【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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フリーダム強奪事件については、本作オリジナルのため想像が大いに含まれています。特にレオナード関連などは描写が少ないために違和感もあるでしょうが、どうか受け止めてくれると助かります。



フリーダム強奪事件

 

 

 

  後に「フリーダム強奪事件」と呼ばれる騒動は、プラントからオーブへ向けて核動力機体であるストライクフリーダムとインフィニットジャスティスを引き渡すところから始まった。

 同じく核動力機として開発されたデスティニーは製造された二機ともエンジェルダウン作戦で失っており、それ以来再建造もされていないためにおのずとこの二機に限られる。

 

 フリーダムとジャスティスといえば、三年前の大戦で英雄的な働きをした伝説の機体であり、その後継機ともならば一眼見ようと多くのオーブ国民や国外からの旅行客などが集まったが、あくまで今回の件はプラントとオーブの関係良好を示すこと、そしてプラントに条約を守る気があるということを世界に示すことが主目的であり、残念ながら一般人への露出は最低限度の物とされた。

 

 しかし、まさか引き渡されるはずのストライクフリーダム、インフィニットジャスティスが最悪の形で一般市民の目にすることとなるとは、この時は誰も想像していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 青々とした海が広がるオーブ近海。そこを航海する一つの(ふね)があった。

 前大戦で新造艦として地球軍、ソレスタルビーイングとの戦いなどで運用された"ミネルバ"と呼ばれるザフト軍艦である。アスラン・ザラやハイネ・ヴェステンフルズといった元フェイスのエースパイロットが率いた部隊の運用艦であり、その名を取った"ミネルバ隊"はザフト内では"クルーゼ隊"と並ぶエリート部隊として知られている。

 

 そんなミネルバは、エンジェルダウン作戦で旗艦として運用された後、しばらくの間ドッグで修理と改修を受けていたのだが、今回のフリーダム、ジャスティス引渡しに伴い、宇宙と地上を行き来できる戦艦として、ザフトの健在ぶりを示すためにも半年ぶりに運用されていた。

 

 そして、今回この任務を請け負ったのは…。

 

「イザーク、オーブ側からの入港許可が出たぜ」

「了解した」

 

 慣れない艦長席に座りながらも、側近のディアッカ・エルスマン()()からの報告を受け取ったのはザフト軍所属のイザーク・ジュール()()

 

 新体制に移ったプラントにて、参謀本部の情報将校として中佐の階級を授かったイザークであったが、ラクス・クラインから本国を通じての要請を受け、今回の件は外交官も兼ねてオーブに向かっていた。

 

「おっと、見えてきたぜ」

「……フン、懐かしい景色だ」

 

 かつて「平和の国」と呼ばれていた中立国。

 三年前の大戦では、軍を抜けたディアッカがアスランと共に参戦したオーブ解放作戦の舞台となった地だが、当時クルーゼ隊に在籍していたイザークにとってはアークエンジェルこと"足つき"を追って潜入したのが最後の記憶である。

 

 悠々と進むミネルバの周りにはオーブ所属のイージス艦が列を成しており、先頭では空母である"タケミカヅチ"が先導している。

 まるで連行しているかのようだが、これはミネルバが現行においてもトップクラスの性能を持つ戦闘艦だからであり、そこに敵意や警戒の意図はない。

 

「それにしても…いくら重要度が高い任務とはいえ、なぜ参謀本部の俺たちがやらなきゃいけないんだ」

 

 これでもイザークは忙しい身だ。

 エンジェルダウン作戦の敗戦で、ジュール隊の求心力は少し落ちたものの、二度の大戦を生き抜き、なおかつラクス・クラインからの信頼も厚いザフト兵となればそうそういない。

 ラクスに負い目のあるプラント上層部からすれば、イザークを介してでも恩を返すしかないのだろう。…顎で使われるこっちの心情は穏やかではないが。

 

「さぁな。でも、オーブにはアスランが戻ってるんだろ。だから俺たち…ってのは安直な考えかねぇ?」

「…知るか。仮にそうだとしても、なんで俺達がアイツに合わせて動かなきゃいかんのだ」

 

 アスラン・ザラはザフトを除隊し、オーブに戻った。

 そんな情報が耳に入った時、ディアッカは遂にイザークの頭が怒りで爆発するのではないかとヒヤヒヤしたが、そんな心配に反してイザークは「そうか」と小さく一言受け止めるだけだった。

