【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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ダーダネルスの死闘

 

 

 ディオキアの街を出港してしばらく、ミネルバはたった一隻で辺りを運航していた。

 

 狙いはスエズから派遣(はけん)されたという連合軍に対する牽制(けんせい)だ。目的がディオキアの基地なのか、ガルナハンの方か、それともカーペンタリアなのかは不明だが、ザフトとしてはここ最近不審な行動の目立つ連合の動きを黙って見過ごすことはできなかったのだ。

 

 そして、ミネルバがある地点に到着したと同時に戦端(せんたん)は開かれようとしていた。

 

「熱紋確認! 一時の方向! 数二十! 及び背後に地球軍空母!」

 

 バートが告げたとき、クルーの間に漂ったのは、「まさか」という驚きと「やはり」という相反する雰囲気(ふんいき)だった。

 

 場所はマルラ海、ダーダネルス海峡。

 仮に地球軍が攻めてくるならここだと、タリアたちが防衛戦に予想した海域だ。

 

 だが、まさかこの情勢で戦いを続けようとは正気とは思えない。ソレスタルビーイングの介入でどこも疲弊(ひへい)しているというのに、いたずらに戦力を割く余裕はないはずだからだ。

 

 しかし、現に連合は五隻もの空母で持ってミネルバを囲っている。

 

「モビルスーツです! 機種特定! "ダガー"、"ウィンダム"、"カオス"、"アビス"!」

「…あの部隊だっていうの?」

 

 これは完全な待ち伏せだ。

 どういうわけかは知らないが、ミネルバがディオキアにいるという情報は敵に筒抜(つつぬ)けだったのだろう。

 

「全く。毎度毎度、人気者は辛いわね…」

 

 元々、次世代を担う新造艦として建造されたミネルバだ。更にインパルスやセイバーといったセカンドステージシリーズを積むことを想定されたこの艦は、確かに戦果に(とぼ)しい連合にとっては士気を上げる意味でも最重要の相手だろう。

 

 しかし、タリア達としてもただで落とされるつもりはない。それに、逆にここで連合の地上での主力部隊を撃破すれば、停戦に近づける可能性もあるのだ。

 

「"デスティニー"と"ジャスティス"、発進準備。同時に取り舵10」

 

 タリアの命令に従って、パイロットが搭乗機へと移っていく。十分な休息は取ったものの、各々新しい乗機で初の実戦となる。更に言えば、数的に圧倒的に不利な状況だ。パイロットに無理はさせられない。

 

「"インパルス"と"セイバー"、"グフ"は艦の防衛に回します」

 

 タリアは通信をフェイスの二人に繋いだ。

 

「アスラン、貴方にはシンと共に前線を。ハイネにはレイとルナマリアのサポートをお願いすることになるわ」

〈了解しました〉

〈了解です〉

 

 二人が力強く頷く。

 アスランとハイネは優秀なパイロットだ。勿論、シンやレイ、ルナマリアも。艦載機、パイロット含めてもザフトでここまで優秀な人材が(そろ)っている部隊はないだろう。

 

 だからこそ、タリアは強気に出た。

 

「モビルスーツ部隊、発進! これより連合艦隊を突破する!」

 

 タリアの力強い号令にクルー達も応え、ミネルバは戦闘体勢へ移行した。

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

「シン・アスカ、"デスティニー"、行きます!」

 

 シンは(さけ)び、ミネルバから飛び出した。

 翼を広げたデスティニーが、赤・青・白灰色に色づくと同時に真っ直ぐに加速していく。

 それだけでもかつてのフォースインパルスの数倍のスピードだ。シンは自分の動きに完璧についてくるデスティニーに感激しながらも、機体をダガーとウィンダムの群れに突っ込ませた。

 

「アスラン・ザラ、"ジャスティス"、出る!」

 

