょ)が過ぎるジブリールには呆れるばかりだが、立場上ネオは彼に口答えすることはできない。

 

〈既にスエズから増援を向かわせている。データは君のところにも送っているはすだが?〉

「は…しかと」

 

 確かに届いてはいる。

 ウィンダム20機、ダガー30機の計50機と新型モビルアーマー'ザムザザー"2機と"ゲルズゲー"2機の計4機。更に追加で空戦用モビルスーツ"レイダー"と水中用モビルスーツ"フォビドゥンヴォーデクス"。基地攻略戦でもするのではないかという布陣だ。

 

〈これだけの数だ。今後こそ撃てよ、ネオ。そのためのお前たちだということを、忘れるな〉

 

 ネオは密かに溜め息を吐きつつ、答えた。

 

「ええ…肝に銘じて」

 

 フンッと鼻を鳴らしてジブリールがモニターを切る。

 その後もネオは暫く暗くなったモニターを(にら)みつけていた。この仮面は思った以上に重宝なものだ。相手に表情を(さと)られずにすむ。

 

「随分と焦ってるな、盟主殿も」

 

 そう一言(つぶや)く。

 ネオとて、まさかここまで現実を見えていない人物だとは思ってもみなかった。いくら数を(そろ)えたところでガンダムに勝てるわけもなく、ザフトを確実に倒せるのかも疑わしい。

 このまま行けば、よくて撤退成功。悪ければ全滅といったところだ。勝率は限りなく低い。

 

(さぁて…どうするか)

 

 だが、何にせよネオたちには戦いを選ぶことはできないのだ。できることなら生き延びたいと思いつつも、戦いの中でしか生きられないという皮肉だった。

 

(噂に聞くシャーロット・アズラエルにでも鞍替えするかね?)

 

 そんな時、デスクの上にある通信端末が反応した。街へ潜入調査へ向かったスティングたちからの連絡だ。ネオは手を伸ばして、彼等と通話を繋いだ。

 

「どうした…?」

 

 そこで分かったのは、やはりディオキアの基地にミネルバがあるというのは間違いないということ。ラクス・クラインのライブもやっていたとの報告もあったが、そちらはどうでもいい。

 

「何? ステラがいない…?」

 

 何せ、そんなことよりももっと重要なことがスティングから知らされたのだから。

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 シンは基地で借りたバイクを()り、海沿いの道を辿(たど)っていた。

 身体に吹き付ける風と疾走感、エンジンの響きが五感を満たし、その視線は風景を切り捨てて路面に集中する。いつもなら余計な雑念や(なや)みは振り捨てられ、自分が空っぽになる瞬間だ。

 

 だが、今シンの頭の中では色々な思いが、ぐるぐると出口もなく渦巻(うずま)いていた。

 

 ZGMF-X42S デスティニー。

 それがインパルスに代わるシンの新たな(つるぎ)である。自分の働きが議長に評価されたことは嬉しい。あのアスラン・ザラと共に新型機体を受け取るということは、自分もそこまで彼に劣っているわけではないということだ。

 

 しかし、先日知った"とある事実"が、シンにどうしようもない(むな)しさを抱かせた。

 

(オーブでクーデター…アスハとセイランが?)

 

 自分の知らない間に、故郷に危機が(せま)っていたというのだ。

 オーブが連合に参加したことは知っている。あれだけ中立を叫んでいた癖にどういうつもりなのかと嘲笑う気持ちと、これでもう連合に国を焼かれることはないと安堵(あんど)する思いがあった。

 

 だというのに、オーブは今度は内戦で戦火を自国にもたらしたのだ。あまりもの馬鹿さ加減に怒りと悲しみ、多くの激情が(うず)となってシンの心に吹き荒れていた。思わずアスランに八つ当たりしてしまったのも、無理からぬことである。

 

(何やってるんだ、アスハは!)

 

 かつてオーブに住んでいたシンだが、セイランなどという家名は知らない。かつてはアスハが政治の中心だったし、ウズミが引退した後もシンたち一般市民はそのように受け止めていたからだ。

 

 アスハ嫌いを公言するシンだが、かつて国を焼いた連合に尻尾を振るようなセイランは話を聞いているだけでも不快な相手だ。セイランをよく知るアスランも顔を(しか)めていたようだし、きっとアスハが可愛く思えるような嫌な奴なのだろう。

 

 そういう意味では、アスハとセイランの争いにアスハが勝利したのはシンにとっては良いことだったのかもしれない。少なくともアスハは国民を巻き込まないために最後まで銃を取らなかったという。

 

 そして、代わりにセイランを沈めたのは…。

 

(ソレスタルビーイング…っ)

 

 ガルナハンでシンたちが戦ったタイプとは違うガンダム。彼等が同時期に別動隊がオーブでのクーデターに介入したらしい。

 そして、そこにはきっと、ユニウスセブン落下の時に助けられた青色の機体もいたのだろう。

 

 デュランダル議長は、彼等のことをテロリストと言った。実際、その通りなのだろう。それを否定することはできない。

 

 だが、彼等の存在によって戦争が減りつつあるということも事実だ。オーブでのクーデターでは武力介入し、結果論とはいえ、その圧倒的な力でオーブの危機を救っている。

 

 もしもセイランのクーデターが成功していればあのアスハこそ政治の世界から追い出することになっただろうが、代わりにその席に座るのはセイランとなる。

 そうなれば、連合と組んだオーブはその剣をこちら…プラントに向けることになると、アスランが苦い顔でそう言っていたのを思い出す。

 

