【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

49 / 90

ちょっとやる気と余裕が出来たから書きました。
タイトルの由来は無言低評価への焦燥感からだったりもする(ヤバい)


焦燥感

 

 

 

 ザフトの使用するモビルスーツ–––––グフイグナイテッドがライフルモードのGNソードから放たれた粒子ビームを受けてオレンジ色の機体を爆散(ばくさん)させる。

 続いてモニターに飛び出してきた真紅(しんく)のモビルスーツ–––––セイバーに照準を合わせてトリガーを引いたが、それはいとも簡単にかわされて空の彼方へ飛び去ってしまった。

 

 そして、フェイトがセイバーに気を取られている間に、真下から緑色の機体–––––ブラストインパルスがその火力をこちらへ向けてくる。ビームによる攻撃を回避したが、放たれたミサイルの雨はアステリアに直撃し、その機体を大きく吹き飛ばした。

 

「ぐっ!」

 

 ダメージ1。爆風に包まれた視界を見つめながらフェイトは小さく舌打ちした。

 

 敵のコンビネーションが読みきれない。ガンダムの機動性で撹乱(かくらん)して何とか一機を撃墜したが、それにしても時間がかかり過ぎている。

 

 フェイトはこちらへ放たれたビームを回避すると、セイバーへ突っ込んだ。セイバーもビームサーベルを構え、こちらへ接近戦を仕掛けようとする。

 

 ––––ここだっ!

 

 フェイトはセイバーの一瞬の隙をついた。

 こちらへ振り下ろされたサーベルをシールドで受け止めると、そのままシールドを投げ捨てた。わずかに鈍ったセイバーの刃先(はさき)をくぐり抜け、左手で抜き打ちにサーベルを払う。

 

 セイバーの右腕が宙を()った。

 だが、フェイトはそこで動きを停滞(ていたい)させることなく、複雑な舞いのようになおも二本のサーベルを振るう。縦横に弧を描いた光の刃が、赤い機体の頭部を、腕部を、脚部をほとんど同時に破壊した。

 

 –––––次っ!

 

 セイバーを撃墜したアステリアを上空からのビームが襲った。

 いつの間にか換装したのか、高機動使用のフォースシルエットになったインパルスはライフルでフェイトを立て続けに狙い撃つが、今のフェイトにはその全てが止まって見える。

 

「はぁっ!」

 

 降り注ぐビームを簡単に回避し、アステリアの得意とする接近戦へ持ち込む。インパルスはカウンターとばかりにビームサーベルを振るったが、フェイトの方が早い。

 (きら)めく光の刃がサーベルごとインパルスの右手首を斬り飛ばし、返す刃が胴体を両断する。合体を防ぐためにも、飛び出した小型戦闘機(コアスプレンダー)はGNブレイドの投擲で撃墜した。

 

 だが、これしきのことでフェイトの気持ちは全く満たされない。

 

 –––––まだまだっ! あいつはどこ!? あの機体は–––!

 

 焦れたように心の内で叫ぶフェイトに呼応するように、アイツは現れた。間違いない、白灰色の翼ある機体はダーダネルスにアステリアに手傷を合わせた相手––––デスティニーというモビルスーツだ。

 

「っ!!」

 

 フェイトは声もなく()えると、アステリアをデスティニーに加速させた。それに対してデスティニーはその悪魔のような翼から光を放ち、こちらを撹乱しながら攻撃を仕掛けてくる。データで見たミラージュコロイドによる幻惑だろう。

 

 –––––そんなものっ!

 

 フェイトが手早く操縦桿(レバー)を操作して迫るビームを全て回避すると、いつまにかデスティニーの姿は消えていた。いや、消えたわけではない…!

