【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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天使降臨Ⅲ

 

 アーモリーワンが揺れている。

 内部と外部の戦闘の余波(よは)は、文字通り地響(じひび)きとなって激しい揺れがアーモリーワン内部にいる人間達を襲っており、避難用のシェルターは多くの避難民でごった返していた。

 

「港が使えんとはどういうことだ!?」

「パパ〜どこ?」

「衛生兵!衛生兵!」

 

 アーモリーワンは確かにザフト軍の施設が存在するコロニーだが、(けっ)して民間人が住んでいないわけではない。おまけに新造艦の進水式を明日に(ひか)えていたこともあって、多くの民間人が訪れていたのだ。

 

 そして、そんな多くの人混(ひとご)みの中、多くのSPに(かこ)まれながら姿を表した黒髪の男。見るだけでその地位(ちい)の高さが伺える衣服を身に(まと)った彼は、ギルバート・デュランダル最高評議会議長その人である。

 

「誰だ!誰がここの指揮を取っている!」

 

 普段は政治家として油断(ゆだん)なく笑みを()やさない彼だが、今現在は赤の他人から見ても分かるくらいには(あせ)りを隠せていない。

 

「議長!?」

 

 この緊急時といえども…いや、緊急時だからこそデュランダルの命令は絶対だ。避難誘導をしていた一人がデュランダルを見つけ次第(しだい)小走(こびし)りでこちらへと向かってくる。

 

「あの三機はどうなった。状況を説明してくれ」

 

「いえ、こちらも例の新型が何者かに強奪された以上は何も…しかし、ここは危険です!」

 

 二人が会話している間でも、あちこちから爆音が聞こえてくる。その度に民間人達からは(おび)えと悲鳴の声が聞こえ、デュランダルは苛立たしげに顔を(ゆが)めた。

 

「見れば分かる!だがそれだけではなかろう!?」

 

 遠く離れたここからでも強奪された三機の新型と"何者か"が戦闘している様子は確認している。強奪犯はともかく、走っている最中に視界の(はし)(とら)えた謎のモビルスーツ。ZGMF-Xシリーズに似通った外見をしているその機体をデュランダルは認知(にんち)していなかった。

 

「ともかくここは危険です!有毒ガスも発生しています。議長もシェルターへお入り下さい!事態については後に軍司令部へ…」

 

「そんなことができるか!まだアスハ代表と()()()()()()()の姿すら確認できていないというのだぞ!」

 

 デュランダルの脳裏に二人の少女の姿が浮かぶ。まだまだ獅子(しし)とは呼べぬプリンセス(オーブの獅子の娘)の方はまだ希望はある。素性は隠しているようだが、デュランダルは真実を知っている。彼女の側には優秀な護衛(アスラン・ザラ)がいるのだ。

 しかし、もう一方の彼女。デュランダルをして腹の底を読み取ることのできなかった大西洋連邦から非公式にやってきたというクイーン(アズラエルの名を持つ女)の方はどうなっているのか…。

 

「しかし…ならばせめて"ミネルバ"へ!」

 

 "ミネルバ"

 その名が示すところをデュランダルはしっかりと認知している。とてもシェルター()わりに避難するようなところではないことも。しかし、この混沌(こんとん)とした現状において、あそこほど安全な場所がないこともデュランダルは知っていた。

 

「議長、こちらです!」

 

「ええい!」

 

 あの二人に何かあれば一気に国際問題になる。共に非公式でやってきたとはいえ、こちら(プラント)あちら(地球)側の人間へ被害を(もたら)せば、余計(よけい)な火種を生み出すことになってしまう。

 やってくるかもしれない最悪の未来の可能性を想像して、思わず悪態を吐きながらデュランダルはSPの後を追った。

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 MA(モビルアーマー)形態となったガイアが飛び掛かるようにこちらへと突進してくるが、前脚(まえあし)に当たる部分を損傷(そんしょう)しているからか、動きに精彩(せいさい)がない。

 

