【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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こんなに間が空いてるのに高評価くれる兄貴姉貴たちには感謝しかないです。ありがとナス!


【注意】オリキャラ登場!
とはいえ、本格的に出番が出るのは二部の方なので、とりあえず名前と容姿だけ。


歌姫の疑念

 

 

 ラクス・クラインとは誰なのか?

 

 その答えはきっと、本人かキラ・ヤマトのどちらかしか答えることはできないだろう。ギルバート・デュランダルやアスラン・ザラは部分的に彼女を理解しているが、それでも全貌には至っていない。

 ナチュラルもコーディネーターも絶大なカリスマを持つアイドルという偶像(ぐうぞう)を前に彼女自身の本質を理解するのは非常に難しいといえる。

 

 そもラクスといえば、民衆にとっては第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦で三隻同盟の中心となって活躍し、大戦を終わらせた英雄の印象が強い。それは彼女の思想に賛同して行動したクライン派の人間たちとて同じである。

 

 だが、実際は違う。

 彼女自身は確かに非凡なカリスマ性を持った歌姫であるが、その本質はどこまでいってもアイドルどまりだ。決して革命だの武力介入だのを進んで行う少女ではない。

 

 これまでの英雄と呼ばれる功績にしても、ラクス・クライン自身は何もしていない。

 彼女が何もしなくても、周囲が勝手にその意図を理解したつもりになって行動していたからだ。あくまでもそのカリスマと存在感で見守り、ただ見送るのがラクスであり、彼女が動くのは本当にそれ以外どうしようもないときだけだ。

 そして、その"どうしようもないとき"が前大戦だっただけのこと。彼女が動かなければどうにもならなかったからこそ、父を失くすという悲劇を受け入れてなお、平和の為に歌を歌ったのだ。

 

 

 では改めて、ラクス・クラインという少女は一体誰なのか?

 

 それはきっと、何の変哲(へんてつ)もない平凡な毎日を望む普通の女の子という他ないだろう。皆を奮い立たせる演説よりも、家で料理をつくって掃除や洗濯をし、好きな人と好きな暮らしをするのを望んでいるような、どこにでも普通の……。

 

 そして、それを心の底から理解できているのはキラ・ヤマトだけである。"そうであれ"と望まれて生まれた彼と"そうであれ"と生き様を他者から求められる彼女達が出会い、惹かれ合うのはまさに"運命"だったのかもしれない。

 

 キラ・ヤマトが行動するのは常にラクス・ラクス・クラインのためであり、ラクス・クラインもまた、キラ・ヤマトの為にだけ自発的に行動する。(なか)ば共依存に見えるそれは、単に"好きな人のため"という何の変哲もない理由でしかないのだ。

 

 

 総じて何を言いたいのかというと、ラクス・クラインはあくまで平凡な毎日を望むごく普通の女の子であり、そこに他者が考えるような思想や思惑などそこまで存在しないということである。

 

 ただ他者より賢くて、他者よりカリスマ性があり、他者より意志が強いだけだ。

 

 それをどこまでの人が理解できているかは別として、だ。

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 多くのデブリや小惑星の漂う星の運河(うんが)にて。

 漆黒の宇宙をバックに、特徴的な桃色の装甲色の戦艦が泳ぐように進んでいく。

 

 FFMH-Y101 "エターナル"

 前大戦においてザフトによって開発され、クライン派によって奪取されたフリーダム・ジャスティス等ファーストステージシリーズのモビルスーツ専用の運用艦である。

 前大戦にて三隻同盟の旗艦の一つとしてアークエンジェル・クサナギと共に戦い抜き、二年経った今も修復・改修を経て旧クライン派の艦として密かに運用されており、宇宙へ上がったラクスとバルトフェルドはエターナルを拠点に調査活動を続けていた。

 

〈シャトル帰還。ハノーバールートで接近中〉

 

 艦橋(ブリッジ)からの通信が入り、艦長であるバルトフェルドは自室を出た。途中でラクスの部屋に寄り、インターフォンで己の副官(ダコスタ)の帰還を伝える。

 

「ラクス、ダコスタが戻ってきたぞ」

〈今、まいります〉

 

 ほどなくドアが開き、ラクスが姿を見せる。二人は艦橋(ブリッジ)へ向かった。

 

 途中、ふとバルトフェルドは口を開く。

 

「それにしても、まさかプラントと連合が和睦するとは…」

 

 バルトフェルドはかつて『砂漠の虎』との異名までを得ていたザフト軍人である。それこそ地球とプラントの開戦時からずっと戦い続けてきた。多くの同胞を失ったし、多くのナチュラルを殺してきたのだ。

