【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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これにて第一部完結。
少し駆け足気味かつ無理矢理感がありますが、第二部では上手く着地させるのでどうかお許しを…!



シン

 

 

 

 ––––––なんのために戦うのか。

 

 そんなこと、これまで深く考えたこともなかった。

 戦争でオーブで家族を失い、もうあんなことを起こさないため、あの時に自分に全てを守れる力があればと軍人を目指した。

 

 ならば何故、自分は一度も訪れたことのないプラントに向かい、その軍隊であるザフトに入ったのか。他のコーディネーターと違い、そこにはもう、守りたいもの(家族)なんていないのに…。

 

 ーーーあの時に世話になった人(トダカ一佐)の助言?

 それもあるが、それだけじゃない。あれ以上、オーブの地に足を付けたくなかったからだ。あの時は突然のことの怒りと悲しみ、混乱とで感情がぐちゃぐちゃだった。何もしたくなかったし、何も聞きたくない、見たくなかった。

 

 ーーーなら、仇である連合を撃ちたかったから?

 …それはあるかもしれない。ブルーコスモスなんて馬鹿な連中がコーディネーター憎しでプラントに核なんて撃ち込まなければ、ここまで大規模な戦争にならず、自分たちが暮らしていたオーブが巻き込まれることもなかっただろう。

 だが、それはプラントも同じこと。聞いた話では第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦終盤では前々議長であるパトリック・ザラがジェネシスなる大量殺戮兵器を地球に向けて放とうとしたらしい。連合も核ミサイルでプラントを狙っていたらしいが、中立国で育ったシンからすればどっちもふざけた話だ。もしもデュランダルもそんな人物だったら、シンはすぐにでもザフトを辞めていただろう。

 

 ーーーでは、オーブが憎かったから?

 あの少女の言うように、自分は故郷(オーブ)を憎んでいるのだろうか。実際、あの国ことに対しては複雑だ。直接的に家族を奪ったのは連合軍であり、戦争だなのだと…そこはシンも認めている。

 しかし、オーブはあれだけ立派な理念を誇っておりながら、結局は自分たちを守ってくれなかった。全てはオーブに力がなかったからだ。口だけは立派でもそれには力が伴わなければ意味がない。

 それ故にアスハ…カガリが今もそんな綺麗事を愚直に信じていると聞いた時は、嬉しく思うと同時に憎く思ったし、クーデターを企てたセイランが国を大西洋連邦に売ろうとしていると知った時は激しい怒りを抱いた。

 

 だからこそ、自分は力を求めていた。

 あの日、自分から全てを奪った戦争から、今度こそ全てを守る力を。

 

 では、今のシンにとっての守るべきものとはなんだ?

 家族を喪い、故郷は自ら捨てた。プラントには居場所はなく、ザフトでは一兵士でしかない。

 

 全てを守りたいが為に力を求めたというのに、肝心の守りたいものがはっきりしない。

 

 地球、オーブ、プラント、ザフト…上官、同期の仲間、ステラたち、或いはソレスタルビーイングの少女。

 

 それらの姿が浮かんでは霧となって消えていく。

 

 ーーー俺の守りたいもの、それは……。

 

 シンの身体に力が宿る。

 答えは出ない、それでもただただ守るという言葉だけが彼を突き動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 一方、一時的にデスティニーが抜けたことでアステリア対ファントムペインの攻防はこれまでと逆転、アステリアの猛攻にネオたちは押されていた。

 

「どうした、坊主!」

 

 動きの鈍いシンを気にかけ、ネオが声を上げるが返事がない。敵パイロットと通信をしていた際に何かを言われたのだろうか。

 

 しかし、今のネオ達に彼のことを気にかけている余裕はなかった。

 

〈おいおい、アウルっ! 反応しろよ!〉

〈アウル…?〉

 

 先程、アウルがやられた。

 生死は不明、コックピットは無事だと思うが、こちらも先程から反応がない。そのことでスティングやステラ達にも動揺が広がっており、動きに精細がない。

 

 しかし、ガンダムは容赦なくこちらを攻め立てる。なんとか持ち堪えているが、近接戦闘という敵が得意とするフィールドではいくらネオでも厳しいものがあった。

 

 しかし、ネオ機は左腕とビームライフルを失っていた。そのため、否が応でも近接戦闘を仕掛けざるを得ない。そうしなければ、アウルだけでなくスティングやステラもやられてしまうからだ。

 

 ガンダムの剣とGN-Xのビームサーベルがぶつかり合い、激しいスパークを撒き散らす。

 明滅するコックピットの中、ネオはチッと舌打ちした。

 