 すぐにその後から、インフィニットジャスティスが機体を真紅に染めて発進し、同時にレイの乗るセイバーとルナマリアの乗るコアスプレンダーが合体して続き、ハイネのグフと共にミネルバの防衛に移る。

 

「シン!」

 

 気持ちが先走りがちな部下の後を追うために、アスランもこちらを狙うウィンダム・ダガー部隊へ飛び込む。

 

「くそっ、こいつらぁ!」

 

 しかし、アスランの心配に反して、デスティニーは次々とウィンダムやダガーを撃墜していた。

 右手のビームライフルで二機のウィンダムの動きを(ふう)じ、左手で背面のビーム(ほう)をはね上げる。

 

「しつこいんだよっ!」

 

 太いビームが正面から敵機を串刺(くしざ)しにする。

 更に息もつかせず(かた)のビームブーメランを抜き放つや、デスティニーに射線を集中し始めたモビルスーツ隊めがけて投げつけた。ブーメランは()(えが)いて二機をその刃にかけ、回避しようとした一機をライフルで狙い撃った。

 

 ––––––やれる! 俺とこのデスティニーなら!

 

 それはシンだけでなく、その戦闘を見たアスランにとっても同じ気持ちだった。

 

〈シン、モビルスーツ部隊は任せられるか?〉

「え!? 平気ですけどっ!」

〈俺はこれから敵艦を撃ちに行く。ミネルバはハイネ達に任せて、お前は敵を倒すんだ!〉

「…了解っ!」

 

 敵モビルスーツを倒す、シンプルな任務だ。

 それに反して、敵艦を一機で(おさ)えようとするアスランを心配に思ったシンだったが、(あざ)やかな動きでダガーを無力化するジャスティスを見てその考えを改めた。やはり、フェイスは味方として心強い。

 

 既に五機ほど撃墜したシンの元にアラートが鳴り響く。それは新たな敵の襲来を知らせていた。

 

 有視で確認できるのはウィンダムとダガー。倒しても倒してもたくさん()いてくる。おそらく狙いはミネルバ。当然だ。母艦さえ倒せば勝ちなのだから。

 

「こいつら、まだっ!」

 

 シンが苛立ち混じりにライフルの照準を合わせようとしたその時、いくつものビームがデスティニーへ迫った。当然、反応できないシンではなく、展開したビームシールドで放たれたビームを受け止める。

 

 放たれた方角…センサーには、見知った反応が映っていた。

 

「"カオス"に"アビス"かっ!」

 

 空と海。

 それぞれの地形からデスティニーに迫る二機のモビルスーツ。各々が放つビームを回避し、シンは空へ飛んだ。

 

 海の中で厄介なアビスは後回しだ。まずはカオスを確実に落とす!!

 

 そんな思いで、シンはデスティニーに搭載(とうさい)された機能の一つである光の翼を展開すると、背中の長剣(ちょうけん)–––––MMI–714"アロンダイト"を抜き放ち、スラスターを全開にしてカオスへと突っ込む。

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

 カオスがこちらへビームを放ってくるが、それは高機動状態のデスティニーには当たらない。デスティニーの光の翼––––"ミラージュ・コロイド"による幻惑(げんわく)がライフルの照準を(くる)わせているのだ。

 (らち)が開かないと考えたのか、カオスは機動兵装ポッドからミサイルを撃ち込んでくるが、それもデスティニーには当たらない。そのスピードにミサイルが追いつかない。

 

「そんなもんにっ!」

 

 渾身(こんしん)の力が込められた長刀が振り下ろされる。

 カオスはシールドでそれを防ごうとしたようだが、対艦刀であるアロンダイトはシールドごとカオスの左腕を()(はら)った。

 

「逃がすかっ!」

 

 右肩から引き抜いたビームブーメランを投げ放つ。その刃は体勢を崩したカオスのビームライフルの銃身を引き裂き、爆散(ばくさん)させた。

 

「これが…デスティニーの力だっ!」

 

 インパルス時代はあれほど苦戦したカオスが、こうも容易(たやす)く追い詰められる。

 

