【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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デストロイはかませではありません。


狂い舞う剣

 

 

 

 空を切って飛来したミサイルがビルを粉砕し、破壊されたモビルスーツの残骸が地表を砕く。放たれるビームの流れ弾は頭上を飛び交い、その度に人々の悲鳴が上がった。

 

 ここはアフリカ共和国オルドリン自治区。

 プラントの経済特区とはいえ、ここで暮らすのはナチュラルが殆どの一般人。

 終戦後、この日まで続いた当たり前の日常は、破壊と混乱の渦に引き摺り込まれ、地獄と化した。

 

 ビームの砲弾を惜しみなく撒き散らし、意味もない破壊と殺戮を繰り返すダガーの群れ、上空から死の光を振りかざすのはウィンダム。そのどれもが自らの所属を誇示するかのように漆黒の機体色に青色のコスモスのエンブレムが描かれていた。

 

 ーーーそう、彼等こそ、終戦後もテロを繰り返す真のブルーコスモスなのである。

 

 そして、その背後に漆黒の巨影が降り立つ。

 火の粉のように舞うオレンジ色の光は、紛れもなくGNドライヴによって発生した粒子である。

 

 だが、それを知らぬ民衆にとっては、死の炎を纏う黒色の巨人は、まるで死神に見えた。

 

 絶望し、立ち尽くす民衆。

 彼等を守るはずのザフト軍のモビルスーツは全て、あの巨人によって意味をなさない屑鉄へと変わった。地面に転がるザフト軍モビルスーツの残骸を踏み潰し、ダガーの軍団が民衆へ迫る。

 

 その時ーーー彼等は現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらは世界平和監視機構コンパス。攻撃部隊に告げる、ただちに戦闘を停止せよ。繰り返すーーー」

 

 緊急性の高いテロ案件ということで、急遽先行して大気圏を降下したキラ・ヤマトは、意味がないと分かっても地上へと語りかけた。

 

 既に市街地は戦闘の余波でボロボロ。とても、昨日までは賑やかな街並みが広がっていたとは信じられない。

 これを成したブルーコスモスの構成員は、キラの言葉を聞いても止まる様子はない。彼等は武装解除することなく、破壊活動を続けていく。

 

「ーーーよせっ!!」

 

 その矛先が民衆に向けられているのを見て、キラは機体をすぐさま現場へと向かわせる。

 

 "GNMS-01/G ライジングフリーダム"

 

 基本的な機体コンセプトは従来のフリーダムを引き継ぎつつ、GNドライヴを搭載したことによって、これまでの技術では引き出せなかった性能を誇るキラの新たなる剣。

 ソレスタルビーイングのガンダムは勿論、GN-X等を遥かに上回る性能を持ち、兄弟機である"イモータルジャスティス"と合わせて現行するモビルスーツの中ではトップクラスの機体である。

 

 キラはフリーダムをMS(モビルスーツ)形態に変形させると、民衆に迫るダガーとウィンダムの群れに機体を突っ込ませる。

 両者はそれぞれビームを放ってフリーダムを牽制したが、キラは鮮やかに機体を旋回させると、背部のウイングバインダーを変形させ、四つの砲門から粒子ビームを放った。

 それぞれのビームが敵モビルスーツの四肢を撃ち貫き、無力化する。

 

「ーーーあれはっ!」

 

 キラは敵の戦力を確認し、ハッと息をのむ。

 どうにも、敵がダガーやウィンダムにしては、市街地の破壊の跡が大き過ぎると思ったのだ。

 

 彼らの背後には、巨大な影があった。

 それは、まるで動く要塞かと思わせるほどのプレッシャーを放つ巨大なモビルスーツ。

 

 "GFAS-X01 デストロイ"

 

 デストロイ(破壊者)のコードネームで呼ばれる巨大なモビルスーツは、最近になってブルーコスモス残党が戦場に投入し始めた戦略級の兵器である。

 全長で30メートルを超える巨体の至るところに高エネルギー粒子砲、GNビックキャノン等の大火力を有し、更に陽電子リフレクターとVPS装甲によって堅牢な守りを誇る、ほとんど動く要塞とも言える機体だ。

