【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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たまにランキングに乗る本作。
読者が増えると書く側のやる気も増えるよね。


武力介入

 

 

〈こちらジブラルタル・ポートコントロール。LHM–BB01"ミネルバ"の到着を歓迎する〉

 

 ジブラルタル基地からの連絡が入ってきた。

 ミネルバはダーダネルス海峡での激戦の後、進路を変えてジブラルタルへ向かい、そして今、ようやくその港を一望できる場所まで辿(たど)り着いたのだ。 

 

 ダーダネルスからここまでは、連合の勢力圏も通ってきたのだが、あの一戦で多くの被害を受けたからなのか、あれ以降ミネルバに戦闘を仕掛けてくることはなく、それ故にソレスタルビーイングも姿を見せないでいる。

 

〈これより貴艦を二番プラットフォームに誘導する。激戦の疲れ、ゆっくりと癒してくれたまえ〉

「こちらミネルバ、了解。ビーコンを確認後、二番プラットフォームへ移動する」

 

 バートが管制に答え、艦橋(ブリッジ)にホッとした空気が流れる。

 それほどの激戦だったのだ、ダーダネルスでの一戦は。その証拠とばかりにジブラルタルに入港するミネルバはボロボロであり、搭載するモビルスーツにしても、武装を含めて損害がなしなのはジャスティスのみという有り様だ。

 

 だが、それを差し引いても得たものがあったというわけだ。連合を追い払い、本命であるソレスタルビーイングを撃退するという"勝利"を。

 

「いや、凄いですねぇ。まるで英雄扱いじゃないですか、私たちは」

 

 分かりやすいのはアーサーだ。港を埋め尽くす艦影(かんえい)に目をみはり、声を(はず)ませている。

 

 確かにこれほどの戦力が集結しつつあるのは壮観(そうかん)だろう。今までほぼ単身で戦場を切り抜けてきたミネルバクルーとして、これほど心強い感覚は初めてだ。

 

 前線に復帰したばかりのアスランを含めて、ほぼ新人ばかりのメンツだというのに、よくここまでやってくれたと誇りにも思う。

 

 だが、タリアは今の状況を単純に喜ぶことができずにいた。

 

「このまま済むとは思えないわね」

「え?」

 

 唐突なタリアの言葉に、アーサーだけでなく横にいたメイリンも目をぱちくりさせる。

 

「ソレスタルビーイングよ。一度"勝利"を送られたといっても、戦術的には見逃されたという方が大きいわ……それに」

 

 自分たちザフトがここまでムキになっている時点で、ソレスタルビーイングは通常のテロリストの枠を逸脱(いつだつ)している。そも、一組織で連合とザフトを相手に戦いを挑んでいる時点で異常なのだ。

 

 ならば、そんな組織がたった一度の敗北で大人しくしているはすがない。敗北したままで終わりにする程度なら、世界に喧嘩を売ったりはしないはず。

 

「あの、艦長?」

「…ごめんなさい。今はただゆっくり休んでちょうだい」

 

 話について来られずに、目を(またた)かせているアーサーに、タリアは苦笑を向ける。

 

 心配性になりすぎているかもしれない。だが、それをクルーたちにまで伝染させるのは良くないことだ。ここまでよくやってくれたクルーたちを、どうにか休ませなければ…。

 

 だが、タリアにはどうしても、彼等––––ソレスタルビーイングがこのまま大人しく黙っているとは考えられなかった。

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

〈これより本艦は、ジブラルタルへの入港シークエンスを始めます。各科員は所定の部署に()いてください。繰り返します、これより本艦は–––––〉

 

 艦内にメイリンのアナウンスが(ひび)(わた)り、クルーの動きが慌ただしくなった。レクリエーションルームから飛び出していくヴィーノたちを見送りながら、シンはふと呟く。

 

「ジブラルタル入って…次はどうすんのかな、俺たち…?」

 