 

「––––そこっ!」

 

 いたのは後ろ––––ではなく上。フェイトの冴え渡る感覚は全てを見切っていた。

 長刀(アロンダイト)を振り下ろすデスティニーの攻撃を回避し、GNソードをライフルモードにして発射する。デスティニーはそれを回避して肩のブーメラン(フラッシュエッジ2)を投げつけてきたが、フェイトはGNダガーを投擲することで対処した。

 

 以前…ダーダネルスの時と同じく、まさに一進一退の攻防だ。

 

 だが、以前と違うのはパイロットにある。

 手強いとはいえ、()()()()()()()()()()()デスティニーのパイロットと、フリーダム戦の時の極限の感覚を発動させているフェイトでは、明らかに後者に分があった。

 

 –––––こんなものじゃないっ!

 

 憤るフェイトは、再びアロンダイトを振りかぶってきたデスティニーの下からビームサーベルを走らせ、その長刀を切断する。さらに、振り返ると同時に左腕に握ったサーベルで離脱を(はか)るデスティニーの右脚を切り裂いた。

 

 –––––アイツは、もっと強かった!

 

 目に見える格闘兵装を失ったデスティニーがその(てのひら)からビーム砲を覗かせるが、タネの分かっている奇襲に引っかかるフェイトではない。GNブレイドで迫る右腕を切り刻むと、左腕でそのままコックピットに突き刺した。

 

 遅れて、光を失ったデスティニーが空中で爆散する。今回はアステリアに損害はなく、フェイトの完全なる勝利だ。

 

 だが、これはフェイトの求める完全な勝利ではない。一時的な勝利の喜びも、浸る間も無く機体から鳴る機械音で現実に引き戻される。アステリアのモニターに文字がツラツラと並べられていく。

 

 

 戦闘シミュレーション タイプD ––– レベル4

 対象 ––––– フェイト・シックザール

 判定:B+(マイスターとして十分の適正あり)

 

 

 その結果を見て、フェイトは小さくため息を吐く。

 

 激闘となったダーダネルス海峡への武力介入から既に一週間が経過している。

 エージェントの手配で宇宙(そら)のクラウディオスに帰投したフェイトは、アステリアのコックピットを使ったシミュレーション訓練に日々(はげ)んでいた。全てはあの時のような敗北をもう味合わないためである。

 

 しかし、彼女の努力とは裏腹に、なかなか結果は出せない。

 マイスターとしてはB+評価は及第点だが、フブキはA評価をキープしているし、シエルとアキサムに至ってはA+評価を得ている。現クラウディオスの砲撃士であり、予備マイスターであるバッツ・グランツがB評価だったことを考えると、正規のマイスターとしては不甲斐ない結果だ。

 

 勿論、かつてはB評価ギリギリだったのを思えば、成長はしている。だが、計画は既に始まっているのだ。せめて他のマイスター達と同じレベルにまではならなくては…。

 

「……こんなんじゃダメ」

 

 誰に言うでもなく一人(つぶや)くと、フェイトは再びシミュレーションを開始する。

 その目は、彼女の心を表すように暗く輝いていた。

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 ソレスタルビーイングが活動を開始してから数ヶ月。

 機動兵器"ガンダム"を所有する彼等は、(たび)重なる武力介入によって世界を更なる混沌に包み込むことで、世界に大きな印象を与えた。例え一度の介入で意味がなくとも、彼等は何度でも介入を重ね、世界は一つになりつつある。

 

「とはいっても、なかなか争いはなくならねぇものだな」

「仕方ないさ。この程度でナチュラルとコーディネーターの溝が埋まるなら、ここまで長引はしないだろ?」

「ハッ、そりゃそうだ」

 

 この世界の真理を突いたシエルの言葉に、自嘲(じちょう)するようにアキサムが笑った。シエルも同調するように頷く。

 

 地球軍とザフト軍で違うとはいえ、本来なら互いに銃を向け合う関係にあった二人だからこそこぼれた言葉だった。ソレスタルビーイングに入るまでは、二つの種族が和解する未来など想像もできなかっただろう。

 

「それでも、私たちは介入行動を続けていくだけ。そうでしょ?」

 

 扉から入ってきたフブキがそんな二人への答えを出す。

 三人のガンダムマイスターは、クラウディオスの作戦室で顔を合わせた。他のクルーはブリッジで己の作業に勤しんでいる。機体メンテナンス中のマイスターたちだけがここで待機していた。

