【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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ちなみに今回のザフト軍のパイロットは全員が赤服、もしくはディアッカのようにそれ並の実力を有しています。



移りゆく世界

 

 

 

 ザフト軍がクラウディオスに向けて発進させたモビルスーツは全部で30機。内13機が擬似太陽炉を搭載したGN-Xであり、その他にしてもデスティニーや"グフイグナイテッド"等といったザフト製の機体群が並んでいる。

 対するクラウディオスは、ガンダム四機を全て発進させ、艦前面にて迎撃態勢を取った。ザフト側は奇襲をかけたつもりなのだろうが、それより前にザフト或いは連合軍の攻撃を予測していたため、迅速(じんそく)な対応で展開することができたのだ。

 

 いつもブリッジで指揮を取ることが多かったガンダムマイスターのフブキは、パイロットスーツに身を包み、ガンダムメティスのコックピットにて座って目の前から向かってくる赤き機影を睨みつけていた。

 

 前方には近接戦闘に秀でたガンダムアステリアが先行し、後方には狙撃に秀でたガンダムセレーネが追従している。遠近共にバランスの取れたメティスとサルースはその中間にて敵機の攻撃に備えていた。

 

「–––––––作戦は以上の通りよ。戦闘開始後、最大船速でトレミーを後退させて」

〈は、はい!〉

 

 今回の戦闘は時間が鍵となる。

 そもそもが30対4と不利な戦いにおいて、おまけにその内13機がガンダムと対等の性能を持っているとなれば、真正面から戦って勝つことは困難に等しい。仮に相手のパイロットもガンダムマイスターに匹敵するとなれば、ほぼ不可能とも言えるだろう。

 

 だからこそ、今は時間を稼ぐ。

 防衛対象であるクラウディオスを戦場から引き離し、少なくとも守りの姿勢から攻めの姿勢に転じなくてはいけない。

 

 フブキは苦虫を噛み潰したような表情でコックピットモニターを見つめた。

 敵機の接近を既に深いところにまで許してしまっている。敵の奇襲は予測通りだが、予測よりも接近が早かった

 

「予測していたとはいえ…!」

 

 あれだけの軍の規模だ。

 ザフト軍はまるでこの宙域にクラウディオスがいることを知っていたかのような正確さで、こちら側に軍を派遣している。

 

 そこから導き出される答えは一つ。

 ()()()()がクラウディオスの位置情報をザフト軍にリークした。それもおそらくは、ヴェーダを使って。

 

 くっ、とフブキが歯噛みする。

 これで、今後の戦闘においてどのような被害を被ろうとも、奇跡的に逃れられたとしても、クラウディオスは常に敵の襲撃に備えなければならないことになる。

 

 それは傷だらけで逃げ回る獲物(えもの)の姿を連想させた。

 傷が()える前に新たな傷が重ねられ、その流血の後を追跡者が辿る。

 やがて疲弊(ひへい)し、抵抗の(こぶし)が実効を(ともな)わなくなったところで……。

 

(いずれ狩られる…それは分かっているけどっ)

 

 そこまでフブキが思考を巡らせた時、モニターに緋色の光条が(きら)めいた。

 敵GN-X部隊からの攻撃が始まったのだ。

 

「各自、フォーメーションで対応を!」

〈〈〈了解!〉〉〉

 

 セレーネのGNメガランチャーによる最高威力での砲撃。それによって集結していたモビルスーツ部隊が四方に散らばり、逃げ遅れた"ザクウォーリア"を一機飲み込んだ。

 続けて、飛行形態のメティスがビームの雨の間を()うように先行し、その背後をアステリアが追従する。

 

「はぁっ!」

 

 GNビームライフルを連射しながらメティスの個性である機動性で撹乱(かくらん)する。流石の機動性に敵のビームライフルが命中することはないが、逆にメティスからの攻撃も敵機に命中することはない。

 

 ザフト軍は機体性能の高いGN-Xを前方に配備してガンダムと交戦させ、グフやザクといった旧式の機体を後方援護、或いはクラウディオスの攻撃へ向かわせている。

 

 クラウディオスには最低限の武装、及びGNフィールドが搭載されているためにすぐにはピンチに陥ることはないだろうが、それでもあくまで輸送艦の域を出ないクラウディオスでの対モビルスーツ戦闘には不安が残る。

 

「このっ!」

 

