【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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ここから急スピードで物語が進んでいきます。
覚悟はいいですか…?


混沌の先に

 

 

 ソレスタルビーイングによる武力介入は熾烈(しれつ)を極めた。徹底的に目標を(つぶ)すスタイルを貫いているのである。非生命体であろうと生命体であろうと、構わずにだ。

 任務のためならば、民間人を巻き込むことも厭わないその冷酷さは、世界に恐怖と戦慄(せんりつ)という形で刻みつけられていった。

 

 勿論、それら一連のニュースは、ヴェーダを通じて逐一(ちくいち)クラウディオスのクルー達にも伝えられていた。彼等は、苦い表情を浮かべて眉に寄せる(しわ)を深くさせていく。

 

「すっかり嫌われ者っすね、俺たち」

 

 意気消沈したようにシドが呟く。

 

「今さらだろ」

「当然の反応だな」

 

 それに対して、覚悟の上だったのだろう、アキサムとバッツはなんてことないように答えた。銃を撃つということは、誰かに恨まれることだと元軍人である彼等はよく理解していた。

 

 彼等は、決して自分たちのことを"正義の味方"だとは思っていない。自分たちの行った武力介入によって犠牲(ぎせい)になる人々が出てくることなど分かっていたことだ。

 歴史上、誰もなしえていない「戦争根絶」という理念のために働いているとはいえ、ガンダムという力を武器にしている以上、犠牲になった人々からすれば間違いないが"悪"なのだろう。

 

「けど、これで連合もザフトもより軍備を増強されていくんじゃ…」

 

 しかし、人から…世界から悪意を受けることに慣れていないウェンディは弱気そうに言葉を洩らす。口にはしないが、隣の席に座るヴァイオレットも同じ意見のように思えた。

 

「不安なの?」

 

 二人を気遣うようにフブキが言った。

 

「そうわけじゃ…ただ、私たちの行動が、逆に新たな紛争の火種になる気がして」

 

 後悔があるわけではない。しかし、疑問に思うことは多くあった。

 

 特にザフトがデスティニーやジャスティスを投入してきたからこそ、よりそう思う。ガンダムの存在が、逆に強力なモビルスーツ開発を促し、戦争の原因を生み出しているのではないか…と。

 

 そんなウェンディの言葉を聞き、暫く思案した後にフブキは静かに口を開いた。

 

「警察の存在意義と同じね。警察は犯罪組織撲滅や犯罪抑止を目的として存在しているけれど、実際に犯罪がなくなれば、彼等の存在意義は失われる。かといって、警察機構を全部なくしてしまえば、犯罪は飛躍的に増えることになる」

「それって…」

「ハナから矛盾しているのよ。私たちの存在は」

 

 フブキはあっけらかんと言った。

 戦争を止めるために武力で介入する。それは喧嘩を止めるために暴力を振るうのと同じだ。人は痛みに敏感(びんかん)だ。そして憎しみは敵意へとすり替わる。

 

 敵意となった憎しみは根深く残り、常に争い事の発火点となる可能性を(はら)んでいる。そして戦争が起こる。堂々巡(どうどうめぐ)りだ。この堂々巡りを武力介入によって断ち切ろうなどということは、到底(とうてい)不可能な夢物語に見えることだろう。

 

 しかし、彼等はこの不可能を実現させるために活動を開始したのだ。その過程でいかなる犠牲を払うことになろうとも、今さら止めるなどということはできない。

 

「奴等が軍備を増強するなら、その上で叩き潰すだけだ。奴等が戦争を諦めるまでな…」

 

 アキサムは強気にそう吐き捨てた。あるいは、不安そうな彼女達を鼓舞(こぶ)するつもりもあるのかもしれない。その本心を見透かしてバッツは何も言わずに頷いて同意した。

 

「–––––その果てに待つのが、計画の第一段階というわけね」

 

 フブキがやや感傷めいた口調で言った。

 地球とプラント間にある(みぞ)をソレスタルビーイングへの憎しみで()め、両者が手を取り合う世界を作り上げること。それがヴェーダによる「戦争根絶」を実現するための計画の第一段階だった。

 