 

「もしくはそれだけ俺たちが信頼されてるってことだったり?」

「フン、そんなわけないだろう」

 

 デュランダルの温情で救われたとはいえ、ディアッカはザフトの裏切り者、イザークは極刑レベルの罪を犯した者だ。この二年間でその過去を払拭するだけの活躍はしてきたつもりだが、信頼されているなどと自惚れるわけにはいかない。

 

「そんなことより、そろそろ到着するぞ」

「オーケー…お、これまた懐かしい艦のお出迎えだぜ」

 

 ディアッカの向ける視線の先、ミネルバのモニターに映るのは白亜の大天使ーーーかつて、イザーク達が"足つき"と呼んで墜とそうとした戦艦"アークエンジェルだった。

 

 現代の名艦のミネルバと前大戦の名艦のアークエンジェルが並ぶ。

 そこにプラントとオーブは意味を見出したのだろうか。詳しいことは分からない。

 

「……足つきか」

 

 三年前はあれほど墜としたかった艦だが、今となっては思うところはない。かつての因縁は顔の傷と共に消し去っている。

 

 だからこそ、視線を向けたの一瞬。イザークはすぐに意識を切り替えた。

 

「…モビルスーツ部隊は作戦前のミーティングを行う。ギーベンラートとバルヴェイにミーティングルームに集まるように伝えてくれ」

「はっ!」

 

 管制のアビー・ウィンザー中尉にそう伝え、イザークは己の副官に声をかける。

 

「ディアッカ、行くぞ」

「はいはい…」

 

 イザークがいち早く艦橋(ブリッジ)を後にすると、ディアッカもそれに続く。

 完全に艦橋(ブリッジ)を出る前、イザークは今作戦におけるもう一人の副官に声をかけた。

 

「あとは任せる、トライン艦長」

「は、はい!!」

 

 新兵かと言わんばかりの見事な敬礼を決めて見送ったのは、ミネルバの艦長であるアーサー・トライン。元々ミネルバの副長だった彼を今作戦にあたって引っ張り出してきたのだ。

 

 艦橋(ブリッジ)を出て、ディアッカがこっそりイザークに耳打ちする。

 

「おいおい、大丈夫かよあの艦長」

「…能力は確かだ。今はそれでいい」

 

 本来なら元艦長であったタリア・グラディス中佐を呼び出したかったが、生憎とスケジュールが合わなかったのだ。

 あの慌て振りは生まれつきだろう。多少の苛つきはするが、仕事にミスは一切ないため、その辺り無能ではないのだろう。少なくとも口だけは達者な政治家たちよりはよっぽどマシだ。

 

「あと、トライン艦長は少佐だ。口調には気をつけろよ、エルスマン大尉」

「うわっ、そういやそうだった」

 

 そんな会話を挟みながらも、新生ジュール隊の面々はプラントの特使として、フリーダム、ジャスティスを伴ってオーブへ入国したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 アグネス・ギーベンラート。

 

 エンジェルダウン作戦を機にその名を知られるようになった彼女は、その後起きたプラントとユーラシア連邦との間の戦で戦果を上げ、部隊が月軌道であったことから「月光のワルキューレ」という異名がつき、戦後多くのベテラン兵士を失ったザフトの若きエースとしてその名を知らしめていた。

 家柄が良く、容姿もいい。そして何やらもモビルスーツパイロットとして活躍する若い少女という話題性は戦後のザフトの広告塔にするには打ってつけの人材だったのだ。

 

 見方によってはお飾りのお姫様。一部の軍人からは渋い目で見られる彼女だが、実力自体は赤服に恥じない者であり、その全てを黙らせていた。基本的にザフトは実力主義の世界なのだ。そこに年齢や性別は関係ない。

 

 そんなアグネスが今回のジュール隊の任務に同行を申し出たのは、現在付き合っている恋人レオナード・バルヴェイの望みだったからである。「フリーダムに乗ってみたい」という彼の望みを叶えるため、アグネスは親のコネを利用して無理矢理今回の任務に自分たちを捩じ込んだのだ。

 無論、本来のパイロットであったイザークとディアッカは、その役目を不自然な理由で外された上で面倒な新人のお守りまで任されることになり、特にイザークの苛立ちは半端ではないのだが、能天気…というよりはマイペースなアグネスは一切気付いていなかった。

