【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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ガンダムマイスター

 

 アーモリーワンの受けた被害は甚大(じんだい)だった。

 強奪された新型三機に破壊されたモビルスーツの数は数えるのも難しく、飛び交うビームや実弾の(なが)れ弾のいくつかは市街地へと被害を出している。軍司令部に指示を(あお)ごうにもにも通信は繋がらず、工廠は壊滅状態で一部の区画では有毒ガスまで発生していた。

 

 アーモリーワン内部の軍港近くの基地に()まる一隻の目新しい戦艦。これまでのザフト軍艦とは全く異なる形状のその船の名を"ミネルバ"という。そう、アーモリーワンで進水式を(ひか)えた新型軍艦とはこのミネルバのことだったのだ。

 

「駄目です!司令部応答ありません!」

「工廠内ガス発生。エスパスからロナウル地区までレベル4の退避勧告発令されました!」

 

 しかし、そんなミネルバのブリッジではまだ実戦を控えた若き精鋭達が慌てた様子でアーモリーワンの被害状況の対応に追われていた。

 

「インパルス及びザク、アンノウンモビルスーツと戦闘に入った模様…!あっ!…カオス、アビス、ガイアが障壁を破壊しました!」

「なんですって?」

「アイツら!あくまでも目標は強奪された三機だぞ!?」

 

 短く切りそろえた蜂蜜(はちみつ)色の髪をかき上げ、ミネルバの艦長であるタリア・グラディスは痛む頭を押さえた。こちらが被害の解決に悩んでいる間に事態は別の方向に進んでしまったらしい。どうにも現実は思うようにいかない。

 

「艦長…これまずいですよね?もしこのまま逃げられでもしたら…」

 

 弱腰の口調で(つぶや)くミネルバの副長アーサー・トラインの言葉に、タリアは疲れたように額を指で支えながらも頭を悩ませる。本来なら副長にそのナヨナヨした態度を叱責していたところだが、タリアにもそう余裕はない。

 

 そもそも例の新型三機が強奪されてからというもの、激動の連続だったのだ。工廠(こうしょう)施設及びモビルスーツはその(ほとん)どが破壊され、更にはコロニー外部からアンノウンモビルスーツが侵入。強奪された三機と戦闘し始めたという報告を受けた時はどんな三文小説かと頭を抱えた。

 新型の警備はどうなっているだとか、外部の駐留部隊は何をしていたのかと言いたいことは山ほどあったが、実戦もまだで所属部隊も定まっていないミネルバの艦長であるタリアにできるのは、ミネルバに搭載されたモビルスーツをそれぞれ発進させることだけだった。

 

「当たり前でしょ…まずいどころじゃ済まされないわよ」

 

 状況は(かんば)しくない。再三の通信にも応えないことから、駐留部隊は全滅かそれに等しい被害を受けている可能性が高い。強奪された三機を止めるだけの戦力は外部には残っていないだろう。頼みの綱であったインパルスを始めとするミネルバ小隊は謎のアンノウンモビルスーツに足止めされている。

 

「ザク小破!ルナマリア機帰投します!」

「えぇっ!この短時間であのルナマリアが!?」

 

 これは詰みという他ないだろう。あの三人は確かにルーキーだが、ザフトレッドを着用(ちゃくよう)することを許された立派な軍人だ。その彼等がここまで圧倒されるということは、敵のパイロットが上手なのか搭乗するモビルスーツの性能が高いかのどちらか。これ以上、タリアは分の悪い()けをする気はなかった。

 

「シンとレイを連れ戻して!これ以上続けても何もならないわ!」

「しかし艦長…」

「目的はあくまでも奪取された三機よ。これ以上あのアンノウンと戦ってインパルスまで失うことになったらどうするの!」

 

 完全にしてやられたと認めるしかない。これからのプラントの未来を担うザフトの精鋭達はたった三人の強奪犯とアンノウン一機にここまで(おど)らされたのだと。タリアの中でこれからの作戦は如何に最小限に被害を抑えるかに変わっていた。

 

 その時、ミネルバのブリッジの扉が開き何者かが入ってきた。コンディションイエローとはいえ、この非常事態に無許可でブリッジに上がり込んでくるなど何処の馬鹿者か。タリアが少しの怒りと頭痛を覚えながら声を上げようとしたその時…。

 

「議長!?」

 

 アーサーの(なさ)けない声がブリッジに響いたが、今回は無理もない。入ってきたのはこのザフト…ひいてはプラントにおいて誰よりも高い権力を持つ者だったのだから。

 

「状況は!?どうなっている!」

 

 それはこちらのセリフだ…と、相手が相手でなければそう言っていただろう。軍事の場に政治家が入ってくるほどやりづらいものはないが、今は仕方がない。

 

「それが––––––––」

 

 先程よりも酷くなる頭痛に苦しみながらも、タリアは白服を着るザフトの軍人としてやるべき事を優先した。

 

 

 

▽△▽

 

 

 

「くそっ!演習ではこんなっ!?」

 