 そして、そのためには世界中の敵意をソレスタルビーイングに集める必要がある。過激とされているここ最近の武力介入も全てはそれが理由なのだ。

 そうでなければ、誰がここまで過激な武力介入を好き好んで行うものか。ここにいる皆が皆、いい仲間だからこそ、その現実に苦しんでいるのだ。

 

 それでも、戦争根絶という叶えたい目的があるから…。

 

「フェイト達には、辛いミッションが続くかもしれないがな…」

 

 おそらく、地上では次々と武力介入が行われていく。その過程で、自分達が世間からどう思われているかは、あの二人もよく知っていくことだろう。表に出さなくても、ショックは受けるかもしれない。

 

 ならば、それをサポートするのも仲間として、年長としての務めだ。アキサムはそう思って気持ちを一心した。同時に、ヴェーダから届いた次のミッションプランを思い出す。

 

「さてと、俺も地上へ降りるか。艦のことは任せたぜ、フブキ」

 

 その数時間後、クラウディオスから整備を終えたガンダムサルースが発進し、大気圏へと降下していった。

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 プラント最高評議会議長であるギルバート・デュランダルは、ザフト軍が地上の拠点として利用しているジブラルタル基地内にある彼のオフィスでデータの検証を行っていた。

 

 デュランダルは、ミネルバ隊の集めてくれたガンダム戦闘データや、ソレスタルビーイングの活動パターンから、彼なりの視点と見解で彼等を分析(ぶんせき)していた。

 

 マスコミ等のメディアが現在起きている事象と過去に起きていた事象との因果関係を(さぐ)って真実を導き出そうとしているのに対し、デュランダルはそれらに加えて、ソレスタルビーイングの犯行声明に映っていたジョージ・グレンによく似た男の線から、真実を探ろうとしていた。

 

 そして、彼は遂に映像の男の正体を確信を持って突き止めた。デスクにあるコンピュータモニターの画面には、とある一人の人物とそれに纏わるデータが映し出されている。

 

(…私の仮説通り、彼の正体が本当に"あの人物"だとすれば、こんなバカげた計画を立てていたのにも納得できる。ジョージ・グレンがファーストコーディネーターと告白したのも、我々コーディネーターに未だに欠陥が残っていることも……)

 

 だが、分からないこともある。

 デュランダルは眉を顰めながらも、画面にガンダムに関する調査・考察データを映し出した。

 

(これほどの性能を持つ機体…たった数十年で造り出せるものではない。ガンダムが四機しか確認されていないことを考えても……おそらく、秘密はあの動力部にあるのだろう)

 

 デュランダルは決して機械工学に詳しいわけではない。専門は遺伝子分野だし、モビルスーツに関しては専門外だ。

 だが、それでもあのガンダムの特殊性の高さには気がつく。調査にあたった技術者達も、皆口を揃えて機体の動力と光の粒子を気にしていた。

 

 そして、遂にプラントの優秀な技術者達は、ガンダムの光の粒子の正体について、後一歩のところにまで迫ろうとしていた。その情報は、既に纏められてデュランダルの元にも送られている。

 

(ガンダムの放つ特殊粒子が生成可能な環境は–––––木星)

 

 木星。その高重力下でのみ可能な加工作業。

 とはいっても、遠く離れた木星に渡航(とこう)し、それを完成させる為には、多くの人的資材と物的資材を必要とする。普通の人間には、不可能だろう。

 

 しかし、デュランダルには引っかかるものがあった。

 ソレスタルビーイングを創設したのが"あの人物"なのだとすれば、丁度いい機会があったはずだ。

 

 まだプラントがなく、ナチュラルという言葉すら世界に知られていなかったC.E.15年に、ジョージ・グレンが自身が設計した木星探査船「ツィオルコフスキー」に乗り込み木星を目指したというプロジェクト。同時に彼が「コーディネーター」という存在を世界に告白した出来事でもある。

 

 だが、その計画の本当の目的が、有人による木星探索でも、コーディネーターの告白でもなく、もっと別のものにあったとすれば……。

 

(絶対ではなくとも、ソレスタルビーイングに関わっていることに間違いないか)

 

