【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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何とか10月以内に投稿することができました。
でも、更新ストップしていた自身の罪は認めます。



失くした記憶

 

 

 

〈今回の戦争は互いの勢力の中の一部の者達によって仕組まれていたものであり、我々はこうして再び手を取り合うことができました…〉

 

 モニターでは、大西洋連邦のトップとプラント最高評議会のトップが手を取り合うという誰もが一度夢見て、決して(かな)わぬと諦め、切り捨ててきた奇跡の光景が現実のものとなって映し出されている。

 

〈全ては悲しいすれ違いだったのです。ですからどうか皆さん、もう互いにいがみ合うのはやめましょう。我らは仲間として、これから同じ道を歩んでいきたいと…私たちも思っております〉

 

 大きな拍手と共にコープランドとデュランダルが手を取り合うその映像を、シンはジブラルタル基地に停泊しているミネルバの自室で眺めていた。

 

 地球とプラントの和平。それは(すなわ)ち、この長いようで短かった戦争の本当の終わりを意味する。あくまで停戦で収まった前大戦と違い、真の意味で戦争が終わるのだ。

 

 勿論、政治的な意味では様々な問題が残っているし、小さな(いさか)いも絶えることはないだろう。

 

 とはいえ、連合とプラントが武力で争うことはなくなれば、幼き頃の自分たち家族のように、戦争の都合で巻き込まれる人間も減るはすだ。そういう意味では、平和を求めて軍に入隊したシン・アスカの望みは半分ほど叶ったといえる。

 

 だが、シンの曇天のように曇った心は晴れることはなく、言い表しようのない気持ち悪さが胸の内を渦巻いていた。

 

「……はぁ」

 

 小さく溜め息をついた時、部屋の扉が開き、誰かが入ってきた。

 それは勿論、シンのルームメイトであるレイ・ザ・バレルに他ならない。

 

「レイ、機体調整は終わったのか?」

「ああ、一通りはな。ルナマリアの方ももうじき終わるだろう」

 

 連合と正式な和睦、同盟が成り立った為、その証として送られた擬似太陽炉搭載型モビルスーツ"ジンクス"。そのパイロットに選ばれたレイとルナマリアの二人は新たに受領した新型機の調整に追われていた。

 

「それで、どうだった? 例の新型っての」

 

 それとなくレイに()く。

 彼らと違い、デスティニーのパイロットのままであるシンからすれば、ガンダムとあそこまでの戦いを繰り広げた新型機の性能はそれとなく気になっていた。

 

「…今までの常識を覆すような技術が使われていたのは間違いない」

 

 そう言うと、レイは自分のデスクにある端末を立ち上げ、(ふところ)から取り出したデータディスクを差し込んだ。おそらくは整備班から渡された新型モビルスーツに関するデータだろう。

 

 それに釣られて、シンもベッドから立ち上がり、横から覗き込むように画面を見つめる。そこにはやはり例の新型機の機体情報が簡易的にまとめられていた。

 

「俺たちの知っての通り、このジンクスという機体は基本性能は勿論、機動性・パワー共にセカンドステージシリーズを大きく凌駕している」

 

 続いて、ジンクスとガンダムとの先日の戦闘の映像が映し出される。

 

「平均的に見れば、その性能はデスティニーやジャスティス以上と言える。逆に言えば、特化した部分ではこちらが上回っているということでもあるが……」

 

 シンは、どこかぼんやりとした表情でその戦闘映像を眺めていた。

 

 画面に映る灰色の機体はガンダムに勝るとも劣らない機動性でガンダムを翻弄し、(たく)みな連携で追い詰めている。独りよがりな慢心で敗北した自分とは全く違う。

 

 何より、それを為したパイロットは……。

 

「シン、大丈夫か」

「…あ、あぁ」

 

 レイの声で我に帰る。

 思わず空返事(からへんじ)を返したものの、そんなシンの様子をしばらく見つめていたレイはおもむろに口を開いた。

 

「…あのエクステンデッドたちのことか」

「っ!」

 

 やはり親友には全てお見通しだったらしい。確信を突いた言葉にシンはピクリと肩を振るわせ、小さく頷いた。

 

 あの時、ネオ・ロアノークと名乗った新型モビルスーツ部隊の隊長らしき男はシンたちに全てを教えてくれた。まるで自らの罪を告白するように。己の後悔を語るように。

 

「だって、あんなのおかしいだろ。自分たちは俺たちコーディネーターのことを化け物だのなんだの言っておいて…っ!」

 

 エクステンデッド。

 それは薬物や外科手術によって人為的に強化された連合の()()()()()。つまり、モビルスーツを動かすためのパーツとして扱われている子供たちのことである。

 まさか今まで自分たちが戦ってきた相手がそんな事情を抱えていたとは思いもしなかった。

 