 また、正規軍でも未だに量産が進んでいないGNドライヴを有する機体であり、その見た目に反して従来機を超える機動性も持っている為、近接戦闘においても油断もできない。

 おそらくはこのデストロイこそがブルーコスモス残党の切り札。ならば、この機体さえ倒すことができればーーー。

 

「ーーーくっ」

 

 だが、敵もそれを分かっているのだろう。

 ダガーやウィンダムは火線をフリーダムに集中させる。キラの腕前とライジングフリーダムの性能を持ってすれば回避することは容易だが、今デストロイに向かってしまえば、彼等の標的は民衆に移ってしまう。

 

「この火力は…っ!」

 

 動きの鈍いフリーダム目掛けて、デストロイから暴力的なまでの粒子ビームが放たれる。

 キラは何とかシールドで受け止めるが、その威力に大きく吹き飛ばされた。弾かれたビームが周囲のビルに飛び散り、市街地の破壊が進む。

 

「街が……もうやめろっ!」

 

 手持ちのGNバスターライフルをフルパワーで放つが、デストロイはそれを展開した陽電子リフレクターで受け流した。そして、お返しとばかりに腹部のビーム砲が火を噴いた。

 

 ーーーやはり、遠距離攻撃は決め手に欠ける

 

 放たれる熱線を回避しつつ、キラはそう分析する。

 出来ることならビームサーベルによる近接戦闘を行いたいが、あの弾幕の中で近づくの容易ではなく、何よりもダガーやウィンダムを放っておけない。

 

 キラがそう思った時、待ち望んでいた声が届いた。

 

〈キラっ!!〉

 

 降り注いだシールドブーメランがフリーダムを狙っていたウィンダムの腕を斬り落とし、更に粒子ビームがダガーを狙い撃って沈黙させる。

 

「アスラン…!」

 

 フリーダムに並んだのは、特徴的なリフターを背負う真紅の機体。

 

 "GNMS-02/G イモータルジャスティス"

 

 ライジングフリーダムの兄弟機にして、従来のジャスティス系列の後継機。フリーダムと同じくGNドライヴを搭載したことでこれまでにない性能を実現。パイロットであるアスラン・ザラとともにトップクラスの強さを誇るモビルスーツである。

 

〈ルナマリアは地上で一般市民の保護、アグネスは敵モビルスーツの無力化を頼む〉

〈〈了解!〉〉

 

 続けて、ルナマリア・ホークの"ゲルググメナース"とアグネス・ギーベンラートの"ギャンシュトローム"も到着。隊長であるアスランの指示のもと、市街地へ降りる。

 

〈キラ、俺たちはアイツを止めるぞ!〉

「…分かった!」

 

 市街地をルナマリアとアグネスに任せ、アスランのジャスティスとキラのフリーダムがデストロイへ向かっていく。

 行かせまいとウィンダムが迎撃を行うが、キラとアスランは阿吽の呼吸によってそれらを捌いて無力化し、デストロイの懐へ飛び込む。

 

 デストロイから、掠っただけでもタダでは済まないビームの雨が降り注ぐが、キラとアスランほどの実力ともなれば、回避することは容易だ。

 しかし、近付けば近付くほど、その巨大さと破壊力を目の当たりにすることになる。

 

「なんて大きさだ…こんなっ」

〈ブルーコスモスは一体どこからこんなものを…っ〉

 

 狙うは至近距離での近接戦闘。

 フリーダムがその火力でデストロイを牽制、その間にジャスティスが突入していく。

 

 デストロイは複数の敵に対応する為、その巨腕を分離させ、5本の指からビームを放たなから飛び回る。

 

 だが、それはこちらも同じこと。フリーダムとジャスティスのシールドブーメランが射出され、更にジャスティスから分離したリフターがビームブレイドを展開してその巨腕を叩き落とす。

 

 その間にフリーダムとジャスティスは本体に迫っていた。

 迎撃のためにデストロイの胸部ビーム砲が不吉に光り始まるが、キラの反応の方が早い。

 フリーダムの全ての火線が解き放たれ、数多あるデストロイの武装を吹き飛ばすと、ダメ押しとばかりにジャスティスがビームサーベルでコックピットへビームサーベルを突き刺す。

 

〈くっ…!〉

 