 研究者の立場からすれば、まさか…という思いもある。

 だが、それ以外、ガンダムという特殊な機体を実現させる方法など考えられなかった。

 

(だとすれば、やはりソレスタルビーイングの真の目的は、戦争根絶ではなく…)

 

 そこで、デュランダルの思考が中断させられた。基地内に鳴り響く警報が彼に異変を伝えたからである。

 

「どうした? 一体、何が起こった?」

〈…襲撃です! ガンダムと思われる機体を確認!〉

 

 デュランダルが席を立つと同時に、大きな爆発音が発生。彼の部屋をも大きく揺らす。

 

「ガンダム…ふむ、やはりここも狙ってきたか。ならば、あの申し出を受けざるを得んな」

 

 それは、ガンダムの襲来を(しら)せる災禍(さいか)であると同時に、世界の変革の始まりであった。

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 ザフト軍における北半球最大の駐屯(ちゅうとん)拠点であるジブラルタル基地に、爆発の光芒(こうぼう)がひらめいた。

 

 ガンダムの接近を知ったザフト軍兵士たちが、ありったけのモビルスーツを発進させ、光の粒子を撒き散らす三機に向かって迎撃の銃火(じゅうか)を放ったが、それはさしたる成果を生み出すことはできない。

 

 上空にいる三機のガンダムに向かって、戦車型モビルスーツであるTFA-4DE"ガズウート"と可変型モビルスーツTMF/A-802"バクゥ"が砲火を放ち、空戦用モビルスーツAMA-953"バビ"がミサイルを浴びせかける。

 

 だが、その数十分の一の反撃で、それらザフトの機体はパイロットの命と共に次々とオレンジ色の炎に姿を変えていった。

 

(無駄なことを…どうして命を無駄に散らすんだ)

 

 トリガーを引きながら、シエルはガンダムセレーネのコックピットの中でその表情を歪めながらも冷然(れいぜん)と地上を見下ろしていた。

 

 ジャスティスやデスティニーのような特別な機体にエースパイロットを乗せるならともかく、量産を前提としたモビルスーツではガンダムとは戦いにすらならない。それはこれまでの戦闘で幾度(いくど)となく証明されてきた事実だ。

 にも関わらず、彼等はガンダムと火線を交えようとする。それではただの自傷行為、自殺志願者と何ら変わりがないではないか。

 

 攻撃を仕掛けたのはこちらであり、あちらにも軍としてのプライドがあるということは分かってはいるが、それでも命を簡単に捨てるような彼等の行動に対して、シエルは理解に苦しんだ。

 

 そのような捨て身の行動で無駄な抵抗を繰り返すからこそ、組織の行動方針が次のステップに進んでしまったのである。基地の武装解除及び紛争行為の停止さえしてくれれば、こちらも過激な武力介入をせずに済んだはずなのに…。

 

「くそっ!」

 

 何ともいえない苛立ちを込めてトリガーを引く。

 GNメガランチャーから放たれた光は、射線上のモビルスーツのいくつかを巻き込みつつ、ジブラルタル基地を破壊していく。モビルスーツが収容されている工廠(こうしょう)からその他施設におけるものまで、全てを。

 

 その時、コックピットから鳴り響く警報音とともに、数条の光が空間を貫く。密集していた三機のガンダムは、素早く三方に散開した。

 

「…来た」

 

 モニターに、敵機体のデータが映し出されるよりも早く、シエルはその姿を視認した。

 

 ビームによる攻撃を仕掛けてきたのは、その特徴的な光の翼を広げたモビルスーツ–––––デスティニー。それを援護するように背後からジャスティスがこちらへビームライフルを向けている。

 その背後には、既に見慣れたグレー色の戦艦がこちらへ砲撃してきており、同時にセイバーやインパルスといった艦載機が発進するのが見て取れた。

 

 ミッションの障害をできるだけなくす為にも、彼等が出てくる前に終わらせたかったが、思いの他、ザフトのモビルスーツ隊相手に時間を使い過ぎてしまったらしい。

 

〈フェイト、シエル、奴らが出てきたぞ。準備はいいか?〉

 

 アキサムから二人–––––特にフェイトを鼓舞するように通信が届いた。

 