 ある意味で全ての始まりとされた地球軍の強奪部隊は撃退した。

 アスランの報告ではガイアはガンダムに大破(たいは)されたのを確認したそうだし、カオスは自分が中破させた。アビスは健在のようだが、母艦がああもやられていては再び攻撃するにはかなりの時間がかかるだろうというのが艦長たちの見解らしい。

 

 となると、次は自分たちは何と戦えばいいのか。

 やはり、地球軍と戦い続けるのだろうか。それとも…。

 

「さあな」

 

 (かたわら)に立ったレイが、淡々と答える。

 

「だが、間違いなく言えるのはまだ戦争は終わっていないということだ。俺たちはザフトとして、いつでも戦える準備をしておかなければならない」

 

 自動販売機でドリンクを買ったルナマリアが、こちらへ歩み寄りながら話に加わる。

 

「でも、どうやったら戦争が終わるのかしら。だってほら、今それどころじゃないでしょ?」

「…ああ、そこが問題だ」

 

 戦争を終わらせるには、どこか上手い落とし所を見つけなければならない。国民たちを納得させるだけの理由とともに。

 

 しかし、今地球とプラント両国には、簡単に武装解除するわけにはいかない事情があった。

 

「ソレスタルビーイング。奴等の存在が、世界を消極的にさせている」

「…変わることが怖いんだ。アイツらは強いから。どの国だって、被害を受けたくないだろ」

 

 ソレスタルビーイングの行動方針はシンプルだが複雑でもある。少しでも戦争に繋がるような動きを見せれば、たちまち彼等はやってくるだろう。最強のモビルスーツ、ガンダムとともに。  

 

 本気になれば一国の軍隊と正面から戦って勝利してしまうような組織が近くにいて、和平を結べるほどどの国も日和(ひよ)ってはいない。皮肉にも、彼等の存在がこの(おろ)かとしか言いようのないゼロサムゲームを引き伸ばす理由となっていた。

 

「だが、その間に人は死ぬ」

 

 その言葉に、シンはハッとして親友の顔を見上げた。

 

「確かにこのまま武力介入が続けば、戦争は終わるだろう。モビルスーツはいくらでも作れるかもしれないが、それに乗って戦う兵士はそうはいかない」

「でもっ、そんなの!」

 

 シンは反射的に声を上げて立ち上がったが、その続きは言葉にならなかった。

 

「奴等に関しては圧倒的に情報が足りない。敵の機体が四機だけとは限らないし、戦争根絶という目的が本当なのかも不明。だが、奴らは一貫して武力介入を続けている。俺の言ったような未来になる可能性は十分にある」

 

 そこまで多くの犠牲(ぎせい)の果てに手に入れる平和は、はたしての正しいのだろうか。

 

 シンにはソレスタルビーイングが理解できなかった。彼等の理念がどんなに崇高(すうこう)なものだとしても、それは誰かの大切な人やその家族を悲しませてでもだ果たすべきものなのか。

 

 分からない。まるっきり分からない。

 自分はまだ16で、ザフトレッドのエースといってもまだ新米だ。知っていることよりも知らないことの方が多すぎるのだ。議長やレイのようにどこか先を見越したような考えは浮かびそうにない。

 

「…アスランとハイネに話を聞いてみる」

 

 そう言って、シンはレクリエーションルームを後にした。

 あの日、独断行動を取った自分を叱りつけた上司達……自分に見えない何かを見えているとすれば、あの二人しかいないと考えたからだ。

 

 

 そして、それから数時間後、ソレスタルビーイングが武力介入を再開したということが情報で届けられた。

 

 その介入先は––––––。

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 ユーラシア連邦、旧ロシア国––––モスクワ。

 そこにある一際大きな建物、アドゥカーフ・メカノインダストリー社に向かって、二機のガンダムが降下していた。

 

 いかにも軍需工場といった景色と雰囲気が、機体にある全方位コックピットモニターから一望できる。

 

「目標ポイントに到達。避難警告終了後、攻撃を開始する」

 