 だからこそ、戦争の無慈悲さ・残酷さを嫌というほど知っている。ナチュラルの嫉妬深さ、コーディネーターの傲慢さもだ。

 

 それ故だろうか、余計に今の現状が夢物語のように見えてしまってしょうがない。

 

「最も、二年前の僕らに言っても誰も信じてくれないだろうねぇ」

 

 二年前、バルトフェルド達クライン派が行動を起こしたとき、既に両者の対立のシナリオは最悪のところまで深刻化していた。互いに互いを滅ぼし合い、ラクス達が動かなければ、いずれ両者共倒れ、そのまま人類滅亡なんて最悪の展開を迎えていたかもしれないほどだ。

 

 そうして、戦いの果てに失った恋人(アイシャ)を思い返し、バルトフェルドはどこか自嘲気味な笑みを浮かべながら皮肉げに言った。

 

「ま、停戦するっていうならこちらも大歓迎なんだが」

「ええ………ですが、少々早すぎる気がします」

 

 対して、ラクスは静かにそう言った。

 バルトフェルドは直ぐにはその言葉の意味が分からず、()き返す。

 

「早すぎる…とは?」

「…此度の停戦からの和睦、同盟というのは少し上手く行きすぎているような気が…いえ、私の考えすぎならいいのですが」

 

 (いぶか)しげな表情を浮かべるバルトフェルドに対して、ラクスも上手く言葉にならないようである。彼女が言葉に詰まるなんて珍しいと思いつつも、バルトフェルドは彼女の言葉の続きを待った。

 

「二年の時を経ても埋まらなかった溝がこうも簡単に埋まるとは思えません。必ず何か裏があるはずです」

 

 そもそも…とラクスはなんとか言葉を滑り出す。

 

「今回の開戦の原因になったのはユニウスセブン落下事件だと聞いています」

「そうだねぇ。旧ザラ派の反抗なんて言われているが…」

 

 今やその旧ザラ派もソレスタルビーイングに滅ぼされちゃったかもねぇ…と内心で言葉を叩ける。

 

「ええ。アスランからも話を聞いてますし、おそらく事実でしょう」

「だが、その裏にはデュランダル議長の意図があったわけだ」

「あくまでも可能性の話ですが…」

 

 ラクスはあくまでデュランダルを信じたいようだが、ラクスの偽物といい、この間の襲撃事件の件といい、バルトフェルドにとって彼に対する信用はかなり低い。

 そもそも政治家のやり方というものをよく知らないバルトフェルドにとっては、小綺麗なことばかりを言う割に腹黒い手段も平然と使うデュランダルは露骨(ろこつ)に怪しく見えていた。

 

「仮に連合を焚き付けたのがデュランダルの思惑だとして、今この状況は奴の計画通りだと思うか?」

「…いえ、おそらく彼にとっても想定外のことが起きたのでしょう。私たちに対してあの後何のアクションもないのがその証拠です」

「で、それがソレスタルビーイングってわけか」

 

 ラクスは頷く。

 確かにあの集団の出現は全ての勢力の思惑を破壊したと言っていい。連合ではブルーコスモスが沈黙したというし、デュランダルとて色々と策を巡らせていたようだが、あまりもの武力介入のスピードにそれを実行する余裕なかったのだろう。

 

 だが、バルトフェルドとてデュランダルの気持ちが分からないでもない。

 

「まぁ、本当に謎の多い組織だからねぇ。ソレスタルビーイングって奴らはァ」

 

 あれだけの大立ち回りに加え、キラとフリーダムをも圧倒する力。バルトフェルド達旧クライン派としても警戒しない理由はなく、宇宙に上がってから幾度となく調査を重ねてきたのだが、不自然なほどに情報は手に入らない。

 

 いくらテロリストといえど、活動すれば自然と行動の痕跡や情報の漏れがあるものだが、ソレスタルビーイングにはそれがない。少数精鋭だとすれば納得はするが、逆にあれだけの技術力を少数で開発・保有し、運用していることに説明がつかない。

 

 考えれば考えるほど、謎が尽きない連中なのだ。

 

「…そのソレスタルビーイングについて、気になる点がいくつかありまして」

「気になる点?」

 

 謎が多すぎて考えることを諦めたバルトフェルドに対して、ここ暫く彼らについて調べていたラクスには別のところが見えているらしい。

 

「ここ最近のソレスタルビーイングの武力介入はかなり過激さを増していました」

「ああ、あちらこちらでニュースになっていたな。今まで以上に"破壊"を重視するようにした武力介入で多くの被害が出たってね」

 

