【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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完結まで後数話くらい。
二部の構成は考えているのでこれまで通りの更新ペースで行けそう。



残る命、散る命Ⅱ

 

 

 

 

 アキサムが死んだ。

 その情報を聞いたのは同盟軍のモビルスーツ部隊を蹴散(けち)らし、クラウディオスの護衛任務に戻ろうとしていた時のことだ。

 

 先のアステリアはオーバーブーストモードを発動した反動で残存粒子を大きく消費し、次の戦闘に満足に耐えられるほどではなかったため、フェイトはあくまでゆっくりと帰還することを考えていた。

 

 その時、フェイトは仲間がやられることなど全く考えていなかった。自身よりも年長で腕のある彼等をフェイトは信頼していたし、何よりもトランザムシステムを手に入れたガンダムという存在を絶対視していたからだ。

 

 だが、それは大きな過信だった。

 結果としてアキサムは死に、フブキは敵エースを前に苦戦し、シエルは多対一で追い詰められている。

 帰るべき家であるクラウディオスは黒煙を上げながらも敵部隊の攻撃を必死に(しの)いでいた。

 

(………アキサム・アルヴァディ)

 

 急ぎ仲間の援護に向かうフェイトの顔は、能面の様に無表情だった。

 何も感じていないわけではない。彼女は必死に込み上げる怒りと憎しみの感情を(おさ)えていた。本音を言えば、すぐにでもアキサムの仇を()ちたいと思っている。

 

 アキサムは、家族を失ったフェイトにとっては第二の父のようなものだった。まだ自分も若いくせに、加入当初のフェイトのことをフブキと二人して父親のように面倒を見てくれた、そんな相手。

 

 そんな彼の死に何も感じないわけがない。

 それでも、憎み憎まれの世界を(いた)んだのもアキサムであり、これ以上そんな世界を作らないことはフェイトの望みでもある。

 

 だからこそ、彼女は必死に己の感情をコントロールし、ソレスタルビーイングのガンダムマイスターとしてアキサムのように振る舞おうとした。

 

〈フェイト!? ダメだ、彼は君の–––––ぐっ!〉

 

 だが、それも仲間を手にかけようとする同盟軍、そしてそれに従う兄の姿を前に限界を迎えた。

 

 シエルは何かを伝えようとしていたが、兄の乗るデスティニーは彼に喋る隙を与えずに次々と攻撃を加えていく。背後に控えるGN-X部隊も粒子ビームで援護し、どんどんとセレーネを追い詰めていった。

 

 紛れもなく劣勢。

 兄がシエルを、大切な仲間を傷つけている。兄は大切な肉親だが、シエルも第二の兄のような存在だ。そんな二人が戦っている。命を落とそうとしている。

 

 ただ、自分はオーブで家族と平穏に暮らせていればそれでよかったのだ。優しい兄、穏やかな両親と共に…。

 

 だが、それはもう叶わぬ物。胡蝶(こちょう)の夢だ。

 両親は死に、兄は敵になった。そして、自分はいまや世界の敵でもある。

 

 不意に出撃前のアキサムの姿が脳裏に浮かぶ。

 

 ーーーフェイト、帰ってきたらさっきの答えを聞かせてくれ。約束だ。

 

 何のために戦い、何のために死ぬのか。

 今のフェイトにはガンダムという力があり、戦争根絶という夢がある。

 

 今更、兄妹だからなんて理由で銃を捨てることは許されない。そんな理由ではこれまで命を奪ってきた者達が納得しないだろう。

 

 それでも…、

 

(私は………もう誰も失いたくないから)

 

 フェイトは心を決めた。

 戦いとは生きること、生き抜くこと。失ったものがもう戻らないのなら、失う前に守ればいいのだ。今の自分にはその力がある。

 

「お兄ちゃん、今行くから……」

 

 種が割れ、更に黄金の瞳が光り輝く。

 

「力を貸して、アステリア…!」

 

