【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E. 作:アルテミー
テスト、実習、ゼミ、卒論、国家試験。
それらを忘れるために私は最後のfreedom鑑賞に向かいました。
迫り来るバスターソードの刃、それと共に来た機体を貫通する大きすぎる衝撃はコックピットにいるアキサムにも大きなダメージを与えた。
しかし、運のいいことにコックピット、そしてGNドライヴと機体の動力部を外れていたため、こうしてアキサムはなんとか生き延びている。
ただ、あくまで生きているだけだ。その身体はすぐにでも医療カプセルで治療を受けなければならないほどの重症である。
「痛っつぅ…」
どうやら、爆発の衝撃で肋骨が何本か折れてしまったようだ。もしかすると、折れた骨が内臓のどこかを傷つけているかもしれない。
ヘルメット越しに頭を叩いて骨折による嘔吐感を紛らわし、コックピットのコンソールを操作して機体状況を確かめる……が。
「……ダメか」
コンソールが死んでいる。
機体のシステムは完全にダウンしており、アキサムにはどうすることもできない。
爆発四散していないのが奇跡とも言える状態だが、おそらくはそれも時間の問題。少しでも衝撃が加わるか、ダメージが機体動力まで回れば瞬く間に機体は爆発するだろう。
「ゴホッ…地獄へのカウントダウンか」
吐き出した血がバイザーの下半分を染め上げる。
なんにせよ、アキサムはもう自身が助からないことを理解していた。機体は勿論、自身の身体も生きているのがやっとの状態だ。これから自分は地獄で行ってきた罪の清算をしなければならない。
その時、かろうじて生きている通信機から音声が流れた。他の回線が死んでいるため、これは接触回線であると分かる。
〈おい、アディン。生きてるか?〉
それはアキサムにとって聞き覚えのある声だった。
「…ハイネか。機体を脱出しなくていいのか?」
自身へトドメを刺したデスティニーのパイロットであり、道を違えたかつての己の部下。そんな彼に対し、アキサムから出たのは何故か心配の言葉だった。
〈こっちも機体が死んでるのさ。アンタの最後っ屁のおかげで〉
「…ただじゃ、死なねぇさ」
どうやら苦し紛れに引き抜いたビームサーベルでの攻撃は成功したらしい。どうにも、互いに死に体のようだ。詳しくは分からないが、今は互いに抱き合うような状態で宇宙を漂流しているのだろう。
「…………」
〈…………〉
先程まで殺し合っていた二人の間にはしばらくの沈黙が訪れていた。
〈なぁ……最期だから聞くが、本当にこれしかなかったのか?〉
それを破ったのはハイネ。
掠れるような雑音混じりの声には
こんなはずじゃなかった。世界はいつもこればかりだ。
「俺は……」
だからこそ、気づけばアキサムは口を開いていた。
「俺は…変えたかった。ずっと何かを変えたかったんだ」
戦争によって全てを失ったあの日。
仲の深かった家族も大切に想っていた幼馴染も皆失い、残されたのは運良く生き残った無力な自分だけ。
そんな自分を否定したくて軍に入った。今度は大切な誰かを守れるように…。
「だが、ザフトに入っても何も変わらなかった。いくら倒すべき敵を倒しても、平和は訪れねぇ。それどころか戦争はより激しさを増し、気付けば俺は誰かから恨まれる立場に立っていた」
–––––– 倒すべき敵? どこのどいつだ?
