【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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もう間も無く日常パートが終わります。
これからも原作のないオリジナルパートが続きますので、少し無理矢理かつ下手くそな描写が増えますが、どうかご容赦を。



星の狭間で…

 

 

 

 

 C.E.74年に入り、フリーダムのパイロットであるキラ・ヤマトの姿は相変わらずラクス・クラインと共にプラントにあった。

 半年前、ラクスと共にプラントへ向かったキラは彼女の要請、そしてデュランダルによる特例で暫定的にザフト軍に席を置くことになり、その軍服は指揮官であることを示す"白服"。

 

 とはいえ、正式にアカデミーを出たわけでもないキラにザフト軍のことなど分かるはずもなく、デュランダルが特例として作り上げたラクス・クライン直属の部隊であるヤマト隊の隊長を務めている。

 

 副隊長は同時に特例で復隊したかつて『砂漠の虎』と呼ばれたアンドリュー・バルトフェルドが務め、軍人らしからぬキラを支えている。

 更にラクスに賛同する者として、クライン派である元ザフト軍のベテランのヒルダ・ハーケン、ヘルベルト・フォン・ラインハルト、マーズ・シメオンの三人が所属しており、隙の多いキラとラクスを守る盾となっている。

 

 他にもラクスに賛同する人間は多く、ザフト所属でありながらザフトの命令下にないヤマト隊は条約によって下手に軍を動かせない地球・プラントに代わり、オーブ代表首長であるカガリ・ユラ・アスハの許可の下、停戦後で混乱の残る地球・プラントの治安維持にできる限り精力的に活動していた。

 

 しかし、元ブルーコスモス残党が活動の規模を段々と拡大し始めた為、ラクス直属の一部隊に過ぎないヤマト隊では限界を迎え始めた。

 その事態を重く見たラクスとカガリはヤマト隊の活動範囲を広める為、国際組織「世界平和監視機構コンパス」を組織することを世界に訴えた…というのがこれまでの流れである。

 

 今や世界で一番動いている部隊の隊長となったキラは、地球での任務を終え、ようやくラクスの待つプラントへ戻ってくることができた。地上では独立や内乱など争いが絶えないが、キラたちは連合領にまで干渉する権利を持たない為、黙って見過ごすことしかできなかったのだ。

 

『ここは俺たちに任せて、お前はラクスのところへ行ってこい』

 

 とは留守を任せたバルトフェルドの言葉。

 頼れる先輩であるマーズとヘルベルトもどこか微笑ましそうにニヤニヤと見送ってくれた……ラクスに敬愛以上の思いを抱くヒルダだけは、どこか羨ましそうにキラを見ていたが。

 

 

 

 

 

 そうして、一人プラントへ帰還したキラ。

 そのままラクスの待つ家に戻るのかと思われたが、それに反してその姿はザフト軍工廠モビルスーツ開発局にあった。どうしても、キラ自身が残って作業する必要があったからだ。

 

「フェルミオン誘導方式はまだ使いものになりません。GN粒子との相互干渉でエラーが出るなど分かりきっていたことなのに…全く、我々が留守の間に開発局は何をしていたのやら––––––」

 

 そう早口で悪態を(まく)し立てたのは、ヤマト隊における技術士官を担当するアルバート・ハインラインだ。彼はプラント直轄のモビルスーツ開発局である「ハインライン設計局」を家名に持つ優秀な技術者であり、キラやアスランの愛機であるフリーダムやジャスティスの生みの親の一人である。

 彼もまた、ラクスに賛同する者として(どちらかといえば制限されない環境で開発に取り組める環境を欲して)ヤマト隊に出向という形で所属している。

 

 そんな彼はとてつもなく偏屈だ。職人気質と言ってもいい。その優れ過ぎる才能故にハインラインには周囲の人間が全て無能に映っているのだろう。

 

 とはいえ、流石のキラも慣れたもの。

 彼が周囲に失望の声をもらすのもいつものことなので、気にせずに尋ねることにする。

 

「それで、貴方から見てどうですか。ハインラインさん」

「ふむ、基本設計はモルゲンレーテに依頼しているためにあまり口出しすることはできませんが、正直なところまだまだ甘いと言わざるを得ませんね。ストライクフリーダムの運用データを基にGNドライヴ搭載機を開発する発想まではいいですが、いかんせん技術体系が違いすぎます。こんなOSではいくらヤマト隊長でもまともに動かせませんよ」

