【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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天上の宣言Ⅱ

 

 

 多目的輸送艦(ゆそうかん)クラウディオスのブリッジでは、フブキとアキサムの二人のマイスター、以下乗組員の全員が、固唾(かたず)を飲んで声明の放送を見つめていた。

 

 ソレスタルビーイングの一員である彼等にとって、この声明は自分たちのこれからの行動を開始させる号砲(ごうほう)でもあったのだ。いやがおうにも緊張感(きんちょうかん)が高まる。

 

「始まったな」

「始まりましたね」

 

 バッツがそう言い、隣の席に座るシドが相槌(あいづち)をうって追従する。

 

「でも、これで世界中に私たちのことが知られたわけですよね! ああ、良かった。これまでずっと下準備ばかりで、ようやく自由に動けるようになったって感じ」

「もう、これからが大変なんだからね」

 

 ウェンディが場違(ばちが)いに思えるほど明るい声を出して、フブキが苦笑(くしょう)して返した。

 

「………」

 

 ヴァイオレットは無言でモニターを見つめていた。

 その奥では、マイスターであるアキサムも険しい表情でモニターを見ている。

 

 アキサムは思う、遂に始まったのだと。

 長い年月をかけた計画が、この瞬間に幕を開けたのだ。ガンダムやクラウディオスが完成に(いた)る道程を含めて、ソレスタルビーイングという組織を形作るには、多くの時間と人員が必要となっただろう。アキサムはその歴史を知らない。どれほどの時間が流れ、どれほどの人員が参加し、どのような思いがそこに込められているのか。

 

 しかし、それを自分たちの手で遂行(すいこう)する。彼等の思いを、ソレスタルビーイングの理念を具現化するガンダムのパイロットとして。

 

「アキサム、どうかしたの?」

「いや、そうだな…バッツさんのいうとおり、遂に始まったと思ってな」

「そう…私も同じね。口では何とでも言えるけど、やっぱり何か込み上げるものがあるの」

 

 誰よりも計画を実行する立場にあるガンダムマイスターの二人は、この場の誰よりも重い責任感を感じていた。皆の前では強がっていても、心の中では様々な感情が渦巻(うずま)いている。

 

 今でも二人の中には、心の奥の奥の方に、僅かにだがまだ信じきれない気持ちが残っているのだ。

 

 戦争根絶なんていう大それたことを本当にやるのか?

 そして、それははたして実現可能なのか?

 

 でももう、この放送を見て引き返せないと思った。もう計画は始まってしまった。自分たちは前進するしかないのだと。

 

 二人の中で、完全に覚悟が決まった瞬間だった。

 

 

 

 

 その頃、残るガンダムマイスター、フェイト・シックザールとシエル・アインハイトの二人もそれぞれの乗機(ガンダム)に乗りながら、声明の映像放送を見ていた。

 

「……始まったんだ」

 

 シエルは携帯端末(けいたいたんまつ)を閉じて、放送を見るのをやめた。もう何度も声明のビデオデータは見てきたし、そらんじて言えるほど内容を記憶している。

 

 遂にソレスタルビーイングの活動が世界に知られるようになった。

 彼は自分自身に再確認するように「ね、フェイト」と(かたわ)らの機体(アステリア)に乗る少女へ声をかけた。

 

「これで僕たちは世界に喧嘩(けんか)を売ったってことだよ」

「……うん、わかってる」

 

 フェイトは、じわりとした責任と使命を感じていた。

 彼女は別に争いを好んではいない。人が死ぬのはとても悲しい。それが自分たちに敵対する人間だとしてもだ。彼女は任務だからといって盲信(もうしん)的に破壊(はかい)活動に従事できるほど、心の中で割り切りを作ることができないのだ。

 

「世界の歪み……破壊しないと」

 

 だが、フェイトは世界に悪意があることを知っている。それを行使する人間がいることを知っている。自分がその被害者(ひがいしゃ)の一人だからだ。

 

 だからこそ、嬉しい。自分がガンダムマイスターであることが。世界の歪みを止められる場所にいられることが。…戦争根絶をこの手でなせることが。

 これから自分たちの行動で多くの人間が死ぬことになるだろう。それを(うれ)う気持ちもある。苦しく思う気持ちもある。けど、その一方で戦争に対して武力介入を行える自分を(ほこ)りに思う気持ちもある。

 

「だって私たちは、ソレスタルビーイングのガンダムマイスターなんだから」

 

 そんな相反する思いが重なってか、フェイトは心苦しそうに曲がれた眉毛(まゆげ)と、()んでいるような口元という複雑な表情を作っていた。

 

 

▽△▽

 

 

 ソレスタルビーイングの声明が全世界に発信された数刻後、各国の首脳(じん)は突如として現れた私設武装組織に対し、どのような態度を取るか議論(ぎろん)に追われていた。

 