「くそっ、功を焦ったか!」

 

 ステラ達の生存を目的とするネオにとって、このエンジェルダウン作戦には大した旨みがない。むしろ、強敵であるガンダムと命の凌ぎ合いをしなければならない分、相当に危険である。事実、アウルは撃墜され、生死不明にまで追い込まれてしまった。

 

 だというのに、ネオが作戦を受け入れたのは一重に自分たちの功を示すことでステラ達を連合から守るためである。連合とザフトが停戦し、地球・プラント間が同盟を結ぶにまで至った今、ステラ達エクステンデッドは微妙な立ち位置に立たされているのだ。

 というのも、連合とプラント間での争いがなくなったことで連合は自分たち内部の調整に追われることになる。これまではコーディネーター憎しでサイクロプスだの核ミサイルだのという無茶苦茶をやって来た連合だが、標的がいない今、それらの過去は黒歴史でしかない。

 あくまでも市民たちに清廉潔白な連合軍を証明するためにも、連合内にて汚い手を用いていた人間はさながら魔女裁判のように排除されていく。ジブリールのような旧ロゴスメンバーがその例だろう。

 

 そして、その生き証人であるステラ達の存在は連合にとっては当然、邪魔な存在であり、裁判に掛けられる魔女の方である。それを避けるためには、連合内で強い権力を持つ現支配者シャーロット・アズラエルに保護を頼むしかない。

 

 だからこそ、この作戦で功績をあげることで少しでも彼女の役に立つことを証明したかったのだが…。

 

「ちぃっ! 死んじまっては意味がないか…!」

 

 分かっている、やはりガンダムは強い。同性能の機体を手に入れたとて、それでも敵が弱くなったわけではないのだ。

 だからこそ、ネオはスウェンらホワキン隊の隊員やシンのようなザフトのエースを頼りに戦いを進めてきたのだが、ホワキン隊はガンダムを道連れに全滅。シンもどこか調子を崩している。

 

 このままでは勝てない。

 勝てたとしても間違いなくその時に自分はこの世にいないし、ステラ達も無事ではすまない。

 

 三人の子供たちの人生を奪い、多くの汚いことに手を出したネオは、己が大罪人の自覚がある。きっと死んでも地獄に行くだろうということも。それ故に自分が死ぬことに何も異論はないが、問題は残されたステラたちだ。

 一体、誰が彼女達を連合から守れる。ネオがいなければ、シャーロットとてどう扱うかも不安なのだ。

 

 唯一ネオが信頼する他人としてシンという若い少年がいるが、彼はプラントの人間であり、ザフトの軍人だ。今後の情勢がどうなるかは分からないが、コーディネーターである彼がエクステンデッドである彼女たちをどうこうできる立場とは思えない。

 

「逃げるは恥だが、死ぬよりマシか。おい、撤退の準備をしろ! スティング、アウルの機体を––––––」

 

 そう言いかけた時、ネオ機の眼前を灰色の影が通り過ぎた。

 

〈このっ、よくもアウルをっ!〉

 

 ガンダムに向かっていたのスティングだ。遅れて、弟分がやられらたことをようやく認識したのか、ビームライフルから粒子ビームを放ちながら接近していく。

 

「よせっ!」

 

 –––––––敵は手慣れた様子で待ち構えているだろうがっ!

 

 そんなネオの言葉も虚しく、ガンダムは放たれたビームを次々と回避、或いはその刃で弾きながらも向かってくるスティング機を受け止める。スティングもビームサーベルを抜刀したものの、数度の立ち合いの末に残った右腕をサーベルごと斬り飛ばされてしまった。

 

〈なっ!?〉

「くそっ、言わんこっちゃない!」

 

 ネオもただ見ているわけにはいかない。射程距離、威力共に乏しいバルカンでガンダムをなんとか牽制すると、両腕と右脚を失ったスティング機を掴んで離脱する。

 

「撤退する!」

〈けどよ!〉

「反論はきかん!」

 

 背後から次々とガンダムの粒子ビームが放たれる。なんとかそれを回避したネオだったが、スティング機を抱えている関係で激しい回避ができず、運悪く一発が頭部へ直撃してしまった。

 一瞬コックピットの視界が暗くなるが、すぐにサブカメラに切り替え、よろめきながらもネオはなんとか離脱体勢に移る。

 

〈ネオッ!?〉

「メインカメラをやられただけだ。すぐにでも……なっ!?」

 