 軍事関係施設へ片っ端から武力介入。地球では多大な被害が出たそうであり、あまりもの凄惨(せいさん)さに遠く離れたプラント国内でも彼等を恐れる人々が多くいたという。プラント最高評議会もかなり荒れたそうだ。

 

 まぁ、バルトフェルドからすれば今更といったところだが。

 

「そして、それが今回の同盟に繋がった。…そう考えると、彼等は自ら望んでこのような展開を招いたように思えないでしょうか」

「裏切り者の出現も含めて、か」

「…はい、タイミングが良すぎると思いませんか。あれだけの隠蔽ができるほど纏まっている組織に限って」

 

 あり得ない、と一言で切り捨てるにはラクスの考えは道理にかなっている気がしなくもない。少なくとも一考の余地はあるだろう。

 

「過度な武力介入で前大戦から続く地球・プラント間の溝を強引に埋め、そのタイミングで都合よく裏切り者がでる…確かに出来過ぎた話だ。あれだけの組織力を持つ奴らだけにな」

「ですが、結果的に地球・プラント間の戦争は終結しました。彼等は自らの理念に従って、戦争を根絶しようとしているに過ぎないと考えられます」

「自分たちを犠牲にして…か。それともまだ隠し玉があるのか。気味が悪いのには変わらないけどねェ」

 

 その時、エレベータのドアが開き、二人は艦橋(ブリッジ)へと入っていった。中にはラクスの使いで出ていたダコスタが待っていた。

 

「待たせたな、ダコスタ」

「それで、調査の方は?」

 

 ダコスタは頷くと、さっそく(たずさ)えていたアタッシュケースを開きながら報告する。

 

「いやもう、参りましたよ。当時の情報は殆ど抹消されていましたし、どのコロニーも空気が抜けて荒れ放題…ほんと"これ"を見つけ出すのには苦労しましたよ」

 

 ダコスタは自らの苦労を息を吐くように話すと、表情を自信ありげに変え、ケースから一つのUSBデータを取り出した。

 

「でも、ラッキーなことに目的のデータは残っていまして。この通り…」

「よし、でかした!」

 

 バルトフェルドがダコスタを褒めるように背中をバシッと叩くのを尻目に、ラクスはそのUSBをエターナルの端末へと繋いだ。データが次々と浮かび上がり、バルトフェルドとダコスタも視線をそちらに向ける。

 

「ここですわね –––––– きっとここに彼等のことを知る手掛かりがあるはずです」

 

 そこには、"プロフェッサー.グレンについて"と書かれたデータが映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 それはどこでもない場所であった。

 どの国にも、どの権力にも属さず、本来はあり得ることのない場所である。

 しかし、そこは実在した。青々でした葉を(しげ)らず森の中にひっそりとたたずむ豪邸(ごうてい)。暖かな陽光が降り注ぎ、一年を通じて寒暖の差が少ないこの地にあって、人が快適に暮らすことのできる広壮(こうそう)さと設備を十二分に備えている。

 

 それは、人間の住処ではなかった。

 まるで俗世(ぞくせ)隔離(かくり)したような鬱蒼(うっそう)とした深い森の中央にたたずむこの豪邸は ––––– レクシオ・ヘイトリッドが所有する地上の拠点であった。

 

 ここは()()イノベイドが独自に所有する拠点であり、その情報は所属を同じくするソレスタルビーイングのメンバーですら認知していない。

 

「気に入ってもらえたかな、僕からのプレゼントは」

 

 バスケットコートが入るほどの広いリビングに置かれたソファーにて、レクシオはそう呟く。彼の視線の先…いや、脳量子波が繋いだとあるコロニーの監視映像では一人の男(ダコスタ)がデータの吸い出しを行っている様子が見えている。

 

「わざわざあんなデータを送って何の意味があるのか…私には疑問なのですが」

 

 背後から、聞き障りのいい声が聞こえた。

 

「…あぁ、君か」

 

 レクシオは振り返ることなくその人物を特定する。

 ここにいるのはイノベイドだけであるというのもそうだが、それ以前に脳量子波でその人物の接近には気がついていた。

 

「指示された工程は全て完了。問題は一つもありません」

「そうか…それは何より」

 

 栗色の長髪を揺らして二階から降りてきた少女は、その幼なげな顔立ちを無表情に染めながらレクシオに声をかけた。

 いや、少女というのは誤りか。彼女には性別なんて不完全な物は存在しないのだから。

 