 

 二人が見ている先にあるのはキラの現在の愛機であるストライクフリーダム弐式。あれから細々とした改修が行われているが、キラとハインラインの思うような性能には至らない。

 そこでヤマト隊がオーブのモルゲンレーテ社と共同で開発しようとしているのが最近量産体制が整って来たGNドライヴ[T]を搭載した新たなフリーダム……開発コードネーム「ライジングフリーダム」である。

 

 しかし、未だ機体は未完成であり、モルゲンレーテに開発を委託しているものの、核エンジンのハイエンド機であるフリーダムとパンドラの箱と言っていいGNドライヴのミキシングはなかなか進んでいないのが現状だった。

 

「やれやれ、全く開発局の無能さには呆れますよ。モルゲンレーテにしても、自分から引き受けたのならきちんと完成させて欲しいものです。隊長、確かオーブへのフリーダム、ジャスティスの引き渡しは二ヶ月後でしたか?」

「あ、うん」

「それまでに必ず私の方でOSの方を間に合わせてみせます。後の細かな調整はその時に直接、ということでどうでしょうか」

「えっと、お願いします」

 

 ヤマト隊、というよりもプラントは保有する核稼働モビルスーツであるストライクフリーダム弐式、インフィニットジャスティスその他などを手放すことが決定している。

 これは前大戦で結ばれたユニウス条約の一部がヤラファス条約でも引き継がれたゆえであり、その中に核兵器・Nジャマーキャンセラーの軍事利用の禁止がある。

 これまでは有耶無耶にされていたストライクフリーダムも正式にザフト所属となったことで、インフィニットジャスティス共々頃合いを見て中立国であるオーブに封印という形で引き渡されることになっていたのだ。

 

 しかし、そうなるとキラは己の乗機を失ってしまうことになる。非核エンジン機でフリーダムに並ぶ高性能機としては再建造が進むGN-Xがあるが、設計思想的に広範囲殲滅型モビルスーツを必要としているキラにはかみ合わない。

 そのため、ハインラインを始めとするヤマト隊の技術班は速やかにキラ専用の新たなる剣…ライジングフリーダムを求めていた。

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 それから暫く。

 昼までに帰るつもりが、結局は日が暮れる時間まで作業が長引いてしまった。

 

 キラは自宅のドアを開ける。

 意外なことに照明はついている。奥からペットロボットのブルーがキラの元へ飛んできた。

 

 急ぎ気味に部屋に入ると、ダイニングテーブルに腰を下ろしたピンク髪の少女の後ろ姿が見えた。

 

「ラク…ッ」

 

 言いかけ、僅かな違和感から言い止まる。

 どこからどう見てもラクスであるが、恋人であるキラには"どこか違う"と言い切れた。

 

 そんなキラに対し、ラクスのような少女が振り返る。

 

「あ、キラさん。ようやく帰ったの!?」

「なんだ、ミーアさんか…」

 

 彼女の名はミーア・キャンベル。

 限りなくラクスと同じ顔、同じ声をしていながらも全くの別人。その正体はデュランダルに依頼されてラクス不在の間のプラントで'ラクス・クライン"の代わりを務めていた偽物である。

 

 しかし、ラクスがプラントに帰還された後は役目がなくなり、彼女はただのミーア・キャンベルに戻ってしまった。

 本物のラクスに会えた喜び、そして用済みとなった自分への絶望、騙したことになる世間への罪悪感その両方に苛まれる彼女を救ったのは、当のラクス本人であった。

 

『貴女が望むのなら"ラクス・クライン"の名も立場も差し上げます。けれど、私は貴女自身"ミーア・キャンベル"という人間が好きですわ。だからどうか、"ラクス・クライン"なんかに負けないで。自分を嫌いにならないでください』

 

 ラクスはそう言って彼女に手を差し伸べた。

 そこには自分が逃げたことで辛い思いをさせた負い目もあったのだろうが、キラから見てもミーアという少女は心からラクスを尊敬し、純粋に好いていた。そんな相手をラクスが嫌いになるわけがない。