 

「まぁ、その通りですね」

「で、フェイトの奴はまだあそこか?」

 

 あそこ––––格納庫(ハンガー)を指差すアキサムにフブキは頷く。

 残る一人の年少のマイスターは先日から戦闘シミュレーションにどっぷりだ。よほどダーダネルスの件が堪えたらしい。宇宙へ上がってからあんな調子だ。

 

 彼女の気持ちがわかるだけに、頭が痛くなりながらもフブキは整備士から聞いた情報を二人に話した。

 

「タイプDのレベル4で特訓ですって。バレットが言うにはA+を取るまでは辞める気はないらしいわ」

「んな無茶な」

 

 呆れたようにアキサムが呟いた。

 

「タイプDってあれだろ、パイロット能力がオールAに加えて––––」

「仮想敵はこの間のミネルバ隊、それも多対一。アステリアの戦闘スタイルでは最悪。それでA+なんて無茶よ」

 

 実戦でも証明されたように、本来多対一を得意とするのはセレーネやサルースであり、アステリアの性能は一対一の白兵戦で真価を発揮する。

 

 …いや、だからこそ、この間の敗北を重く受け止めているのだろう。いくら取り(とりつくろ)ってもフェイトはまだ子どもだ。簡単に感情を受け止められるわけではない。

 

「全く、ヴェーダもどういう意図であのシミュレーションをフェイトに…」

 

 フェイトにあのシミュレーションを推奨(すいしょう)したのは、きっとヴェーダだ。というよりも、()()が提案したものをヴェーダが採用したというのが正しいのだろうか。

 

 思考に耽るフブキをよそに、アキサムはあっけらかんと言った。

 

「ま、いいだろ。マイスターとして腕を磨いておくことに間違いはない。やりすぎだと思えば指揮官権限で辞めさせればいい」

「あまり気負いすぎない方がいいですよ。いつミッションが来るか分からないですから」

「……かもね」

 

 確かに、シエル達の言う通りだ。

 今は気持ちの整理という意味も込めて、温かく見守るとしよう。

 

(なんでも悪い方向に考えるのは、私の悪い癖ね)

 

 そう思ってフブキが顔を上げた時、三人がいる通信室のモニターにウェンディの顔が浮かび上がった。ブリッジからの通信だ。

 

「–––––なるほど、噂をすればなんとやらってやつね」

 

 それは、これまでがこれまでだった彼等にとっては少しばかり久しぶりの、武力介入の再開を告げるものだった。

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 軍産複合体"ロゴス"

 

 かの有名なブルーコスモスの母体であり、地球各国の政府・軍部と深いつながりを持つ、人類の有史以来存在し続けてきたという秘密結社。

 悪く言えば、自らの利益のために地球とプラント間の戦争を求める死の商人である。

 

 当然、"ヴェーダ"を有するソレスタルビーイングもその存在を古くから認知していた。

 

「–––––つまり、彼等が今後の私たちの主な武力介入対象ということになるわね」

 

 ソレスタルビーイングの掲げる理念の上で、そんな連中は紛争幇助対象になるのは当たり前。規模が規模だけに計画でも後回しにされていただけなのだ。

 しかし、これまで多くの武力介入を実行し、地球・プラント間の争いが停滞(ていたい)した今だからこそ、社会の陰に潜む彼等を()つ絶好のタイミングとヴェーダは判断したらしい。

 

「…でも」

「どうした、シド? 何か気になることがあるなら言っておけよ」

「え、あ…はい」

 

 何かが引っかかったシド・ダミアンが声を洩らす。

 アキサムが続きを(うなが)すと、彼はまるで言いたくないことを言うかのように渋々口を開いた。

 

「ロゴスは勿論、僕ら的に介入対象なのは当然だと思うんですけど…それって本当に可能なんすか?」

「……というと?」

「ほら…出家した身ですけど、僕の実家ってかなりの資産家でして…そこでロゴスって単語は元々知ってはいたんすよ」

 

