【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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もうすぐ試験…試験だぁ。
更新したいのに、頭の中がまとまらない。モチベーションが出ない。
→つまり、ヤバい。



追憶の友

 

 

 やはり嘘というのは、嫌いだ。

 一度は捨てたはずなのに、幼馴染とも思わぬ再会で再び"リリベット・ホワイト"の仮面を(かぶ)らなければならないなんて…。

 自分という存在に嫌悪感さえ抱きながらも、フブキはポーカーフェイスを保って会話を続ける。

 

 先程アスランはザフトとして軍に入ったことを怒っているかと聞いたが、それはこちらのセリフだ。

 

 アスラン・ザラ。

 元ザフト軍クルーゼ隊。あの"ストライク"を討った功績(こうせき)でネビュラ勲章を授与され、特務隊(とくむたい)へ配属される。

 その後は、ZGMF-X09A"ジャスティス"を受領し、ラクス・クラインの言葉に同調して軍を脱走、戦争を止めるために第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦を戦い抜いた。

 

 フブキはアスランがそのような経歴を持っていることを知っているが、アスランはフブキがソレスタルビーイングのガンダムマイスターであることを知らない。

 守秘義務があるためにフブキはそれを一切口にする気はないし、フブキ自身もアスランには今の自分を知って欲しいとは思わない。

 

 だから、ここディオキアでアスランに会ったのは本当に偶然だったのだ。本当は死ぬまで会うつもりはなかったというのに…。

 

「オーブ…? それって大丈夫なの?」

 

 アスランの話すキラの居場所について、フブキは思わず心配の声を洩らしていた。

 

 てっきりアスランと共にプラントへ向かったのかと思っていたが、まさか今話題のオーブ連合首長国にいるとは…。いや、アスランと違って両親がナチュラルという以上、あそこほど都合のいい国はないかのも確かなのだが。

 

 だが、確かに2年前までは中立を(うた)っていたかもしれないが、今や大西洋連邦と同盟を結んだ国である。今すぐ追い出されるということはないだろうが、国内でのコーディネーターの居場所は狭く小さなものになっているはすだ。

 

 つい先日、仲間たちが武力介入に向かったということもある。オーブはもはやかつての"平和の国"ではないのだ。フブキにとって、そんなところにキラを置いておくのは心配だった。

 

「お前の気持ちもわかる……」

 

 アスランは少し影のある笑顔で返した。

 

「けど大丈夫さ…オーブにはカガリがいる」

「カガリ・ユラ・アスハ…オーブの姫ねぇ。知り合いなんだっけ?」

 

 脱走艦"アークエンジェル"と"エターナル"、オーブの元輸送艦艇"クサナギ"–––––––通常、三隻同盟の一員として共に戦争を終わらせるために戦った"英雄"。

 

 それが今の幼馴染の姿なのだ。例えオーブの姫と知り合っていたとしても驚きはしない。

 

「あぁ…俺の大切な仲間だ」

「……そっ」

「アイツがいる限り、オーブは大丈夫だ。俺は、そう信じている」

 

 その言葉に秘められた(おも)いを理解し、フブキは幼馴染の心の成長を感じ取った。それと同時に彼の不器用さは全く変わっていないことに内心で大きなため息をつく。

 

「なら、アンタはさっさとザフトなんかやめてオーブに帰るべきね」

「…え?」

 

 思わず口を出してしまい、ハッとした時にはもう遅かった。アスランが目を丸くしてこちらを見ている。

 

「……いえ、気にしないで。これは私の意見よ」

「そうか。だが、俺はプラントを…」

 

 これ以上はプライベートな問題だと分かっていた。

 でも、6年前のあの日まで、彼の面倒を見ていた身としては口を出さずにはいられなかった。

 

「はぁ、いっつもアンタは考えすぎなのよ。本当に守りたいのがなんなのか、心の底では分かってるんじゃないの?」

「………」

「オーブの姫さまのこと、心配なんじゃないの?」

 

 (うつむ)くアスランの心情を、今のフブキでは完全に理解することはできない。それはもう、別の誰かの役割なのだろう。だからこれは、ただの感傷(かんしょう)なのだ。

 

 そも、今の自分にアスランに口を出す資格などないのだと、フブキは己を恥じた。

 

「ま、私は軍人じゃないし、これ以上口を出す気はないわ」

「…すまない」

「全く、何に謝ってるんだか…相変わらず生真面目馬鹿ね」

「………」

「………」

 

 自然と減った口数。無口な方のアスランに対して、フブキが言葉を止めれば、その場は視線と沈黙が包み込んだ。

 

 それから少し、沈黙の時間を破ったのは、アスランの通信端末へ入った一つの連絡だった。

 

「通信?…はい、こちらアスラン・ザラです…え、シンがエマージェンシーを!?」

 

 入ったのは軍からの連絡らしい。それも緊急を要するような様子だ。シン、というのは仲間の名前だろうか。

 

