【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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お待たせしました。
すみません、スランプだったので。
他の人の作品を見ると、どうしても比べてしまうこのジェラシー(?)
隣の芝は青く見えるんです。



天使再臨Ⅰ

 

 

 

 シン・アスカは死人である。

 エンジェルダウン作戦において、ガンダムと相打ちになった彼はその機体ごと行方をくらまし、長期的な捜索も虚しく、公にはMIAとして扱われた。

 

 だが、彼は生きていた。生き延びていた。

 大破した機体とともに宇宙を漂流していた彼は、通信が途絶えたガンダムを捜索していたソレスタルビーイングの者によって発見され、とある理由から組織内にて治療と保護を受けていた。

 

 元々持っていたコーディネーターとしての強い肉体よって、治療はすぐに終わり、シンはすぐに目を覚ました。

 

 始めはミネルバか、もしくは友軍の艦辺りに回収されたのかと思っていた彼だが、目覚めた場所が長らく自分たちとぶつかり合ってきたテロ組織だと知る。

 

『気が付いたかしら…? 身体が頑丈なコーディネーターなだけあってお早いお目覚めね』

 

 対面した車椅子姿の女性…フブキ・シニストラは、己をガンダムメティス…"羽付き"のパイロットだと明かし、シンの身柄を独房(にしては環境が整っている)へ送りつつ、現在の状況について説明した。

 

 エンジェルダウン作戦は成功したこと。

 ソレスタルビーイングは壊滅したものの、彼女達のような生き残りが存在すること。

 シン・アスカは現在MIAとして扱われていること。

 混乱が続く組織内では、意図せず捕虜としたシンの処遇についてはまだ定まっていないということ。

 

『何か質問はあるかしら?』

 

 というフブキに対して、シンは未だに混乱していたものの、作戦中にずっと思っていたことーーー青いガンダムのパイロットの少女についてを尋ねた。

 

 なぜ、彼女は戦っていたのか。

 なぜ、まだ少女である身にも関わらず、危険な戦場に出させ、テロ行為などに加担させたのか。

 

『……………』

 

 ……彼女は生きているのか。

 怒りと悲しみ、やるせなさのままに問うシンに対して、フブキは黙ったままその言葉を受け止めた。

 

『貴方が……!』

 

 何とかいってみろ!…と言葉を続けようとしたシンに待っていたのは、真っ直ぐなまでの敵意だった。

 

 それは、目の前で「しまった」という表情を浮かべるフブキからではない。

 

『貴方がそれを言うの! フェイトを殺した癖に!!』

 

『ウェンディ…』

 

 フブキに名を呼ばれた、おそらくシンとそう変わらない歳だろう桃髪の少女は、涙を浮かべながらシンを罵詈雑言に罵った。

 

 初めて受けた他人からの憎悪にたじろぎつつも、殺したくて殺したかったわけではないとシンは反論した。

 

 自分だって戦いたくなかった。何度も何度も説得した。でも、かつて救えなかった妹や両親の為にも、今度こそ守りたいものを守るためには、戦わざるを得なかった。そもそも、死んで欲しくないなら最初からこんなことに彼女を巻き込むなとも。

 

 だが、そんな言葉はガソリンに火を注ぐような物だった。続く、ウェンディという少女の言葉は真っ直ぐにシンの胸を穿つ。

 

『守りたい物…? 何言ってるのよ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!』

 

 その言葉に、シンの呼吸が止まる。

 

 ーーーーナニヲイッテルンダ、カノジョハ?

 

『ウェンディ、貴女知ってーーー』

 

『………戦いの前、フェイトが私とウェンディに教えてくれたんです。自分の本当の名前と、これから行おうとしていることを』

 

 そうして、彼女の口から放たれた驚きの真実を、シンは到底信じることなどできなかった。

 

 青いガンダムのパイロット、フェイト・シックザールという少女の正体が妹であるマユ・アスカ?

 

 最後の最後まで、彼女は組織の理念と兄と戦いたくないという思いの間で板挟みとなり、結局は両方を貫き通すという重い決断をした?

