【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E. 作:アルテミー
お久しぶりです。
夏以降体調不良が続き、リアルに追われていたので執筆が遅れてしまいました。申し訳ありません。
あと、SEED FREEDAM ZEROの制作が決定したみたいですね。とても楽しみです。
今回は前話の続きと、しばらく姿を見せていなかった彼等の現在についてです。
「キラ・ヤマトーーー准将以下四名。乗艦許可願います」
キラは形式的にそう言った。
まだ「准将」という肩書きには慣れず、何処か他人事のような思いで敬礼する。
ザラ隊の隊長だが、キラよりも階級が低いアスランが続けて敬礼し、ルナマリアとアグネスも後に続く。
「許可します。久しぶりね、お疲れ様」
そんな彼等に対して、コンパス所属アークエンジェル級一番艦アークエンジェルの艦長であるマリュー・ラミアスは、暖かな言葉で出迎えた。
「いえ、マリューさんこそ。……お元気そうで何よりです」
キラ達はアークエンジェルに立ち寄っていた。
専用の母艦であるミレニアムは宇宙空間に待機したままであり、そこに帰投するためにモビルスーツの補給や整備、報告の義務が存在したからである。
アークエンジェルは現在、オーブからの出向という形でコンパス地上部隊所属の戦艦として扱われている。マリューやノイマン、マードック等の顔見知りのクルー達も所属しており、キラにとっては第二の母艦のようなものであった。
マリューについて
「被害の状況は?」
「確認の段階だと、死者568名、うち117名が民間人……多分、もっと増えるわ」
マリューが沈痛そうな表情で言う。
だが、それに対する慰めの言葉をキラもアスランも持ちえなかった。
「駐留軍は全滅。ザフトの方の被害も大きいみたい。ラメント新議長が上手くまとめているみたいだけど、ここまでされてプラントもいつまで黙っていられるか…分からないわ」
「そうですね…」
穏健派だったデュランダルの後を継いだラメントもまた、平和的な手段を持ってプラントをまとめようとしているが、ここまでブルーコスモス…ナチュラルにいいようにされて全員が全員黙っていられるとは思えない。
一度抱いた復讐の炎は、綺麗事程度で簡単に消すことなどできないのだ。
かつての大戦を思い出し、誰もが表情を曇らせた。
「イザークいわく、既にジャガンナート国防委員長をはじめとしたザフト軍部の方も動きを見せているらしい。今回のブラックナイツ部隊の派遣も彼等が指示したことだとか…」
「ブラックナイツ…」
キラの脳裏に浮かぶのは、まるで害虫駆除のように容赦なく敵を切り伏せていく漆黒の騎士の姿。一度はストライクフリーダムすら真正面から打ち砕いた圧倒的な強者。
キラ達の苦悩を嘲笑うように次々と"敵"を処理していく姿は、まさに完璧な戦士であるが、同時に任務以外のことを知らないロボット或いは人形のように見えて……。
「確かに彼等の力は戦力としてはとても魅力的だけど、コンパスとしては困ったものね」
「はい。彼等ほどの力があれば、周囲に被害を出さないように敵を沈黙させることなど容易だったはず。だというのに…あれではただの破壊者だ」
ブルーコスモス残党の鎮圧ーーーという任務的に考えれば、ブラックナイツの行動は正しい。短時間であのデストロイ含めた敵部隊を戦闘不能にさせたというのも見事なものだ。
だが、アスランには引っかかるものがある。
今回のブラックナイツの戦闘。
戦果こそ煌びやかなものだが、いくら敵を倒すためとはいえ、場所を考えずに戦ったせいで逃げ遅れた民間人が犠牲になってしまったことに彼等は何も思わないのだろうか…?