 パイロットを殺めたことにアスランが顔を顰める。

 中に入っているのは、生体CPUと呼ばれる子どもであることは分かっているが、それでもトドメを指すのは、ブルーコスモス残党は必ず機体に自爆装置を備えているからだ。デストロイほどの巨体が自爆すれば、この市街地もタダでは済まない。

 

 主を失ったデストロイの巨大が火を噴き出しながら崩れ堕ちる。

 それを見て、ブルーコスモス側が敗戦を悟り撤退ーーーすることはなく、ダガーやウィンダムは攻撃の手を緩めることはない。アグネスやルナマリアも奮戦しているが、一般市民を守りながらの戦いのためにそこまで手が回っていないようだ。

 

〈くそっ、コイツらまだ!〉

「……っ!!」

 

 キラとアスランも地上に降り立ち、ダガーやウィンダムの鎮圧にあたる。GNドライヴを手に入れたフリーダムとジャスティスの力を持ってすれば、ダガーやウィンダムを殺さずに無力化することなどわけない。それでも自爆による二次被害を防ぐため、望まぬ殺しを続けていく。

 

「もうやめろ…!」

 

 フリーダムから放たれたフルバーストが無人となった地表を砕き、敵モビルスーツを衝撃で吹き飛ばす。

 

 その時、離れた位置で一般市民の護衛を行っていたルナマリアからの通信が入る。

 

〈隊長! ポイント336を!〉

〈ーーーなっ!?〉

 

 キラ達が戦っていたのとは反対側、一般市民たちが避難している方角からいつもの反応ーーーブルーコスモスのモビルスーツの姿があった。

 どうやら挟み撃ちにするつもりだったらしい。こちら側をコンパスが鎮圧したことでその作戦は失敗したが、逆にあちらを抑える人員が足りない。

 

 しかもーーー。

 

「もう一機のデストロイ!?」

 

 その背後に再び黒色の巨人の姿を捉え、キラたちは衝撃を受ける。

 あんなものがもう一機、倒すことはできるだろうが、その間に何人の一般市民が犠牲となるのか……。

 

 キラが操縦桿を強く握った時、コックピットモニターにて、オルドリン地区内に新たな反応が現れたことが伝えられる。

 

 まだいるのか…!とキラは思ったが、その信号はよく見ると赤ではなく青、即ち……。

 

「味方!?」

 

〈ーーー後は任せてもらおうか〉

 

 その言葉と共に、地獄の戦場に黒騎士が舞い降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーあれがアスラン・ザラか。

 

 黒き巨人を相手に見事に立ち回る青き天使と赤の騎士を見て、世界平和監視機構コンパス第四部隊長のシュラ・サーペンタインは、強い高揚感と僅かな失望感を胸にそう呟いた。

 

「これより作戦行動に入るーーー各員、戦闘準備」

〈了解〉

〈何だよまだまだ残ってるじゃん…〉

〈フッ、キラ・ヤマトとアスラン・ザラがいながら何やってるんだか〉

 

 シュラからの通達に部下であり同胞であるグリフィン・アルバレスト、リュー・シェンチアン、ダニエル・ハルパーが三者三様の反応を示す。本国の防衛の為にファウンデーションに残ったリデラード・トラドールが仮にいたとしたら「皆殺しっ!」と陽気に呟いたことだろう。

 

 …まぁ、実際その通りなのだが。

 

「敵は残さず殲滅せよ、との指示だ。雑兵に遅れを取るなよ」

 

 その言葉と共に光学迷彩を解除、漆黒の騎士がオルドリンの街並みに降り立つ。緋色のマントがたなびき、マスクの奥が赤く輝いた。

 

〈こちらブラックナイツ、これより作戦行動に入るーーー後は任せてもらおうか〉

 

 シュラの駆るブラックナイトスコードシヴァがデストロイに向かって進み、グリフィンたちブラックナイトスコードルドラはダガーやウィンダムの殲滅に向かわせる。

 

 デストロイは向かってくるシヴァに向かってその大火力を向けるが、その()()()()()()シュラに当たるはずもなく、仮に当たったとしても擦り傷にもならないだろう。

 シュラは右腕にGNジャマダハル、左腕に連結したビームサーベル、シールドからソードビットを展開してデストロイに単身突っ込んだ。

 