 シンはそんな故郷を見たくはなかった。

 だからこそ、ザフト軍人としての心情とは別に、ソレスタルビーイングに(わず)かに感謝する気持ちがある。

 戦乱のオーブをガンダムという、かつて望んだ力の具現化のような機体で救う彼等の姿は、シンにとって理想の姿だった。

 

(…いや、あいつらは敵だ…っ)

 

 そこまで考えて、シンは強く頭を横に振る。

 議長はあんなことを続けても決して戦争はなくならないと口にした。アスランは力はただ力でしかないと言った。ハイネはただ己の正義を振り回す破壊者と吐き捨てた。

 だから、彼等のやり方は間違っている。そのはずなのだ。

 

 波の打ち寄せる(がけ)突端(とったん)に辿り着き、シンはバイクを()めた。海の中に杭を打ち込んだような、奇岩(きがん)のつらなる(なが)めのいい場所だ。

 ヘルメットを取ると、海風が汗ばんだ髪の間を吹き抜けていく。静寂(せいじゃく)が身体を押し包み、突然身ひとつで世界に投げ出されたような心待ちになった。海鳥の鳴き声が遠く聞こえる。

 

「…声?」

 

 波の音に混じって、かすかな歌声が耳に届いた。シンはそちらに目をやる。

 女の子が一人、歌いながら踊っていた。柔らかそうな金髪と、ドレスの白い(すそ)が風にあおられはためく。少し離れた崖の上で、すんなりした腕をさし上げ、少女はさも楽しげに、くるりくるりと舞う。出鱈目(でたらめ)に踏んでいるステップは、それでも生きる喜びに満ちて美しかった。

 

「…この街の子かな」

 

 シンはしばし、()せられたように彼女に見入った。

 純粋無垢なその表情は、どこか記憶の中の妹と重なって、何故だか胸が締め付けられる。

 シンは、彼女から海の向こうへ視線を転じ、ため息をついた。

 

 ––––––––あっ…!?

 

 かすかな叫び声がして、彼は何気なく視線を戻す。僅かの間にさっきの崖の上から、少女の姿が消えている。

 

「……えっ!?」

 

 まさか、と思いつつ、シンはバイクを置いて走り出す。少女ごさっきいた場所へ、岩を辿(たど)って向かいながら、彼は首を伸ばして下を(のぞ)きこんだ。

 崖の突端にたどり着くと、打ち寄せる波の合間に金の頭が見える。

 

「えええーっ! 嘘だろ!? 落ちたあぁ!?」

 

 シンはあまりのことに唖然(あぜん)として崖から身を乗り出す。水の中で少女は必死にもがくが、打ち寄せる波がその頭に被さる。そして、それきり浮かんでこない。

 

「って泳げないのかよっ!?」

 

 崖の高さは十メートルくらいだろうか。少しは高いが、コーディネーター…それも軍人であるシンにとっては問題のない高さだ。

 

 シンの中にある選択肢は一つだ。

 

 ––––海に飛び込んで、少女を助け出す!

 

 シンは急いで上着を脱ぎ捨て、迷うことなく群青の海へとその身を(おど)らせる。

 

 海面が噛み付くように身体をうつが、シンはそれに構わずに水中へ身体を潜り込ませる。波間に(しず)んでいく少女の姿を見て、その方向へ懸命(けんめい)に抜き手を切る。暴れる少女の手足が顔や足にあたるが、その痛みさえ感じる余裕がない。

 

 少女はパニックに陥っているのか、めちゃめちゃに手を振り回してシンにしがみつこうとするが、シンはそれを逆に利用して、少女を海上に引っ張り出す。

 

「はぁ、はぁ…一体何だよ」

 

 ようやく大人しくなった少女を抱いて、シンは何とか浅瀬(あさせ)まで辿り着いた。少女はひとしきり暴れ尽くしたせいか、ピクりとも動かない。最悪の事態を想像したが、呼吸はしっかりしているようだ。

 

「死ぬって言ったら暴れたよなぁ…この街の子じゃないのか?」

 

 自分で言うのも何だが、シンは自分のことを割と怒りっぽい性格をしていると認識している。ムッとすれば文句は言わずにいられないし、カッとすれば口からは暴言が出ることも多い。

 

 だからこそ、シンは焦りや疲れもあって、つい少女に「死ぬ気か、このバカ!」と怒鳴(どな)ってしまったのだ。すると、「死ぬのはイヤっ!」と少女はますます暴れ出してしまう始末。

 もしかすると、少女が戦争で何か心に傷を負っている子供なのかもしれない。そこまで考えて、軽率な発言をしてしまったと、シンの胸が痛んだ。

 

 だから、始まりは軽い贖罪(しょくざい)のつもりだった。

 

「大丈夫…君は俺が守るさ」

 

 それは無意識に妹を重ねていたからなのか。

 この時、シンは自分の全てをかけて、この、今にも砕け散ってしまいそうな(はかな)い命を守ろうと思ったのだ。

 

 

 

 それはきっと、シン・アスカとステラ・ルーシェにとっての運命の出会いだった。

 

 





>ジブリール
まだ現実を理解していない(アホ)
裏にデストロイあるから大丈夫だと思ってる?

>ネオ
もうやだこの上司。
アズラエル派に鞍替えすることを検討中。

>シン
アスハとセイランなら、苦渋の決断の末にアスハなシン君。
ソレスタルビーイングのやり方って…(?)
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