 主の意に答えるようにツインアイを輝かせたアステリアは真っ直ぐにセレーネとデスティニーの元へ向かった。

 

 目的は何も変わらない。

 戦争を止める、それだけだ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 一方、戦いの中心から離れた宙域では、ガンダムメティスとインフィニットジャスティスによる激しいぶつかり合いが発生していた。ほぼ互角とも言えるその戦闘は行ううちに移動を繰り返し、気づけば互いに仲間たちと離れた宙域で戦闘が続いている。

 

 が、二機が膠着状態に入っているうちに、気づけば戦況は同盟軍側に傾こうとしていた。

 

「サルースの反応が消失…先に()ったのね、アキサム」

 

 頼れる仲間であったアキサムの死。それはフブキにも少なくない衝撃と悲しみを与えたが、感傷に浸っている暇はない。ソレスタルビーイングは今が正念場なのだ。少数精鋭故にここでのサルースの脱落は士気的にも、戦略的にも非常に辛い。

 

 フブキは湧き上がる悲しみをグッと堪え、追い込まれている仲間の元に向かおうとしたが、目の前の紅い機体によって阻まれる。

 

「アスラン…っ!!」

 

 乗っているのは旧知の人物であり、幼少期を共に過ごした幼馴染であるアスラン・ザラ。

 

 だが、フブキは彼が相手だからといって手加減などしていない。ガンダムマイスターとしてアスランを殺す気で戦っている。そうでなければ彼は倒せず、ソレスタルビーイングは負けてしまうからだ。

 

 しかし、アスランは強敵だ。

 マシンスペック、戦術予測共にフブキとメティスの方が上回っているが、モビルスーツパイロットとしてはアスランが追随を許さない。

 ライフルを失っている以上、近接戦闘で仕留めるほかないのだが、アスランは近距離戦に秀でている上、ジャスティスが近接武装を豊富に搭載しているのは言うまでもない。

 

 大気圏内ならまだしもここは宇宙、更に近接戦闘に縛られるとなるとメティスとジャスティスの間にある性能差は限りなくゼロに縮まっている。そうなれば、パイロットの腕が劣るフブキではアスランに苦戦するのも当然のことだった。

 

(ここまで腕の差があるなんて……!)

 

 幼い頃は何もかもがフブキの方が上だった。

 コーディネーター顔負けの頭脳、身体能力を持つフブキは、コーディネーターでも特に優れた才覚を発揮していたキラとアスラン二人の天才にも決して劣らない。

 だが今現在、ことモビルスーツ戦闘に限ればアスランには決して及ばない。この戦いで、その事実が()()りになっていた。

 

〈聞こえるか、ガンダムのパイロット…!〉

 

 その時、メティスに接触通信が入る。通信はジャスティス、アスランからだった。

 

(何のつもり…?)

 

 物は試しにと通信をオンにする。ガンダムマイスターの情報は音声だろうと決して外部に漏らしてはならないが、裏切り者が出ている以上は今さらだ。

 

〈こちらザフト軍特務隊、アスラン・ザラだ〉

 

 やはりアスラン、ディオキアで出会っているがためにフブキには驚きはないが、(いぶか)しむように通信を繋げる。

 

〈こちらは既に一機のガンダムを撃破している。だが、これ以上の犠牲は望まない。そこで、この場で母艦を含めて全ての機体が武装解除を行い投降するなら、こちらもこれ以上の攻撃を停止する〉

 

「な……!」

 

 何かと思えばそれは投降の呼び掛けだった。

 フブキは絶句するが、アスランは極めて真剣に続けた。

 

〈人命は保証する。これは既にデュランダル最高評議会議長の許可を得ている物であり、連合側も了承済みだ〉

「……ただし、ガンダムを引き渡し、これ以上の組織の活動は認めないと?」

〈…そうだ。また、君たちがソレスタルビーイングに関わる全ての関係者、組織、国家などの情報をこちらに提供するのなら、罪の減刑の可能性もある〉

 

