ダンまち外伝:Crime doesn’t pay   作:ボッブ

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初投稿です。
ダンまちはアニメと漫画を少しなので、設定がおかしかったら教えてください。


confession01:冒険者(ベオ・ウルフ)

 

 

火の弾ける音が聞こえた

 

誰かが叫んでいる。殺せ殺せと叫んでいる。

 

なんでだろう。

 

嫌な音だ。耳を塞ぎたい。でもできない。抱きしめられているから。

 

何も見えない。誰かが目を塞ぐから。

 

下は硬くて顔が痛い。上はだんだん冷たくて悲しい。

 

喉が痛い。声がもう出ない。

 

ああ―――まだ、死にたく―――――ない―――――

 

 

……………

…………………………

……‥……………………………………………………

 

 

 

「ーー五万ヴァリスです。」

 

 今日も今日とで適当な額を稼ぐ。この程度あれば家賃を払っても余裕があるだろう。

 

「ハァ」

 

 無意識のうちにため息が出る。冒険者になって早7年、昔に比べて随分と情熱が薄れたように感じる。まだ二十歳にもなってないってのに気分はまるで中年だ。いっそのこと冒険者など辞めてしまおうか。憧れも夢もないし、もう十分生活基盤は整った。適当な商売でも始めてーー

「エイナさーーーーーーーーーーーーん!!!!!」

「うわッ」

 

 思考の隙間を縫うように突如としてそれは現れた。赤いナニかが真横を通り過ぎていったのだ。今までの冒険者生の中でも、あそこまで元気な血だるまは見たことがない。死の淵で新たな扉を開いてしまったのだろうか…。

 

「怖っ、さっさと帰ろ。」

 

 酒が欲しい。酒は嫌いだが、こういう変な気分のときは酔って忘れてしまうに限る。なんでダンジョンの外であんなんに出くわさなきゃならないんだ。ついてない。いや?珍しいものを見れたという点ではついているのか。…どうでもいいな。俺は少し早足になっていつも通り代わり映えのしない帰り道を無心で歩くことにした。

 

 

……………………

 

 

「――!――――!!」

 

 路地に入ると誰かの怒鳴り声が聞こえ始める。まあ、ここらへんだとよくあることだ。浮浪者の溜まり場になってたりして治安悪いし。どうやら冒険者の男が何者かを責め立てているようだ。当然のように肉体言語で。これもよくある話だ。男はそれほど大柄でないが、殴られてる奴は男に隠れて全く見えない。子供か、女か、小人族(パルゥム)か。あるいは、全部。ーー珍しくミスでもしたか、あいつ。

 

「このクソパルゥムが!!テメェなめやがっー」

「――おい」

「あッ⁉︎んだてめッ―」

 ズンッ‼︎

「ぐげっ!!!」

 

 無警戒に振り向いたところを殴りぬく。LV差は考慮して殴ったが思ったよりも綺麗にはいってしまった。…殺したか?

 

「がッあああ…!てっ!てめぇ!」

「…」

 

 よかった、生きてた。

 

「うせろ」

「ぐっ…!ちくしょう!おぼえてやがれっ!」

 

 低レベルの万年低LVの冒険者なんてこんなものだ。少しの暴力ですぐに心が折れる。負け犬根性上等な、そこいらの浮浪者と大して変わらないチンピラだ。…そんな益もないこと考えながら男の陰になっていた小さな女と相対する。

 

「…またしくじったのか?―――リリルカ。」

 

 女は一切隠そうともせず射殺すような目で俺を睨みつけていた。

 

 

……………………

 

 

 最悪だ。よりにもよってこの男に助けられるなんて。途中までは順調だった、いつものようにサポーターを嘲って油断した馬鹿な冒険者から換金した金貨をちょろまかすだけの簡単な仕事だったのに。まさか、あそこまでがめついなんて。それでバレて、好き放題に殴られて、十分最悪だったのに。この男の何もかもわかっているとでもいうような黄金色の瞳がいつもリリを見下して!冒険者に媚びへつらうのは慣れてる。でもリリの本心を知ってなお哀れんでコケにする、この男だけは許せない!

 

「…別に…あなたには関係ありません。」

「金は?」

「……持っていかれましたよ。」

 

 一体なんなのだこの男は。放っておいほしい。

 

「…助けて下さりありがとうございました。失礼します。」

「いや、待て」

「…?」

 

 そう言って男は、それなりに重みがありそうな袋を投げ渡してきた。

 

「?…これは。」

「ポーションと金だ。それだけあれば多少はしのげるだろ。」

「!?」

 

 この男は…!こいつは……また、リリを………リリを……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お前の施しを喜ぶような惨めな女だと、そういうのか……⁉

 

ギリッ!

 

 くやしさがこみ上げ、気づけば血の味がした。

 

「っ!…失礼します。」

 

 袋をわし掴み礼も言わないで男に背を向けた。早足に帰路を歩く。普通こんなことをすれば無駄にプライドの高い冒険者でなくても怒りそうなものだが…。生憎と、あの男はなにもしないのだろう。そういうところが本当に気に食わなわなくて…いつにもまして自分を殺したくなる。だから嫌いなのだ―――

            ―――ベオ・ウルフという男は

 

 

……………………

 

 

「…嫌われたな。」

 

男は女と同様にその場を去っていく。悲観はない。なぜなら、これが男の日常なのだから。7年前、記憶を無くし神の庇護を受けてから男は変わらない日常を過ごしているのだ。それは幸福か、それとも不幸か。

 

―男の名はベオ・ウルフ。冒険者の街オラリオに住まう第2級冒険者。

―男に過去はない。

―男に夢はない。

―男に憧れはない。

―あるのは身勝手で自己中心的な懇願。

―成り行きと幸運で彼は今も息を吸っている。

―この物語は彼が英雄と呼ばれるためのものではない。

―その真実は決して愛のためではなかった。

―それは―――――――

 

 

 

 

 

 

 

――――――男の罪を暴くための記録だ。

―男の名はベオ・ウルフ。己の所業を隠した何者でもない男。まだ―

 

 




まだ主人公の設定が固まりきってないので短めです。
読んでくださりありがとうございました。
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