 飛び込んでくるガイアを優れた運動性で真横(まよこ)にずれることでかわし、左腕に(にぎ)られたビームサーベルで左翼の"グリフォン2ビームブレイド"を切断する。時折カオスやアビスからの援護攻撃が飛んでくるが、あちらにはエネルギーに問題があるためか先程よりも火力は控えめであり、回避することは容易(たやす)い。

 

 一瞬にして三機の新型を蹴散(けち)らしたアンノウンこと"ガンダムアステリア"は真っ直ぐに手持ちのGNソードを3機へと向ける。

 

 そのコックピットの中で、フェイト・シックザールはシートに体を預け、軽く操縦桿(そうじゅうかん)(にぎ)っていた。

 

 彼女の目が静かにモニターを追っていく。GNドライヴ問題なし。GN粒子散布状態良好。他の装備・機関・駆動(くどう)系に関しても問題を示す表示はない。

 

「ファーストフェイズ継続…問題なし」

 

 ––––––––作戦を続行させる

 

 前方モニターでは、頭部及び右腕、ビームライフルなどの多くを損傷したガイアを庇うようにカオスとアビスが前に出てくるが、彼等もこのままでは勝ち目がないことを(さと)ったのかやや逃げ腰になっているのが見て取れる。

 

「…訂正、ファーストフェイズ終了します」

 

 フェイトは少しだけ操縦桿を握る指を(ゆる)める。ファーストフェイズは終了したとフェイトはこの状況を見て判断(はんだん)したのだ。

 

 ファーストフェイズの作戦目的は、ただ一つ。ザフトの新型モビルスーツであるセカンドステージシリーズの機体をガンダムでもって打ち倒し、敵に(かす)られもせずに圧倒することだ。

 

 そして、フェイトは無事にそれをやり()げていた。この強奪事件において、ザフト量産機を圧倒したカオス等の新型機体。そんな新型をもガンダムが蹴散らした。あの場にいた関係者達、そして目の前の新型の強奪犯達にも圧倒的な力の差を見せつけた。どんな新型を開発しても、それを凌駕(りょうが)する機体が存在するということを()()たりにさせたのだ。

 

 それが直ぐには効果がなく、返って彼等に余計な反発心を()きつけるだけだということは分かっていた。

 

 だが、それでいいのだ。彼等の意識の底にはっきりと、厳然(げんぜん)と、驚異(きょうい)的な力を持つこの機体の存在を刻み込む。それが今回のミッションの目的なのだから。

 

「…もう貴方たちに用はないわ」

 

 三機に向けていた実体剣…GNソードを下げる。

 今回の作戦の最終目的はガンダムという存在を世界に明示(めいじ)することにある。世界に新たな争いを生んだ存在である彼等を許すわけではないが、彼等にはその身で持ってガンダムの力を世界に伝えてもらわなければならない貴重な人材だ。()えて生かしておくのも作戦の内らしい。

 

 三機は戸惑(とまど)うような仕草を見せていたが、やがてこの場から離脱するためにアステリアから離れていく。フェイトとしては、ビームの一つでも撃ち込みたいと思ったが、この場は私情を優先するべきではないとして辞めた。

 

 ちょうどその時、アステリアのコックピット内の電子警告音(アラート)が鳴った。モニターに後方から接近する機影(きえい)の情報が表示される。距離は二千。接触までおよそ五秒。機影の数は三つ。

 

「来た…」

 

 機体パターンから接近する三機の内の二機は、ザフトの次期主力モビルスーツでたる"ZGMF-1000 ザクウォーリア"及び"ZGMF-1001 ザクファントム"であることが分かる。情報では連合のストライカーパックシステムを参考にしたウィザードシステムなる物を換装して戦うことができるようだが、この緊急事態故にか何も装備していない()の状態だ。

 

 そして、その二機のザクを引き連れるようにこちらへ向かってくる白亜の機影。アステリアと同じツインアイが特徴的なヘッドパーツをしたその機体は、ザクやジンとは違い、強奪された三機のモビルスーツに近い構造をしている。ヴェーダから送られてきた情報では"ZGMF-X56S インパルス"と言うらしい。しかし、それ以外の情報はまだ実践(じっせん)テストも行っていないために存在しないようだ。