〈……了解〉

 

 続いて、やや間を開けてフェイトがそれに応える。どうやら、デスティニーを前にしても冷静さを保っているようだ。それでこそ、ガンダムマイスターだとシエルは思った。

 

「–––––了解。セレーネ、目標を破壊する!」

 

 最後のシエルの答えと共に放たれたGNメガランチャーが、激戦の幕開けを告げた。

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

「なるほど、ではプラントは我が国の申し込みを受け入れると?」

〈ああ。先程連絡があった〉

 

 場所はアズラエル家が所有する別荘の一つ。元はジブリールという名家が所有していた土地に建てられたその別荘の部屋の中で、シャーロット・アズラエルは通信相手の男からの言葉に笑みを深くした。

 

〈流石に奴らも、ジブラルタルを失いたくはあるまい〉

「仕方なく…と言ったところですか」

 

 やれやれ…と彼女は肩をすくめた。

 

「では、後はこちらで。ご苦労様でした。コープランド大統領」

〈あ、あぁ…〉

 

 シャーロットはそう一言礼を付けると、通信を切る。

 

 通信相手は、大西洋連邦大統領であるジョセフ・コープランドであった。直接命令を下す立場にあったロード・ジブリールが失脚(しっきゃく)したことで後ろ盾を失い、孤立無援となった彼は、助けを求めてシャーロットの元で協力体制を築いていた。

 シャーロットにとっても、表舞台に出ることなく連合の方針を左右することができるため、コープランドにはある程度の利用価値があったため、それを了承したのである。

 

「…全く、好きなだけやって好きに逃げるなんて、自分勝手な人たちね」

 

 コープランドがシャーロットを頼った理由として、彼女以外のロゴスのメンバーと連絡が取れなかったことにある。

 それもそのはず、彼等はソレスタルビーイングの過激な武力介入の後処理とそれによる自己保身に追われ、コープランドに構っている暇などないのだ。

 

 そして、もう一つが…。

 

「お嬢様。フランスのバルセロナ様、イギリスのスペンサー様ともに、こちらへ従うという旨を伝えていただきました」

「…そう。追って指示を出すと伝えて」

 

 シャーロット自身が、ロゴスのメンバーを"選別"していることだ。

 

 今のロゴスとは、影より世界を支配していた老人達の組織ではない。彼等に代わる、新たなる地球の指導者たちの集まりのことを指すのだ。

 

 老人たちの中でも、こちらに従うと誓った者や権限を放棄すると決めなかった者以外は、その全てを排除していく。今のアズラエル家には、それだけの力があった。

 

 時代に適応できない老害たちは必要ない。それはレクシオ・ヘイトリッドという上位存在からの命令であり、シャーロット自身の意思でもある。いささか面倒だったが、これであの老人たちの相手をせずに済むと思えば安いものだった。

 

「–––––そして、"彼等"に出撃命令を」

 

 これから全てが変わる。

 ナチュラルだのコーディネーターだのと(みにくく)く争い合う時代は終わりを告げ、革新者による新たなる秩序社会が生まれるのだ。

 

 そして、その為にはもう少しソレスタルビーイングに頑張って貰わなければならない。変革が果たされるまで、存在し続けてもらう必要がある。

 

「だから、こんなところで負けてはいけなくてよ…ガンダムマイスターたち」

 

 言葉とは裏腹に、彼女の口元には小さな笑みが浮かんでいた。

 

 

 





>教授と化したデュランダル
ただ、彼は教授ほど色んな分野に精通しているわけではないので、あくまでまでも予測の範疇に留まっています。だからこそ、「貴方は知りすぎた」をされずに済んだ。

>ザフト技術者
コイツらが一番ヤバい。
地味に太陽炉の秘密に迫りつつある。流石はたった数年でジンをデスティニーレベルにまで技術発展させるコーディネーターたち。

>新生ロゴス
老人たちは殆ど舞台から消えました。
新生ロゴスのイメージとしては、00本編でアロウズに出資していた金持ちや各国の元大統領などをイメージしていただけると分かりやすいです。
あくまで普通の企業家たちの集まりに戻り、戦争に介入したりはしません。
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