【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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GWになったら更新しようと思ったら、GWがそもそもなかった件。
三連休ではあったので筆を進めてみました。
っていうか、更新遅すぎてみんな内容覚えてるかな…?


PRIDE

 

 

 

 今やザフト軍特務隊"フェイス"となり、多くの部下を率いるようになったハイネ・ヴェステンフルスにとって、アディン・セファートという男は新人時代から世話になっていた頼れる上官であった。

 常に落ち着き払った対応と不気味な仮面で獅子奮闘の活躍をしていたラウ・ル・クルーゼとは対照的に、その兄貴肌な性格から部隊を率いて戦うことに長けていたアディンは、今のハイネの軍人としての雛形(ひながた)でもある。

 

 そんな彼は、オペレーションスピットブレイクに始まり、ヤキン・ドゥーエ攻防戦に至るまでの激戦の中でMIAになったとザフトに伝えられている。

 ザフトの英雄の片割れの死はハイネ達若者に少なくない衝撃を与えたが、あのエリート部隊と称されたクルーゼ隊から二名のMIAが出たことやプラントの歌姫ラクス・クラインへのスパイ容疑など目まぐるしい歴史の流れで徐々に風化していった。

 

(まさか生きていたとは、アディン…)

 

 そんな彼が生きて、テロリストとして敵にいる。

 いつもは飄々(ひょうひょう)としているハイネとしても、それは信じたくない事実であった。

 

 おかげで操縦の腕が鈍り、こうして押されている。デスティニーだけでなく、ハイネ自身もアディンに劣っていることを示されているようだった。

 

(くそっ、こんなことなら気づかなきゃよかったぜ!)

 

 アディン(アキサム)の予想に反し、ハイネがガンダムパイロットの正体に辿り着いたのは、なんと殆どが己の勘であった。

 

 赤服とはいえまだまだ現場を知らなかった新人時代。そこからハイネを歴戦のエースパイロットまで成長したのは、ヤキンでの激戦の経験だけでなく、アディンから毎日のように模擬戦で(しご)かれていたからに他ならない。

 

 そうして模擬戦を続ければアディンの戦い方も身に染み付いてくるわけであり、ハイネがガンダムのパイロットがアディンではないかと疑うようになったきっかけの一つである。

 

 ガンダムと何度も刃を交えてきた中、ハイネは一つの疑惑を抱いた。

 

 –––––––この戦い方、まさか…?

 

 ある程度の域に達したエースパイロットにはその辺のパイロットとは異なる独特の癖…とも呼べる操縦センスが存在する。

 

 例えばアスラン・ザラ。

 全てにおいて平均以上の腕を持つ彼は、独特の格闘センスを(あわ)せ持っており、連結ビームサーベルや"グリフォンビームブレイド"のような癖の強い武器を使ってガンダムと互角に渡り合っている。

 

 例えばシン・アスカ。

 彼は純粋な(テクニック)自体はアスランやレイ、ハイネには及ばないものの、ここぞという場面で切り抜けるずば抜けた爆発力を持っている。また、全距離において優れた戦闘センスを発揮することも可能であり、それはインパルスやデスティニーといった彼の乗ったモビルスーツの機体特性からも分かる。

 

 例えば、アディン・セファート。

 彼はとにかくモビルスーツの扱いが上手い。モビルスーツといえばあくまで人型の兵器でしかない…という当時の固定概念を持たず、自身の手足の延長のように機体を扱っていた。

 当時のジンなどでは彼の持つポテンシャルを完全に発揮することはできていなかったが、仮に彼がザクやグフ、それこそデスティニーやガンダムなどに乗ればどのような戦い方をするか……ハイネには簡単に想像がついた。

 

 そして、そんなアディンの戦い方と白黒(モノトーン)のガンダムの戦い方はどこか似ていて、これまでの幾度となる激突の中でハイネは確信に近い疑惑を持ったのだ。

 

 死んだと思っていたアディン・セファートが実は生きていて、ガンダムというモビルスーツに乗ってテロリストになっている。

 

 夢物語、妄想にしても不謹慎かつ笑えないものであったが、残念ながらその疑惑は的中した。

 

 だが、だからといってハイネにいいことなどない。

 当たって欲しくない予感こそよく当たり、その事実はただただハイネを苛む。

 

 そして、そんな状態でガンダムに乗ったアディンに勝てるはずもなかった。

 