 

「……ガンダム」

 

 それらのデータを瞬時(しゅんじ)に頭に走らせた後、フェイトは操縦桿を軽くずらした。

 

 同時にアステリアが機体を加速させる。先程までアステリアがいた場所を三筋のビームが通り過ぎていった。次いで中央のインパルスがビームライフルを撃ちながらこちらへと接近してくるが、フェイトは操縦桿を微調整(びちょうせい)して最小限の動きでそれをかわす。

 

 アステリアの右腕に装備されているGNソードは、折り(たた)み式の剣と内蔵式の(じゅう)を切り替えることができる。フェイトは展開していたGNソードを折り畳み、ライフルモードに切り替えてトリガーを引いた。ザフト軍の三機小隊はそれを散開することで避けたが、それは既にフェイトの術中に(はま)っていると言っていい。

 

 アステリアはライフルモードを解除し、折り畳まれていたGNソードを再び展開。一機だけ孤立したザクへと急速に近づき、振り下ろす。ザクのパイロットも優秀なようで早めに回避行動を取ったようだが、アステリアの攻撃の方が早い。振り下ろされたGNソードはザクのシールドごと左腕を切断した。

 

「流石に対応が早い…っ」

 

 アステリアが残りの二機に向き直った時、ザクとインパルスは隊列を崩さずにビームライフルの照準をこちらに向けていた。即座に発射されたビームだったが、アステリアは横滑(よこすべ)りするような鮮やかな動きだけで全てを回避した。

 

 一瞬、インパルスとザクの挙動に戸惑いが見えた。無理もないだろう。ガンダムは全てのマシンにおける運動性能の常識を逸脱(いつだつ)したモビルスーツだ。いくらザクが次期主力機、インパルスが新型機体だと言ってもガンダムには及ばない。敵パイロットはそのことに驚きを禁じ得ないのだろう。

 

 それでもインパルスがビームサーベル片手にこちらに向かってこようとしたその時、アーモリーワン全体にまで響く爆発音が外部から聞こえてきた。まるで戦艦が轟沈したような戦闘の音だ。それを聞き、フェイトは視線をコロニーの外へと向ける。彼女には外部での戦闘音に心当たりがあった。

 

「時間ですか…シエルさん」

 

 フェイトがそう呟くのと、カオスとアビスがアーモリーワンの外壁(がいへき)に穴を開けるのは同時のことだった。

 

 

 

▽△▽

 

 

 暗黒の宇宙(そら)の中、巨大なコロニーを背後に一機のモビルスーツが一方的な戦闘を展開していた。長距離射撃支援・砲撃型の機体"ガンダムセレーネ"だ。手には長距離射撃用のGNメガランチャーが(にぎ)られている。

 

 そのコックピットでは、パイロットのシエル・アインハイトがシートに身を(しず)め、静かに迫り来る敵モビルスーツを(なが)めていた。中性的な外見とは裏腹に、その目には確固たる信念が込められているのが伺える。

 

 セレーネに向けて、近づいてくる二機の機影。"ダガー"と呼ばれる地球連合軍の量産モビルスーツだ。ビームライフルを連射しながらこちらへ向かってくるそれらの機体色は宇宙に()()むような漆黒へ染められている。知らぬ人が見れば連合と異なる部隊が運用しているように見えることだろう。

 

「テロリストに見せかけているのか…あるいは作戦なのか…」

 

 どちらにしても無駄なことだ。彼等のザフトの新型強奪作戦は既にガンダムの力を披露(ひろう)するための舞台装置へと変わっているのだから。

 

 シエルの手が操縦桿を素早く動かす。セレーネの右手に()げられていたGNメガランチャーが大きく振り上げられ、フォアグリップを左手でがっちりと支えられる。そして、目標に向けて構えられた。

 

 セレーネのGNドライヴが(かがや)きを放ち始める。エネルギーをチャージしているのだ。光がキリキリと高まっていき、完全にエネルギーが充電(じゅうでん)されたところで、シエルはトリガーを引いた。