 

『ザフト軍人である兄を連れてくるなどマイスターとして、組織の人間としてあり得ない行為。けど、後悔したくないから、どうか手伝って欲しい。フェイトはそう私たちに頼んできたんです』

 

 …嘘だ、あり得ない。

 シンは受け止められない事実を前に思考を停止させるが…。

 

《死にたくなかったら黙って捕まっていてください!》

 

 ユニウスセブン落下事件の際、初めてその声を聞いた際は、ただ似ているなと思った。

 その後の激しいの戦いの中でも、その僅かな引っ掛かりが残っていた。

 

 そして、エンジェルダウン作戦の時にその疑問はより強くなり…それでも、決して考えないようにした。

 

《オーブで家族を亡くした恨みですか、怒りですか! それともオーブが憎いんですか!》

 

《痛いところを突かれたら、そうやって言い逃れする癖、昔から何も変わっていませんね! そうやって戦う理由からも目を逸らして来たんでしょう!?》

 

 そう、思い返せば、彼女は何度もボロを出していた。なのに、認めたくないシンが、戦いを言い訳にして、無意識にその事実を思考から外していたに過ぎない。

 

『私たちが悪いことをしているのは分かってる。いつか、罰を受ける時が来ることも…』

 

『…ウェンディ、もうよしなさい』

 

『………けど、なんで貴方だったの。なんでフェイトが殺されなきゃいけないのよ。ずっと会いたいと思っていた、実の兄である貴方に…!』

 

 震える声で、泣きながらそういうウェンディを前に、シンは何も言えなかった。

 目まぐるししい情報、そして乱された思考がシンを混乱させていたのだ。

 

 そんな同じく表情を歪めたフブキは、泣き崩れるウェンディの肩を抱きつつ、一つのタブレット端末を投げ渡した後に、部屋を出て行く。

 

『貴方にも考える時間が必要よ。…もし、貴方の妹さんのことについて、真実を知る覚悟があるのなら、その端末を見なさい。フェイトの…マユ・アスカのデータが揃っているわ』

 

 そう言って手渡された端末には、オーブ解放作戦にて生き別れたマユのその後…ソレスタルビーイングに入るまでと、彼女がどんな気持ちでガンダムに乗っていたのかが記されていた。

 

 開戦から既に一年、シンは、ようやくガンダムパイロットの少女…自身の妹の全てを知ることができた。

 

 だが、真実を知るには既に遅すぎた。

 悲しき運命のすれ違いは、兄妹を引き離し、銃を撃ち合わせ、今度こそ死に別れさせたのだ。

 

 シン・アスカは、戦う理由を見失った。

 

 

 ーーーそのはずだった。

 

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 一方その頃、ロイ・レラジェは駆けていた。コロニー区画の連絡橋へ繋がる通路を右へ左へと駆け抜けていく。

 

 前にはエイリークたち対抗組織(レジスタンス)を名乗る者たち、後ろにはリリアナ・シトラスを始めとする自身と同じ境遇の数名の子供たち。彼等は共通して、焦りの表情を浮かべていた。

 

 理由は、止まることなく聞こえてくるコロニー外からの爆撃音。それがモビルスーツの戦闘によるものだと理解しているのは、レジスタンスの面々を除けば、戦闘訓練を受けさせられたロイくらいだろう。

 

 だが、それだけではない。

 

「くそっ、新手か!?」

 

 突如として放たれた銃弾。すぐに道を翻して曲がり角に姿を戻したエイリークらが応戦する。

 

 このような銃撃戦が既に3回ほどは行われていた。

 

「情報が漏れていたのか!?」

 

「くそっ、数が多すぎる。奴等、パワードスーツまで着用しているぞ!」

 

 レジスタンスの面々の様子を見るに、彼らにとってもこの事態は想定外だったのだろう。既に犠牲者も数名出ており、中には逃げ遅れた子供たちも何人かが銃弾の犠牲になっている。

 

 苦痛の顔を浮かべながら倒れて行った仲間たちを思い返し、ロイは表情を歪ませながら、どうにか生き残る方法を考える。

 

(どうする……どうすればいい?)

