【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

75 / 90

久しぶりの高評価に筆が乗ったので書き留めました。
今週末にSEED FREEDOMが配信されるようで楽しみですね!



残る命、散る命Ⅳ

 

 

 

 

 セレーネのコックピットでは、小さなスパークがあちこちで(またた)き、青白い光を点滅させていた。トランザムシステムは既に解除されており、先程まで薄い赤紫色の光を放っていたモニターはあまりものダメージにヒビが入り、役目を終えたかのように黒く何も映さない。

 

 パイロットであるシエル自身も、決して軽くないダメージを負ってしまっている。懐かしささえ感じる血の味を噛み締めながらも、シエルはなんとか行動に移す。

 

 敵の放ったGNメガランチャーを何とか凌ぎきったセレーネだが、その代償は大きくGNフィールドを発生させていた左肩を中心に左半身が吹き飛んでしまった。

 

「ま、まだまだ…!」

 

 モニターは死んでいるが、コックピットはまだ生きている。シエルは素早くコックピットパネルを叩き、一時ダウンした機体を復旧させる。各破損部分から漏出(ろうしゅつ)しているGN粒子を塞き止め、なんとか粒子ビーム2発分のエネルギーを保持した。

 

 だが、戦うための武器は心持たない。

 GNメガランチャーは敵に奪われ、ビームサーベルは左腕と共に粒子ビームに持っていかれた。

 セレーネに残っているのは辛うじて動かせる右腕のGNバルカンと腰部に残された僅かなGNミサイルのみだが、バルカンはこの射程を考えれば大したダメージにはなり得ず、ミサイルは撃ち落とされてしまうだろう。

 

「なにか…なにかないのか!?」

 

 この間にも敵は爆風の奥にあるセレーネを探している。この損傷具合、トランザムの反動による低下した機体状況ではまともに戦うことはできない。

 

 その時、セレーネの前面に飛び込んできたものがあった。

 

「これだ…!」

 

 それは先程シエルが撃墜したGN-Xの右腕。そして、その腕にはGNビームライフルが握られたままだ。先にビームサーベルで斬り落としたそれが、何の因果かセレーネの元に流れて来たのである。

 

 シエルは迷わずそのライフルをセレーネに装備した。敵の装備だが、GN-X自体が盗まれたガンダムのデータを基に開発されているだけあって、セレーネでも運用に支障はなさそうだった。

 

「まだだ…まだ僕は戦える」

 

 流れはこちらにある。

 GNメガランチャーを凌ぎ切れた幸運、偶然にもGNビームライフルを手に入れることができた幸運。

 

 そして、仲間を守ることができる幸運。

 

 これだけのお(ぜん)立てをされて、このまま敗れ去ることなどできない。

 

 まだ自分は死なないのだ。

 あの日、あの施設で自分だけが逃げ出した意味、その答えを出さなくてはならない。

 

 死んでいった仲間たち、後を託して先に逝ったアキサムのためにも、シエルは仲間を守り、敵を(たお)さなければならない。

 

 目の前の二機を倒すことが、仲間を守り切ることにどれだけ貢献できるのかは分からない。もしかすると、今こうしてシエルがしていることは無駄な抵抗なのかもしれない。

 

 だが、例え僅かでも、ほんの少しだとしても、敵軍の戦力を削っておく–––––––この命と引き換えにしてでも。

 

 それがガンダムマイスターの誇りであり、臆病者のシエル・アインハイトにとっての最期の意地なのだ。

 

 たった二回、トリガーを引けばそれでいい。痛む身体に顔を歪めながらも、シエルはせめてそんな己の意地だけでも貫き通せることを祈り、トリガーを引いた。

 

「狙い撃つ––––––!!!」

 

 黒煙から放たれた粒子ビームは、彼の意思が顕在(けんざい)化したように真っ直ぐな赤い光の槍となりて宇宙空間を貫いていった。眩く、それでいて細いビームが二機のGN-Xに伸びていく。

 

「まだだ!!」

 

 さらにダメ押しとばかりに残ったGNミサイルを発射する。

 

 そして、彼の願いは叶う。

 

 二発の粒子ビームの内一つが、一機のGN-Xを貫いて灰色の機体を爆炎に変え、背後のもう一機は粒子ビームこそシールドで防御することで凌いだものの、シエルが駄目押しで放ったGNミサイルが頭部に突き刺さり、上半身を吹き飛ばしたのだ。

 

 しかし、同時にその機体から赤い熱線が放たれており、それが真っ直ぐにセレーネに向かっていた。

 

「………」

 

 回避する術は……ない。

 セレーネに迫る光、シエルはそれを真っ直ぐに見続ける。

 一瞬が永遠のようにも思えた。

 

 そして、やがて暗い宇宙空間の中、身動きの取れないガンダムセレーネは粒子ビームに貫かれ、爆発の炎を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラウディオスから遠く離れた宙域、主となる戦場から離れたそこではフブキ・シニストラの駆るガンダムメティスとアスラン・ザラのインフィニットジャスティスとの一対一の交戦が続けられていた。

