ダンまち外伝:Crime doesn’t pay 作:ボッブ
自問する。己はなぜこんなところで立ち止まっているのかと。いつから、ここまで情けなくなったのかと。
最初は違った、憧れ、焦がれ、夢を見た。無知で無鉄砲で、思い返せば恥ずかしくなるような輝きに満ち溢れた記憶。もうあのころとは違う、十分わかったさ、才能がないことくらい。若い奴が俺には越えられなかった壁を越えて、それでもなお進み続けてる、そんなの見せられたら嫌でもわかっちまう。
先達は後進に越えられるものだと誇らしげに語る奴もいる。だがそんなのは嘘っぱちだ、いつまでも足踏みしている自分の横を悠々自適に歩き去られて悔しくないはずがない、惨めじゃないはずがない。俺じゃ辿り着けなかった場所へとあいつは往っちまった。
初めてあいつを見つけたとき、死人かと思った。煤けた色の髪に色の無え肌、目元に隈が染みついているせいで、ただでさえ気味の悪い黄金色の眼がより一層不気味に見えた。おまけになんで生きてんのかってくらい傷だらけで、肌と血も相まって
しかし、話してみれば親がいない、家も知らん、名前もわからない、だけど歳は言える。自分は記憶がなくなっちまったとぬかしやがった。その時の俺は当時の状況せいか妙な正義感を出しちまって憐れに思ったそのガキに、うちのファミリアに来るか、なんて言っちまった。今にして思えば随分青臭いことをしたもんだ。あいつもよくわかってない感じの顔しやがったし。
そっから動ける程度に怪我の治ったそいつをクソ主神に合わせて、他のメンバーと顔合わせさせて、名前をつけてやって、冒険者のあれこれを教えてやった。
…あいつがLV2になったのはそれから二年も経たってないころだった。まだ十二の頃だ。十一階層で起こったインファントドラゴンの『
地上に戻ってそのことを聞いた俺たちは大急ぎでホームに戻ったもんだ。帰った俺たちを迎えたあいつは体中に包帯を巻きつけながら悪戯のばれたガキみたいな表情をしてやがった。そして主神からLV2なったことを告げられた。そっからまた二年くらいでLV3、半年前にはLV4になりやがった。あいつは着々と階段を上ってる。すぐにでも第一級の一員になっちまう。
そんなすげえ奴が今でも俺のことを阿保みてえに慕ってやがる。LV2で燻ってる俺をいずれ第一級にすらなるであろう奴が、だ。それが嬉しい時もあったが今じゃ素直に喜べねえ。俺じゃあいつの憧憬にはなれない。俺には無理なんだ
―――だからよ、ベオ。俺をそんな目で見るんじゃねえよ。
……………………
「――モルドさん。」
「んぉっ?」
酔って寝ていたところに誰かが声をかけてきた。
「…ベオ、か。」
「はい、今からリヴィラを発つので挨拶をしておこうかと。」
「はあ、そんなことで起こすんじゃねえよ。」
「すいません。」
「ちっ、んなしょげんなじゃねえ。LV4だろうがてめえは。」
俺に追いつき、追い越しても変わらずに頭を下げやがる。いつまでそんな調子でいるつもりなんだこいつは、ふざけやがって。
「さっさと行っちまえ。」
「はい。それではみなさん、また。」
あいつが背を向けて去っていく。出会ったころからは想像できないくらいデカくなりやがって。ちくしょう。頭が痛てえ、昨日は変なこと思い出してついつい飲みすぎちまった。
「あーあ、かわいそ。」
「おい、モルド。あんなあしらい方するもじゃないだろ。」
「そーよ、ベオちゃん。あんたのこと本気で慕ってるのに。」
「うるせえ!」
わかってるんだよ、そんなことはよ。だから俺は………
………俺はいつまでこんなざまなんだろうな。なあ、お前には俺がどう見えてやがんだ、ベオ。
……………………
(なんかモルドさん顔が固かったな。二日酔いだろうか、ポーションとかおいていったほうがよかったかもしれない。まあ、今更だが。)