 無関係であると静観を決め込む国、単なるテロ組織の一つとして楽観(らっかん)視する国、彼等を維持費(いじひ)のかからない防衛部隊として活用できないかと画策する国–––––––国家の状況によってその対応策は様々である。

 

 例えば、地球連合…というよりは大西洋連邦。その裏に控える秘密結社(ロゴス)のメンバーなどはこの存在に難色(なんしょく)を示し、実質的な傀儡(かいらい)()しているコープランド大統領は、彼等を危険度の高い武装グループと大々的に発表した。

 

 未だに中立を(たも)っているオーブ連合首長国やスカンジナビア王国は態度を留保(りゅうほ)していた。特にオーブは代表不在なこともあり、国外よりも国内の問題の方が大きい彼等は単なるテロ組織を気にする余裕がなかったのだろう。

 

 ソレスタルビーイングのモビルスーツが、ザフトの新型モビルスーツを圧倒した…というのは、それほどに各国へ与えた影響は大きかったのだ。彼等の理念はともかくとして、自軍が彼等の武力介入を受けたことを考えて、どの国も慎重になっていた。

 

 

 勿論、その議論(ぎろん)は、プラントでも行われていたのだが、アーモリーワンでの騒動(そうどう)に加えて、議長不在であることもあって、プラント最高評議会は大きく荒れていた。

 

「我が方の最新鋭機がこうもあっさりと……」

「これは新兵器開発に対するけん制とみていいでしょうか」

 

 正面の映像には、アーモリーワンでのガイアとガンダムの戦闘の様子が映されており、カオスとアビスが加わってなお圧倒されている様子に複数の議員が顔を(しか)めた。

 

「扱ったのがナチュラルとはいえ…」

「何を言っている。ミネルバ隊のインパルスも良いようにあしらわれたという報告を受けただろう」

 

 ()いで、映像はインパルスとガンダムの戦闘記録に切り替わる。ザフトレッドが操る最新鋭モビルスーツですら、まるで歯が立たないという様子に議会はあらためて騒き始めた。

 

「地球軍の策略だという報告も受けていますが、極秘裏にあそこまでのモビルスーツを開発できるのは、先進国レベルの技術と予算が必要になります」

「そんなことはありえん!」

「そもそも例の強奪犯との関係性すら明らかになっていないのだぞ!」

 

 議会はますます白熱していく。いつもなら(いさ)める立場にいるデュランダルもミネルバに乗っているために生憎と不在なのだ。漠然(ばくぜん)とした不安が彼等を更にヒートアップさせるのだ。

 

「確かに、武装組織には有力なバックがいるでしょうな」

「とはいえ、各国の諜報機関も組織に関する有力な情報をつかめていません」

「どの国家がバックにいるのかは、今後の彼等の行動で明らかになるでしょうな」

 

 議会はまだまだ終わりそうにない。

 それでも彼等の心には刻まれた。ソレスタルビーイングという存在を、今現在においては、地球連合軍をも超える脅威なのではないか、という少なくない疑念が。

 

 

▽△▽

 

 

 一方、その頃。

 その映像は、ミネルバにいたカガリとデュランダル達も確認していた。

 

「ソレスタルビーイング……」

 

 神妙(しんみょう)な表情で、デュランダルが呟いた。

 

「このご時世に武力による戦争根絶だと…馬鹿げている! 悪戯(いたずら)に戦火を広げるだけだっ」

「……どうしたものでしょうか」

 

 考え込むような仕草のシャーロットとは対照的に、カガリは感情的にソレスタルビーイングの言動を否定した。

 何たる愚かな行動なのか。前大戦、止まらぬ憎悪を止めるために戦った自分たちとは違う。彼等は本気で第三勢力として戦争を止めようとしているのだ。そんなことをしても、新たな憎しみを人々に植え付け、争いの種をばら()くことになるだけだというのに…。

 

「議長、どうしましょうか」

 

 あの放送が送られてきた後、艦長室に戻ってきたタリアがそう言ってデュランダルへ指示を仰いだ。

 ソレスタルビーイングなる組織があの強奪犯とどう関係しているかは分からないが、彼等の持つ戦力であるガンダムと相対するとなれば、現在のミネルバの戦力では心持(こころも)たないと言わざるをえない。

 

「そうだな……艦長、ボギーワンの位置はどうなっているかね?」

「先程と変わらなければ、距離15000程度で捉えていますが…こちらから奇襲となるともう少し近づく必要があります。さらにいうと、この先にはデブリベルトが存在するため、本艦での戦闘は厳しいかと」

「ふむ……そうか」

 

 タリアの言葉に少し考える様子を見せた後、デュランダルは次の指示を口にした。

 

「では、仕方あるまい。ミネルバはこれより後退。本国より援軍に向かわせているジュール隊やポアソン隊と合流せよ。その後の指示は追って伝える」

「は…はっ!」

 

