バンビちゃんが無事アニメでリョナられてたのでやる気が湧いて書きました。長い間お待たせして申し訳ありません。
シテ・・・・・・ユルシテ・・・・・・。
第一次瀞霊廷侵攻は、死神達に壊滅的な打撃を与えた滅却師側の撤退により幕を閉じた。
死神と滅却師。
侵攻された側と、侵攻した側。
かつて勝利した者達と、敗北した者達。
水と油。
千年に渡り溝を生んだ彼等。
互いに相容れぬ両者の激突は一旦の静寂を見せたが、これがこれから始まる大きな戦いの序章にすぎないことは、誰の目にも明白だった。
銀架城 とある一室。
滅却師の王が率いる見えざる帝国。
その幹部格にあたる星十字騎士団員に与えられる個室の一つ。
椅子ではなく机に腰掛けた少女は、自分一人しか居なくなった部屋で誰に聞こえることもなく小さなため息をついた。
少女──バンビエッタはフラストレーションが溜まっていた。
一度目の侵攻が終わり、直ぐに集められると彼等の王は唐突に自身の後継者を発表。
その後継者が騎士団員の内の誰かならばまだ納得がいっただろうが、こともあろうに指名されたのはポッと現れた何処かの馬の骨。
そのあまりに突然な知らせに困惑したのは自分だけではないだろう。
実際あの場にいた滅却師は一部を除き驚きを露にしていた。
自分も含め、皇帝がその席を譲るとすればそれは彼の補佐を務める男に他ないと思われていたのだから。
もう一つ軽く息を捨て、足元に転がる
若い男の滅却師。ただし、半死半生の、という前置詞がつく。
顔面が見るも無惨なことになっていた。
鼻を中心に陥没し、だらだらと小さな川のように赤い液体が止めどなく流れている。
見えざる帝国において指折りの滅却師の、ストレス発散に付き合わされた者の末路がそこにはあった。
昔ならもっと酷いことになっていたが、何処ぞの口煩い生意気な男のせいでこの程度に収まっている。
「うわぁ……また派手にやったなぁ……」
噂をすれば影。
部屋の入り口から細い声が聞こえた。
そのすっかり聴き慣れた声の主は、つい先日星十字騎士団員に選ばれた新人であり、遺憾ながら彼女にとってそれなりに付き合いの長い相手であった。
「なによ、文句あるわけ?」
「文句というか、その、やっぱ仲間半殺しはマズくない?」
「うっさいわね。アンタが言ったんでしょ、殺さずにって。あたしはそれをワザワザ守ってやってんのよ」
「う〜ん……」
「それより来たんなら、それ片付けといて」
「うえぇ……」
生意気にも自分に文句を言う新人ことベレニケ・ガブリエリは、顔色を若干青くしながらも床に転がるソレの後始末を始める。
自分で命じておきながら、適当な聖兵にでもさせればいいのにと、バンビエッタは思った。
彼が騎士に任命される前はよくあることだったが、任命された後も変わらず従うあたりに彼等の力関係は変わらないようだ。
バンビエッタがつまらなさそうに後始末を眺めていると、ふとベレニケは何故かその手を止めた。
「あのさ、バンビちゃん」
「何よ。文句なら……」
「うん、それもあるけど、その前にですね……」
「?」
どうにも様子がおかしい。
顔を赤くしてチラチラとこちらを覗き見て────
「前をもう少し隠してもらえると──」
「どこ見てんのよ変態っ!!」
「目が痛いっ!?」
「陛下の後継者?」
「あっきれた。アンタあそこで何聞いてたのよ。寝てたわけ?」
応急処置を済ませた負傷者を通路を通りかかった聖兵に任せ、ベレニケはバンビエッタの部屋で彼女の話に付き合うことに。
話の中身は、やはり例の後継者について。
いま現在最もセンセーショナルな話題であるはずの皇帝の後継者を、しかしどういうわけか彼は知らずにいた。
というのも。
「いやぁ、オレさっきまで医務室に居たから」
「はぁ?」
今回の侵攻で、滅却師側の被害は然程大きいものではなかった。
確かに幹部格である星十字騎士団のうち数名が敵に討ち取られることにはなったが、死神側の損害に比すれば微々たるもの。
だが目の前の男は医務室に居たという。
つまり。
「なに、負けたの? 騎士になったのに? ダッサ〜!」
「事実だから何も言えねぇ……」
バンビエッタの機嫌は急上昇した。
騎士に選ばれておきながらアッサリ敗北して医務室送り。自分とは違い、おそらく卍解も奪えていないだろう。
そしてそんな無様を晒したのは目の前の男だという。
その事実で、先の不機嫌が嘘であったようにバンビエッタは端正な顔をニヤニヤと歪めた。
「星十字騎士団に選ばれておいて負けるとか、アンタ終わったわね。残り短い人生、精々有効に使いなさい」
星十字騎士団に敗北は許されない。
それは見えざる帝国に属する滅却師ならば誰でも知っていることだ。
常から彼等の無茶が通るのは、その圧倒的な戦闘能力があるが故のこと。
だからこそ、敗けることは許されない。
まして、因縁の相手である死神には。
だが────
「でもさっきハッシュヴァルトさんに何も言われなかったけど……」
「はっ?」
ハッシュヴァルト。
ユーグラム・ハッシュヴァルト。
星十字騎士団最高位を預かり、皇帝の補佐も務める彼等見えざる帝国のNo.2。
皇帝の意思に最も忠実で、なにより規律や規則に厳格なあの男が、敗北した者に何も言わなかった?