 

 護身用として拳銃を手渡されているが、こんなものがパワードスーツを着用した相手に通用しないことくらい、ロイにも分かる。

 

「ぐわっ!」

 

「リアルド!?」

 

「ダメだっ、よそ見するな!」

 

 そんなことを考えている間にも、一人…また一人とレジスタンスのメンバーが銃弾に倒れていく。既に10人以上いたはずのメンバーはその半数以下にまで数を減らしていた。

 

 ここまでか…と思ったその時である。

 

「こっちへっ!!」

 

 声が聞こえたと同時に、通路の天井に何かが付着した。四角い粘土ブロックのようなものだ。

 爆弾だ!とロイが声を上げるより先に、エイリーク達が子供たちを連れて通路を引き返していく。

 

 次の瞬間、通路の天井が爆発した。曲がり角に隠れたおかげで爆風に襲われることこそなかったが、大きく崩落した瓦礫が道を塞ぐ。結果的にはあるが、あれ以上の銃撃を防いだとも言えるだろう。

 

「…大丈夫ですか!?」

 

「ジーン01か!」

 

 介入してきたのは、黒いパイロットスーツを着た少女だった。よく見れば、形状がザフトの物だと分かる。しかし、彼等と通じている様子を見るに、仲間なのだろうか…?

 

「こっちから輸送艦へ通じる道があります。時間がないの。急いでっ!」

 

 だが、そんな疑問を口にする余裕はなかった。

 大きな爆発音と共にコロニーが揺れる。時間がないという少女に連れられる形で、エイリークやロイ達も後を追いかけていく。

 

 駆けて行く途中、通り掛かった連絡橋から見えたのは、モビルスーツ同士による激しい戦闘の様子だった。

 いや、戦闘と呼べるのものではないのかもしれない。軍の扱うGNドライヴ対応機が不気味なまでに整ったフォーメーションの元に、次々とレジスタンス側のモビルスーツを撃墜し、追い詰めている。

 

「くそっ、あのモビルスーツ…コンパスなのか!?」

 

「しかもあの動き……噂のモビルドールってやつか。このままじゃ…」

 

 視界に広がる光景を前に、絶望的な雰囲気が漂う。子供たちの中には、涙を浮かべる者もいた。

 

「諦めないで!! ここで私たちが死ぬのは勝手だけど、その子たちはどうなるの!!」

 

 大人たちを一喝したのは、ロイとそう歳の変わらないであろう少女。彼女は手に持つ端末を操作したあと、それをそのままエイリークへ手渡した。

 

「この先に脱出艇があります。そのままA-12ポイントに進めば、本隊の船が回収する手筈になっているはずです」

 

 短い言葉を伝えると、少女はロイたちに背を向けてその場を後にする。

 その背中を呼び止めたのは、エイリークだ。

 

「待てジーン01、お前はどうする!」

 

 それは、ロイも思っていたことだ。あの先にあるのは工廠ブロック。軍の警備が最も厳しいであろう場所だ。そんなところに女の子が一人向かってどうなるというのか。

 

「…………」

 

 そんなロイの思いも含めた問いに対して、ジーン01という名の少女は一度立ち止まったが、やがて振り返ることなくそのまま去っていく。

 

 ロイ達は、ただただそれを見送ることしかできなかった。

 

 

 

▽△▽

 

 

 

 コロニー『ヘルファーレ』外壁付近で始まったレジスタンス対コンパスの戦いは、戦闘という結果にもなっていなかった。

 

『ぐわぁっ!? 何だコイツら!?』

 

『くそっ、攻撃が当たらねえ!?』

 

 カメラアイを赤く光らせたGN-X5機の攻撃を前に、レジスタンスのパイロットはひたすらに逃げ惑うことしかできない。

 いや、むしろ機体性能の劣る非太陽炉搭載MSで未だ生存していられることこそ、彼等がかつてエースパイロットと呼ばれていた証であるのだろう。

 

 だが、そんな彼等を作業のように追い詰めるのがモビルドールシステムである。一機、また一機と撃墜されていくレジスタンスの機体達を、スウェンは無感動な瞳で眺めていた。

 

 ストライクXは、発進してから一度も火器を使用していない。スウェン自身が手をかけるまでもなく、モビルドール部隊だけで敵モビルスーツ部隊を壊滅状態に追い込んでいるからだ。

 