 だが、それはそこまでだった。

 ネオが体勢を立て直す間に、ガンダムはすぐそこにまで迫っていたのだ。

 こちらが撤退しようとしていることなど、敵には分かるはずもない。ガンダムの放つビームサーベルがネオ機の両脚を切断する。

 

「ぐぅっ!?」

 

 そして、ネオが正面を見据えた時、コックピットモニターにはガンダムがビームサーベルを真っ直ぐに向け、こちらを見下ろしていた。

 

(ここまでか……)

 

 ネオがそう思った時、放たれた粒子ビームがガンダムをネオから引き離した。

 

〈ネオ…!〉

「ステラ!?」

 

 それは唯一損傷らしい損傷のなかったステラ。

 ビームライフルを構えてネオ、スティングを守るように立ち塞がる。

 

〈このぉっ!〉

「ステラ、よせ…!」

 

 だが、その攻撃もそこまでだった。

 やはり、ステラの攻撃はガンダムには通じず、まるで後ろに目がついているかのように回避され、いつの間にか懐に入り込まれていたガンダムの刃がGN-Xを斬り刻む。

 

 助けに行こうにも、ネオもスティングもまともに動けない。ステラ機が痛ぶられるように斬り刻まれる様子を見ていることしかできないのだ。

 

 腕が脚が、次々と破壊されていく。もはやステラ機はまともに動くことも叶わないだろう。

 そして、ガンダムの折り畳まれた剣が展開し、その刃が遂に胸部へ向かおうてしていた。

 

「ステラ……!」

 

 ネオが声をあげる。

 ステラ機にかわす余裕もなく、ネオ機にも助ける力がなかった。

 

 ズバリ、と敵の剣が付け根まで突き刺さる。

 

 しかし、それはステラの機体ではなかった。

 この場において、ガンダム以外に唯一動くことができる機体。

 

〈…シン?〉

「坊主…!」

 

 突如として横から飛び出したデスティニーが彼女のGN-Xを突き飛ばし、身代わりとなったのだ。剣はデスティニーの腹部を刺し貫いていたが、同時にデスティニーの持つ端折れたアロンダイトがガンダムの腰部に突き刺さっていた。

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 兄との問答を終えたフェイトは、残るGN-Xを再起不能にするべく、全力で戦っていた。既に幼い身体は悲鳴をあげ、息も荒いが、それでも操縦桿を握る手だけは離さない。

 既に三機を戦闘不能に追い込み、残りが一機となったGN-Xをも追い詰めていたが、それ故にフェイトは反応が遅れた。これ以上の抵抗を防ぐべく、最後の攻撃を行っていたフェイトの元に高速で接近する機体があった。

 

〈やめろぉぉぉぉ!!〉

 

 それは傷ついた片翼、折れた刃を携えたデスティニーである。

 

「デスティニー…なんで!?」

 

 まさか兄が飛び出してくるとは思わなかったフェイトは、GNソードによる突きを止めることができなかった。

 

 そして、次の瞬間ーーー。

 

 機体同士が激突した。僅かな衝突音、それは敵のGN-Xがデスティニーに突き飛ばされた後であり、GNソードがデスティニーの装甲を貫いた後であり、アロンダイトがアステリアに突き刺さった音であった。

 

 互いの刃が突き刺さり、抱き合うようにデスティニーとアステリアが重なり合う。

 衝撃はなく、爆発もなく、ただただ重なり合った。

 

「どうして…こうしたんですか?」

 

 明滅するコックピットの中、シンとフェイトは言葉を交わした。

 

〈俺は…ただ、守りたかったんだ〉

「……何を」

〈あの日失った全てを。理不尽な戦争の炎から、守りたかったんだ〉

 

 兄が守りたい…いや、守りたかった物は失った過去だった。それは奇しくもフェイトと同じもの。穏やかで暖かな、笑顔あふれる平和な暮らし…。

 

 しかし…、

 

「でも、過去はもう戻りません。私たちが失った物は、もう戻らないんです…」

〈それは…っ〉

「だからこそ、私は未来の為に生きると決めた。これ以上、もう誰も失わないために……」

 

 そう、同じ境遇、血を分けた兄妹である以上、抱く想いは同じはずなのだ。

 

〈…分かってるさ。でも、あの子…ステラにはその未来すらなかったんだ。だから、せめて今を生きて欲しいって…それで、俺〉

「……………そうですか。なら、私からはもう何も言いません」

 

 ステラというGN-Xのパイロット。

 家族を、故郷を失った兄にとって守りたいと思える存在。それを想う彼の姿は、かつての兄と何も変わらない。

 

