【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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タイトルを兄妹喧嘩と迷った
ここからはアスカ兄妹(+ステラ達)が主役です。



フェイト

 

 

 

 

 エンジェルダウン作戦もいよいよ大詰め、多くの犠牲を出しながらも連合・プラント同盟軍は三機のガンダムを撃破、更に母艦であるスペースシップ(クラウディオス)も撃沈し、ソレスタルビーイングに甚大な被害を与えた。

 しかし、ソレスタルビーイングが有する最後のガンダム–––––アステリアは未だに抵抗を続けている。それに同盟軍側ももはや与力はなく、虎の子であるGN-Xも殆どが失われてしまった為にこれ以上の戦闘継続は難しいだろう。

 

 残っているのは、ザフトのトップエースであるシン・アスカの駆るデスティニーとファントムペインロアノーク隊の四機のGN-X。それに対するはガンダムアステリアであり、これがエンジェルダウン作戦の最後の戦いとなった。

 

 

 

「お前……」

 

 例え最後の一機になろうとも、逃げも隠れもせず、堂々と戦いを挑んできたガンダムを見て、シンは動きを止める。

 その機体が、シンにとって因縁の相手だからだ。アーモリーワンにて初めて遭遇し、ユニウスセブン落下事件では助けられ、ダーダネルス、ジブラルタルと争いを続けてきた。

 

 そして、そのパイロットはどこかかつて亡くした妹と似た雰囲気を持つ少女である。紆余曲折あって割り切ったつもりのシンだったが、ステラ・ルーシェとの再会やアスランとの対話などもあって、すぐに銃を向けるつもりはなかった。

 

 ここにはステラもいる。

 彼女をこれ以上生命の危機に巻き込みたくはないし、できることならガンダムのパイロットである少女とも戦いたくはない。

 

 シンはなんとかガンダムパイロットとの通信を試みたが、国際救難チャンネルでも繋がらない。残るは接触回線による呼びかけだが、そのためにはガンダムに近づかなくてはならない。だが、そうすれば間違いなく戦いになるだろう。

 

 シンがそんな思いを抱えて立ち止まっていると、意外なことにガンダム側からの通信が届いた。

 

〈デスティニーのパイロット、聞こえますか?〉

「……っ!?」

 

 その声、間違いなくあの時と同じもの。シンは思わずどきりとしたが、すぐにそれに応える。同時にネオたちファントムペインの面々には少しだけ待っていて欲しいということを伝えた。ネオは少し言い渋っていたが、どうしてもと頼めば苦笑いと共に受け入れてくれた。

 

「こちら、ザフト軍ミネルバ所属、シン・アスカ」

〈……っ〉

 

 シンが応えたと同時、通信の向こうの少女も少し動揺したように声を漏らしたのが聴こえた。

 だが、それをシンが(いぶ)しむ間もなく、ガンダムパイロットの少女が言葉を話す。

 

〈単刀直入に言いますが、こちらに貴方との戦闘の意思はありません〉

「…え」

 

 予想外の言葉にシンは絶句する。

 既に何度も銃を向けあった関係なのだ。まさかそのようなことを言われると思わなかったからだ。

 

 だが、もちろん彼女も命惜しさにそう言ったわけではない。

 しかし……と少女は言葉を続ける。

 

〈おにい……シン・アスカさんには私とともに組織に来てもらいます。それが条件です〉

「はぁ!?」

〈その条件を飲んでもらえるなら、我々もこれ以上の戦闘行為を中止、今後の活動も一切停止します…どうですか?〉

 

 それは、シンの身柄を条件とした和睦の交渉。

 ツッコミどころ満載のその言葉にシンは素っ頓狂な声をあげるが、無理もない。そもそも一介のパイロットでかないシンにそんなことを決める権限はないし、条件が自分の身柄というのもよく分からない。人質だろうか? いや、だとしてもそれは一体いつの時代だ。ソレスタルビーイングにとってシン・アスカの存在に何の意味がある。

 