 シンに与えられた新たなる剣、デスティニー。

 

 その力をシンは十分に使いこなしていた。

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

「すごい…」

 

 "ブラストシルエット"を装備したインパルスを駆るルナマリアは、前線で戦う戦友の姿に感嘆の言葉をもらした。あれほど苦戦したアーモリーワンの機体をここまで圧倒するなんて…。

 

〈ヒュ〜、やるなぁシンの奴。俺らも負けてられないぜ! 行くぞ、レイ〉

〈了解!〉

 

 フェイスであるハイネから見ても見事な戦い振りのようだ。

 シンの戦いに感化(かんか)されたハイネがミネルバへ迫るウィンダムへ攻撃を仕掛け、いつもの冷静さを崩さないレイがMA(モビルアーマー)形態のセイバーで援護をする。その動きは、かつてのセイバーのパイロットであるアスランに勝るとも(おと)らない。

 

 アカデミーの時代から分かっていたことだが、やはりレイはパイロットとして操縦がダントツに巧い。そして、新型を任されるまでに成長したシンも。

 

「…私も負けていられないっ」

 

 自分だって"赤"なのだ。

 二人に及ばずとも、せめて足手纏(あしでまと)いにならないくらいの働きはしなければ!

 

 ルナマリアは、両脇(りょうわき)から巨大な砲身のビーム砲––––––M2000F"ケルベロス"をはね上げて、油断して上空を飛行するダガーを撃ち貫いた。

 

 "ブラストシルエット"は対艦攻撃・対要塞(ようさい)攻撃を想定した火力強化用のシルエットである。"フォースシルエット"と違って飛行能力を持たないが、海面をホバリングすることで移動はできる。

 

 今回、ルナマリアはミネルバの"海"を任されている。

 こればかりは、セイバーもグフもできないことであり、インパルスにしかできないことだった。

 

 続けて、前方のウィンダムの隊を狙おうとしたとき、目の前の海面を割って、ネイビーブルーの機体が(おど)り出た。

 

「くっ…アビスね!」

 

 ルナマリアは海面を(すべ)るようにして旋回(せんかい)し、アビスの開いたシールドから放たれたビームをかろうじて避ける。同時に腰にためた"ケルベロス"を放つが、その時には青い機体は既に海中へと姿を消している。

 その後を追って、両肩のレールガンを撃つが手応(てごた)えはなく、その航跡(こうせき)すら見失ってしまった。

 

「このぉ…ちょこまかとっ!」

 

 ルナマリアは忙しなく周囲に目を配る。

 海面には自機のスラスターがおこす円形の波ばかりが立ち、その下で動く気配は伝わらない。ソナーでもあればともかく、海中を接近する敵はどこから攻撃してくるか、全く見当もつかなかった。

 

 そして、そんな彼女の迷いを見透かしたように、全身を緊張(きんちょう)させて待ち受けるルナマリアの背後からその機体が飛び出す。

 

 アビスは空中で、シールドと胸部から一斉にビームを叩きつけ、ルナマリアはその一部をシールドで受け止めると、お返しとばかりに肩部のレールガンを放つ。

 

 しかし、それがアビスに当たることなく、ビームランスを掲げてこちらへと踊りかかってくる。

 

 ––––––そんなへなちょこで当たるかよ!

 

 敵パイロットのそんな声が聞こえた気がした。

 

「なにをっ!」

 

 こちらは、前回ザクでアビスに酷い目に遭わされたのだ。

 

 しかし、今は違う。

 以前のようにはいかない。"赤"のプライドを見せてやる!