 滞る戦況に焦りを覚えながらも、フブキは追加装備であるテールユニットから多数のミサイルを放った。装填(そうてん)されてきる弾頭は特に何の捻りもない通常のものだが、面制圧という意味では役に立つ。

 視界を覆うミサイルに対してGN-Xのバルカンが、或いは"ガナーザクファントム"の砲撃が撃墜していく中、テールユニットをパージしたメティスはモビルスーツ形態に変形すると、爆炎の中からビームサーベルによる奇襲を行った。

 

 メティスの攻撃を目視したGN-Xもまた光の刃を出現させ、両者は(つば)迫り合いとなる。視界をバチバチと(まばゆ)いスパークが覆い尽くした。

 

「ちっ、流石に対応が早いわね…でもっ」

 

 フブキは機体を前後に動かし、フェイントをかける形で鍔迫り合いの体勢を解除、機体をその場から離脱させる。つんのめる形となったGN-Xの体勢が一瞬崩れた。

 

「シエル、今!」

〈了解!〉

 

 そして、フブキの叫びと同時に後方から飛んできたGNメガランチャーによる砲撃が、GN-Xの左上半身を(とぐ)り取った。撃墜にこそ至らなかったものの、戦闘継続が困難なところまで追い込んだだろう。

 

 まずは一機撃破。残りのGN-Xは12機となる。対してこちらはテールユニットを失ったのみ。まだ希望は消えていない。

 

 しかし、フブキが出来たのはそこまでだった。

 仲間をやられたことで火が付いたのか、敵からの攻撃が激しくなった。即座にGNシールドで防御しながら後退するも、回避する場所はどこにもない。ひたすらにビームの雨あられが降りかかり、シールドへの着弾の衝撃がぐらりとコックピットを揺さぶる。

 

 これでは攻撃のしようがない。

 反撃しようにも一瞬でも隙を晒せば、機体は蜂の巣になるだろう。

 

 フォーメーションをと思い僚機の姿を探せば、少し離れた場所でガンダムセレーネも周囲を取り囲まれ、ひたすらに耐え忍ぶ作業に追われていた。どうやら先ほどのGNメガランチャーによる砲撃で目をつけられたらしい。

 これまで鉄壁の防御力を誇ったGNフィールドも、防壁(ぼうへき)のための粒子圧縮率が知られているのか、敵GN-Xのビームを防ぎきることができず、完全に作用していない。

 

「シエル!…くっ!」

『回避ポイントナシ、回避ポイントナシ!』

 

 だが、今のフブキに他人を気にする余裕はない。

 次々と襲いかかるビームがメティスを掠め、受け止めたシールドにぶつかり、機体を大きく揺らす。

 

 これが多数対少数の戦いの恐ろしさ。

 性能が同等の相手を前にして、フブキはそれを強く実感していた。

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 仲間のピンチに手が届かないほどに、シエル・アインハイトは苦戦していた。

 初めはメティスとのフォーメーションでGN-X一機を戦闘不能に追い込んだものの、それ以降は完全に後ろ手に回っている。後方からの狙撃が主であるセレーネはしかし、既に他のガンダムへの援護がままならない程に追い込まれていた。

 

「…狙い撃つ!」

 

 トリガーを引いてGNメガランチャーを砲撃モードで発射する。しかし、敵機は先ほどの砲撃によって射程範囲を把握(はあく)したのか、ビームを()らうような()を犯さず、機体位置をそらして射線を回避する。

 

 そして、反撃が始まった。

 粒子を大きく消費したセレーネにその何倍もの攻撃が()ね返ってくる。GNフィールドでは敵の粒子ビームを防ぎきれないため、防御ではなく回避を選択するが、それでも避けきれない部分が肩や脚に(かす)っていき、装甲を削っていく。

 

「これ以上は…っ!」

 

 被弾を覚悟でGNメガランチャーを狙撃モードにして発射、近づいてきたGN-Xに着弾したが、腕一本を()ぎ落とすことしかできない。

 片腕だけになったGN-Xが粒子ビームでセレーネに応戦してくる。その熱戦は回避したが、いきなり他方から飛んできた粒子ビームにGNメガランチャーが射抜(いぬ)かれ、メインウェポンの長物が千切れた金属片に変わってしまう。

 

「しまっ…くそっ」

 

 視界の端に映った一機のGN-X。ロングバレルを取り付けたビームライフルを携えたあの機体が狙撃したのだろう。おそらくパイロットはエース級。あの距離から当ててくるとは……。