「悪いが……断る」

 

 シンとしても彼女と戦いたいわけではなく、停戦は望むところだったのだが、流石にテロリスト相手に一方的に不利な条件で交渉など受け付けるわけにはいかない。

 それにシンは彼女と共にソレスタルビーイングに下りに来たのではない。むしろその逆、彼女をソレスタルビーイングから引き出すためにきたのだ。

 

〈……そう〉

「……こっちからも交渉だ。武装を解除して投降してくれ、そうすれば命までは取らない。その後の処遇も保証する」

 

 言っておいてなんだが、シンとしてはこの交渉という名の投降勧告は受け入れられないだろうと思った。勿論、望みとしてはこの勧告通りに投降してくれれば嬉しい。だが、そんなことなら最初からこんなテロ行為はしないだろう。

 

〈それは無理、です〉

「…なんでっ」

 

 なにがそこまで彼女をソレスタルビーイングに駆り立てるのか。一体、彼女の過去に何があったのか。シンには全く分からない。

 

 それでも、互いに選択肢を違えたという事実だけは分かる。残された道は…。

 

〈交渉は決裂……ならば〉

「くそっ、どうしてこうなるんだよっ」

 

 ガンダムが折り畳まれた剣を展開し、シンもやり切れない想いを胸に渋々アロンダイトを構える。

 

 本当に、なぜこうなるのか。

 望まぬ敵と戦い、望まぬ戦いを強いられる。それが軍人ということ。アスランも、かつてこのような気持ちを味わったのだろうか。

 

〈力づくでも連れて行きますっ!〉

「それはこっちのセリフだ。やれるもんならやってみろ!」

 

 もはやヤケクソだ。

 光の翼を広げたデスティニー、ガンダムの刃が交差し、それを境として中断していた戦いが再開された。

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 交渉は失敗した。

 だが、そのことに落胆はない。

 元々、モビルスーツの操縦技術を中心に学んできたフェイトには交渉などの知識はなく、先程のものも"血を流すことなく上手く行くならば"…という思いつきでやってみただけのこと。

 

 全ては兄を戦いの場から引き剥がすため。

 停戦は本当だが、組織が活動を停止することはない。こちらはテロリストなのだ。条約を結ぶ意味も、守る意味もない。

 

 だが、想定通り兄はそれを断った。

 流石にザフトのトップエースの座におさまっているだけはある。2年前の兄とは、何もかも別人だった。

 

 …まぁ、それはフェイトとて同じことだろうが。

 

 そもそもこうして兄妹同士で敵味方に分かれたのは、戦争のせいである。兄はまだ生きていたからいいとしても、両親は既にこの世にいない。暖かな家庭を奪った戦争をフェイトは決して許しはしない。

 

 戦争根絶は決して成さなければならないが、唯一残った肉親である兄と殺し合うのは嫌だ。

 

 だからこそ、兄を戦争から引き剥がす。

 例えここで撤退させたとしても、既にザフトのエースとしてその名を知らしめてしまった兄は、もはや軍からは逃げられない。だが、かといって怪我をさせてまで前線から下げさせるのも違う。

 そう、既にシン・アスカとマユ・アスカの兄妹は共にあの頃の穏やかな日々に戻ることはできないのだ。

 

 なればこそ、フェイトは兄を組織へ連れ帰ると決めた。敵対したくないならば、手元に置いておけばいい。その後は組織のエージェントにでも、現地協力者としてオーブにでも行けばいい。当然、兄は拒否するだろうが、そこを説得するのが妹である自分の仕事だ。

 

(そう…例え力づくでも連れて行くから、お兄ちゃん)

 

 そのためにも、ここで負けるわけにはいかない。フェイトは力強く決意を新たにすると、アステリアを敵機へ向かわせる。

 

 正面のデスティニーがアロンダイトを構えてアステリアを迎撃の構えを見せるが、フェイトはあえてそれを無視するように通り過ぎる。

 

〈なっ!?〉

 