 

 ルナマリアは、すかさず抜き取ったビームジャベリンでランスを受け止めると、そのまま相手の機体を押し(もど)し、勇敢に突きかかった。

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

「取り舵30! "タンホイザー"の射線軸を取る」

 

 ミネルバが戦闘体勢に入って間も無く、タリアは命じる。彼女の決断にアーサーが(おどろ)いて振り返るが、構わずにたたみかける。

 

「海峡を塞がない位置に来たら薙ぎ払う! アスランにもそう伝えて!」

「は、はい!」

 

 ミネルバは一隻。敵は物量で圧倒的に勝る。

 いくらこちらのモビルスーツ部隊が個で圧倒しようとも、ミネルバがやられては意味がないのだ。

 

 だからこそ、このタンホイザーの一撃で機先を制して(たた)いておこば、心理的にも優位に立てる。連合もまだ全ての部隊を投入してきたわけでないだろうが、それならそれでいい。敵が油断してくれるならタリアとしても願ったりだ。

 

 現状の戦局はミネルバ側がやや有利といったところだ。

 特出したデスティニーは問題ない。シンの力と合わさって、その能力を十全に発揮してくれている。ハイネとレイの方も、やはり問題ないだろう。となると、心配なのは慣れない機体でアビスの相手をしているルナマリアか。

 

 なんにせよ、数で劣るミネルバ側にとっては短期決戦が望ましい。

 

 マリクが艦首を連合艦隊へ向け、アーサーが射線を確認する。

 

「"タンホイザー"、射線軸よろし!」

「よし、起動! 照準、敵地球軍空母!」

 

 タリアの号令に応じて、チェンが発射シークエンスを開始した。

 

「"タンホイザー"起動。照準、敵地球軍空母。プライマリ兵装バンク、コンタクト。出力定格。セーフティ解除–––––」

 

 艦首が開き、巨大な砲口(ほうこう)が姿を現す。

 

 そして、その砲口から収束した光が放たれんとした、まさにそのとき––––。

 

 一筋の光条が上空から降り注ぐ。

 それは天から降り注いだビームであり、今にも艦首砲を撃とうとしたミネルバの艦首をうち貫いていた。

 

「なに!?」

 

 艦首を吹っ飛ばされ、大きく傾くミネルバの艦橋(ブリッジ)で警報が鳴り響く。

 

「上空より熱源接近! これは––––ガンダムです!」

 

 想像していなかったわけがない。

 だが、連合の猛攻を前にそちらへの警戒が(うす)れ、神出鬼没の相手に対してこちらの対応が遅れたのだ。言い訳をするつもりはない……ないが。

 

「…なんてタイミングなのかしら」

 

 まるで、いつまでも愚かな争いを続ける人類を裁く天使かのように、彼等は空から舞い降りた。

 

「–––––ソレスタルビーイング」

 

 これで遭遇(そうぐう)するのは何度目になるだろうか…。タリアは敵の名を重く低い声でつぶやいた。

 

 

 

 





>カオスvsデスティニー
スティングはよく頑張ったよ…うん。

>シン
ガンダムとの戦いで急成長。
多分ドラマCDとかで語られるタイプの裏話として、ハイネ考案の戦闘シミュレーション訓練とかでアスラン相手に戦ってたりもするから、という理由もある。

>アンケート
ジンクスタイプの場合は、そのまま西暦の機体流用。一部のエースパイロットには各スローネ系武装などのカスタム機体などを配備しようと思います。かなり先の話になりますが、レグナントとかも出るかもしれませんね。

ダガー・ジンタイプの場合は、C.E.の系譜にのっとり、連合ならダガータイプ、ザフトならジンやザクなどの一つ目タイプを継続したいと思います。

オリジナルでいいよーって人は、作者が適当に両方混ぜて設定作ります。多分、扱い的には最初はジンクスタイプを登場させ、アヘッドポジションに各陣営の発展型を配置したいと思います。

説明遅れてすみませんね。
ああ、キラたちにはちゃんとガンダムタイプに乗ってもらうので安心してください。

 

擬似GNドライヴ搭載機を出すなら?

  • ジンクスタイプ
  • 連合はダガー、ザフトはジンタイプ
  • 作者のオリジナルでいいよー
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