 

 スナイパーとして狙撃で得物を失ったことに悔しさを感じながらも、用途を失ったGNメガランチャーを手放し、サイドアーマーからビームサーベルを取り出す。

 

 セレーネの強みである狙撃と砲撃は封じられ、GNフィールドも完璧とはいいがたい。今のセレーネには、バルカンとビームサーベルしかまともに扱える火器は存在しなかった。

 

(このままだと負ける…)

 

 自身の敗北。それは四機のガンダムの敗北に繋がり、ひいてはソレスタルビーイングの敗北を意味する。

 それはつまり、戦争根絶のためにと、これまで費やしてきた時間、人材、そして犠牲の全てが無に還すということだ。

 

 そうなれば、何のためにこれまで自分が戦ってきたのか意味が分からない。

 仲間を見捨てて施設から逃げ、友を、妹を生贄にガンダムマイスターになった。任務のためとはいえ、武力介入で罪のない人の命を奪った。

 

 全ては戦争根絶のため、自分のような存在(強化人間)をこれ以上この世に生み出さないため。

 

 それらがただの裏切り者の存在で無に消えるなど……

 

「––––––そんなことがあっていいはずがないっ」

 

 シエルはらしくもなく感情的に叫んだ。

 左腕からGNバルカンを連射しながら、ビームサーベルを片手に敵機へ向けてスピードを上げていく。まさか遠距離仕様の機体が突っ込んでくると思わなかったのか、一機のGN-Xの反応が遅れた。

 それを見逃すシエルではなく、一瞬の間でビームサーベルを一閃。頭部を突き刺すように引き裂く。

 

「ぐぅあ!」

 

 しかし、敵も手練(てだ)れのパイロット。頭部を破壊したと同時に腹部に蹴りを入れられ、機体を大きく引き離された。そして、損傷した仲間をフォローするようにGN-Xやザクからの攻撃が集中する。

 それからは先ほどと同じ、ビームの雨に押されながら隙を見出す多勢に無勢な戦いが始まった。

 

「まだまだ!」

 

 それでも、シエルは諦めずにバルカンとビームサーベルで4機のGN-Xに立ち向かった。

 

 ソレスタルビーイング対ザフト軍の戦いはまだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 ガンダム対ザフト軍モビルスーツ部隊の戦闘。

 その様子は、追撃してくるザフト軍艦隊及びモビルスーツ部隊を迎撃するクラウディオスでも逐一(ちくいち)確認されていた。

 

「メティス、テールユニットを破棄。敵モビルスーツ四機と交戦中」

「セレーネ、GNメガランチャーを破損。現在、敵GN-X部隊からの集中攻撃を受けています」

 

 ウェンディとヴァイオレットが戦闘状況を知らせるが、やはり戦況は(かんば)しくない。

 

「アステリアとサルース、デスティニー及びGN-X部隊と交戦。フォーメーションS24で対応も効果見込めず…」

 

 これまではガンダムという圧倒的な存在が戦場を支配していたが、今やそれも過去の話。擬似太陽炉の登場によって性能の差がなくなり、数で劣るソレスタルビーイングは劣勢に回らざるを得ない。それは彼らにとって初めての経験だった。

 

 シドが操舵士としての腕を遺憾(いかん)なく発揮し、砲撃士のバッツが次々とモビルスーツを撃退しているために、クラウディオスは今のところザフト軍の襲撃を(しの)げているが、頼みの綱のガンダムがやられるようなことがあれば形勢は一気にザフト側に傾くだろう。

 

 展開したGNフィールドに攻撃が着弾した衝撃が艦橋(ブリッジ)を揺らしながらも、クラウディオスは何とか戦闘宙域の離脱を図っていた。

 

「それで、どうしますっ?」

〈どうもこうもない。フブキの言われたポイントまで後退するだけだ〉

 

 –––––––このままではマイスターが危ない。

 

 言外(げんがい)にそのような意味を込めて言ったシドの言葉に対して、モニター越しのバッツはあくまで冷静に返事を返した。

 

〈俺も出撃したいところだが、トレミーの安全が確保されない以上は厳しいな〉

 