 インパルスの"ヴァジュラビームサーベル"を一心不乱に振り回しながら、赤いパイロットスーツを着たシン・アスカは目の前のアンノウンモビルスーツに対して攻撃を仕掛(しか)けるが、それはいずれも虚空(こくう)()るだけだ。

 

「シン!あまり深追いするな!」

 

 そこへ後方から仲間であるレイ・ザ・バレルの正確な援護(えんご)射撃が飛んでくるが、正確なだけのビームではアンノウンを(とら)えることはできずに舞うように全て回避される。まるで機動性及び運動性が既存のモビルスーツとは違う異次元の動き。アカデミーでの最高レベルのシミュレータですらこんな馬鹿げた機動はしていなかった。

 

「くそっ、ルナがいれば!」

 

 もう一人の仲間であるルナマリア・ホークは既にこの場にいない。目の前のアンノウンによって腕を切り落とされた上にスラスターのトラブルでミネルバへと帰投(きとう)した筈だ。彼女がいれば勝てたとは言わないが、少なくとも今よりも状況は好転していたに違いない。

 

「そこを退け!俺たちが用があるのは…っ!」

 

 アンノウンの背後にポッカリと開いた穴。そこから青・緑・黒の三機が消えてからどれくらい()っただろうか。いや、そこまで時間は経っていない筈だ。

 

 シンはインパルスのシルエットシステムの一つ"フォースシルエットの機動性で穴へ向かおうとするが、それをアンノウンの射撃が妨害(ぼうがい)する。直撃コースではない。ただの威嚇(いかく)射撃だ。まるで遊んでいるかのようなその攻撃がシンをより苛立(いらだ)たせる。

 

「そうかよっ…あくまでも邪魔をするのかよ!」

 

 上司であるタリア・グラディス艦長からの報告(ほうこく)では、このアンノウンは強奪された三機を一人で相手していたという。始めにこの戦場に出撃した時も、ところどころを損傷した三機の姿を確認することができた。

 それに故に味方…とはいえないが、敵にはならないと思っていたところにこれである。まるで三機の離脱を援助(えんじょ)するようにこちらの行手(ゆくて)を阻むコイツは、あの新型が他所に奪われることにより起きることを分かっているのか!?

 

「どうしてこんなこと…また戦争がしたいのか!あんた達は!!」

 

 ビームサーベルを片手にシンは再び機体を突撃(とつげき)させる。背後から飛んでくるレイの援護射撃は正確だ。すばしっこく動くあの機体の牽制になるだろう。言わなくても通じてくれる親友(レイ)を頼もしく思いながら、シンはその(いか)れる瞳をアンノウンへ向けた。

 

 

 

▽△▽

 

 

 

「ガンダムアステリア(およ)びガンダムセレーネ、ファーストフェイズの予定終了時刻を過ぎました」

 

 静止衛星軌道(きどう)線上、衛星の影に(かく)れるようにして一隻の船–––––––ガンダムの多目的輸送艦(ゆそうかん)であるプトレマイオス級二番艦"クラウディオス"が航行していた。

 

 そのブリッジでは、艦の人員というのには少なめな四名のクルーが各々(おのおの)のシートに座ってキーボードを叩いている。

 

「間もなくセカンドフェイズ開始予定時刻です」

 

 そう告げたのは、この艦のCIC(戦況オペレーター)であるウェンディ・ヘルシズ。CICとは言うものの、戦闘行為自体を目的としないクラウディオスにおいては、ガンダムマイスター達が行うミッションの報告や伝達(でんたつ)を主としている。

 

「上手くやれたのか。フェイトとシエルは?」

 

 そう言って視線を隣に向けたのは、砲撃担当のバッツ・グランツだ。ガッチリした体格と(ほお)(きざ)まれた古傷の跡は歴戦の戦士のようだが、それは事実である。元ザフト軍人の彼はクラウディオスの予備のガンダムパイロットも()ねていた。

 

「若い子だけじゃ心配ですか?師匠としては?」

 

 バッツの視線を受け、軽い調子で応えたのは操舵士(そうだし)のシド・ダミアン。彼はバッツによって操舵の教導を受けた過去を持っており、バッツのことを師匠と(した)っていた。

 

「おいおい、それを言ったらここにいる奴らは殆ど歳下だらけだそ?」

「そういうバッツさんだってまだ30過ぎたばっかりなんだからまだ若い方でしょ」

 

 「ねぇ?」とウェンディが同意を求めるように、隣の席のもう一人の戦況オペレーターであり、妹であるヴァイオレット・ヘルシズに顔を向けたが…、

 

「………」

 

 だが、巻き毛(カール)冷静(クール)な彼女は、興味なさそうにこちらを一瞥(いちべつ)しただけで直ぐに自分の作業に戻った。つれないの、とウェンディが(くちびる)を尖らせる。

 

〈まぁまぁ、ヴァイオレットも緊張してんだよ〉

「アキサム…」

 