 要は司法取引だ。

 本当にそんなことをプラントや連合が了承しているのかは疑問なところだが、裏切り者がいる以上はあり得ない話ではない。

 

〈こちらも仲間を多く失っている。頼む、これ以上戦っても互いに何の意味にもならない!〉

 

 それは懇願のようだった。

 アスランも彼なりに、戦争でこれまで失った多くの仲間を想い悼んでいるのだろうか。

 

(アスラン……)

 

 アスランは特務隊フェイスだ。その彼が言うのなら信頼性は高いだろう。

 

「…………」

 

 フブキは暫し考えた。

 ここで投降すれば仲間たちは助かる。こちらの素性が明らかになっていない以上、裏切り者はマイスターの個人情報までは把握していないのだろう。

 ならば、フェイトやヴァイオレット、ウェンディ辺りは組織が無理強いしたとでもすれば重い罪には問われない可能性が高い。連合に強化人間として改造されたシエル当たりも同じく。

 

 このまま続ければ敗北は必然、サルースは撃墜され、セレーネは中破、クラウディオスは航行不能で逃げられない。満足に動ける機体はアステリアとメティスだけだが、フブキはアスランに勝てない。頼れるのはフェイト一人だ。

 

 そして、フェイトは実の兄と銃を向け合うことになる。

 皆のことを思うなら投降というのも悪くない手段なのだろう。ここまで世界に喧嘩をふっかけた組織など、誰も許しはしないと思っていたが、どうにもそうでもないらしい。

 

 だが……、

 

(ごめん、みんな……それでも私は)

 

 フブキは力強く口を開いた。

 

「投降はしない。ガンダムも渡さない…私たちは屈しない!」

〈………っ!〉

 

 ここで投降して、それで何になる。

 仲間たちの命は助かっても決して戦争はなくならない。ガンダムの力が悪用され、戦争がより激しくなるだけだ。力を奪われ、何もできず、牢の中で皆にそんな残酷な世界を見続けろと言うのか。

 

 そんな生き地獄、死んだ方がマシだ。

 

「戦争根絶、その実現のために私たちは死ぬまで戦い続けるわ!」

〈待て…!〉

 

 交渉は決裂した。

 それを示すかのようにフブキはGNシールドをハサミのように展開し、内部のGNシールドニードルを露わにする。これがメティスの隠し武器だ。だが、それだけじゃない。

 

「トランザム、始動…!」

 

 トランザムにより、メティスの機体色である朱色が更に紅く輝く。

 

「アスラン・ザラ、覚悟しなさい!」

〈くっ…!〉

 

 膠着状態だった両者に、遂に戦いの終わりが訪れようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

「バッツ、応答してくれ!……ぐっ!」

 

 シエルは己の無力さに歯噛みしていた。

 GNアーマーtype-Sはデスティニーの猛攻によって半壊、サブパイロットであるバッツからの返答はない。GN-Xから放たれた粒子ビームの一つが運悪くGNアームズのコックピット部分に損傷を与えたからだ。こちらからその様子を窺い知ることはできないが、早く治療しなくてはならない。

 

 シエルはトドメを刺さんと迫るデスティニーの攻撃を回避しながらも、黒煙を上げるクラウディオスに通信を繋げる。

 

「ウェンディ、トレミーの状況は…!?」

〈GNフィールド展開不能、第二、第三エンジン共に停止。もう駄目よっ!〉

 

 帰ってきたのは今にも泣きそうなウェンディの声。ブリッジにいるのはウェンディとヴァイオレットの姉妹二人だけだ。操舵士のシドと整備士のバレットは強襲用コンテナで必死に迎撃をしている。

 

 だが、シエルがデスティニーに抑えられ、これまで相手をしていたGN-X部隊があちらへ向かうとなれば、シド達ではとても凌ぎ切れない。

 

「くっ……これまでか」

 