 今現在バッツがいるのは、クラウディオスのMS(モビルスーツ)コンテナを交換する形で接続された戦闘ユニット–––––強襲用コンテナのコックピットである。

 武装を持たないクラウディオス用に開発された武装コンテナであり、単独での大気圏離脱や飛行、戦闘も可能な設計となっている強襲用コンテナだが、その反面クラウディオスのほぼ全ての火器を担っているため、おいそれと戦場へ飛び出していくことはできないのが欠点だった。

 

「六時の方向に新たに敵モビルスーツ部隊接近。数3!」

「死角を狙って!?」

 

 そして、もう一つ。

 コンテナに接続される形をとっている強襲用コンテナは、その大掛かりな武装に比例して射線が極端に狭い。特に艦の反対方向に敵が向かってしまった場合は、追尾機能があるGNミサイルしか効果の見込める武装が存在しないのだ。

 この短い戦闘で敵がそれを理解したというのなら、よほど優秀な指揮官がいるということだろう。それだけ敵は本気なのだ。

 

〈そうはさせるかっ!〉

 

 だがそんなこと、砲撃手であるバッツは当然理解していた。

 即座にコンテナをクラウディオスから切り離し、変形。機首に2門の大型GNキャノン、側面に2門のビームガン、そして8基のGNミサイル発射装置を備えた大型MA(モビルアーマー)となる。

 

 そして、大型GNキャノンから放たれた光は、射線上にいた二機のザクファントムを飲み込み、爆発させた。更にビームガンから放たれた粒子ビームが先頭を進んでいたグフイグナイテッドを牽制(けんせい)する。

 

 新たな敵機の力を見せつけられたザフト軍は、しかしいささかも取り乱す様子は見せず、ビームを応射するも、強襲用コンテナはGNフィールドを発生させ、それら全てをシャットアウトした。

 

 その時、索敵(さくてき)を担当しているヴァイオレットから新たな敵影の情報がもたらされる。

 

「進行ルート上に新たな敵艦を確認」

「もしかして、罠?」

 

 だがしかしそれは、ソレスタルビーイング・ザフト両陣営にとって予想だにもしない存在だった。

 

「熱紋照合。"エターナル"と断定」

「えぇ!?」

「それって…」

「ラクス・クラインが来たってこと?」

 

 モニターに映ったのは、桃色の装甲をした特徴的な戦艦。三隻同盟の旗艦の一つとして前大戦で活躍した歌姫の乗る艦。クラウディオスの進行ルート上から待ち構えていたかのように現れたその艦の姿に、クルー達にも動揺が走る。

 だが、今もモビルスーツ部隊と交戦するバッツはいち早く叫んだ。

 

〈あの艦は元々ザフトの艦だぞ。すぐにフブキに連絡するんだ。どんな罠か見当もつかん!〉

「は、はい!」

 

 何にせよ、戦争根絶を掲げるソレスタルビーイングにとっては世界そのものが敵といえる。世間一般では英雄だの何だのと呼ばれているからといって友好的な存在のはずがない。

 むしろ、ラクス・クラインはプラントの歌姫なのだから、デュランダルと組んでいると警戒しておく必要があるだろう。ガンダムが出払っている今、新たな増援は厳しいところ。速やかな対応が求められていた。

 

 ウェンディがフブキへ繋ぐと、彼女からはすぐに通信が返ってきた。

 

〈シエルを向かわせるわ。バッツはセレーネとの連結も視野に入れて対応して!〉

「じゃあ、エターナルは…」

〈シエルが着くまでは手を出さないように。トレミーはその場で待機。GNフィールドと強襲用コンテナで何とか凌いで!〉

 

 こうして、クラウディオスは前門にザフト軍。後門にエターナルを迎え、停滞を余儀なくされた。ザフト軍もまた、立ち塞がる強襲用コンテナを前に一時撤退し、以降は両者による睨み合いが展開されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 





>フブキ、シエル対ジュール隊
数の差でザフト軍が有利。
ちなみにGNメガランチャーを破壊したのは、ご察しの通り某炒飯の男です「グゥレイト!」
影でイザークやシホも活躍してる。ガンダムに攻撃当ててるのは主に彼ら。

>アステリア、サルース対ヴェステンフルス隊
彼らについては次回。

>強襲用コンテナ
GNアームズtypeDと同型を内蔵。武装に関しても同様に。

>エターナル
こうして、前回の話に繋がっていくわけです。
何か思惑があるとかではなく、あくまで巻き込まれ枠なんですが、偽物(ミーア)がデュランダルのところで働いてたりするせいで誤解に誤解が重なり……まぁ、うん。

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