 

「セレーネ、目標を破壊する」

 

 GNメガランチャーから巨大(きょだい)なビームが発射され、正面のダガー二機を飲み込む。膨大(ぼうだい)な熱量に晒されることになったダガーは装甲がもがれ、消失し、やがて爆発。爆煙だけを残し、なおも煌めく粒子ビームの光は宇宙の果てにまで伸びていった。

 

 それを冷静に見届けたシエルだったが、セレーネのコックピットに電子警告音(アラート)が鳴る。後方から攻撃を仕掛けくる機影四。港から出撃したとされるザフト軍のモビルスーツだ。

 

「なるほど…素早い対応だ。といっても今回の僕たちにザフトと戦う予定はないんだけどね」

 

 だがしかし、あちらから攻撃を仕掛(しか)けてくるというのなら仕方がない。セレーネの肩部から(おびただ)しい量のGN粒子が排出され、それがフィールドとなってセレーネを覆うように展開する。ゲイツやシグー、ジンといったモビルスーツ達が各々の武装でもって攻撃を仕掛けてくるが、それはビーム・実弾を問わずにこのGNフィールドを突破することは叶わない。

 

「やれやれ、ザフトというのはこれだから…っと、こうしてプラントを悪く言うのは僕の悪い癖かな?」

 

 そう言いながら、シエルはGNメガランチャーを変形。大口径の砲身が閉じられ、砲撃モードから中距離用のライフルモードへと切り替える。そして、照準が敵機に重なったタイミングでトリガーを引いた。

 

 GNメガランチャーから放たれた細くとも正確な粒子ビームは、寸分の(くる)いもなく正面のゲイツの頭部カメラを貫く。続けて発射。残りのモビルスーツに対しても同じように頭部、武装、推進部などを撃ち抜いた。

 

「コックピットは外したんだ。早く離脱しなよ…って、新手?」

 

 全敵モビルスーツを撤退(てったい)させたことを確認し、GNフィールドを解除。GNメガランチャーを再び砲撃モードへと変形させると、それを先程から執拗(しつよう)にビーム攻撃を行ってくるナスカ級へと向ける。先程のGNメガランチャーの火力を見たのにも関わらずに、ナスカ級はこちらへ真っ直ぐにビーム攻撃を行いながら接近してくる。

 

「特攻?…死ぬ気なのか?」

 

 この砲撃がテロリストの物であり、それをアーモリーワンへ向けられるのではないかと思い込んでいることも考えられる。ただでさえ中と外とで混乱している状況だ。無理もない。だとすると、彼等は文字通り死ぬ気でこのコロニーを守ろうとしているのか。

 

「立派な物だよ最近のザフトは、連合にも見習って欲しいくらいさ。…けどね!」

 

 けれど、こちらとしてもだからといって引く理由にはならない。シエルは、セレーネのコックピット上部から精密狙撃用の専用スコープを引き下ろしてセットした。小型の接眼用モニターがせり出す。

 

「狙い撃つ!」

 

 シエルがトリガーを引くと同時にGNメガランチャーから再び巨大なビームが発射される。それはナスカ級を正面に捉えていると思われたが、狙いは外れ左舷(さげん)の一部を掠るのに留まった。しかし、それこそがシエルの(ねら)い。ナスカ級を掠った粒子ビームはその背後に控えていた二機のダガーを完全に消失させた。

 

「残存するモビルスーツ0。連合は撤退したか…。さて、フェイトの方はどうかな?」

 

 スコープを戻し、正面モニターを見つめるシエルの視界には、アーモリーワンに空いた大穴から飛び出してくる三機のモビルスーツ。そして、それに(つら)なるように現れた光の粒子を放つ機体…アステリアを映し出していた。





確かにインパルスは出した。しかし、パイロットを出すとは言っていない。シン達の視点はまた次回ということで。

作者はコロナのワクチンの副作用で数日寝込む予定なので暫く更新が遅れます。誠に申し訳ございません。
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