 

 結果として、ミーアには表向きには影武者としてもう一人のラクス・クライン(主にアイドル活動など)を演じてもらい、ラクス本人は政務などに集中することをデュランダルに約束させた。

 万が一にミーアの正体が世間にバレ、罰せられようとも全責任はラクスとデュランダルにある。そのような書状も書き上げた。

 

 そして、それに深く感謝したミーアはラクスに対する敬愛の想いを更に募らせることになるが、そのような想いを望まないラクスはミーアに友として接してくれるように頼み、初めはぎこちなかった二人の関係もまるでその容姿も相待って姉妹のように仲良くなっているようだ。

 

 今となっては、仕事ばかりでまともに共に過ごすこともできないキラよりも仲がいいかもしれない……なんて思うのは少しネガティブが過ぎるだろうか…。

 

「もう、遅かったじゃない。ラクス様を待たせるなんてっ」

「あ…」

 

 ミーアの反対側のソファー。そこには本物のラクスが横たわっていた。その身体にはミーアがかけたのだろう毛布がかけられている。

 

「ミーアさんは…?」

「今日はラクス様に招待してもらったの。私の歌の調子を見てもらったのと、あとはお料理を教わろうかと思って」

 

 そういうミーアの目下にあるのは、二人の手作りと思われる手料理の数々。しかし、どれも冷めてしまっており、そうしてしまったのが自分なだけにキラの胸を罪悪感が噛む。

 

「ギリギリまでキラを待ちます…って。もう、ラクス様も日々の業務でお疲れなのに」

「……ラクス」

「愛されてるのね、羨ましい…」

 

 ジトりとしたミーアからの言葉。

 それは闇雲にそれだけ愛されているにも関わらず、ラクスを蔑ろにするキラを責めているようにも聞こえる。

 おそらく、ミーア自身にそのような意図はないのだろうが、現状に後ろめたさがあるキラにはそのように聞こえてしょうがなかった。

 

「それじゃ、私はもう行きます。キラさん、ラクス様のこと頼みましたよ」

「あ、はい…ありがとうございました」

 

 キラ、そして眠っているラクスに一礼してミーアが家を後にする。

 本来恋人の客、それも友人だというなら外に出て見送るくらいはしなければならないが、今のキラにそんな余裕はなかった。

 

(…仕方ないじゃないか。僕にできるのはこれだけなんだ)

 

 自分には戦うことしかできない。

 カガリのように政治的な力でラクスを支えることも、ミーアのように友人として側に寄り添うこともできず、アスランのように優れた軍人にもなれない。

 それどころか、その唯一の戦うことすらもできていない。争いは一向になくならず、自分のせいでラクスに迷惑をかけている。

 

(僕が…弱いから)

 

 はたして、ラクスとカガリが組織化しようとしている「世界平和監視機構コンパス」はヤマト隊が力不足だから発足させられようとしているのではないだろうか…。

 キラだけでは信用できない。だからこそ、二人ともわざわざかつて世界を騒がせたソレスタルビーイングのような組織を作っている––––––。

 

「…何を考えてるんだ、僕は」

 

 そこまで考えて、キラはその考えを振り払うように首を大きく横に振った。

 

 きっと、ラクスは自分に戦う力を求めていない。

 コンパス創設もキラ達の負担を少しでも減らすためだろう。

 

 無論、それは分かっている。キラも同じように彼女に争いなどとは無関係な場所にいて欲しいと思っているからだ。

 

 ラクスの気持ちも分かる。

 でも、今の自分から戦うことさえ取り上げられてしまえば、一体何をすれば彼女の力になれるというのだ。

 

 いくら考えても悩みは尽きず、キラはラクスを起こさないように自室へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、ファウンデーション王国にて。

 独立からしばらく、先日の祝宴もほどほどに各国から訪れた多くの使者が帰国し、静けさを取り戻した王都イシュタリア。

 その中心地に位置するファウンデーション王宮には女王であるアウラ・マハ・ハイバル、宰相のオルフェ・ラム・タオ、国防長官のシュラ・サーペンタインを始めとした王国の人間たちが集まっていた。

 扉の出入り口では近衛師団であるブラックナイツが警備についている。

 