「…えぇ、分かりました。しかし、エマージェンシーとなると緊急を要します。こちらも独自に捜索しますが、よろしいでしょうか……えぇ、発信地点へは私の方が早いので…はい、任せてください」

 

 完全に軍人モードに移ったアスランをよそに、そろそろ潮時(しおどき)かとフブキは荷物をまとめて立ち上がる。元々長居をするつもりはなかったのだ。

 

「…リリー、行くのか?」

「ええ。貴方も用事、できたんでしょう?」

「ああ。…ディオキアにはいつまで?」

「私も仕事でね。もうすぐここは離れるわ」

 

 ミネルバが発進すると同時にフブキたちも機体を隠しているソレスタルビーイングの基地へ移動することになる。アスランとはここでお別れだ。

 

「そうか。せっかく会えたのにすまないな」

「仕方ないわ。…大丈夫、互いに生きてさえいれば、また会えるもの」

 

 また、会える…なんて笑ってしまう。自分はこうして、またも彼に嘘を吐くのだ。

 

 いや、ある意味嘘ではないのかもしれない。

 

「ああ、また会おう。今度は、キラも一緒に」

「ええ、じゃあまた」

 

 そう、今度会うのは、きっと戦場だ。

 リリベット・ホワイトではなく、フブキ・シニストラとして出会うことになる。ソレスタルビーイングのガンダムマイスターとして…。

 

「………さようなら、アスラン」

 

 それを思うと、幼馴染との6年ぶりの再会ですら、(せつ)なさと悲しさで胸が締め付けられる。

 

 けれど、今の自分はソレスタルビーイングのガンダムマイスター。フブキ・シニストラ。

 

 目指す目的はただ一つ。

 

 ––––––戦争の根絶。

 

 そのためならば、どんな痛みも乗り越えられる。

 

 フブキはそう信じて、胸の痛みを誤魔化(ごまか)した。

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

「……ここか」

 

 ディオキアから少し離れ、マルマラ海からゲリボル半島を()えると、いくつもの島が散らばるエーゲ海に出る。

 

 その上空を地球軍用モビルスーツ、ウィンダムがゆっくりと飛翔(ひしょう)していく。セレーネのマイスターであるシエルは、(きら)めく青い海を下方に(なが)めながら、海岸線に沿って飛行を続けた。

 

 今回の任務は武力介入ではなく、シエル自身がヴェーダに申請した探索ミッションであるため、ガンダムセレーネではなく、組織の所有する非太陽炉搭載機体を使用している。

 

 目的地は北方に延びる山脈の(ふもと)近くだ。

 眼下を家々や耕作地が流れ、やがて森や荒れ地が目立ち始める。めっきり人の気配が絶えた雰囲気(ふんいき)のなか、木々の向こうに開けた場所が見えてきた。

 

「間違いない…この場所だ」

 

 一応、注意して上空を旋回(せんかい)したが、攻撃の気配はない。いや、それどころか、かなりの広さの敷地(しきち)内には人影(ひとかげ)ひとつ見当たらない。

 立ち並ぶ建造物はどれも古びた印象で、アスファルトで整備された地面も随分と(いた)みが目立つ。それは、ここが当の昔に廃棄(はいき)された施設だからだろう。

 

「…ロドニアのラボ、か」

 

 シエルは小さく呟き、施設内へウィンダムを降下させた。

 

 機体から降り立つと、静粛(せいしゅく)が彼の身体を押し込んだ。人を不安にさせる嫌な空気だ。

 

 しかし、シエルはそれを全く気にせずに並んだ建物の内の大きめの方の施設へ足を踏み込んだ。外観上こそ大きい施設だが、目指す場所は地下にある。

 

 地下へ入ると、階段を降りる段階でも(ただよ)っていた異臭が、シエルの嗅覚(きゅうかく)に暴力的に襲いかかる。血と……腐っていく屍肉の臭いだ。手にしていたライトが床を()め、そこがどす黒く染まっているのを見せつける。

 

 そして、その上に折り重なるものを見て、さしものシエルも顔を顰めた。

 

「…くっ」

 

 それは、半ば折り重なるように倒れている二つの死体だ。10歳前後の子供が、片目のあった空洞(くうどう)血溜(ちだ)まりに変え、ほっそりした手足を妙な角度に投げ出して、仰向けに倒れている。その足に重なるように頭をもたせかけた男は、白衣を血に染め、こちらに生気のない虚な目を向けていた。

 

 怒りにギリギリと歯を食い縛りながらも、シエルは奥へ進むことを選んだ。

 

 点いたままのコンピュータ画面から放たれる光が、薄く室内を照らしている。部屋の至る所に死体が転がっていた。大人のものも、子供のものも。腐敗(ふはい)が始まっているが、死んでからまだ数日と経過してないだろう。

 

 ひび割れたガラスケースの中に、何か液体で満たされ、奥に白っぽいものが浮かび上がる。その正体は、身体の至る所にチューブを繋がれた子供–––––その死体だ。ガラスのような目を見開き、液体の中を(ただよ)っていた。

