【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

63 / 90
果てなき輪舞(ロンド)

 

 

 

 ザフト軍による第一次ソレスタルビーイング殲滅作戦は痛み分けといった形で失敗に終わったものの、敵の新兵器(GNアームズ)新システム(トランザム)を引きずりだすことに成功し、"エンジェルダウン作戦"の前哨戦(ぜんしょうせん)としてはそう悪くない結果となった。

 これまで圧倒的な性能を示してきたガンダムを相手に一時は優勢に立っていたこともあり、これから先の戦いにおけるいいプロパガンダになったとも言える。

 

 対してソレスタルビーイング側は敵の擬似太陽炉搭載機を二機撃破、他にも数機へ損傷を与えることができたが、地上に地球軍の保有する機体があることを考えると素直に安堵(あんど)することはできずにいた。

 

 

 そんなソレスタルビーイング–––––クラウディオスの姿は先程まで戦闘していた宙域から少しばかり離れたラグランジュ1の衛星の影にあった。

 月と地球の間を結んだ直線上、その中でも月寄りにあるそこは、地球軍側の勢力圏であり、ザフトが踏み入るにはそれなりの時間がかかるだろうというフブキの読みによるものだ。

 

 結果としてその読みは当たっており、エターナルの離脱を確認したザフト軍はすぐさま撤退を開始し、それ以上追ってくることはなかった。おそらくは離脱したエターナル––––––ラクス・クラインの方を優先したのだろうと思われる。

 

 そして、フブキを始めとしたガンダムマイスターたちはブリーフィングルームの床面(ゆかめん)に映るトランザムシステムのシステム解析図(かいせきず)に目を向けていた。

 

「機体に蓄積した高濃度圧縮粒子を全面開放し、一定時間、スペックの三倍に相当する出力を得る…」

 

 胸元で腕を組み、フブキが言った。

 システムに関する概要(がいよう)は既に全員が把握(はあく)している。

 

「トランザムシステム…」

「オリジナルの太陽炉のみに与えられた機能ってことは…」

 

 アキサムとシエルも、それぞれ解析図を見つめながら呟いた。

 

「そう、まだ私たちの計画は続いている。きっと知らされていなかった、計画の続きがあるのよ」

 

 フブキがシエルの言葉を引き継ぐ。

 確かにヴェーダは何者かに掌握(しょうあく)され、擬似太陽炉が世界中に回ってしまったが、まだ終わりではない。ガンダムの存在、トランザムシステムの存在がソレスタルビーイングの希望となっている。

 

 トランザムシステムによるスペックの三倍。それは擬似太陽炉搭載機にはできないことであり、再びガンダムの優位性を世に示すには十分な力だった。

 

「これなら敵のGNドライヴ搭載機とも渡り合えるっすよ!」

 

 場を明るくしようとしたのか、シドが陽気に言った。

 

「でも、トランザムを使用した後は機体性能が極端に落ちる。そう簡単には使えない…」

 

 だが、フェイトの言葉に一同が沈黙(ちんもく)()す。

 先の戦いでトランザムシステムを使用した彼女の言葉には重みがあった。

 

 解析されたデータ通り、トランザムシステムには蓄積された圧縮粒子を一気に解放して爆発的に機動性を高めることができるが、それでは短時間のうちに圧縮粒子を消費してしまう。

 貯めていた圧縮粒子を使い切ってしまえば、どうなるのかは先程の戦闘でアステリアが証明している通りだ。運動性能は極端に低下し、下手をすれば非GNドライヴ搭載機にすら迫られかねない。

 

 要は諸刃(もろは)の剣なのだ。

 使い方さえ間違えなければ、決定力に欠ける対GNドライヴ搭載機同士の戦いにおいて非常に有利になる。それは間違いなくこれからのミッションにおける切り札になり得るカードであった。

 

「それで、ガンダムの修理状況は?」

〈今は急ピッチで行っている。幸いにして大きなダメージはなかったが、それでも修理にはもう少しかかりそうだ〉

 