「––––––よかろう。その提案、乗ろうではないか」

「…母上、では」

「うむ。我らファウンデーション王国はコンパスに協力するものとする」

 

 アウラ達の反対側、客席側に座るのは、イノベイターと名乗るレクシオ・ヘイトリッド。その更に背後には金髪の男と茶髪の少女。彼等もレクシオと同じくイノベイターである。

 

「ご決断痛み入ります、女王…」

 

 軽く頭を下げたレクシオだが、その表情に敬いは全くない。完全なるポーズに過ぎないが、それをアウラやオルフェ達が咎めることはない。

 

 レクシオはフッと笑うと正面のオルフェへ視線で続きを促した。オルフェもそれを理解し、()()()()()()()をそのまま口にする。

 

「しかし、母上。新設されるコンパスはオーブが中心となっていきます。アスハの弟であるキラ・ヤマトが隊長を務めるとなると、今後我らが行動する上で邪魔になるかと」

 

 オルフェがそう言うと、アウラは眉を顰め、苛立たしげにそのその名を呟いた。

 

「ユーレンの失敗作共が…どこまでも邪魔をしてくれる」

 

 キラ・ヤマト。

 彼女たちにとっての計画の要であるオルフェと対になる存在、ラクスを奪った忌々しき存在であり、その親であるユーレン・ヒビキの存在も合わせてアウラにとっては地雷である。

 

 デュランダルが後見人を務め、姫であるラクスが総裁を務める組織なら、アウラ達にとってここまで都合のいいものはなかったのだが、やはり邪魔者は存在する。

 

「しかし、母上。レクシオらイノベイターは我等を選びました。それはつまり、我らにこそ人類のトップに立つ資格があると認められたも同じ。失敗作のキラ・ヤマトなど我らの敵ではありません」

「…うむ、確かにそうじゃの。むしろ、あえて我が子と同じ組織に入ることであやつも身の程を知る機会があるというもの」

 

 アウラが落ち着いたところで、それまで黙っていたレクシオが口を開く。

 

「ですが、このまま黙ってコンパスを結成させるのも面白くありません。そこで–––––––」

 

 レクシオが話した内容は、おそらくプラントとオーブの間でしか知るはずもない未だ極秘秘密の情報。

 しかし、アウラ達はヴェーダという情報端末を持つイノベイターの前ではあらゆるセキリュティも無駄であるということを理解しているため、今更驚くことではない。

 

 むしろ、彼の話す計画の方に興味を惹かれていた。

 

「–––––というわけです。これで強固なオーブの支持基盤は崩れ、オーブ中心のコンパスは外様の国家部隊も重宝せざるを得ない」

「……ほう、面白い。それで"何処"を動かす?」

 

 悪どい笑みを浮かべるアウラに対し、これまたレクシオも怪しげな笑みで答えた。

 

「プラントの方が……少々面白いことになっていますので」

 

 こうして、暗躍の月夜が過ぎていく。

 ようやく平和になった世界だったが、その期間は短くこれまた大きな騒動を迎えようとしていた。

 まるで、今ある平和な偽りだと人々に示すかのように。

 

 

 

 新たなる争いの発端とされるその事件は…後に『フリーダム強奪事件』と呼ばれることになる。

 

 

 

 

 

 





>ハインライン
早くもGN粒子の本質に気付きかけている最強メカニック。
彼の手によってプラントは擬似GNドライヴの量産を成功させている。

>ミーア
運命から解放されて自由になったラクス大好き限界ファン。
ラクスに言われて衣装の露出を減らしたとか歌い方を習っているとか。
ちなみに得意料理は揚げ物()

>ラクス
キラと会えないこと(これが一番重要)以外順調の女。
キラとアスランの関係を羨ましがっていたので、意外とウマがあったミーアと友達となったことでメンタルは落ち着いている。

>キラ
早くも病み病みが始まっている。
原作と違いデュランダルを撃たずに済んだのだが、その分何をすべきかを見失い、悩んでいる。
どちらかといえば、キラに信用されていないのかと不安になっていた劇場版のシンをより重度にしたような状態。


>フリーダム強奪事件
まだ原作がないので想像を元に書く。
ソレスタルビーイング陣営が一旦お休みに入るので、SEED世界のキャラクターが主役になっていく予定。


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