 降下した内の一機、ガンダムセレーネのマイスターであるシエルは、サブウィンドウに映るフェイトに声をかけた。

 

〈…アステリア、了解〉

 

 フェイトは感情を押し殺したかのような声で答える。

 

 今回、二人のマイスターに下ったミッションは、連合のMA開発を支えるアドゥカーフ・メカノインダストリー社の完全破壊だった。正確には、その内部で(つく)られている新型モビルアーマーを、完成させるまでもなく抹消(まっしょう)させろという命令だ。

 

 そのために、殲滅力の高いガンダムセレーネとGNハイメガランチャーを装備したガンダムアステリアが最適として選ばれたのだ。

 

 アドゥカーフ・メカノインダストリー社は、軍需企業の中でも特にロゴスと繋がりの深い会社の一つだった。先日戦闘したゲルズゲーやザムザザーを開発した会社でもあり、その特徴的な技術が陽電子リフレクターである。

 しかし、その優秀な会社実績の裏には、人体実験や非合法な製造方法が関わっているとヴェーダの調査によって明らかになった。

 

「警告開始より15分経過を確認。これより、ファーストフェイズを開始する」

 

 そして、(くだん)の機体開発に生体CPU–––––エクステンデッドが含まれていると知り、シエルの中に残っていた僅かな迷いはなくなった。

 

「GNメガランチャー…チャージ開始」

 

 ヘルメットのバイザー越しに、シエルは眼下に見えるアドゥカーフ・メカノインダストリー社の様子を(なが)めていた。わらわらと各所から社員らしき人間が出てきて、こちらを見上げている。大慌てで会社の外へ車を走らせる者の姿も見えた。その中には、目標の兵器とは全く関係ない人物もいるかもしれない。

 

 だからこそ、警告をした。それで生き残れるかは彼等次第だろう。

 それでも、シエルは自分のような強化人間を兵器のパーツとして扱う企業を許すつもりはなかった。

 

「GN粒子、チャージ完了…一気に殲滅させる」

 

 圧縮粒子が最大まで充電されたGNメガランチャーの照準が目標を(とら)える。そこまでして、ようやく眼下の人間達はこれから起こる事態を理解したようだ。

 だが、もう遅い。彼等の命運はシエルのトリガー一つに握られているのだ。これから、シエルがトリガーを引くだけであそこにいる生命は簡単に(ほうむ)られることになるだろう。

 

「ガンダムセレーネ、GNメガランチャー、撃つ」

 

 怒りを使命感で(まぎ)らわし、シエルは速やかにトリガーを引いた。

 

 空気を切り()くような衝撃音が聞こえ、GNメガランチャーの砲口(ほうこう)から淡い桃色の粒子ビームが(ほとばし)り出る。単機のモビルスーツなど容易に飲み込んでしまうほど巨大なソレは、コンクリートで舗装(ほそう)された敷地面を(えぐ)り返して焦土(しょうど)とかしていった。

 

 大型GNコンデンサーを積んでいるセレーネの砲撃は終わらない。

 シエルは、GNメガランチャーの射線を動かし、地面に黒い線を引いていくように工場内の施設を破壊していった。

 

 まず狙うのは、やはりモビルスーツなどを保管している格納庫(ハンガー)。続いて、武器庫、整備室、資財庫と、ローラーで潰されるように緋色(ひいろ)の光条を()びて焼け焦げた鉄骨とともに瓦礫(がれき)に変容していく。

 

 避難せずに中にいたであろう人間たちは、みな苦痛を感じる間も無く蒸発してこの世から消えていった。

 

 

 軍需工場を破壊するには、まだまだ終わらない。

 セレーネの砲撃が終了し、交代するようにアステリアのGNハイメガランチャーが発射される。その粒子消費量に比例して、セレーネのそれよりも遥かに強力な粒子ビームは、いとも簡単に大企業の施設を破壊していく。

 