 格納庫(ハンガー)とを繋いだ通信モニターの中で作業中のバレットが答える。その背後では修理用のオプションを起動したフブキ製のハロたちが作業に(いそ)しんでおり、その近くではヴァイオレットとウェンディが機材のデータチェックに(はげ)んでいる。

 

 ガンダムと同等の性能を持つ擬似太陽炉搭載モビルスーツ複数体との戦闘は想像以上に機体へ負担を()いており、目に見えた傷跡はないものの、装甲や駆動(くどう)系に多数のダメージが存在するらしい。

 

「できるだけ早くお願いします」

〈おう!〉

 

 宇宙のザフト軍は一度退却したかもしれないが、今度は地上から連合やミネルバが来る。

 

 フブキはモニターから目を離し、遠くに視線を向けて自分の思考に没頭(ぼっとう)した。彼女の顔には憂慮(ゆうりょ)の暗雲が立ち込めている。

 

(補給が終わるのが早いか、それとも地上の戦力が宇宙に上がるのが早いか。……いずれにしてもラグランジュポイントでの戦いになりそうね)

 

 その予測は、(はか)らずも彼女の優秀さを実証するかのように的中していた。

 彼等には知り得ないことであったのだが、この時既に地上にいた地球軍旧"ファントムペイン"とGN-X10機を乗せた戦艦"ガーディ・ルー"、そしてザフトの地上戦力であるミネルバは、宇宙に上がっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 大気圏を突破した"ミネルバ"は司令部からの伝令に(のっと)り、ソレスタルビーイング殲滅作戦"エンジェルダウン作戦"の参加のため、本国から送られた別働隊であるジュール隊及びヴェステンフルズ隊との合流を目指して、戦場となるであろうラグランジュポイントへ向かっていた。

 

 久しぶりに見た宇宙(そら)の光景はやはり暗く、それでいて懐かしいと思うのは彼等がコーディネーター故だろうか。

 

 そんなミネルバの艦橋(ブリッジ)の中、コンディションイエロー状態で待機するクルーたちは、自らに追従するように航行する一隻の戦艦を見て少しのざわつきを見せていた。

 

「それにしても、まさかあの艦を再び見ることになるとは思わなかったわ」

「はい…しかもあの艦が本艦に追従とは、情勢とは分からないものですね」

 

 それは、かつてボギーワンと呼ばれていた戦艦。

 宇宙に溶け込むような暗い(あお)と白のツートンカラーを基調としたその艦は、やはり地球連合軍が所有している戦艦だったらしいが、その存在は"ファントムペイン"と同様に非正規軍として扱われているようだ。

 

「ボギーワン…いえ、確か"ガーディ・ルー"だったかしら」

 

 連合の大佐…ファントムペインの男に正式な名を教えられたタリアは、自分の中でその名を覚させるよう(つぶや)いた。

 

「まぁ、元強奪犯の元非正規部隊だとしても、今となっては連合軍の代表みたいなものよ。私たちと作戦行動を共にさせているのも、地球とプラントの関係改善を表にアピールさせるためでしょうね」

 

 そう、非正規部隊と言ってもそれはもはや昔の話。

 ロアノークら旧"ファントムペイン"の面々は現在連合の正規軍として扱われている。

 

 …というより、連合に動かせる戦力が彼等しか残っていないのが正しいか。開戦後にいきなり派手にザフトとやり合い、加えてソレスタルビーイングの武力介入を受けた連合にまともに動かせる部隊は彼等しか残っておらず、仕方なく元ブルーコスモスの私兵を正規軍に編入させたのだろう。

 

「なるほど、だからわざわざXナンバーの機体を返還してきたわけですか」

「というか、しなきゃいけなかったんでしょ。大っぴらにできることじゃないでしょうけど、隠し通す方がもっと不味いもの」

 

 アーモリーワンで強奪された"カオス"、"アビス"、"ガイア"の三機はジブラルタル基地にて"ファントムペイン"から直々にザフトへ返還(へんかん)されている。全てのきっかけといっていい機体にしてはあっさりとした返還だった。