〈ほら、どうしたハイネ!〉

「ぐっ!」

〈そんな覚悟で…俺の前に立つなっ!〉

 

 ハイネの中にある僅かな躊躇(ためら)い。それをアディンが見逃すことはなく、振り下ろされる巨剣と2本の足から放たれる光の刃がハイネとデスティニーを傷つけていく。

 

〈ハイネ!〉

〈このぉ…隊長から離れなさいっ!〉

 

 そこへレイとルナマリア、2人のGN-Xが駆けつけ、デスティニーから引き離すようにガンダムへ粒子ビームを放った。流石の弾幕にガンダムも一旦離れていく。

 ハイネもビームライフルを取り出しつつ体勢を立て直した。

 

〈大丈夫ですか、ハイネ〉

「あぁ、助かったぜ…サンキューな」

 

 とはいえ、損傷は大きい。

 ハイネのデスティニーは武装の大半を損失し、片翼は吹き飛んでいる。こちらも敵の追加武装とドラグーン兵器を破壊したが、ガンダムに例の新システムが控えていることを考えればレイとルナマリアとの3人がかりでも不安が残る。

 

(くそっ、何やってるんだ俺…)

 

 だが、相手はそんなハイネ達を待ってはくれない。

 大剣を武器に襲いかかるガンダムに対してレイとルナマリアが迎え撃つ。

 

〈ルナマリア、俺が前に出る。援護しろ!〉

〈任せてっ!〉

 

 元々同じ部隊でアカデミーでもシンと一緒に組むことが多かっただけあり、その連携は見事だ。

 

 特にレイの動きがいい。

 今までは機体性能の影に隠れていたが、元々はミネルバのルーキー達の中でもトップの成績で卒業したパイロットである。アスランのような変則的な強さやシンのような爆発力とは異なる、相手を分析して動きを読み取るその戦い方はかつてのザフトのエースであるアディンにも劣らない。

 そして、それを援護するルナマリアも変幻自在なアディンの動きを制限するのに一役買っている。

 

(それに比べて俺は……チッ、分かってるんだよ、アディン隊長がもうプラントの敵だってことはよ!)

 

 あれだけ上官ヅラ、先輩ヅラしておきながら今自分がしていることはなんだ?

 

 部下に戦いを任せて感傷に浸るなど、それがフェイスの姿か?

 

(割り切れよ、俺……!)

 

 脳内を目まぐるしく駆け巡るアディンや死に別れた仲間たちとの思い出。ハイネにとってそれは間違いなく人生で最も暖かく、もう見ることのできない大切なものだ。

 

 だが……、

 

 ––––––– ハイネ! 特訓つけてくださいよ!

 ––––––– すまないハイネ。だが、不器用な俺の分もシンのことを気にかけてやってくれないか?

 

 これまで持ってきた部下たち、そして危ういルーキーや不器用な同僚の顔を思い浮かべ、ハイネは"戦士"として決意する。

 

(………大切なのは失った過去じゃねぇ、これから作り出す未来だ…!)

 

 その時、ハイネの中でスイッチが切り替わる。

 笑みは獰猛に。感傷は高揚へ。躊躇いは戦意へと。研ぎ澄まされた感覚が身体を動かす。呼応するようにデスティニーのツインアイが光り輝いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…しぶといっ!!」

 

 己に追い(すが)る2機のGN-Xを前にガンダムサルースのパイロット、アキサム・アルヴァディは苛立ち気味に言葉をもらした。

 

 基本的にガンダムとGN-Xの間には性能の差は殆どないとされており、特にサルースとGN-Xは開発系譜的に兄弟機とも言える関係だ。それ故、必然的に勝負の結果を分けるのはパイロットの能力となってくる。

 

 アキサムはガンダムマイスターとして、そこらのエースパイロットなどに遅れを取るつもりは毛頭なかったのだが、どうにもザフトは余程のエースパイロットを投入してきたらしく、負けずとも勝ちきれない戦いが続いていた。

 

「チッ、これが今のザフトの実力か……なかなかにやるっ!」

 

 トゥルブレンツユニット、GNファング、GNランチャーと立て続けに武装を失いながらも、アキサムは残った武装であるGNバスターソードとGNビームサーベルによる格闘戦を仕掛けていく。

 