 そうはさせないと言いたいところだが、眼前のデスティニーは強い。光の翼による撹乱(かくらん)はこちらの照準を鈍らせ、大振りな武装は命中することがない。唯一の面攻撃が可能であるGNミサイルもデスティニーのフェイズシフト装甲に阻まれてしまう。

 

 それに対して、デスティニーの持つ大剣はこちらの装甲を次々と傷つけていく。

 シエルはやむなくGNアームズをパージしたが、セレーネ本体もダメージは大きい。特に肩口のGNフィールド発生装置に付けられた傷はフィールドの発生に支障を与えている。おそらく全身を覆うフィールドの展開は不可能だろう。

 

(どうする…?)

 

 不幸中の幸いはGNアームズとドッキングしたことによって粒子量に余裕が戻り、奥の手であるトランザムシステムが使用可能になったことだ。

 

 だが、トランザムは諸刃の剣であり、リスクも相応の物となる。使用時間内にデスティニーを倒せなければ負け、仮に倒したとしてもGN-X部隊を何とかしなければならない。

 

 どうするものかとシエルが思案した時、一筋のビームと共に希望はやってきた。

 

〈シエル…無事っ!?〉

「フェイト!」

 

 それは劣勢のソレスタルビーイング陣営で唯一白星をあげた最年少のガンダムマイスター。アステリアに損傷らしい損傷はなく、戦闘に支障はないように見えた。

 

〈ここは私に任せて、シエルはトレミーへ!〉

「フェイト、ダメだ!彼は君の……ぐっ!

〈私たちは……ここで滅ぶわけには行かないんです!」

 

 そう言うと、アステリアはGNソードを展開してデスティニー、そして一機のGN-Xに襲いかかった。

 

「…分かった!」

 

 フェイトの力強い言葉に押され、シエルはこの場を彼女に任せてクラウディオスの方向へ機体を走らせる。

 

 背後で戦うフェイトは、デスティニーに加えてGN-Xを相手にしても互角以上に闘えている。

 

(強くなったね……フェイト)

 

 それがどこか誇らしくて、それ以上に自分が情けない。シエルはもどかしい思いを胸にクラウディオスを狙うGN-X部隊を牽制した。

 

「これ以上はやらせないっ!」

 

 だからせめて、彼女(フェイト)の帰る場所だけは守ってみせる。

 

 

 こうして最後の戦いが始まる。

 フブキ・シニストラ(リリベット・ホワイト)対アスラン・ザラの一騎打ち。

 シエル・アインハイト対スウェン・カルバヤン率いるファントムペインの主力部隊。

 そして、フェイト・シックザール(マユ・アスカ)対シン・アスカの兄妹の戦い。そこにステラ・ルーシェやネオ・ロアノークらエクステンデッド組が加わる。

 

 こうして、一つの時代の区切りとなる戦いの幕が閉じようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





>フェイト/マユ
ある意味で吹っ切れた。
兄が敵なら、殺さずに倒してからとっ捕まえればいい。
反抗期の年頃なので、多分兄の言うことは聞かない。組織に連れ帰ってからじっくりオハナシするつもり。

レクシオが目をつけていたように覚醒は早いタイプ。ただ、刹那のように精神的成長したわけではなく、あくまで肉体がイノベイターに進化しつつあるという話。

>フブキ対アスラン
フブキが弱いわけじゃない。近接でアスランが強すぎるんだ。ちなみにこれでもアスランはまだ種割れしてない。

>投降の理由
アスランなりにシンのことを気遣ってのもの。
あと、ハイネが死んでしまったのでこれ以上死傷者を出さないためでもある。
ちなみにデュランダルの許可はガチ、フェイスなので。連合の方はハッタリだけど、ファントムペインの件などで立場が弱いのでデュランダルが言い包めることくらい簡単。

>シエルの強さ
元生体CPUだったとはいえ今は通常のナチュラル。
強いは強いがあくまでイザークやハイネレベルなので、覚醒シンや同性能の敵機体に多く囲まれれば押されるのも当然。


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