「ステラだって、本当は普通の女の子のはずなのに…っ!」

 

 ディオキアで出会ったステラという少女。

 彼女は連合のエクステンデッドだった。元ガイアのパイロットであり、本当は戦場で何度も彼女で出会っていたのだ。敵同士として。

 

 その衝撃はシンに大きな困惑と怒りを抱かせた。

 

「だが、それを行っていたブルーコスモス…いや、ロコズという連中はもういない」

「それは…わかってるっ。わかってるさ」

 

 シンの怒りとは裏腹に、既にそれを向ける先がいないことも事実だった。

 エクステンデッドなどの強化人間プロジェクトを支持していたブルーコスモス及びロゴスという連合内の組織は融解して散り散りになり、各地に存在する研究所は閉鎖(へいさ)が決定している。データもプラント側に引き渡されることになっているのだ。

 

 残る人間といえば、彼等の上官であったネオ・ロアノークのみだが、アスランの言によれば彼も何かしらの記憶措置を受けている可能性が高いという。

 その正体は『エンデュミオンの鷹』で名高いムウ・ラ・フラガだとか。後にデータを見せてくれたが、確かにあそこまで似ていると疑いたくなる気持ちも分かる。

 

「あのネオって奴も被害者なんだろ? なら、もうどうしようもないだろっ」

 

 どこか不貞腐れたようにシンは言った。

 ステラのことが気がかりだが、生憎とシンのことは記憶で消されているらしい。ネオは申し訳なく謝っていたが、その彼自身も記憶操作をされているというのなら、怒ろうにも怒れない。

 

 結果として、シンはその怒れる炎の行き場をなくし、(くすぶ)るような思いでここ数日を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 大幅な人員再編がされた地球連合軍において、改めて第81独立機動群を正式に率いることになったネオもまた、現状に対して言いようのないもどかしさを胸に抱えていた。

 

 彼の悩みは大きく二つ。そのどちらも旧ロゴスが行ってきた非道の数々についてだ。

 

(まさかステラを助けたのがあの坊主だったとはねぇ…)

 

 それは偶然か、はたまた運命の悪戯(いたずら)か。死を恐れる少女を救ったのは今まで殺し合ってきた少年だというのだから、運命的な以上に悲劇的で笑えない。

 

 ネオにだって人の心はある。

 少年(シン)のことを覚えていないステラと、ステラ達の真実を知った彼の怒りの表情を見て、流石に罪悪感は浮かんできた。ジブリールからの命令があったとはいえ、直接彼等の記憶を消したのはネオなのだから。

 

 既にジブリールは表舞台から去り、もはやロゴスの影に怯える必要はない。戦争が終わり、いずれネオの思うがままにスティング達を保護することもできるようになるだろう。

 

 だが、あの時の少年の怒りの瞳がネオに己の罪を思い出させてくれる。

 

(分かってるさ。いずれ俺も咎を受けるべきだってことくらい)

 

 命令とはいえ、いたいけな少年少女を道具として戦争に投入した罪は決して消えることはないだろう。ネオにとってはそれでよかった。

 

 それに、今のネオは他人の心配をしている場合ではなかった。

 

「ネオ・ロアノーク。C.E.42.11月29日生まれ。大西洋連邦ノースルバ出身、血液型O(ブラッドタイプ)…」

 

 何となく、己の経歴を誰にでもなく読み上げていく。それだけで頭の中にある違和感が言葉という形となって現れていった。

 

「…C.E.60入隊、現在、第81独立機動群"ファントムペイン"大佐」

 

 これまで送ってきた人生が、頭を駆け巡る。

 生まれ育った街のうらぶれた風景、物心つく前に家を出て行った母の(おぼろ)げな面影(おもかげ)と、飲んだくれて死んだ父。つるんでは悪さをした仲間たち。上官のしごきと散っていった戦友。重傷を負ったものの、何とか生き延びた第二次ヤキン・ドゥーエ…。

 

 それらの記憶は到底否定できない質感と感情をともない、ネオの脳裏に刻み込まれているのだが…。

 

(…のはずなんだがなぁ)

 

 アスランという青年に"フラガ"と名を呼ばれた時、妙な感覚が身体に走った。まるで自分の意思ではないかのように身体が勝手に反応しそうになったのだ。

 

 ムウ・ラ・フラガといえば、かつて『エンデュミオンの鷹』の異名で連合・ザフトで知られていた連合のエースである。確かにガンバレルを巧みに扱うその戦術も、容姿もネオに酷似しているのは認めざるを得ない。

 

(それに…記憶ってのを好きに弄れるのは俺がよく知っているしな)

 