【オグマ・ファミリア】に拾われ七年ほどが経つが、現在の関係はあまり良好とは言い難い。ホームで顔を合わせることなんて俺がLV3になってからめっきり減ったし、一緒にダンジョンに行くこともなくなった。俺はあの人たちを嫌ってはいない、むしろ感謝している。だが、いい感情を持たれていないことは嫌でもわかる。それが寂しくも感じるが俺のような人間にはこのくらいの対応が正しいのかもしれないと思うと何とも言えない。
昔、拾われたころは今のようじゃなかったはずだが時間というものは残酷だ。変わってしまったのは彼らか、それとも俺か。半年前のことさえなければ少なくとも今よりもぎこちなさがなくなっていたのかもしれないが、どうしようもなかったことだ。考えても仕方ががないのだろう。だが、リリルカには悪いことをした、あんな目には合わせたくなかった。
「ウルフ…!」
「っ、ハシャ―ナさん?なんでこんなところに?」
陰気なことを考えていたら、
「あんた、明日の準備とかそういうのはどうしたんですか?」
「心配すんな!若い連中にちゃんと任せて来たからよ。それに俺はショーに出るわけじゃないしな。」
どうやらサボってきたらしい。いい歳してなにやってんだこの人。
「…シャクティさんに怒られますよ。」
「大丈夫だって、お前を連れてくるつったら見逃してくれたからな。」
…シャクティさんェ。
「心配しなくとも、今から行くとこでしたよ。」
「本当かぁ?お前去年来なかったろ。」
「忙しかったんですよ。」
「ほ〜?」
うざい。
「だが、それはそれとしても。お前普段から全然地上に帰らないだろ。」
「…嫌いなんですよ、太陽って。暑いし、鬱陶しいし。」
「だからってどんだけダンジョンに籠ってんだお前は。年に一度の怪物祭くらい外に出ろ。」
この人との付き合いも長くなるが、昔から少しお節介なところは全然変わらない。俺がダンジョンに長いこと籠っているのを知ると地上に出ろといつも催促してくる。だらしないが根っからのお人よしなのだろう。
「…俺に会いに来ただけにしては、大荷物のようですけど。」
「ん?ああ、これか。ちょっとした野暮用だよ、お前に合うついでにな。」
「それ俺がついでじゃないんですか。」
なにかクエストでもこなしに行くような大荷物をしていたから話を変えるためにも聞いてみたが、どうやらすでに終わらせてきたようだ。それを理由に離れようと思ったのに。
「…連中とはうまくいってないのか?」
「は?いきなりなんの話ですか。」
突然、先程まで打って変わり真剣な表情をしたハシャーナさんはそんなことを聞いてくる…。なんとなく、何について言っているのかはわかる。だだ会話の途中でいきなりぶっこんでくるとは思っていなかった。しらばっくれるが、それに構わずハシャ―ナさんは話を続ける。
「不躾だがさっきお前たちが酒場で話していたのを聞いてな。」
「………。」
「今のファミリアが居づらいならうちの――」
「ハシャ―ナさん。」
彼が言葉を言い終える前に口をはさむ。
「俺は、あそこにいたいんですよ。」
いていいいのかは定かじゃないとしても、少なくとも今はまだ。
「……そうか、すまん変な話をして。」
「いえ。」
少し微妙な空気が流れる。
「うし!じゃあ早いとこオラリオに戻るか!」
「あー、そうですね。オラリオね。」
「今更、やっぱいかないはなしだぜ!ウルフ!」
そう言ってハシャ―ナさんは笑ったさっきまでの空気を換えようとしてるのはわかるがすこし暑苦しい。それに地上に行かなきゃならないことも思い出してしまった。だが、いろいろと話したからかさっきまであった憂鬱はいつの間にかなくなっていた。
俺たちはリヴィラを後にし、地上へと向かう。オラリオで年に一度開催される
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