当時のザフトはナチュラル憎し、地球軍はコーディネーター憎しの感情に染まっていた。純粋に平和のために戦っていたアキサムのような兵士はほとんどいなかったと言っていい。
「だからこそ選んだ。連合でもザフトでもない、真に戦争をなくすために戦える場所をな」
〈…それがソレスタルビーイングだったってか?〉
ハイネの問いに沈黙で返す。
実際、あのタイミングでアキサムの元に組織からのスカウトが来たのは運命だった。しかもスカウトに来たのは旧知の仲であったバッツである。
当然、いくらバッツの誘いとはいえ、そんな胡散臭いテロリスト加入の勧誘など断ったが、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦における絶滅戦争を目の当たりにして考えが変わった。
「これ以上罪のない人々が戦争によって悲しむ思いをするのを防ぐ……そのために俺はガンダムのパイロットになることを受け入れたんだ」
〈………そうかい〉
「笑いたきゃ笑え。俺だって分かってるさ、この夢が夢想でしかないってことはな」
アキサムは自嘲するように言った。
語り終えてみれば、それはありふれた悲劇から始まったどうしようもない男の一人芝居。それに巻き込まれた方はたまったものではないだろう。
馬鹿馬鹿しい話だ。自分よりも不幸な人間などたくさんいる。それこそ組織にはフェイトを始めとした戦争の犠牲者たちが……。
〈ハハハ……ハァー〉
そこまで考えたアキサムの耳に、通信越しのハイネのため息混じりの乾いた笑いが聞こえてきた。
〈あーあ…そこまで言われちゃ俺は何も言えねぇ〉
「ハイネ……」
〈俺から言いたいことはただ一つ…〉
それは決して人の思いをバカにしたものではなかったが、どこか呆れるような、叱るような響きだった。
〈何でアンタは誰にも言わずに居なくなった…?〉
「……………」
〈………俺たちはそんなに頼りなかったか?〉
それは置いて行かれた者の言葉。
だが、アキサムは彼等が頼りなかったから、ガンダムマイスターの水準に満たさなかったから、何も言わずに一人で組織へ加入したわけではない。
「…別にそんなんじゃないさ」
そう、決してそんなわけではない。
ただ、自らが歩むのは戦争根絶なんて夢想で
そんな世界に俺は……。
「…俺のエゴにお前らを巻き込みたくなかった。それだけの話だ」
〈………そうか…い。ったく……アンタは相当に………器用な人間だ…ぜ〉
先程よりも多くなった雑音。デスティニーとサルースのどちらかのシステムが限界を迎えようとしているのだろう。
こうして通信をしていられるのもあと僅か、その後にはどうしようもない死が待っている。
「ハイネ、俺の地獄行きにお前を巻き込んだ……すまなかったな」
思わず謝罪をしたのは何も悪くない後輩を死地へ招いたことに対する
それが何の意味も成さないとしても、かつてのアディン・セファートとしてアキサムは言葉をかけずには居られなかった。
〈ハッ…何を今更…ま…そういう……が俺は……ぜ〉
そこで通信が途切れ、同時に機体からバチバチと嫌な音がし始めた。それがサルースかデスティニーかは分からないが、そろそろ終わりの時が来たようだ。
ハイネが最期に何を思い、何を言ったのかは分からない。それでもアキサムは通信が途切れる最期まで元後輩の言葉を聞き終えた。
「ゲホッゲホッ……こっちもか」
正真正銘、一人になった空間でアキサムは己の肉体の限界を感じていた。
何度目かの吐血がコックピットの中を漂う。それに出血のせいだろうか、どうにも視界が暗く、どこか意識が遠く感じる。
それでも、彼の右手は何とかとあるボタンへと届いた。
(せめて……太陽炉を)
オリジナルのGNドライヴ。
それはソレスタルビーイングの計画の要であり、ガンダムをガンダムたらしめるために必要なもの。既に死に体の自分とサルースには必要のないものだが、きっと仲間たちが、未来のパイロットが活用してくれる。アキサムはそう信じた。
サルースからGNドライヴが射出される。
それは同時に限界となっていた機体に負荷をかける行為であり、まるで役目を終えたかのように機体の爆発が始まる。
「あばよ……先に逝ってるぜ–––––––––」
戦争根絶を成し遂げるまでこっちに来るなよ。
そんなアキサムの言葉は燃え盛る炎と黒煙によって遮られ、サルースとともにその肉体は消失。
続けて、誘爆したデスティニーもそのパイロットを失ったことで核の光と共に宇宙に消えていった。
▽△▽
その情報はソレスタルビーイング、同盟軍両方に瞬く間に伝えられた。
ある者はようやくのガンダム撃破の報告に歓喜し、ある者は頼れる仲間が亡くなったことに悲観する。
「アキサムが……そんな」
〈死に急ぎやがって、あの馬鹿野郎…!〉
黒煙を上げるクラウディオスを庇うように戦うシエルとバッツもその報せを聞き、信じられないとばかりに表情を歪める。
アキサムは間違いなくソレスタルビーイングが誇る最強のマイスターだ。
頭の切れるフブキよりも素早い状況判断、目覚ましい成長を見せるフェイトですら届かない操縦センス、強化改造を受けた自分よりも卓越した身体能力。
コーディネーターとしてシエルが知る限り最も優れたパイロットがアキサムである。
ーーーそのアキサムが相討ちとはいえ死んだ?