 対して、向こうはこちらの遠距離武器が失われていることに気がついたのか、ビームライフルによる牽制でこちらを近づかさせないように立ち回ってきた。

 

 このまま戦いが続けば、生成粒子量に制限のあるGN-X側が粒子切れを起こすだろうが、そんなものを待っている時間はない。

 

「チャージまで…あと、110か」

 

 それに間も無く、虎の子のトランザムシステムが使用可能になる。使えばこちらもガス欠になるが、少なくとも目の前のGN-X2機は確実に葬れるはずだ。

 

 ––––– ならば、もう暫くはこのまま戦いに付き合ってやるのもやぶさかではない。

 

「なっ」

 

 アキサムがそう思った時、一筋のビームがサルースを掠める。仕掛けたのは片翼を失ったオレンジ色のデスティニー、ハイネ・ヴェステンフルズの専用機だ。

 更に2機のGN-Xが放つ粒子ビームがサルースへ襲いかかる。アキサムはそれを必死に回避しながらも、厄介な元部下の攻撃に舌を打った。

 

「ハイネのやつ、まだあんなに動けたのか!」

 

 少なくともデスティニーの厄介な特性である機動力は削いだはず。GNドライヴもないあの機体ではもはやガンダムとは戦えないだろう。

 

 アキサムはそう考えてハイネを敵の戦力に入れていなかったが、どうにもそういうわけにもいかなそうだ。

 

 先程まで繋がれていた通信は向こうから切られている。

 それはこれ以上語ることはないという意思表示なのか。

 

 だが、アキサムは何も言われずともハイネの答えを理解していた。

 

(そうか…お前も決めたか。その道(ザフト軍人)を…!)

 

 そんなかつての後輩の姿に、アキサムもまた己の信念で全力で応える。

 

「…上等、"トランザム"!」

 

 それと共にサルースの機体が赤く輝く。

 機体性能は通常の三倍、そのカタログスペックに(たが)わないスピードを誇る今のサルースはまさに流星。GN-Xの粒子ビームはサルースの動きに付いて行くことはできないでいた。

 

 そして、そんな鈍い動きは今のアキサムにとっては絶好の的である。放たれる粒子ビームを次々と回避し…、

 

「おらあ!!」

 

 すれ違い様にバスターソードを一閃。

 構えられたシールドごとGN-Xの左腕を刈り取ると、立て続けに2機目のGN-Xに攻撃を開始。敵がビームサーベルを抜くよりも早くサルースの脚部のビームサーベルが両脚を切断する。

 更に残されたもう一本の足の爪先による斬撃がライフルごと右腕を切り落とし、無力化した。

 

 そして、アキサムはそのままバスターソードを構え…、

 

「–––––その攻撃、読めてるぜっ!」

 

 GN-Xから現れたデスティニーの"パルマフィオキーナ"による攻撃も回避する。無茶な機動に損傷した機体が悲鳴を上げているが、アキサムはトランザムシステムを信じて戦いを続けていく。

 

 トランザム状態のサルースを相手に損傷したデスティニーなど相手にならない。ビームライフルを蹴り飛ばし、最後の近接兵装であるビームブーメランをも弾き飛ばした今、残されているのは両腕の"パルマフィオキーナ"のみ。

 

 だが、奇襲前提の武装に引っかかるアキサムではない。

 振るわれた右腕をサーベルで斬り飛ばし、そのままトドメと行こうとしたところで……。

 

「くっ、邪魔だっ!」

 

 割り込んできたGN-Xによって放たれた粒子ビームの粒子ビームの直撃によって剣の刃先がコックピットからそらされたものの、バスターソードはデスティニーの右肩から胸部にかけて突き刺さる。

 

「ならこのまま……なっ!?」

 

 アキサムがバスターソードでデスティニーを両断しようと思ったそのとき、デスティニーの左腕ががっちりとサルースの右腕を掴んだのだ。

 

 –––––– しまった!? この距離では!