 無論、既にデータは吸い出されているだろうし、ソレスタルビーイングの裏切り者によってGNドライヴが手に入った今では、GN-Xどころかデスティニー等にさえ(おと)る性能のセカンドステージシリーズの機体だが、それでも形式上必要な演出だ。

 

「この間の救援の件と合わせて、これで強奪の件はチャラにしろってことでしょ?」

「えぇー!? んな無茶苦茶な…」

「その無茶苦茶に同意したのがうちのトップよ」

 

 痛む頭を抑えるようにタリアは言った。

 アーサーの気持ちも痛いほどわかるが、政治家の考えなど前線に立つ軍人には分からないものだ。

 

「とはいえ、ソレスタルビーイングを相手に連合と組むことは必要不可欠よ。ザフトだけでの作戦がいかに難しいかは、この間の作戦報告書で知っているでしょ?」

「は、はい! まさかあのハイネ率いるオレンジショルダーやジュール隊が失敗するとは…」

 

 先のソレスタルビーイングとの前哨(ぜんしょう)戦とも呼べる戦いについては、ガンダムの()()()()()と思われる追記と共に先程報告を受けとった。今頃は同じフェイスであるアスランの元でモビルスーツパイロット達にも詳しい通達が行われているだろう。

 

 GNドライヴ搭載機の新型に加え、作戦成功率が最も高いジュール隊や前大戦を含めて高い実績を持つオレンジショルダー達ヴェステンフルズ達が作戦を失敗したというのはザフトに決して少なくない衝撃を与えた。

 何せ全員が全員ともザフトが誇る精鋭であり、作戦も完璧に()られていたのだから。

 

 だが、タリアとしてはそこまで意外に思ってはいない。

 元々、セカンドステージシリーズの機体を最新鋭としていたところにGNドライヴなんて代物を持ち出してきた組織だ。あそこまであからさまに連合とプラントが手を取り合っていれば、狙われている自覚もするだろうし、対策もする。

 

「ソレスタルビーイングの方が一歩上手だったってだけよ。元々GNドライヴなしで進めるつもりだったのだから、難易度が元に戻っただけ」

「はぁ…それにしても厄介な組織ですね。一体どれほどの秘密兵器を持っているのやら…」

 

 アーサーがぼやくように言った。

 

 そう、問題はそこだ。

 ソレスタルビーイングは一体いくつ隠し球を持っているのか。タリアの持つ常識がこの布陣(ふじん)で挑めば負けるはずないと判断しているが、敵は常識はずれに定評のある相手だ。

 

 少なくとも艦隊戦で負けるつもりはないが、問題はガンダムの方。あれほどの機動力とパワーに取りつかれてしまえばミネルバもガーディ・ルーも終わりである。

 

 つまりはこれからの戦いの肝を握るのもモビルスーツ戦ということになる。

 頼みの綱はアスラン率いるミネルバモビルスーツ部隊だ。彼等がガンダムを相手に有効な策を思いついてくれることを願うばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 ミネルバのミーティング室。

 集まっているのはシンとレイ、ルナマリアとアスランのミネルバ所属のモビルスーツパイロット達であり、今は先遣部隊とガンダムとの戦闘映像を元に隊長であるアスランが実行役となって作戦会議が行われていた。

 

「この状態のガンダムの運動性能はデスティニーやジャスティスの数倍であり、GNドライヴを持つGN-Xでも届かない。数での優位性は失われ、追いついた性能差も再び引き離されたと言っていいだろう」

 

 映像ではオレンジ色のVPS装甲を起動したデスティニーが赤く発光するガンダムを相手になす術もなく翻弄(ほんろう)され、迎撃したGN-X二機があっという間に撃破される姿が映し出されている。

 同型機…それも自身以上の技量を持つハイネがやられる姿にシンは瞳を(けわ)しくし、GN-Xを搭乗機とするレイとルナマリアも油断なく頷いた。

 

「…対策としては、この機能の限界時間まで時間を稼ぐことが重要とされる」

 

 続いて映し出されたのは、ガンダムと戦闘する青い機体…紛れもなく"ヤキンの伝説"ことフリーダムの姿だった。

 