彼の実力をよく知るシエルはその事実をそう簡単には認められなかった。
〈くそったれがっ!〉
バッツが苛立ち混ざりに
「このままじゃ……」
敵の士気は高く、勢いに乗っている。
これまで無敵の強さを誇っていたガンダムをようやく撃破したからだ。
対して、こちらは大切な仲間を一人失った。
更にサルースを失うということはGNドライヴを一基失うことであり、ここで戦い抜いたとしても先の未来には不安しかない。
〈くそっ、トランザムが使えれば…!〉
コックピット画面にある粒子チャージ率は58.8%を示しており、トランザムシステムは使えない。元々粒子貯蔵量の乏しかったGNアームズとの合体なので仕方がないが、トランザム以外にこの膠着状態を打破する術がないのも事実。
「やはり僕たちはここで滅びる
シエルは嘆くように呟く。
仮にセレーネだけが生き残ったとしても、この先とても計画は続行できないだろう。
その時、追い討ちとばかりに新たな敵機体の接近を確認する。
「この反応……!」
〈もう一機のデスティニーかっ!?〉
長距離射程ビーム砲から放たれたビームが数々の攻撃で耐久性の落ちたGNフィールドに着弾し、大きく吹き飛ばされる。
だが、攻撃はそれだけにとどまらない。
黒煙の中から飛び出して来たのはデスティニーの放った二つのビームブーメラン。続いて、デスティニー本体も
「来る…!?」
所詮はGNドライヴも搭載していない旧式のモビルスーツのはず。
しかし、シエルは、まるでパイロットの意思が化身となったかのようなデスティニーの気迫に
▽△▽
アスランに言われてステラたち連合部隊の援護に向かっている最中、ミネルバのメイリンから伝えられたのは信頼していた上司の死であった。
「ハイネ……」
身近な人の死を感じるのは随分と久しぶりで、それでも両親と妹を失ったあの時と同じくらいの怒りと悲しみ、そして己の無力さが込み上げてくる。
直ぐにでも敵討ちをしたいという気持ちに駆られ、同時にもう敵はおらず、その行為に意味がないと気づいた。
それに、伝えられたのは凶報ばかりではない。
ミネルバの皆は勿論、レイやルナマリアも無事とのことだ。機体の損傷が大きく直ぐには応援には来られないようだが、それでも仲間が無事なことにホッと胸を撫で下ろす。
だが、ハイネは死んだ。
始めはアスランと並んで良い印象じゃなかったが、接していく内にフェイスとして、仲間として信頼できる上官だと理解できた。
だからこそ、これから彼ともいい関係を築いていくところだったのだが…。
「どうしてアンタ達は……くそっ」
行き場を失った怒りがシンの心を支配する。
まるで八つ当たりのように、それでいて冷静に、シンは目の前のガンダムに刃を払った。
先に放ったビームブーメランが大型の装備を身につけたガンダムの左ウイングを切断し、上手く懐に入り込んだデスティニーによるアロンダイトの一撃が背部の砲身を切り裂く。
ガンダムはせめてもの抵抗とばかりに右腕と一体化した大剣を振るったが、その大振りの一撃はデスティニーに命中することなく光の翼による残像の一つを切り裂くだけだった。
ユニットから黒煙を上げるガンダムを見送るシンの元に連合部隊の隊長であるネオ・ロアノークから通信が入る。
〈坊主、どうしてここに…!〉
「すみません、でもステラ達が心配で…」
〈あー……うん、助かったぜ〉
一瞬、呆気に取られたような表情を浮かべたネオだったが、やがてどこか呆れたような口調で礼を述べる。
〈–––––– シン!〉
やって来たのは一機のGN-X、ステラ・ルーシェの乗る機体だった。幸いなことに大した損傷はなく、ステラ自身の声も明るい。
思わずシンが機体を向けようとしたその時……、
〈–––––– ステラっ!〉
「…やらせるかっ!」
放たれた一筋のビーム。
ステラへ目掛けて真っ直ぐに放たれたそれをシンはシールドで割り込むことで防御する。
「……お前は」
姿を現した攻撃の仕立て人……4機目のガンダム。
ライフル状に変形した
その姿はどこか怒っているようでいて、悲しんでいるようでいて、嘆いているように見えた。
>アキサム
戦争根絶が望みなのは間違いない。
が、それはそれとして罪の意識を前にライナー化へ片足突っ込みかけていた。
>ハイネ
原作からは考えられないほどに活躍したが、流石に退場。
多分、
>シエル
アキサムがやられて精神的にやられてる。
彼は基本的にメンタルナヨナヨなので…。
>シン
尊敬していた上司をやられてちょっとオコ。
SEEDは発動してないが劇場版デスティニーぐらいの動きができる。
>
……………。