 

 長らく拮抗していた彼らだが、メティスがトランザムシステムを発動させたことで遂に膠着(こうちゃく)した状況が一変、機動性の増したメティスの猛攻がジャスティスを一方的に追い立てていた。

 

 ただでさえ機動性ではかなりの性能差があったガンダムが更に速くなる。もはやジャスティスの機動性では相手になりそうもない。次々と機体がダメージを負っていく。

 それでも撃墜されないのは、やはりアスラン・ザラの腕による物だ。致命傷になり得るビームサーベルの攻撃はガードし、変形盾(GNシールドニードル)による攻撃は硬質化したVPS装甲で(しの)いでいる。

 

 だが、状況では圧倒的に不利であることに変わりはなく、それでもアスランは諦めなかった。致命傷を避けながらも、必死に接触通信によってガンダムパイロットへ呼びかける。

 

「もうよせ! これ以上やって何になる!」

〈いまさら何を! 命乞いのつもり!? それなら貴方こそ武装解除をして撤退しなさい!〉

 

 敵パイロットが自分とそう変わらない年頃の女性ということにアスランは驚いたが、当然それだけで先の降伏を促したわけではない。勿論、シンが気にかけている青いガンダムパイロットの少女のことも入ってはいるが、それだけじゃない。

 

「戦争を憎むお前たちの理由は分かる。だが、こんなことを続けても何も変わりはしない!」

〈何を…!〉

 

 ガンダムとジャスティスのビームサーベルがぶつかり合い、出力の差でジャスティスが大きく吹き飛ばされる。アスランはビームブーメランを放ったが、ガンダムは既に残像となって姿を消していた。

 

〈貴方が言うセリフ!? アスラン・ザラ!〉

「ぐっ……!〉

 

 いつのまにか背後をとっていたガンダムの斬撃がジャスティスの胴体を浅く切り裂く。そのまま激しい回し蹴りによって機体が大きく吹き飛ばされた。

 アスランは激しい揺れに襲われながらも体勢を立て直し、ビームライフルで距離を取るが、遠距離攻撃手段を持たないガンダムは放たれるビームをかわしながらジャスティスへ近づいていく。

 

「強すぎる力はより激しい戦争を呼ぶ! 戦争を止めたいお前たちの力が、更なる争いを招くことになるんだぞ!」

 

 アーモリーワンでカガリがデュランダルに言った「強すぎる力は争いを呼ぶ」という言葉。そして、対するデュランダルの「争いがなくならないから力が必要」という言葉。それを思い返しながらアスランは()いた。

 

〈そんなこと!〉

「お前たちは、きっといつかの俺たちと同じなんだ……だから–––––」

〈私たちは貴方たちとは違う!〉

 

 だが、その答えは刃によって返された。

 すかさずアスランはビームブレイドを展開した右脚で蹴り付けるが、僅かな(つば)迫り合いの後にガンダムは展開したクローによってジャスティスの右脚を掴み、勢いよく投げつける。

 

〈私たちは最初から世界の敵となるなんて覚悟済みよ!…ただの正義感で立ち上がった英雄気取りの貴方達とは何もかも違う!〉

「くそっ……!」

 

 激しく揺れるコックピットの中、アスランは必死にファトゥム01のビーム砲で牽制するが、飛行形態へと変形したガンダムはまるで赤き彗星の如くかわしていく。

 

〈掻き乱すだけ掻き乱して、後のことは世界にお任せ!? そんな甘っちょろいやり方でこの世界が平和になると思ったら大間違いよアスラン!〉

 

 そして、あっという間にジャスティスに迫り、再びその刃を振るった。

 アスランはシールドで防ぐが、それはフェイントであり、ガンダムの狙いは放たれたシールドクロー。掲げたシールドをクローで掴み取られ、そのまま強引に奪い取られる。

 

「それは…分かっている。だが、だからといってこんなことは間違っている!」

 

 前大戦後、キラやアスラン、ラクスはユニウス条約の締結を機に表舞台から完全に姿を消した。過程はどうあれ、ラクスやアスランはザフトを裏切ってプラントに敵対した時の身であったこともあるし、単純に戦争の苦しみから逃げてしまったという見方もできる。

 そういう意味では、アスランたちは世界を掻き乱すだけ掻き乱してその後の処置を何もしなかった無責任者にも見えるだろう。

 

 事実として、二年経った今、地球とプラント間の争いは再開してしまった。彼女たちソレスタルビーイングが現れなければ、かつてのような大戦に発展していた可能性もある。

 

〈間違いなんて(はな)からわかってるわ! でも、それでも戦い続けるのが私たちソレスタルビーイングのやり方よ!〉

「そんな!…死ぬ気か!?」

 

 アスランもただではやられない。右脚を蹴り上げ、ガンダムが持つビームサーベルを弾き飛ばすと、ファトゥム01から至近距離で放たれたビームがガンダムの右脚を抉った。

 