 ステラ達の記憶を好きに操作してきたのは自分だ。上の命令で、都合の悪い記憶は消してきたのだ。ならば、ネオ自身の記憶が操作されていない保証はどこにもない。今ある記憶が本当だと証明することは難しいことだ。

 

 シャーロットにいえば、すぐにでも確認を取ってくれるだろう。もしくは、彼女自身ネオの正体を既に掴んでいて、あえて教えていないのかもしれない。

 

 これまで信じていた全てが、手の込んだまがい物(フェイク)に変わる。それは、踏みしめていた大地が避け、虚空(こくう)へ投げ出されるようなものだからだ。

 

「ムウ・ラ・フラガか…」

 

 改めて、その名を呟く。ネオ自身、未だに実感は伴わない。

 ただ、かつて母でも戦友でもない誰かに、この名を呼ばれていたような気がするのだ。

 

 そう…大切に思っていた誰かに––––––––。

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 –––––嘘だ、嘘であって欲しい…っ。

 

 フェイトは焦りを隠そうとしない様子でアステリアのコックピットのキーボードを操作していた。

 

 ジブラルタルでの一戦によって損傷した機体はメカニックであるバレットによって完璧に修理されている。GNドライヴ搭載機同士の戦いということもあって、アステリアに限らずガンダムの損傷は大きかったようで、三機全てを短期間で修復してみせたバレットは不満をぼやきながらも休憩に入っている。

 

 だが、今のフェイトはそんな彼に(ねぎら)いの言葉一つをかける余裕すらなかった。

 

 次々とキーボードを操作し、画面に展開するのはつい先日の戦いでのカメラ映像。問題となった擬似GNドライヴ搭載機との戦闘映像をよそに、カメラの映像は前哨戦であったデスティニーとの戦闘映像へ移る。

 

 違和感を覚えたのはデスティニーとの近接戦闘に勝利した後のこと。あと一歩のところまで追い込んだフェイトの一太刀が、デスティニーのコックピットを僅かながら切り裂いた時だ。

 

 デスティニーは墜落し、破壊されていたジブラルタル基地へ叩きつけられた。

 

 この時、フェイトはデスティニーのパイロットを目撃している。緊急出撃故にかパイロットをスーツを着ていなかったため、血に()れたパイロットの少年の姿を…。

 

 その姿が忘れられなかったフェイトは、戦闘後も残る心のしこりをなくすためにこうして確認しようと思ったのだ。

 

 頭の中に残る最悪の想像を否定するために…。

 

「……嘘」

 

 しかし、現実は非情である。

 世界はどうしようもなく残酷で、運命は悲劇へと定められていた。

 

 黒髪に特徴的な赤い瞳…間違いなく、その少年はフェイトの兄であるシン・アスカ。声を聞いたわけでも、直接会ったわけでもない。それでも分かる。何せ仲の良かった兄妹だったのだから。

 

「どうして…」

 

 オーブにいると思っていた。

 –––––あの時、オーブには降下してきたミネルバも停泊(ていはく)していた。

 

 争い事とは無縁(むえん)の読書が好きな優しい兄だった。

 –––––そういう自分は昔どうだったのか?

 

 どうしてザフト軍にいる。

 –––––兄はプラントに向かった。そして、ガンダムマイスターの自分よりも兄は優秀だった。

 

 決して考えなかったわけではない。

 考えて考えて、結局は「あり得ない」と見て見ぬふりをしてきた最悪の可能性が現実となってフェイトの前に立ち塞がっているのだ。

 

「なぜ…貴方が…」

 

 それでも、今では唯一の家族であった兄とこれまで殺し合っていたという事実は、一度は決意で凝固(ぎょうこ)したはずの心を締め付け、マユ・アスカとしての幼き心は悲鳴を上げる。

 

 いつか、平和になった世界で再会できればいいと思っていた。もう誰にも邪魔させたくなかったから。

 

 そのために戦争根絶を目指すソレスタルビーイングに入ったし、ガンダムマイスターになることも受け入れ、多くの人の命を奪ってきたというのに…。

 

 どうして、なぜ、なんで…。

 

「どうして、そこにいるの…お兄ちゃん」

 

 それは不幸な再会。

 少女の戦う理由を根底から揺るがすものであった。

 

 

 





>超ブラコン鋼メンタル妹(14歳)
お兄ちゃんとのその後のために戦争根絶を目指していた妹。
なお、敵対していたのが兄と知って流石にショック。

>不可能を可能にする男?(30歳)
昔の女のことを思い出しつつある三児のパパ。娘のボーイフレンドのことを気にしている。

 …とまぁ、茶番はここまで。

 最低でも一月に一回は更新していくので、どうか許してください。
 くっ、劇場版さえ見ることができれば、一気に完結まで持って行けそうなものを…!
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