 圧倒的な光の奔流(ほんりゅう)は、GNメガランチャーが作り上げた瓦礫の山をも薙ぎ払い、モビルスーツ開発が行われている地下施設まで到達した。

 

 会社員たちの働くオフィスが、技術研究部の研究室が、そして開発されていた新型モビルアーマーが、焼失(しょうしつ)し、融解(ゆうかい)し、倒壊(とうかい)し、大破(たいは)し、爆発の(ほのお)を上げた。

 

 時間にして、わずか三分にも満たなかった。

 強大な粒子ビームを照射され続けたアドゥカーフ・メカノインダストリー社は、反抗(ほんこう)する暇も与えられないまま、炭化した土くれと瓦解(がかい)した建造物に姿を変え、完全に沈黙した。

 

「……ミッション終了」

 

 自分の成果を確認したシエルは、GNメガランチャーの砲身を閉じて背腰部に装着する。アステリアもまた、GNハイメガランチャーのバレルを縮小・砲身を折りたたんで元の形態に戻した。

 

「それにしても…これは一方的だ」

 

 眼下に広がる光景は、とても大企業があった跡地とは思えない。

 自分たちがやったこととはいえ、ここまで過激な武力介入をして、何の良心も痛まないわけではない。だが、やるしかないのだ。ガンダムマイスターとして。

 

「作戦終了、これより撤退行動に移る」

 

 これから、このような武力介入が続くのだろう。それがソレスタルビーイングの計画に必要ならば、マイスターとしてそれに応えるのがシエルの仕事だ。

 どんな汚名も受け止めるよう。いかなる処分も甘んじて受け入れる。だが、それは全てが終わった後、戦争根絶が達成された後の話だ。

 

 そう心に決めて、シエルが機体を離脱させた時だった。背後をついてくるガンダムアステリアと繋がる通信スピーカーからノイズのような音が聞こえてきた。

 

 何事かと思って耳をすませる。

 それは、ノイズではなく、人の声…フェイトの声だった。

 

 …ごめんなさい、と彼女は言っていた。

 

 短い呼吸音が繰り返される。

 それは必死に泣くのを我慢している様子だった。(あふ)れる涙を堪えきれず、しゃくりあげるような嗚咽(おえつ)

 

 気のせいかもしれないし、そうでないのかもしれない。

 

 しかし、本当にフェイトが涙を堪えているのだとすれば、それをシエルには聞かれたくはないのだろう。

 

 彼女は人一倍ガンダムマイスターであることに誇りを持っていた。ガンダムに対して深い思い入れがあることも知っている。そんな彼女に取っては、今回のミッションは酷な物だったのだろう。

 

 それでも、マイスターとしての誇り故に任務に私情を持ち込まないように堪えている。まだ14歳の少女がだ。

 

 シエルは何も言わなかったし、何もいえなかった。

 これはヴェーダの下したミッションプランである。ソレスタルビーイングはテロリストである以前に組織であり、自分たちガンダムマイスターはガンダムという象徴を操ってはいても、決して組織を率いる者ではないのだ。

 

 機械的なヴェーダの指示に対して、疑問を持つことはいくつもあった。だが、組織とはそういうものだと思っていたから。今のシエルには迷うことが多すぎるから……結局はヴェーダの命令に従うことしかできないのだ。

 

「……フェイト」

 

 だから、せめてこれが仲間としてできることだというように、シエルは静かに通信のスイッチを切った。

 

 

 

 黒煙の上がるアドゥカーフ・メカノインダストリー社跡地をバックにして、2機のガンダムがその場を後にしていく。

 

 望まずとも、過激化していくソレスタルビーイングの武力介入。それによって、世界は大きな変革の始まりを迎えようとしていた。

 





なるべくCB側を悪役っぽく書かなきゃいけないんだけど、それが一番難しい。トリニティというキャラクターがいかに(役割として)重要だったかが分かる。

今回の章では、物語を一気に加速させていきますので、続きが気になる方は評価・感想をお願いいたします(挨拶)
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