 

「––––––というわけだ。お前たちの任務はあくまでもフリーダムとジャスティスの運搬だ。モルゲンレーテにつき次第、速やかにミネルバに戻ってくるように」

「「ハッ!!」

 

 隊長であるイザークの言葉に頷きながらも、アグネスの間には任務の情報は全く持って入ってきていなかった。

 やはり運送任務というのは退屈であり、やり甲斐は感じない。せっかくなら新型のフリーダムやジャスティスに乗って、更なる功績と共に出世したいものだ。

 

 最大のライバルであった(と思い込んでいる)レイ・ザ・バレルは病気を理由に軍から退き。エコ贔屓でエースになっていた(と思い込んでいる)シン・アスカは戦死。友人(と思い込んでいる)ルナマリア・ホークはエンジェルダウン作戦以降不調。

 

 無論、ザフト最強のパイロットであるアスラン・ザラやあの"フリーダム"のパイロットであるキラ・ヤマトには及ばないことは理解しているものの、同期に限れば現状において、アグネスの覇道の邪魔になるような相手は存在していなかった。

 

 だからこそ、アグネスにとって今は前大戦で軽んじられた分、実力と存在感を発揮するチャンスなのだ。

 

 故に本来なら、こんな何の実績にもならない任務は受けないのだが…。

 

「これで"フリーダム"に乗ることができるよ。アグネス、君のおかげだ。本当にありがとう」

「こちらこそ、レオナードの役に立てて嬉しいわ」

 

 でもまぁ、ここまで恋人が喜んでくれるならいいだろう。

 大戦の英雄たる"フリーダム"に乗りたい、なんて少し子どもっぽいが、たまに見せる彼のそのようなところは好きだ。

 

 レオナード・バルヴェイン。

 アグネスと同じく親は高官で容姿端麗、デュランダルのミネルバ隊贔屓がなければアグネスと同じく活躍していたであろう腕前。それでいて、恋人であるアグネスを立ててくれている。

 

 そんな彼はアグネスにとって理想の恋人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほんと、君は役に立ってくれた」

 

 だからだろうか、彼女は恋人の浮かべる暗い笑みに気付くことができなかった。

 

 今回の護送任務を恋人が望んだ理由。

 彼女が全てを理解するのは、既にことが終わった後のことである。

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 プラントからイザークらがミネルバと共に向かってきている頃、オーブ連合首長国は同日に独立を果たしたファウンデーション王国からの訪問を受けていた。

 

 中立を理念とするオーブにとってはユーラシア連邦と敵対するファウンデーションを大っぴらに迎え入れるのは避けたかったのだが、王国の方がどうしてもというため、ユーラシアに念入りに根回しをした上で今回の訪問を受けることにしたのだ。

 

 しかし、オーブにとって想定外だったのはファウンデーション側が護衛としてモビルスーツまで持ち出してきたことだった。

 一機とはいえ、会談の護衛にはあまりもの過剰戦力。聞けば、あくまでその機体は式典用でありオーブでいうストライクルージュに相当するとのことだが、ユーラシアとの独立紛争で活躍したその黒い機体が式典用とはとても思えず、会談は終始かなりの緊張感がその場を支配していた。

 

 結果としては、特に変わった点もなく友好国として仲良くして行きたいというものと、出来ることならコンパスに参加したいという旨が伝えられ、オーブ側がプラントや連合と協議した上で決めるという返答を返したことで終了した。

 

 この会談に何かあると構えていた代表首長のカガリ・ユラ・アスハからすれば、肩透かしをくらった形になり、拍子抜けに思いながらも同日並行して行われるフリーダム、ジャスティスの受け渡しに向けて行動に移す。

 

 そして、受け入れ先のモルゲンレーテ社では既に先立って来国しているザフト軍ヤマト隊とオーブ軍ザラ隊…後にコンパスと呼ばれることになる人間たちが集まっており、共同開発される新型モビルスーツの調整を行っていた。

 

 聳え立つ二つの巨影…新型フリーダムとジャスティスをバックにキラとアスランは久しぶりの再会をしていた。

 

「キラ、久しぶりだな。大丈夫か?」

「アスラン…うん」

 

 あの日、アスランがザフトに復隊してから半年近く。結局アスランは再びザフトを除隊してオーブに戻ってきたものの、ラクスと共にキラがプラントに向かってしまった為に見事に入れ違いとなっていたである。