まるで競い合うかのように、自分に力を見せつけるかのように戦うブラックナイツーーー特に隊長のシュラ・セーペンタインの態度も気がかりだ。
「といっても、私たちは彼等に対する命令権は持ち得ないもの。任務は成功している以上、何も言えないのが辛いところね」
「はい…」
ーーー戦争はヒーローごっこじゃない。
今は亡き後輩に言った言葉が蘇る。
だが、あの時のは何もかも違う。隊長とはいえ今のアスランは一部隊を率いる権限しか持たず、ブラックナイツの指揮系統にあれこれと口を出すことはできないのだ。
それができるとすれば…。
「ラクスさんも頑張っているのだけどね……」
「………ラクス」
コンパス総裁のラクス・クライン。
しかし、組織全体への命令権を持つ彼女であるが、同時にその命令を下すにはコンパスを支持する国家首脳陣の許可が必要である。それが一番の問題だ。
フリーダム強奪事件以降、コンパスは大きくなりすぎた。
当初は大西洋連邦、プラント、オーブの三カ国による対テロ活動の為の遊撃部隊として発足したはずなのだが、ユーラシア連邦や、ファウンデーション王国を始めとする多くの独立国家群が加入し、『世界連合軍』とも呼べる部隊になってしまっている。
その結果、兵力等の心配は完全になくなったが、逆に『自由に動ける遊撃部隊』というコンパスの強みは完全に失われてしまった。今や作戦行動一つ取るためだけに何度も会議が必要となる始末。それでは救える命も救えない。
コンパスが結成されてから約一年が過ぎようとしているが、結成当初と比べると組織体系は大きく様変わりしてしまっていた。
▽△▽
少しだけ騒がしくなった地上。
そこから遠く放たれた月の反対側のラグランジュ3。そこには廃棄されたと思われる資源衛星が多く漂流している。
その中の一つ、それが彼等の拠点であった。
拠点の中に作られた
新型ガンダム。
両肩にそれぞれ一基ずつGNドライヴを搭載した機体。
GN-0000 "ダブルオーガンダム"。
それがこの機体の名称。
白と青を基調とした機体色と実戦時に装備される実体剣の数々は、昨年の武力介入で活躍したガンダムアステリアと非常に似通った印象を抱かせる。
だが、やはり気になるのは両肩に搭載された二つのGNドライヴ。これは単にGNドライヴを二つ搭載しただけのダブルドライヴではない。
"ツインドライヴシステム"
ひとつのガンダムに二基のオリジナルGNドライヴを搭載させ、その両ドライヴを同調させることで単に二つのドライヴを搭載しただけでは生み出せない、圧倒的なまでのGN粒子を発生させるという画期的なシステムだ。
このシステム理論は、昨年にトランザムシステムと共にヴェーダから送られて来ていたのをバレット・アサイラムが発見したものだ。おそらくは裏切り者が出ることを見越したカウンタートラップだったのだろう。
だが、そのおかげでソレスタルビーイング今も存続し、反撃の刃を研ぐことができている。
仮にこのシステムが完成すれば、現存するどのモビルスーツをも凌ぎ、圧倒する最強の機体が出来上がるのだろう。それこそ単騎で従来のガンダム四機を圧倒できるほどのパワーを…。
しかし、精密な機械の整備・開発が繊細であるように、ツインドライヴ システムもまた、その性能と比例するように扱いづらさも並大抵の物ではなかった。
現在、ソレスタルビーイングの秘密基地では、ツインドライヴシステムの同調率を試す為のマッチングテストが行われている。
オペレーティングルームには、開発主任であるバレット、更にオペレーターのウェンディとヴァイオレットの二人が慌ただしくも実験開始の準備を進めていた。
四つあるGNドライヴ同士の組み合わせは、これで16通り目……つまりはラストだ。これまでのテストがなんともいえない結果で終わっていたがために、今回のテストにはこれまでにない緊張感が張り巡らされている。
それは、コックピットに座る彼にとっても同じだった。
『シエル、準備はいいか?』
「問題ない。GNドライヴ、リポーズ解除」
バレットの問いかけに、ダブルオーのコックピットに座るシエル・アインハイトは短く答え、ツインドライヴシステムを始動させる。
二基のGNドライヴがそれぞれ回転数を上げ、段々と放出されるGN粒子の量が増していき、光の奔流となって両肩から羽ばたいて行った。
『トロポジカルディフェクト、基底状態より高位へ推移。ツインドライヴ の粒子同調率…43、47……55……』
ヴァイオレットによる状況報告。
それはダブルオーのコックピットにも示されており、シエルは一度の瞬きもなくそれを凝視している。
『……60、63……69…』
誰もが息を呑む。
安定領域と呼ぶには最低でも80%は必要だった。設計データにはそう記されていたし、何度も読み直してきたことだ。
異なるGNドライヴの同調は極めて難しく、これまで四つのGNドライヴを組み合わせたが、その成功率は極めて低いと言わざるを得ない。
『71…74…76…』
…行けるか?