 この調子ならば、最後まで己が手を出すことなく戦いが終わるだろうーーーそう思っていたスウェンだが、すぐに違和感に気が付いた。

 

「なんだ…別働隊の反応が、消えていく……?」

 

 コックピットのディスプレイに表示された熱源反応のうち、コロニーの反対側から仕掛ける手筈の別働隊の反応が、次々と消えていくのである。あちらもモビルドール部隊だ。レジスタンスの戦力で太刀打ちなどできないはずだが……。

 

「熱源……敵襲か!」

 

 それは一瞬だった。

 流れるように放たれた閃光が一機のGN-Xの頭部を貫き、続いて放たれた光がモビルドールたちを襲う。

 

「あれは……!」

 

 こちらを襲ってきたその機体、その姿を見てスウェンは息を呑んだ。

 

 白灰の機体色に、赤い翼…身の丈ほどの長剣をこちらに構えるモビルスーツ。どこか見覚えのあるその姿に、データ照合をかければ、すぐに見つかった。

 

 ZGMF-X42S デスティニー…?

 

「ザフトのモビルスーツだと…!」

 

 思い出す。あれはエンジェルダウン作戦時にザフト側側で参加していたモビルスーツだ。ガンダムとの激しいぶつかり合いを直接目にしたことがある。

 

 だが、どういう訳かデスティニーはこちらに刃を向けてきた。長剣(アロンダイト)が無防備なGN-Xを次々と引き裂き、撃墜していく。識別が味方(ザフト)である為、モビルドールも何の反応も示さないのだ。

 

「くっ……!」

 

 スウェンが、すかさずビームライフルを放ち、それ以上の行動を止めに入る。

 

 対して、デスティニーは放たれたビームを宙返りするように回避すると、ビームライフルでこちらを牽制、スウェンは余裕を持ってそれを回避しながら、眼前の機体へ回線を繋いだ。

 

「こちら世界平和監視機構コンパス所属のスウェン・カル・バヤン少佐だ。デスティニー、何故作戦の邪魔をする」

 

『……………』

 

 返答は刃によってもたらされた。

 振り下ろされる剣をシールドで受け止めつつも、スウェンは通信をやめない。万が一、相手が本当にザフトであった場合、今後の連合の対応にも大きく影響するからだ。

 

『…止めさせる』

 

「なに……?」

 

 声が聞こえた。若い少年の声だ。おそらくは、眼前のデスティニーのパイロットに違いない。

 

『こんな行いは、止めさせなきゃならないんだ!!」

 

「なっ!」

 

 デスティニーが強引にストライクXの構えたシールドを薙ぎ払う。そして、マウントラッチからビーム砲が放たれるが、スウェンはすぐさま機体を旋回させて回避。

 

「やめろ、我々コンパスはヤラファス条約に基づき、平和の為にーーー」

 

『誰かを犠牲にして成り立つ平和なんて、マユは……俺は望まない…!!』

 

「…………」

 

 会話が成立しない。

 "誰かを犠牲にして成り立つ平和"とは、平和の名の元に軍事的制圧を厭わないコンパスのことを刺しているのだろうか。

 だとすれば、それは筋違いだ。もともとこの世界は力によって主義主張を押し付け合い、それが戦争となってきた。それは彼の属しているザフトも同じことだ。

 

「…錯乱したか、デスティニーのパイロット」

 

 周囲に他の気影はない。デスティニー単騎でここに来たということは、それ即ちこの行動はザフトの意による物ではないのだろう。

 少なくとも、コンパス内にてある程度の命令権を持たされているスウェンはそう受け取った。

 

 ならば、容赦する必要はない。

 スウェンは、モビルドールの敵対対象に"デスティニー"を定めると、己もまた銃口を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





>シン・アスカ
実は生きていた(知ってた)
なんでデスティニーでコンパスに敵対的な行動を取っているのかは、次回以降で描写します。

>デスティニー
別にspec2とかじゃない。普通のデスティニー。
非GNドライヴ搭載機としては最高峰の才能を持つ機体を分析するために修復されていたが……。

>ジーン01
00でのライルのコードネーム。
ザフトのパイロットスーツを身に纏った少女のやつだが、一体なのものなのだろうか()

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