「ご苦労だったね、フォルトゥナ」

 

 フォルトゥナ・ロット。

 この世界に来てレクシオが生み出したイノベイド達の一人。レクシオのような西暦の人物ではなく、C.E.の人物の遺伝子を元に誕生させたこの世界で最も初めに誕生したイノベイドだ。

 

「それで、いいんですか? わざわざ敵に塩を送るようなことをして。ラクス・クラインがこちらの意図に気付くとも限りません」

 

 ここでは便宜上『彼女』としよう。

 フォルトゥナが問えば、レクシオはフッと薄く笑い、言った。

 

「あの歌姫は敵にはならないさ。人間にしてはかなり賢いからね。別に構わないよ」

 

 むしろ、その賢さでこちらの意図に気付いてくれることをレクシオは期待している。何しろ計画の主役は自分たちイノベイドではなく彼等人間なのだ。

 

「この世界で彼女の影響力は大きい。変に勘繰られるぐらいなら情報を与えてやった方がいい。別にあの程度の情報、組織のメンバーなら誰でも知っていることだしね」

 

 それに色々と面倒な過程をスキップできる。

 レクシオがこの世界で目覚めてから何十年、くだらない人種差別での争いを見てきたと思っているのだ。ナチュラルだのコーディネーターだの、レクシオにとっては全てがどうでもいい。

 これまでは仕方なく両者の溝を埋めるべく暗躍していたが、代わりにラクス・クラインがイオリア計画を理解し、両者をまとめ上げてくれるなら、こちらとしては面倒ごとか減って楽である。

 

 今回の意図的な旧クライン派への情報流出は、将来への投資…未来の指導者ラクス・クラインへの期待を込めての物である。

 

「つまり、貴方は彼等にヒントをあげたに過ぎないということですか」

「さぁ、どうかな」

 

 レクシオは、はぐらかすように微笑んだ。

 ほんの一瞬だけフォルトゥナの表情が不快げに歪むが、それをレクシオは見逃すことはない。

 

 見逃すことはないのだが、そのような『人間的』な感情をレクシオは敢えて否定しない。人間らしいイノベイドといえばティエリア・アーデの名が真っ先に浮かぶが、彼は結果的に計画を完遂まで導いている。そのような理由もあり、彼女の持つ人間性が不必要だとは思えなかったのだ。

 

「ともあれ…だ」

「おや、君もここに来るとは珍しい」

 

 背後から聞こえた新たな声に、レクシオは思考を現在の論点に引き(もど)した。フォルトゥナとは異なる声の主が、鮮やかな足音と共に近づいてくる。

 チラリと向けたその先で、金色の髪をした端正な顔立ちの男が言葉を続けた。

 

「そろそろ私たちの出番かね、レクシオ」

「…ヒュブリス・ドゥーム…」

 

 男の名を口にしたフォルトゥナの目が、冷ややかに挟まって再び感情をこぼれ落とす。

 嫌われたものだ、と言わんばかりに本人は肩を含めたが、その軽薄な態度が彼女の神経を逆撫でしているというのは…脳量子波でわかっているだろうに。

 やれやれ、とレクシオは仲間たちの不和に首を傾げた。まぁ、彼等の持つ「人間らしさ」を作ったのもレクシオ自身なのだが…。

 

「計画の第一段階も終わりを迎えようとしている。このままではソレスタルビーイングは消えてしまうぞ?」

「……まさか」

 

 レクシオが膝の上で噛んでいた指を軽く立てる。

 

「彼等にはここで終わってもらっては困る。その為の例のシステムだしね」

「例のシステム?」

 

 フォルトゥナが()いた。ヒュブリスも意外そうな顔で訊ねた。

 

「ほう、GNドライヴにはまだ隠された機能が?」

 

 レクシオは顔を縦に頷いた。

 

「贈り物だよ。それでいて諸刃の剣だ。扱えるかどうかは彼等––––––マイスター次第だけどね」

 

 世界は変わろうとしている。

 ならば、そろそろ解禁してもいい頃合いだろう。

 

 そのシステムの名は––––––––––。

 

 

 

 

 

 

 





>過労歌姫
また戦争かよ…と内心ご立腹だった。
ようやく安心できると思いつつも、世界の裏で暗躍する者たちの気配を察知して、一息吐けたらまた一苦労な過労歌姫。

>レクシオ
ヒント上げるから頑張って辿り着いてね。貴女(ラクス)には期待しています…って感じ。

>イノベイド二人
誰が元になったかは…まぁ、いずれ分かります。容姿で分かるのが一人いますけど、想像通りです。

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