 それも一人ではない。

 壁を取り巻くように()えられた長いケースの中には、様々な年齢、性別の子どもがずらりと並んでいた。その様はまるで博物館の展示ケースを思わせる。

 

「やはり、自爆に失敗したのか…」

 

 セキュリティールームの中、端末(たんまつ)を操作したシエルはこの状況をそう結論つけた。

 おそらく、自爆させようとする大人とそれを阻止しようとする子供の間で内乱が発生したのだろう。

 

「くそっ…なら」

 

 シエルはコンピュータを操作し、目的のデータを画面に映し出す。

 

 それは、多くの子どもたちの個人データ。

 ブースデットマンとも、エクステンデッドとも呼ばれる、戦うための子供たち。薬物や洗脳、様々な違法な手段でもって連合…ブルーコスモスが造り上げた生きた兵器。戦うためだけの人間。

 

 ここ(ロドニアのラボ)は、その製造施設ともいえる場所なのだ。

 

C.E.(コズミック・イラ)70年12月22日、12番体、廃棄処分……違う。もっと最近なのか?」

 

 被験体の入出記録。

 それは、施設に居られれば『入所』、不要になれば『廃棄』という意味とさて扱っているのだ。虫唾(むしず)が走る思いだ。

 

「これは…彼等はっ」

 

 そのとき、スクロールした画面の中に、見知ったデータを見つけ、シエルは目を見開く。

 

 GAT-X370 "レイダー"–––––その搭乗者についてまとめられたデータだ。()えられた写真の中から、赤い髪の、まだ幼さを残す少年の姿が見えた。

 

「クロト…君もか」

 

 その少年は、シエルにとって同胞であり、同年代の仲間だ。そこまで親しかったわけではないが、知り合いではある。彼にその記憶が残っていたのかは分からないが…。

 

 そして、レイダーといえば、2年前の大戦で地球軍の主力モビルスーツとして活躍し、その(すえ)に撃墜されたとされている。つまりクロトはもういないのだ。仮に生きていても、その後も薬漬けにされて、死ぬまで永遠に戦い続けることになっていたかもしれない。

 

 ブルーコスモスにとって、彼等は生体CPUという部品なのだから。

 

 シエルの頭に過去の記録が呼び起こされる。

 身体中にコードをつけられ、薬や洗脳だけにあらず脳みそまで弄り回される自分。

 同じ処理を受け、耐えられずにどんどんと死んでいく子供たち。

 直接神経に触れられた時の悪寒(おかん)と苦痛。

 

 そして、自分を見捨てた両親の代わりに守り抜くと(ちか)った妹の、変わり果てた姿。戦えと命じられ、自分を兄と認識してなお、ナイフを片手に迫る少女の姿を前にして…。

 

 だからシエルは、仲間を、妹を見捨てて施設(しせつ)から逃げ出した。「処分」から(のが)れるために。全ての「怖いもの」から目を(そむ)けるために。

 

「–––––……」

 

 シエルは痛みに怯えるように目を閉じた。

 今更、過去を悔やむな、と自分で自分を叱咤(しった)する。過去は取り戻しようもない。だから、今を見据(みす)える。これからなすべきことに覚悟を決める。自分がすべきことは十分に理解していた。今日ここにいるのは、過去との決別のためなのだ。

 

 となれば、シエルの取るべき道は二つに一つだ。

 また後悔に背を向け、逃げるか。それとも立ち向かうか。

 

 逃げれば–––––ブルーコスモスは、また強化人間を造り出すことを続けるだろう。今も次々と子供たちが「実験」「教育」と称して改造を行われ、「処分」と称して殺されている。仮に生き残ったとしても、歪んだ教育を(ほどこ)された彼等は、"エクステンデッド"として戦場で敵の兵士を容赦(ようしゃ)なく殺し続ける。

 

 立ち向かうことを選べば、自分は心を鉄にして彼等を殺すことになる。ロドニアだけではない。ブルーコスモスは完全に壊滅(かいめつ)させる。

 その中には、自分に優しくしてくれたあの金髪の女性…「母さん」もいるかもしれないし、自分の後輩…緑髪の彼(スティング)青髪の彼(アウル)もいるかもしれない。或いは、自分の妹である彼女も…。

 

 どちらにしても人は死ぬ。

 

「………()()()

 

 シエルは、苛立ち混じりにコンピュータを殴り付けた。そして、そのまま無言で部屋から出ていく。

 

 彼はまだ、心を決められないでいた。

 

 

 

 

 





>フブキ
別にアスランを恋愛的な意味で好きだったとかはない…はず。
幼馴染は負けヒロインだった…?

>シエル
世代的には"ブースデットマン"と分岐した強化人間。
薬物や肉体改造は勿論、脳味噌まで弄られている。高い空間認識能力を手に入れられるのが特徴といえば特徴かもしれない。
今は、CBで治療されているために身体は完治。それでも全盛期に近い動きはできる。

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