何故────?
「アンタなにかしt────」
「バンビちゃーん」
声を遮って部屋へと入ってきたのは、白い装束を纏った少女四人組。
それぞれ個性的な格好の彼女たちは一見すればただの10代の若者だが、彼女達もまた歴とした星十字騎士団の一員である。
「チッ。おい、バンビ! また男連れ込んでボコしたのかよ!」
「メシ不味くなるから外でやれっていつも言ってんだろ、クソビッチ」
「そういう問題でもないと思うの……」
「あれれ、一緒にいるのって」
キャンディス・キャットニップ。
リルトット・ランパード。
ミニーニャ・マカロン。
ジゼル・ジュエル。
見た目とは裏腹に、全員が滅却師の王から聖文字を授かる一騎当千の実力者。
部屋に薄らと残留した血の臭いに愚痴を言いながらも遠慮なく部屋に押し入った彼女たちは、珍しく先客がいることに気がついた。
「コイツあれだろ、新入りの」
「あぁ、聖兵から繰り上がったってヤツか」
「もしかしてバンビちゃんのかr──」
「殺すわよジジ」
「ウソウソ、ジョーダンジョーダン」
冗談でも許さないと、部屋の主人は般若のような顔でジジことジゼルを睨みつける。
少女が一人から五人に増えたことで姦しくなり始めた。
「お、オレ医務室に行ってくるので──!!」
そのタイミングで、居心地を悪くしたのかいたたまれなくなった青年は迅速な挙動で退室。
「……なんだありゃ」
「医務室?」
「スゴく元気そうに見えたの……」
突如部屋から走り去る青年を、少女達は怪訝な顔で見送った。
新人星十字騎士団員、ベレニケ・ガブリエリ。
彼は幼馴染以外の美少女に対する耐性が、まるで無かったのだった。
青年が去った後。
以前聞きそびれた能力を聞き出そうとしていたバンビエッタは、再度聞きそびれたことよりも、ふと気になったことを口に出した。
気のせいかもしれないが。
「アイツ、あんなに黒髪多かったっけ……?」
バンビエッタの自室を出たベレニケは、訓練室の方へ足を進めていた。
頭に浮かぶのは、先の戦いのこと。
更木剣八と戦い、自分は負けた、と思う。
あの戦いの内容について、ベレニケが覚えていることは少ない。
彼と対峙し、剣を振るったこと。
実力差に手も足も出なかったこと。
だが気がつけば血塗れの剣八が、自分の足元で倒れていたこと。
どうにも記憶が曖昧で、何処からが現実なのかさえ自信がない。
だが再び彼と相見えたら、自分では勝てないことは確かだ。
瀞霊廷への第二次侵攻は、そう遠くない内に行われる。
それまでに少しでも強くならなければならない。
自分は他の星十字騎士と違い、まだ与えられた聖文字を使いこなせてもいないのだから。
そうして決意を新たに歩みを進めているところに、彼は現れた。
金の長髪、蒼い双眸。
冷徹な雰囲気を纏う、己の王に最も忠実な騎士。
「ハ、ハッシュヴァルト、さん」
「ベレニケ・ガブリエリ」
ベレニケが医務室を出てから最初に会い、しかしその時は何も言わずに過ぎていった彼が、どうしてか今になって自分から姿を見せた。
やはり敗北したことが不味かったのでは。
陛下の気が変わって「アイツやっぱ死刑☆」みたいなことになったのではと、ベレニケの小さな肝は急速に冷え始める。
だがそんなことはお構いなしとばかりに、騎士の長は言葉を続けた。
「来い。陛下がお待ちだ」
読んでいただきありがとうございます!
ベレニケ君の髪、黒い部分が増えたんだってー。なんでだろー。フシギダナー。
明日も一話投稿する予定です。(あくまで)予定です。
感想、高評価などいただけると嬉しいです! それでは!