「ちょ、ちょっと! なんでフリーダムが!? オーブにいるんじゃないのか!?」

 

 思わずシンが立ち上がり、アスランへ詰問する。ルナマリアもおっかなびっくりといった様子であり、レイも(わず)かに目を細めた。

 

 前大戦で三隻同盟のエースとして多大な活躍をしたフリーダムの存在は当然シンも知っている。つい数ヶ月前のオーブでのクーデター未遂事件にて、オーブ…アスハ派の機体として復活を遂げたこともだ。

 

 だからこそ、ザフトが主体となって作戦行動を行なっている戦場にザフト所属でもなければ、連合でもないフリーダムがガンダムと戦闘を行っている理由が分からない。

 

「はぁ…これを見てみろ」

 

 シンの言葉にアスランはため息混じりに手に持った端末を渡す。代表してルナマリアが受け取ると、そこにはハイネから直接届けられたのだろう簡易的かつ分かりやすい作戦報告がまとめられていた。

 

「…戦闘半ばまでは順調だったものの、ガンダムの新システムおよびエターナルの発見という予想外の状況によって作戦は中断……これって」

「エターナル……つまりはラクス・クラインが乗っていたということだろう」

 

 ルナマリアの言葉をレイが静かに続ける。

 

 エターナルといえばラクス・クラインが前大戦で搭乗した戦艦であり、三隻同盟の旗艦でもあった。

 前大戦後の消息は不明であったが、仮にあの艦がピンチだとすればフリーダムが駆け付けてきてもおかしくはない。実際にエターナル強奪事件の際はフリーダムがヤキンドゥーエの迎撃部隊を無力化している。

 

「どうですか、隊長?」

「……いや」

 

 レイの問いに言葉を(にご)すアスランにシンは、彼が前大戦でフリーダムやラクス・クラインと共に戦っていたということを思い出した。おそらく、アスランは自分たち以上に彼等のことについて知っている。

 

 そんな思いでシンとルナマリアも視線を向けたが、アスランは頭を横に張るばかりで明確な答えを口にはしなかった。

 

「俺にも詳しいことは分からない。だが、フリーダムについてはカガリから議長に何かしらのメッセージが送られるはずだ。いずれ本国から正式な通達が送られてくるだろう」

「そうですか。いえ、お話の途中に失礼しました」

 

 その様子にレイが一礼して話を取り下げたが、シンとしては納得しきれない部分も多い。

 

(ラクス・クラインって、ディオキアにいた女の人だろ? あの人が戦艦乗ってソレスタルビーイングとの戦いの場にいたのか?……なんっていうか場違い感があるよな)

 

 ディオキアで会ったラクス・クラインは、良くも悪くも普通の少女という印象だった。噂で聞くような高いカリスマ性や第三勢力を立ち上げるような実行力は、あまり感じられない。

 

(というか、ラクス・クラインってアイドルだろ? 確かに英雄って呼べるようなことをしたのかもしれないけど、たった一人のためにモビルスーツまで持ち出して…どういうことなんだ?)

 

「話を戻そう。ガンダムの新システムについてだが––––––」

 

 アスランから対ガンダム戦における説明が再開されても、シンの頭の中からラクス・クラインとフリーダム、そしてオーブに対するわずかな疑問は残り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





>トランザムシステム
本作のガンダム達はエクシア等第三世代ガンダムと同様にトランザムシステムに対応して作られていないため、途中で中断もできませんし、大きな性能低下のデメリットがあります。

>地球連合軍(ファントムペイン)
宇宙軍は開戦のタイミングでボロボロ、地上軍はジブリールの癇癪で動かされてボロボロ。
なので、まともに動かせる部隊で戦力があるのがファントムペインのみ。なお、描写はしていないが別働隊だったホワキン隊とも宇宙で合流している。

>シン視点でのラクス・クライン
ミーアが贋物ということを知らないため、ラクス・クライン=ミーア・キャンベルの認識のまま。
本人の活躍を歴史でしか知らない為にどれだけ重要視されているかを理解しておらず、混乱中。


次回はあの戦いの後のラクス達やデュランダルなどについてを描写していきます。








  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。