 目標は兄ではなく、邪魔な四機のGN-Xだ。

 迫るアステリアに向けて粒子ビームで迎撃するが、フェイトはそれらの攻撃を完全に見切っていた。

 粒子ビームを最小限の動きで回避し、こちらもライフルモードにしたGNソードで敵機を狙う。

 

「邪魔しないでっ!」

 

 一機のGN-XがGN粒子を(まと)わせたシールドで防御したが、それを想定していたフェイトはGNダガーを投擲(とうてき)し、突き刺さったGNダガーを粒子ビームで爆発させることでシールドごと左腕を吹き飛ばす。

 そして、抜き取ったGNビームサーベルで右脚を斬り飛ばした。更にライフルモードにしたGNソードで陰からこちらを狙っていたGN-Xのビームライフルを破壊する。

 

 総じていえば、ここまで五対一にも関わらずにフェイトは決して負けず劣らずの戦闘を繰り広げていた。

 

「はぁはぁ…」

 

 しかし、その代償は大きく、パイロットのフェイトの息は荒い。

 それもそのはず、エンジェルダウン作戦、その前哨戦から含めて連戦続き。さらにこの作戦においてもフェイトは敵部隊と戦闘している。しかも相手は連合・プラントそれぞれの軍のエースパイロット達、その幼い肉体に掛かる負担はコーディネーターといっても苦しいものがある。

 

 また、アステリアも決して無傷とはいえない。

 厄介な敵を他のマイスター達が引き受けてくれたこと、そしてフェイトの向上した腕前によって、目立つ損傷こそないものの、所々に傷を負っている。

 さらに決して粒子消費効率が良いとはいえないアヴァランチユニットを装備しているため、長時間の戦闘は厳しいだろう。

 

 対して、GN-Xは擬似太陽炉搭載故に粒子残量に限りがあるとはいえ、数が多い。デスティニーに至っては性能が劣るものの、核エンジン故にエネルギー切れを起こさない。

 

 このまま勝負を決め切れなければ、息切れするのはフェイトとアステリアの方だ。

 

(このままじゃ私もアステリアも持たない…ここは一気に勝負を決めるしか…!?)

 

 だが、彼等はそんなフェイトの様子など知らぬし、考慮してくれなどしない。数の差という単純かつ明確なな暴力がフェイトを襲う。

 

 近接装備が主体のアステリアでは、遠距離から粒子ビームを撃ち込まれるだけでも厳しい。故にこちらからも攻撃を仕掛けようとするのだが、その度にデスティニーによる妨害が入る。

 

〈もうやめろ!〉

「私は負けるわけには行かない…!」

 

 しかし、多勢に無勢とはこのこと。

 デスティニーに意識を傾けていたフェイトに対して無数に放たれた粒子ビームの一射がアステリアに直撃し、機体が激しく揺れた。

 

「ぐぅっ!」

〈この、いい加減っ!〉

 

 その隙を見逃さず、デスティニーがアロンダイトを振りかざす。体勢を崩した今のフェイトにそれを防ぐ余裕はなく、その大剣がアステリアの左腕を肩口から斬り裂いた。

 

 だが、フェイトもただではやられない。ライフルモードのGNソードから放たれた粒子ビームがデスティニーの右脚を撃ち抜き、後方にいたGN-Xの頭部をも貫いて破壊する。

 

 しかし、デスティニーから反撃で放たれたビームブーメランの二基が強襲。一つをGNソードで弾いたものの、残る一つがアステリアの左脚を切断した。

 続けて、横から現れたGN-Xが払うビームサーベルをGNソードで受け止めるが、GN-Xは残る腕でビームサーベルを引き抜くと片腕のないアステリアにそれを振るう。

 

「やらせない…!」

 

 だが、それはフェイトも読めている。

 腰部のマウントラッチが回転し、そこに装備されていたGNブレイドが油断していたGN-Xの左腕を斬り落とす。そして、その隙に腹部に蹴りを入れて距離を取った。

 