〈己の死すらかけないで、こんなことはしないわ! 例えここで私が死んだとしても、必ず仲間たちが戦争根絶のために立ち上がる!〉

「なっ…!」

 

 一見勇ましく聞こえるその言葉は、目的の為に自身の死を含めた全ての犠牲を許容するもの。目的は全く違えど、その考え方は亡き父、パトリックと同じである。

 復讐に取り憑かれてしまった父も元はプラントの、コーディネーターの未来を考えて行動していた。いや、きっと多くの人間が初めから憎しみあっていたわけではなかったのだ。

 

 しかし、どんなに平和を求めていても、戦いがある限り人は歪む。かつてアスランが親友のキラと憎しみ合い、殺し合ったように……。

 

 –––––– 生きる方が…戦いだ!

 

 かつてカガリに言われた言葉が脳裏に過ぎる。

 幼少期に母を失い、戦争で友であるニコル・アマルフィや父など多くの人を失ったアスランにとって、その言葉は希望であり、明日を生きるための道標であった。

 

 だからこそ、アスランは彼女の思想を否定する。その為に結局、自分も"力"に頼らざるを得ないことに悔しさを覚えながら…。

 

「くっ…! このバカヤロウッ!」

 

 アスランの種が弾けた。

 クリアになった視界が高速で動くガンダムを捉え、上昇した反応速度がガンダムの動きに合わせて機体を動かす。

 

 ジャスティスとガンダムのビームサーベルが何度も交え合い、それでも攻撃速度で劣るジャスティスが次々と損傷箇所を増やしていく。

 

〈そんなもの!〉

 

 そして、遂にガンダムのビームサーベルがジャスティスの右腕を斬り飛ばした。

 だが、アスランはその僅かな隙を見逃さない。

 

「…今だ!」

〈なっ……!?〉

 

 残った左腕に握るビームサーベルが唸り、一瞬の隙を突いてガンダムの右腕を切断した。

 僅かに気圧(けお)されるガンダム、その隙を突いてアスランは追撃を行う。

 

「うぉぉぉぉ!」

〈舐めるなっ!!〉

 

 だが、ガンダムもただではやられない。振るわれる左腕をシールドクローで受け止めると、内部から展開した実体剣で断ち切ったのである。VPS装甲を物ともしない切断力であった。

 

「ちぃ…!」

 

 ともかく、これでジャスティスは両腕を失った。先程とは一転、ガンダムがアスランにトドメを刺すために近づく。その姿は既に赤い輝きを失っていたが、それでも損傷した今の状態のジャスティスにトドメを刺す程度は余裕だろう。

 

〈これで……!〉

「–––––耐えてくれ、ジャスティス!」

 

 その刃が遂にジャスティスのコックピットを貫くかと思われた時、どこから共なく放たれたビームがガンダムに直撃する。その衝撃で刃はコックピットを外れ、腰部へと突き刺さった。

 

〈これは…!?〉

 

 ガンダムを攻撃した謎のビーム。その正体はジャスティスから分離したファトゥム01であった。アスランは斬り合いの中で上手く自然にジャスティスから分離させていた。

 

 全てはこの時のために。

 だが、普通にやってもガンダムを倒すことはできない。アスランは自分自身を囮にしても彼女を止めるつもりだった。

 

〈くっ…こんな!?〉

「すまない…!」

 

 ビームを放ちながら迫り来るファトゥム01。

 放たれたビームはジャスティスごとガンダムに命中していき、最後にはファトゥム01そのものが真っ直ぐに2機の元へ迫る。

 

 アスランの選んだ物。

 それは自身すらも犠牲にしたファトゥム01による自爆特攻である。くらえばジャスティスとてただではすまないが、今ある手札でガンダムを止められるのはこれだけだった。

 

(できるようになったのは、こんなことばかりか……俺は、俺の正義は–––––)

 

 やがて、特攻したファトゥム01はガンダムを押しのけたのちに自爆。直後、激しい光がジャスティスのコックピットを覆い、激しい衝撃の後にアスランはその意識を闇に閉した。

 

 そして、黒煙の中から飛び出した二つの影は暗い宇宙の中へ漂っていった……。

 

 

 こうして、舞台は最後の戦いへ移っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





>アスラン
限りなく本気ではあったが、迷いはあったし殺意もなかったしで、ある意味まだ本領を発揮していない。
性能の劣る非太陽炉搭載機でトランザム状態のガンダムに結果的に引き分けた化け物。

>フブキ
手加減したわけじゃないし彼女が弱いわけじゃない。少なくともムウ(ネオ)クラスの腕はある。相手が強すぎただけである。


誤字報告、お気に入り登録、評価共に毎度助かっています。
最近は質の高いガンダム小説が増えて来て埋もれ気味でありますが、これからも頑張っていきますので是非とも応援よろしくお願いします!


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