 やはり後退…しかし、この状況で攻める方が危険ということも分かる。彼にしては珍しく意見があったと、そう思いながらタリアはクルー達に指示を伝えるべく艦長室を後にした。

 

「議長! あの部隊を見逃すというのは!?」

「…姫」

 

 が、そんなデュランダルへカガリが待ったをかけた。カガリとしては、新たな争いの火種であるあの部隊を見逃すのは看過(かんか)できない問題であり、是非ともミネルバにはあの奴等を捕縛、(ある)いは撃破して貰いたいと思っていたのだ。

 

 しかし、事態は既に強奪犯などを気にする余裕のないところにまで来ている。

 デュランダルはカガリへ(さと)すように言葉を続けた。

 

「しかし、姫。貴女も見たはずでしょう。あのソレスタルビーイングという組織は、あらゆる戦闘行為に対して武力を持って介入すると」

「それは……」

「あのガンダムという機体を相手にするには、この艦だけではリスクが高すぎるのですよ」

 

 それはつまり、このままカガリ達が乗っている状況で戦闘することを流石のデュランダルも認められなかったということだ。

 

 アーモリーワンで見たガンダムの力を前にすれば、このミネルバ隊とて無傷で済むとは言い(がた)い。更にあの強奪部隊の詳細が分からない以上、物事は慎重に進めるべきだとデュランダルは考えていた。

 

「それに、この状況でいつまでも本国を留守にする訳にもいきますまい。それは姫、貴女も同じなのではないですか?」

「あぁ……そうだな」

 

 それは、カガリも分かっている。

 中立を守り続けているオーブに限ってソレスタルビーイングの介入を受ける可能性は低いと思うが、この事態に本国を留守にしているのはカガリとしても好ましくない状況なのだ。

 カガリの留守はセイラン家やその他氏族に任せているが、ただでさえ大西洋連邦から圧力をかけられている現在、更なる問題を代表である自分が不在で(まと)められるのか。

 デュランダルに言われて、カガリは急に祖国(そこく)のことが心配になってきた。

 

「…………」

 

 黙ってしまったカガリに変わって、シャーロットが前へ出た。

 地球に帰らなければいけないのは、カガリだけではない。特にアズラエルの名を持つ彼女の場合はもっと複雑な状況にあるのだ。安全に素早く地球に帰還する必要がある。

 

「では、デュランダル議長。我々は地球に降りれる……ということでよろしいのでしょうか?」

「最終的には、そうなりますね。残念ながら、地球に降りる為の使者を迎えるまでは、このミネルバに搭乗して貰うことになりますが……」

 

 シャーロットの言葉に申し訳なさそうにデュランダルは言葉を続けた。

 

「勿論、安全は保証します。ボギーワン…例の強奪部隊については、本国からの応援を加えて行い、ミネルバは後方支援に留まるつもりです」

「そうなれば、この艦は安全ということでよろしいので?」

「ええ。それでも心配なら、代表や理事には私と共に一度本国へ来ていただくことも可能ですが……」

 

 その言葉に、シャーロットは首を横に振った。

 大西洋連邦の人間が、プラント本国に(おもむ)くことは彼女にとってもデュランダルにとってもリスクの大きいことである。できれば、非公式という建前(たてまえ)を扱ったまま地球へ戻りたいと考えていた。

 

「お気遣い感謝します。いえ、ではもう暫くこの艦にお世話になることにします。アスハ代表はどうされますか?」

「あ…あぁ。議長、よろしく頼む」

 

 カガリも続けてそう言うと、デュランダルは安心したように笑みを見せた。彼としても、新型モビルスーツの強奪にソレスタルビーイングなるテロ組織の登場という想定外の事態の連続でやや疲弊(ひへい)したような様子だった。

 

 だが、そんなデュランダルの様子が気にならないほど、カガリは深い思考の沼に沈んでいた。

 

 想定外の連続は、カガリにとっても同じこと。

 寧ろ、祖国から遠く離れた宇宙にて、何の情報も分からない状況で何もできないというのは、想像以上に彼女へストレスを与えていた。

 

 本国は今、自分の状況をどこまで知らされているのか。

 セイラン達のソレスタルビーイングへの対応は?

 大西洋連邦は、ザフトはこれからどう動くのか。

 そして、やはり戦争はまた始まってしまうのか?

 

 考えれば考える程、より思考の沼へ沈んでいく気がする。

 

「カガリ、会談は終わったのか? 議長は何と…」

「アスラン……」

 

 今はただ、彼に相談に乗って欲しかった。

 

 

 

 

 





原作のデブリでの戦闘はカット!
ショーンとゲイル、生存!(誰だよ
まぁ、原作でもセリフなしのモブだったので描写はないです。画面外でヨウランやヴィーノとつるんでいるんじゃないかな?

…ん?ヨウランって原作終了後死んだって言われてるけど、ホント?
世界で初めて「ラッキースケベ」っていう言葉を使った男なのになぁ。
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