 シドの言葉に、(あらかじ)め聞いていたバッツ以外の人間が驚きの表情を浮かべる。どこか軽薄なようでいて、よくできた後輩のような態度のシドがそのような家に生まれた人間には(いい意味で)見えなかったからだ。

 

 それは自分でもよく分かっていたらしく、皆の反応を見て苦笑すると、シドは話を続けた。

 

「ロゴスって言っても、所属している人間はみんなバラバラで、部下の部下とかまで考えると、その影響力はとんでもないものになるっす」

「軍事だけじゃないのか…?」

「はい。大きなところだけでも、金融、科学、医療、食品と…。もしかすると、世界中の全ての企業と関わりがあるんじゃないかと思いまして…」

 

〈–––––その通りです〉

 

 シドの言葉をモニター越しに引き継いだ声があった。皆の視線が自然と声の主に集まる。

 

「シャーロット…」

 

 モニターに映ったのは、ソレスタルビーイングのエージェントであるシャーロット・アズラエルだった。

 計画が始まって以来、ユニウスセブン落下などの事情により本人と連絡を取る機会がなかったため、クラウディオス組が彼女と対面するのは随分と久しぶりとなる。

 

〈お久しぶりです、みなさん。本日は"ロゴス"が介入対象ということで、わたくしから彼等についてのご説明をさせていただきたいと思います〉

 

 そうして、シャーロットはロゴス–––––"世界の陰"について話し始めた。

 

 (いわ)く、ロゴスは決して「戦争を操る絶対悪の組織」というわけではなく「巨大な資本そのもの」というのが正しい認識なのだという。

 

 ロゴスは単なる秘密結社ではなく、既に世界システムの一部として存在してしまっている為、ロゴスの構成員全てを消したところで何も変わらない。

 

 世界そのものを変えない限り、ロゴスというシステムは旧時代の象徴としていつまでも存在し続けるだろう…と。

 

「はぇ〜…なんか、すごい話」

「まさか俺たちがしていた戦争の裏に、そんな理由があったとはな」

 

 それは、文字通り世界の裏側に潜む現実だった。

 表側で何も知らずに生きてきたヘルシズ姉妹やシド、国を守るためにと戦ってきたバッツやアキサムがいまいちピンと来ないのも仕方がない。

 

 だが、ここにはロゴスの被害を直接受けた人物たちもいる。

 

「………っ」

「………やはり、ブルーコスモスの裏には」

 

 シエルは苦々しく顔を歪ませ、フェイトは怒りで強く掌を握った。

 

 そして、フブキは強気に言い放った。

 

「戦争根絶のためには、どのみち世界を変える必要があるもの。そこは問題にならないわ」

〈…フフ、言いますわね。今の世界システムを破壊しようすれば、世界そのものが敵になりますわよ〉

「何を今更。そんなものは計画の始まった時から覚悟しているわ」

 

 それに、とフブキは言葉を続けた。

 

「そうでもしなくちゃ、世界は変わらないもの………」

 

 ソレスタルビーイングの計画は、また一つ先の新たなステージへ進もうとしていた。

 

 

 

 





>戦闘シミュレータ
タイプDレベル5になるとストフリと隠者と運命を同時に相手しなくちゃいけなくなる。

>ロゴス
原作後の状況で、ロゴス壊滅後に経済が大恐慌になったのを見るに、ロゴスという組織は世界システムに含まれていると仮定。
経済をロゴスに頼っているという状況を解決=世界を変えるでもしない限り、彼等を本当の意味で壊滅させるのは難しいと仮定。

>ロゴス関連企業
例え彼等の息がかかった軍需企業がデストロイを作っていると言っても、世間一般からすれば、そこは一般企業である。そこへ武力介入をするとなれば、それはつまり過激な武力介入と受け取られるのではないか?

…というちょっと無理矢理な展開を考えていたりいなかったり。
クロスオーバーが難しすぎる!

たまに来る高評価の温かいメッセージが嬉しいです。待ってくれてる人がいるって強く感じれて…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。