 

 そして、デスティニーの"パルマフィオキーナ"が発動する。至近距離で放たれたビームがサルースの右腕へダメージを与え、更に追い討ちとばかりにGN-Xの放つ粒子ビームによって破壊された。

 

「くそっ…!」

 

 思わぬダメージに舌打ちするアキサム。

 だが、ザフトの反撃はまだ終わってなかった。

 

「なんだ…!?」

 

 突如として鳴り響く警報(アラート)

 アキサムが反応するよりも早く、数多のビームとミサイルがサルースへ直撃した。

 元々ダメージが蓄積されていたこともあり、さしものガンダムも大ダメーを負い、トランザムが強制的に解除される。

 

 警報(アラート)の鳴り響くコックピットの中、アキサムは攻撃の仕立て人の方向を見つめる。

 

 そこには予想外のモビルスーツがいた。

 

「"インパルス"だと!? バカな!?」

 

 攻撃を仕掛けてきたのは砲撃仕様のブラストシルエットを装備したインパルス。戦闘開始序盤、間違いなく撃破したはずの機体が復活して現れていた。

 

 コアスプレンダーが健在な限り、インパルスは何度でも復活する。その特性は当然理解していたが、まさかこの土壇場で、しかもあれだけ力の差を見せつけてなお挑んでくるとは流石のアキサムも想定外であった。

 

 なんだ、あいつは?

 よほどプラントへの忠誠が強いフェイスか? それともこちら(ガンダム)への憎しみが深い復讐者か? それともただの馬鹿なのか?

 

 が、どれだけ思考を巡らせようともインパルスによってダメージを負った事実は変わらない。

 

「ちぃっ、ソレスタルビーイングを舐めるなよっ!」

 

 それでも残った左腕にビームサーベルを持ち、アキサムはインパルスへ攻撃を仕掛ける。インパルスはミサイルやレール砲といった攻撃を行ってくるが、アキサムはトランザムの反動で鈍ったサルースを必死に操って回避していく。

 

「そらぁ!!」

 

 突き出されたビームジャベリンをスレスレで回避し、左脚のビームサーベルで回転するように刈り取る。

 アキサムはそのまま左腕のビームサーベルでインパルスにトドメを刺そうとしたが、それを阻んだのは両手足を失ったGN-X(ルナマリア・ホーク)による体当たりだった。

 

「ぐぅっ」

 

 大きく揺れるコックピットの中、アキサムは素早く体勢を立て直すが、サルースの眼前にはビームライフルを構えたGN-X(レイ・ザ・バレル)がいた。アキサムが認識すると同時に放たれた粒子ビームがサルースの頭部と左脚を破壊する。

 

「まだだっ!」

 

 それでもアキサムは諦めない。

 左手のビームサーベルを投擲。フェイトにも劣らない命中精度を持つそれは真っ直ぐにGN-Xの頭部に突き刺さり、小規模な爆発を起こす。

 

〈貰ったぁぁぁ!!〉

 

 だが、そこまでだった。

 倒れゆく仲間の影から現れたのはデスティニー、ハイネだった。突き刺さっていたGNバスターソードを片手にフェイズシフト装甲の落ちた状態でこちらへ突っ込んでくる。

 

「…ハイネっ!?」

 

 それを見てアキサムは己の死を悟った。

 トランザム終了後のサルースでは、どうやっても避けられない。仮に避けられたとしてもこの機体状況では他のマイスターの援護にも行けないだろう。

 

 –––––––– これまでか……。

 

〈これで終わりだっ!!〉

 

「すまない……みんな」

 

 反射的に抜き取ったビームサーベル。

 だが、それを構えるよりも早くバスターソードの刀身がサルースを真っ直ぐに貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





アキサム(アディン)とハイネ
アスランとニコルくらいには仲良かった。
だが、それ以上に二人とも軍人として完成していたので、若い少年少女に比べて、それ以上のドラマはない。
悲しいけどこれ、戦争なので…を体現した2人。

>アキサム対ザフト
アキサム「トランザム…勝ったな」
ハイネ「ただでやられるかよ!」
アキサム「チッ、油断したか…」
月光の戦乙女(ワルキューレ)「貰ったわ!」
アキサム「え?」
ザフト「え?」
読者「え?」
アキサム「……油断したか(2回目)」
ザフト「……今がチャンスだ!」

(コミカルにすると)だいたいこんな感じ。
勿論、アグネスサンは手柄狙いの独断先行。というか、ガンダム対ガンダムの戦いに割って入る度胸と技術がある奴がいると誰も思ってなかった。
なお、結果的にはファインプレーではあるので、これを口実に戦後自信満々にコンパス入りする模様。


アキサムとハイネがどうなったか、その他のマイスターについては、また次回。
なるべく早く完結させるようにするのでこれからも応援頼みます。





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