一週間後の予定でしたが、早く出来たので投稿しました。
今回は少し短めです。
その蒼い大焔の出現は、否が応でも死神達の度肝を抜いた。
「あれは……っ!」
「莫迦なっ!!」
彼等が見間違える筈がない。
その卍解は、先日まで彼等を率いていた偉大な先達のものであり、そして先の第一次瀞霊廷侵攻にて千年ぶりに発揮されたばかりであったのだから。
尸魂界の水分がゆっくりと、ゆっくりと消えていく。
乾いていく。
渇いていく。
そんなことを引き起こしているのは間違いなく────
「残火の太刀」
銀の城に君臨する王は、その炎を目に写して静かに微笑んだ。
しかしその力を解放した本人は。
(重いっ……!!)
荒れ狂う力を、完全には御しきれずにいた。
無理もない話だ。
滅却師の王をして自らしか扱えぬと言わしめる、巨大な力。
その王から直々に授けられたとはいえ、簡単に扱いきれるような代物ではない。
「これで、出力40%か……っ!」
銀の円盤から放たれる業火の力。
メダリオンが持つ卍解を奪い、滅却師に扱えるようにする機能を用いて出力を制限させていると、王は語っていた。
それがなければ扱えないと判断したのだろう。
実際そうでなければ、ベレニケは今ごろ灰になっていたかもしれない。
枷をかけられた業火の中心で、自らが火傷を負わないようにするだけで精一杯だ。
力の制御に苦心する傍ら、脳裏に浮かぶのは「何故」という疑問と、ここに来る前の光景。
騎士団最高位のハッシュヴァルトに連れられ、ベレニケは二度目となる皇帝への謁見を果たした。
跪く若き配下に、皇帝は星の紋様が刻まれた銀の円盤を授けた。
メダリオン。
卍解を、即ち死神の力の真髄を奪うもの。
ベレニケも持ってはいるそれとは違い、その円盤には力が封じられていた。
それが残火の太刀。
最も古く、強力な、かつて数多の滅却師と皇帝すら討ち滅ぼした忌むべき力。
何故、陛下はこの卍解を自分などに下賜したのだろう。
直々に仇敵から奪った絶大な力。
若輩には過ぎた、手に余りある力。
それを何故、自分のような未熟者に渡したのか。
不甲斐ない部下を憐れんだのか。
無力な配下に向けられた慈悲なのか。
それとも。
自分などには分かるはずもないと、一度考えを切り上げ意識を制御に戻す。
力の解放により文字通り爆発的に拡がった蒼い炎が、徐々に刀身へと収束していく。
周囲は焼け焦げ、所々に小さな火が燻っている。
解放の際、勢いよく開けた蛇口から噴出する水のように炎は拡散していった。
味方を巻き込んではいないだろうか。
その心配を晴らすために確認へと行きたいところだが、その前にやらねばならないことがある。
爆炎による煙が消えていく。
熱せられた地に這いつくばっていたのは、一人の死神。
先程まで死の音と人形群を操っていたその男の意識は、とうに途切れていた。
被っていた虚の白い仮面も既に見当たらない。
焼けた肉の臭いが鼻につく。
近距離からあの爆炎を浴びたのだろう。
酷い有様だ。
死んではいないが全身に火傷を負い、とても戦える状態ではない。
こうなればあとはもう作業だ。
手早く片付けよう。
そしてマスキュリンや、他の仲間の加勢に行かなくては。
焼けた刀身を、死神の首に添える。
果たしてその様子は、死神が生者の首に鎌をかける様によく似ていた。
ゆるりと、鎌が首から離れる。
そして振り上げられた刃が振り下ろされ────
「……なんで」
────る前に、強烈な違和感が彼を襲った。
自分は今、何を……?
戦い、負けた相手を倒す。命を奪う。そこに疑念はない。覚悟していたことだ。
戦場に立った以上、個人としての好き嫌いを優先するべきではないのだから。
だが、そうではなく。
何故自分は今、何の罪悪感も抱いていないのか。
何故、こんなに冷静でいるのか。
「
汗が滲む。
更木剣八に不自然な勝ちを納めた時に感じたそれを、今は何故か感じない。
まるで、負けた者から奪うことが当たり前であるかのように。
「いや、違う」
これでいい。
自分は滅却師だ。死神の敵なのだ。
敵を討つことに、間違いなどありはしない。
この違和感は、敵が虚と違い人の形をしているからだ。
ブレるな。
奪え。
敵から。
命を。
握る柄に力を込める。
迷いは無い。
ない、が。
「ごめん……っ」
何に対する言葉かは、口にした本人にも解らなかった。
命を奪うことに対してか。
或いは他人の、それも倒れている彼にとって味方の形見といえる力で勝利したことに対してか。
或いは別の何かか。
いずれにせよ、変わらないのはただ一つ。
命を終わらせることだけ。
そして今度こそ刃を振り下ろし────
「────バンビちゃん……?」
よく知る少女の霊圧が、消えていくことを識った。
読んでいただきありがとうございます!
次回はベレニケ君がなんで残火使えたのかとか、聖文字の能力とか、そういうのを明かしていければと思っています。
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