 殺すつもりはなかったとはいえ、それを傷つけてしまったことに少しの後悔を覚えつつも、フェイトはもう何も言わなかった。

 

〈俺の為に色々やってくれたのに、ごめん…〉

「…もういいですって」

 

 そこで、通信が切れた。

 アステリアか、或いはデスティニーの方で回線が故障したようだ。先ほどまで話していた電子音声からはブツブツといった雑音しか聞こえない。

 

「–––––あーあ、こんなことなら言っておけばよかったかな」

 

 目の前の存在が、かつて生き別れたマユ・アスカだと。フェイトの方からは兄のことを認識しているが、兄はこちらのことを分かっていない。無論、フェイトがそうなるように仕向けたのだ。

 

 だが、同時にこれで良かったとも思う。

 兄は既にフェイトを含めて家族をオーブで失ったと思っているのだ。ここで変な希望を持たせて、真実を知って絶望させるのも嫌だった。

 

 でもまぁ…兄なら自力で気づいてくれてもよかったと思う気持ちもある。

 嬉しいようで、悔しいようで、悲しい。言葉にしようがない、そんな思いだった。

 

「お兄ちゃんの馬鹿……」

 

 そう呟いて、フェイトは身体の力を抜いた。

 戦争根絶、それが叶わなかったのは無念だが、こうして兄と最後を迎えられるなら悪いものではない。今度はもう、誰かに置いていかれることはないのだ。

 

 

 それと同時、半壊したデスティニーのコックピットにいるシンもまた、敵パイロットとの通信の切断と共に自分の戦いの終わりを受け入れた。

 終わりと共につぶやくのは、僅かな後悔と安堵。これ以上、戦わなくていいという思い、そして結局は力を手に入れても何も守れなかったという後悔。

 

〈マユ、ステラ…ごめん、俺–––––––〉

 

 その先の言葉は光によって飲まれ、途切れた。

 

 

 そして、二人の視界は光で包まれる。

 デスティニーとアステリアは同時に爆発に包まれ、鮮やかなGN粒子だけがキラキラと周囲へと輝いていった。

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 こうして、エンジェルダウン作戦はソレスタルビーイングの壊滅と共に終了した。

 

 しかし、その代償は大きく、同盟軍側は主力であった多くのエースパイロットを失い、その軍事力を大きく衰退させることになる。

 

 プラントと地球は本作戦の終了を経て、同盟軍を解散。改めて正式な停戦条約を締結。条約は停戦の後に改めて中立を宣言したオーブ連合首長国のヤラファス島首都オロファトで行われた。

 

 色々と悪名の高い地球連合軍は名を地球連邦と改め、ザフト軍も特務隊制度の廃止や階級制度の導入など新体制へと移り始める。

 

 大西洋連邦の大統領であったジョセフ・コープランドはフォスター副大統領にその座を引き継がせて退任、後にプラントも任期を終えたギルバート・デュランダルが穏健な中立派であるワルター・ド・ラメントに最高評議会議長の座を譲った。

 

 C.E.74年7月23日。

 連邦、プラント、中立国の国々など各国の同意の下、各紛争に対して唯一武力介入を許された国際組織「世界平和監視機構コンパス 」が創立。後見人は元プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルと元大西洋連邦大統領のジョセフ・コープランド、オーブ連合首長国代表首長であるカガリ・ユラ・アスハが務め、その初代総裁にはラクス・クラインが任命された。

 

 コンパスには上記の代表国家三国の国家軍からの他、スカンジナビア王国などの小国からも動員され、後に新興国()()()()()()()()()()()からも数名の騎士達が参加することが決定した。

 

 そして、時は流れてC.E75。

 戦争は終わったものの、急激な流れに着いていけなかった旧ブルーコスモスやザラ派の残党とコンパスとのぶつかり合いが続いており、世界は未だに平和とは言えなかった。

 

 そんな中、戦争根絶の為、再び()()が立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………to be continued。

 

 

 

 





執筆開始から約一年半、劇場版公開とか色々ありましたが、これにて第一部完結となります。
SEEDと00のクロスといえども、ストーリー的に大きく異なるのは凄く難しかったので、00の原作展開を主体に描かせていただきました。ストーリーも描写も雑なところ多かったと思いますが、これまで読んでくださってありがとうございました。

今後の展開としては、第一部のキャラ・メカニックまとめを投稿したあと、第二部との間に後日談を少し挟んだ後に第二部をスタートしたいと思います。


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