ここまでは順調だ。これまでのテストでもここまでは同じだった。シエルを含め全員の意識がツインドライヴに集中する。
そして……、
『78…79……80%を超えました!』
『おおっ!』
初めての成功にバレットたちが沸く。シエルもホッとした気持ちだ。せっかくの画期的なシステムも起動できなければ何の意味もない。
『81……82…………82%で安定しました』
『ふむ、やはり100%は無理…か』
ようやくの成功ではやっていただけに、もう少し…という欲張りな気持ちが出てしまうのも無理はないだろう。シエルにしても、システムが安定した安堵と82%という不安定な同調率に対する不安が内心渦巻いているのだ。
平時であれば100%になるまで実験と調整を繰り返すのだろうが、今の彼等は不安定な実験結果に希望を託さなければならないほど余裕がない。
"世界平和監視機構コンパス"
エンジェルダウン後にソレスタルビーイングに代わり、テロや紛争に武力介入を行っている平和の使者。ラクス・クラインの名の下に世界を平和に導く歌姫の騎士団とも呼ばれている。
だが、その一方で『平和の為なら一切の犠牲・悪虐も問わない』という黒い噂も絶えない。
そして、その噂が事実である証拠をソレスタルビーイングは掴んでいた。
その影こそがファウンデーション王国。
ブルーコスモスとの熾烈な戦いの影で、コンパスの一部がその国家と深い関わりを持っているという情報を手に入れたのだ。
その証拠に、彼等と敵対していたユーラシア連邦はブルーコスモス残党が紛れているということを理由に軍事拠点を次々と墜とされ、今となってはファウンデーションとの力関係は逆転。不確定だが、ザフトのタカ派と繋がっているという情報もあり、コンパスの影で何者かが暗躍しているのは間違いなかった。
そして、その暗躍を可能にしているのは、掌握されたヴェーダによる情報統制に違いないだろう。
昨年、紛争根絶を目指し、紛争幇助行為への武力介入も行っていたソレスタルビーイングにとっては、そのような横行を見逃す訳には行かない。
すぐにでも行動をーーー。
その声は多く上がったが、現在のソレスタルビーイングにはコンパス及びファウンデーションに対抗できるだけの力がなかった。
敵は裏切り者によって手に入れた擬似GNドライヴを改良し、量産し、強大な力を有しているのに対して、ソレスタルビーイングは四機あったガンダムを全て失っている。
先日ようやく新型のガンダムが一機ロールアウトし、今切り札であるダブルオーガンダムの実戦投入が可能となったばかりである。いくらツインドライヴシステムとはいえ、これだけの戦力差をひっくり返せるのだろうか…。
それに、不足しているのは機体だけではない。
ガンダムを駆るに足るガンダムマイスターもまた、まるで足りていないのだ。
だからこそ、ダブルオーのパイロットに関しては、バレット達も悩みに悩み、未だに決まっていない。
「最悪パイロットは僕でもいいけど、それじゃあせっかく僕専用に開発した新型が無駄になる……駄目だ、圧倒的に人手が足りない」
エンジェルダウン作戦で失ったものは大きい。
4人いたガンダムマイスターの内、アキサム・アルヴァディが死亡。フェイト・シックザールは行方不明。五体満足で生還したのはシエルのみだ。
GNアームズにのって出撃したバッツ・グランツは生還こそしたものの、身体に重傷を負い、現在も治療中の身である。
「せめてフブキさんの脚が治れば…クソッ」
ガンダムメティスのマイスター、フブキ・シニストラは、エンジェルダウン作戦の死闘からなんとか生還したものの、その身はシエルのように五体満足とは言えなかった。
機体の爆発によって生じた脳へのダメージは、彼女から歩く自由を奪い、モビルスーツパイロットとしての命を失わせたのだ。
また、顔にも深い傷を負い、一時は失明の危機ですらあった。ソレスタルビーイングの専属ドクターがなんとか治療を成功させたものの、やはりマイスターとしての復帰は難しく、戦術指揮官という形での転向をせざるを得なかった。
「新たなガンダムマイスター……か」
アキサムが死に、フェイトが行方不明、フブキが戦えなくなった今、新たなガンダムマイスターが求められていたものの、今のソレスタルビーイングは人材も資金も時間も足りていない。
敵にもGNドライヴが渡っている以上、性能頼りの戦いはできない。求められているのは高い操縦スキルを持っているパイロットだ。それこそ、一年前に戦った同盟軍のエースパイロットのようなーーー。
…と、そこまで考えた時、シエルの脳裏によぎったのは一人の少年だった。
「まさか、
普通に考えればあり得ない。
だが、可能性はゼロじゃない。本当に彼が
シエルは、予感めいたものを感じるとともに、ただ一人のガンダムマイスターとして気を引き締めた。
ーーーー再臨の時は近い。
>コンパス
原作より規模が大き過ぎてトップのラクスも現場の状況までは把握していない……というよりも上がってくる情報がヴェーダの介入を受けているために情報が伝わっていない。
>ユーラシア連邦
ブルーコスモスとのつながりを理由に(あながち間違いでもないが)コンパスの武力介入を受けて次々と軍事拠点を失い、次々と加盟国の独立を招いたことで規模が縮小。
>ダブルオーガンダム
ツインドライヴシステムといえばこの機体。
00本編と違って同調率は維持しているが、オーライザーに相当する追加装備がないことには真価を発揮できない。
>フブキ・シニストラ
普通、機体が爆発したらタダでは済まない。
下半身付随の状態なのでパイロットから一時的な引退へ。
これからは戦術指揮官として活躍する。