 しかし、状況は悪い。

 互いに損傷を負っているものの、数の差はいかんし難い。

 とはいえ、まだまだ気持ちは負けていない。

 

 フェイトが息を整えていると、再度デスティニーからの通信が入った。それは兄からの制止の声。

 

〈もうやめろ! これ以上戦って何になる!〉

「…冗談!」

 

 粒子ビームを放つが、デスティニーは光の翼による幻影でそれを回避していく。

 そして、再びGNソードとアロンダイトがぶつかり合った。

 

〈君のような女の子が、なんでそんなもの…テロ行為なんてっ〉

「当然、戦争をこの世からなくすため! おにい……貴方こそ、どうしてプラントのコーディネーターでもない癖にザフトなんかでエースやってるんですか!」

〈なっ!?〉

 

 二つの刃がぶつかり合い、根を負けたアロンダイトが半ばから断ち切られる。

 デスティニーを援護するためにGN-Xが粒子ビームで攻撃したが、フェイトは冷静に敵の動きを見極めると、腰部のGNブレイドを投擲し、それは真っ直ぐにGN-X頭部に突き刺さる。フェイトはそこへ粒子ビームを撃ち込んで上半身を吹き飛ばした。

 

〈な…そ、そんな!〉

「…これが戦争、これが戦い。こんな愚かなことを一刻も早く止めるために私は戦っています。…シン・アスカ、貴方が戦う理由はなんですかっ!」

 

 仲間の死、親しい友の死、戦争なんてそんなものばかりだ。だからこそ、フェイトの心が、魂が戦争そのものを否定している。まるでそう、戦争根絶をなす存在…ガンダムのように。

 

「オーブで家族を亡くした恨みですか、怒りですか! それともオーブが憎いんですか!」

〈くっ…な、なにを!〉

「戦争に全てを奪われたのに、その貴方が戦争をしている理由は何!?」

 

 兄の言葉が詰まる。

 そう、兄の戦いには戦いの(しん)となる確固たる理由がない。いや、おそらくはあるのだろうが、かつてのフェイトのように本当の自分の思いに気付いていない。

 変わってしまったフェイト(マユ)と違い、兄の想いはあの地(オーブ)に引きずられているのだ。

 

「そんなことも分からないなら…貴方は戦うべきじゃない!」

 

 やはりそうだ。兄は戦場なんかに出るべきじゃないのだ。きっと、フェイトの現状を知れば兄も同じことを言うだろうが、そんなことは関係ない。もうフェイトは誰かに守られるだけの子供じゃない。

 

〈何を勝手に! 何も知らない癖に!〉

「痛いところを突かれたら、そうやって言い逃れする癖、昔から何も変わっていませんね! そうやって戦う理由からも目を逸らして来たんでしょう!?」

〈はぁ!?〉

「…私が言えたことじゃないけど、あなた戦いに向いてないよ!」

 

 アロンダイトを失ったデスティニーが背部の大型ビーム砲を撃つが、そんなものに今更当たるフェイトではない。放たれるビームを背に今度は仲間の撃墜に呆然としているGN-X部隊を狙う。

 

 その姿をデスティニーは、シンは呆然と見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





>シン
フェイトの正体を知らないので、いきなり身柄要求されたり、見知ったふうにお説教されたりで困惑中。

>フェイト/マユ
大事な物は手元に置いておきたいタイプ。時々「お兄ちゃん」と言いかけるのを必死に我慢している。
ちなみに彼女が敬語なのは、この二年で歳上の他人とばかり関わって来たから癖になってしまった故。シンの一人称が「僕」から「俺」になったのと同じ。

>ファントムペインのみなさん
兄妹喧嘩に巻き込まれた被害者方。
ちなみにやられたのはアウル機で生死は不明。スティング機は左腕と右脚の損失。ステラ機は目立つダメージなし。ネオ機は武装ロストと左腕損失。

次回で完結…できたらいいな。

みなさん、応援メッセージいろいろありがとうございます。これからも頑張っていきますので、気長にお待ちください。

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