 

 再会した二人は工廠を出て、青空が見える位置で並んで話をした。

 オーブのこと、プラントのこと、カガリのことやデュランダルのことなどそれぞれの情報を交換した。

 

「その……カガリのこと、色々ありがとうな」

「ううん、大丈夫さ。それで、アスランは答えは出たの?」

 

 どこか気まずそうにアスランが言うのに対し、キラは特に気にしていない様子で質問を返した。

 

「ああ、俺の居場所がようやく分かった気がする」

「そっか。でも、なら尚更…いいの?」

 

 いいの?というのはカガリの側にいなくていいのかという意味の問いだ。

 これからアスランはキラと共にコンパスに所属することになっている。キラとしてはアスランが仲間にいることは心強いが、それはオーブ代表のカガリの側には居られないことを意味しているのだ。

 

「いいのさ」

 

 キラとしては、せっかくすれ違っていた二人が一緒になれたというのに、それを引き剥がすような真似は気が引けたのだが、当の本人たちの答えはあっさりしたものだった。

 

「アイツに言われたよ。"私はお前やキラが思っているよりずっと強い。だから、心配するな"ってな」

「カガリ……」

「だから、俺はアイツを信じて俺なりに役に立てるようにするだけだ」

 

 それは互いが互いを信じているからこその言葉だった。どうやら、アスランとカガリは自分が留守の間に随分と仲を取り戻したらしい。

 

「…………」

 

 それは、随分と羨ましいことだ。キラはそこまで強くなれない。

 一緒に歩むと決めたのに、ラクスと自分の距離は離れていくばかり。本当に自分は彼女の力になれているのだろうか、という疑問が消えない。

 

「……キラ?」

 

 そんな浮かない顔をしたキラを見かねたのか、アスランがそっと声をかけた時。

 

『ヤマト隊長、機体テストを行いますので、至急七番格納庫(ハンガー)へお越しください』

 

 キラの端末に送られてきたのは、部下であるハインラインからの呼び出しのメッセージ。おそらくモルゲンレーテスタッフと四苦八苦していた部分が進んだのだろう。

 

 それに「了解」と返したキラがアスランに背を向けた。

 

「それじゃ、またねアスラン。久しぶりに話せて、楽しかった」

「キラ……」

 

 アスランはそれを複雑そうな表情で見送る。

 おおよそ似つかわしくない軍服に表情。無理をしているのは一眼で分かった。

 アスランにはキラがなんのことで悩んでいるのか分かる。分かるからこそ、慎重に言葉を選ばなければならないと思っていた。

 

 今、自分にできること。

 それを思い、アスランは力強く拳を握った。

 

 

 

 

 

 

 

 –––––––フリーダム強奪事件、発生から一時間前のことである。

 

 

 

 

 

 

 

 





>本来のフリーダム強奪事件(想像)
①イザークらがライフリとイモジャをコンパス(アークエンジェル)に引き渡す任務を受ける。パイロットに選ばれたのはレオナードとアグネス。
②当時、オーブにはファウンデーションが護衛付きで表敬訪問していた。
③引き渡し終了後、ファウンデーションがレオナードに精神干渉。
④レオナードが格納庫にあったストライクフリーダムを強奪。何者かの手引きにより引き渡し予定だったゼウスシルエットが発射される。
⑤キラとアスランは機体調整中で出られず。イザークがギャン、ディアッカがゲルググ?、シンがムラサメ改?で出撃を試みる。
⑥しかし、着いた時には既にブラックナイトスコードルドラによって鎮圧済み。
⑦レオナードは死亡。しかし、データはファウンデーション側に送られる。
⑧コンパスは支持率が低下。本来なら連合やザフトからの出向者も多かったものの、劇場版本編にまで低下。仕方なくオーブ中心の隊編成となる。
⑨カガリはファウンデーションの策略を疑い、その調査を行うためにアスランがターミナルへ出向。イモジャはシンへ押し付けられる。
⑩汚名返上のためアグネス加入、劇場版へ

……自分の中ではこんな感じです。

>今作のフリーダム強奪事件
アコードとイノベイター(ヴェーダ)がいるため、その気になれば人間と機械の両方を動かせてしまうというのがポイント。





 それではまた次回。
 大学の実習が始まるので更新速度は落ちますが、どうか気長にお待ちください。





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