「………フッ」

 

 放たれるビームを煽るように回避、或いはサーベルで斬り裂き、シュラは踊るようにデストロイの巨体を斬り付けていく。陽電子リフレクターを展開する暇もない。正面からシヴァの格闘、そして四方八方からソードビットによる斬撃がデストロイの武装を一つ一つ破壊し、丸裸にする。

 

 デストロイはシヴァの特性を知ってか知らず、実弾であるミサイルを放とうとしたが、発射機器をビットによって破壊されて沈黙。それが最後の抵抗となった。

 両腕を斬り裂き、最後に残った頭部をGNジャマダハルが切り離すと同時にその両脚をビットが切断。

 

 時間にして僅か1分にも満たない。

 破壊の化身は四肢をもがれ、呆気なく無力化。胴体だけになって無様に地表に転がった。

 

 やがて、自爆装置が作動したのだろう。こちらを道連れにする勢いで、大きな爆発と共に周囲を吹き飛ばした。

 

「無駄なことを……」

 

 見れば、デストロイの随伴機だろうダガーとウィンダムもグリフィン達によって全滅させられていた。地表のあちこちにその残骸が転がり、炎の海を作り出している。

 

「……今回も俺の勝ちだな」

 

 シュラはつまらなそうにそう呟く。

 すると、そんな彼の元に友軍からの通信が入った。コンパス第一部隊部隊長のアスラン・ザラからだった。

 

〈サーペンタイン隊長、援軍感謝する。だが、今回のような無茶は控えてくれ。すぐそばには民間人もいたんだぞ〉

 

 無茶、とはシュラが単身でデストロイを撃墜したことか。それともグリフィン達に民間人の周囲で戦闘行為を行わせたことか。どちらしても、自分たちの戦闘によって民間人を危険に晒したというのは理解した。

 

 シュラは片目を閉じて暫しの沈黙……そして、

 

「ーーーなるほど、()()()()()

〈っ…ポイント336で合流を〉

 

 シュラにその気がないのは分かっているのだろう、形だけの言葉に顔をしかめながらも、アスランはそう言って通信を切った。

 

「やれやれ……」

 

 シュラには彼らがなぜそこまで一般市民のことを気遣うのか理解できない。

 

 ()()()()()()()()()()()()。優先すべきは敵部隊を鎮圧することであり、救出・復興の支援は正規軍にやらせておけばいいのだ。

 自国の国民ならまだしも、ましてや劣等種のナチュラルなど、どうして考慮して戦わなくてはならないのか。

 

 その育ち故に理解できない。

 だから、気にせず気にならない。シュラは思考をやめ、己と同じく退屈そうに佇む同胞たちに声をかけた。

 

「作戦終了、帰投する」

 

 GNドライヴによって機体がフワリと浮き上がり、緋色のマントを翻した時には、そこにはもう黒き騎士の姿はない。

 

 跡には、破壊と殺戮の犠牲となったオルドリン地区、そして悲しみにくれる市民たちが残された。

 

 

 

 

 

 





>キラ
同部隊に同じ力量のアスランがあるおかげで原作よりも負担は少なめ。その分心に余裕はあるものの、常にナーバスなのは変わらず。特にブルーコスモスの特性上(自爆の関係で)不殺を封印しなければならないので、結局はどっこいどっこいかもしれない。

>アスラン
正規軍人なので部隊長を務める。
親友(キラ)は思い悩み、厄介な後輩(アグネス)を抱え心労がマックス。ルナマリアもあれから一人ぼっちでなんとかしないと…。手のかからないレイが恋しいくらい。

>デストロイ
流石に原作最強格のパイロットを相手には厳しかった。
描写されていないものの、キラが到着した時点でザフト軍部隊(ザクやグフ等)はコイツによって全滅させられている。
なお、相性の関係上フリーダムとの一対一なら何とか粘れるが、流石にジャスティスとシヴァ相手にはただのデカブツ。
 
>アコード
ブルーコスモスは殲滅対象であり、遊びの相手。一つの任務につき、誰が一番多く倒せるか競ってたりする。
コンパスは治安維持組織という認識が強く、シュラにとってはアスランやキラと戦果を競える最高の部隊()。不満は敵が弱すぎることくらい。





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