 そう言ったのはメインモニターに映ったパイロットスーツの男。ヘルメット越しに覗く淡い緑色の髪が特徴的な彼の名はアキサム・アルヴァディ。見てわかる通りにモビルスーツのパイロットであり、ガンダムマイスターの一人である。

 

「…アキサムは不安じゃないの?」

〈フェイトとシエルがか?まぁ、フェイトの方は心配っちゃ心配だが、シエルも付いてることだし大丈夫だろ〉

 

 "ガンダムサルース"のマイスターが何故こんなところにいるのかといえば、ヴェーダから送られてきたミッションプラン故に他ならない。メインをガンダムアステリア、サブにガンダムセレーネの参戦を要請(ようせい)されており、アキサムともう一人のマイスターはこうしてクラウディオスで待機することになったのだ。

 

 それでも初めての実戦というのは不安なものだ。シエルはともかく、まだ14で女の子なフェイトのことがウェンディは心配だったのだ。

 

 すると、ブリッジの扉から一人の少女がパイロットスーツのまま入ってきた。無造作にヘルメットを脱ぎ捨てると、近くにいたウェンディの席へ手をかける。

 

「そうそう、あんまり固くならないの」

「フブキさん!?」

「フブキお姉ちゃん、あっちにいなくていいの?」

 

 誰かといえば、この白銀の髪の持ち主である少女もまたガンダムマイスターである。乗機である"ガンダムメティス"を格納庫(かくのうこ)に置き去り、自らはブリッジへと乗り込む。そんな彼女の名はフブキ・シニストラ。このクラウディオス女子組においては最年長で(まと)め役のお姉ちゃんでもある。

 

〈お、おいおい!いねえと思ったらお前なぁ…〉

「別にいいでしょ、今回のミッションは私たちは非番。むしろ貴方が真面目すぎるのよ」

 

 マイペースで自由気まま、悪く言えば自己中なフブキだが、マイスターの一人に選ばられる実力者だ。そんな彼女が余裕を持っていつも通りにいれば、みんなもそれに釣られて余裕が出る。彼女なりの初陣への激励(げきれい)というやつだ。

 

「何なら貴方もこっちくる?」

〈遠慮させてもらう。いつ何が起こるか気が気じゃねぇからな〉

「フェイト達が心配?」

 

 「…別に、大丈夫だろ」と言ってそっぽを向きつつもいつでも発進できるように待機する彼は間違いなくツンデレというやつではないか?とフブキは思ったが口には出さず内心で笑うのにとどめておいた…が。

 

『ツンデレカ?アキサム、ツンデレ』

「あ」

〈何だと?…っていうかお前"ハロ"に何覚えさせてやがる〉

 

 (あお)るようにそう言ったのは、フブキの服の中にいた小型球体ロボット、通称"ハロ"だ。フブキの持ち物だが、彼女自身が作ったわけではない。貰い物を改造したとか何とか言ってフブキがその性能を自慢した時には、脱走したハロのことを既にみんなも知っていて驚いたのは懐かしい記憶だ。

 

 そのことを思い出して、ふと微笑(ほほえ)みながらフブキはハロを撫でていた手をやめ、ウェンディの隣のヴァイオレットの席へと置いた。

 

「……?」

「もうファーストフェイズは終了。少しは気を抜くことも時には重要なの。彼等を信じてあげなさい」

「……はい」

 

 ヴァイオレットとウェンディもフェイトより二つ上とは言え、まだ16の少女達だ。多情多感(たじょうたかん)な彼女たちをこれからの活動に巻き込むのは……と、そこまで思い至ってフブキは独りよがりな偽善(ぎぜん)的な考えを捨てた。

 

「始まる…ソレスタルビーイングの戦争根絶への道が」

 

 ここにいるメンバーは…特にマイスターたちはその誰もが夢を見ている。戦争根絶というこの混沌とした世界を一つにすることを。ナチュラルもコーディネーターもなく、彼等はソレスタルビーイングという組織として、世界よりも一足先に一丸(いちがん)となって計画を進めるのだ。

 

「(でもそれは…悪行ね)」

 

 これから多くの人が死に、多くの悲しみが世界に(あふ)れるだろう。自分達のような存在を自分達が新たに作り出す。皮肉な話だ。

 

 だが、彼等はもう止まらないし、止められない。

 

 何故なら、彼等は戦争根絶を掲げる私設武装組織"ソレスタルビーイング"なのだから。

 

 





 西暦では、軌道エレベーターを制作した偉人として知られるイオリア・シュヘンベルグですが、C.E.では何もしていないために急に『全ての人類に〜』とか言っても、ただのハゲのおっさんが何か変なこと言ってるようにしか感じないという。

 …どうしよ?

 あ、ここで言っておきますが、この作品でロウや劾と言ったアストレイのキャラは書きません。にわかの私が書いてもキャラや設定がぶれぶれになるので。地の文で傭兵やジャンク屋に触れる程度はあるかもしれませんがね。
 圧倒的な知識不足っ!私は外伝のストーリーをクロスレイズで初めて知りました。
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