【カオ転三次】HFOがんばる   作:えくり屋

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感想、誤字報告ありがとうございます。

この作品は女神転生シリーズの三次創作です


HFO レベル1

 

 覚醒してから3ヶ月が経過した。

 その間に神社最寄りの街に引っ越し、嫁式神仕様を詰めたり、先輩覚醒者に戦闘訓練を受けたり、嫁式神の仕様を詰めたりして過ごした。

 

 覚醒修行による幾百の死は己の弱さを理解させるには十分だった。

 ましてや覚醒で何もスキルを修得できなかったのだ。

 ついでに比較的修行で習得しやすいと言われる【破魔】や【呪殺】*1も適性が皆無で覚えられないとショタおじからのお墨付き貰っている。

 

 他の同レベルの覚醒者と比べると一歩どころではないくらいには劣っているのだ。*2

 

 ならば異界へ潜る前に、今の自分でも出来る闘い方を身に付けるべきだと思い、先達に教えを請うことにした。

 

 幸い使う余裕がなかった貯金と労基パワーで得た退職金と失業手当で3年くらい働かなくても大丈夫な蓄えはある。

 

 最初に稽古をつけてくれたのは、192cmある己よりも大柄で、とても堅気には見えない偉丈夫だった。*3

 好きに打ち込んでこいと言うのでその通りに全力で殴りかかったが、まるで巨岩を殴っているような感触で小揺るぎさえさせることもできず、それでもしばらく殴り続けていると、不意のデコピンの一撃で吹き飛ばされ、地面に転がされた。

 覚醒修行で巨大な悪魔を殴り倒したことで得た自信は木っ端微塵に砕かれた。

 「覚醒したてで碌な経験もないのに自分よりもデカい相手にビビらずに挑めるのは一種の才能だ。動きも素人にしちゃ悪かねえが基礎がなっちゃいねえ。」

 と、思い切りの良さを褒めるとともに拙さをを指摘し、拳の握り方から始まり効果的な殴り方や無手での立ち回り、それに使う機会があるのかわからないが階級別の天使の翼のもぎ方などを教えてくれた。

 

 男としてこうありたいという男らしさと頼もしさを感じさせてくれる好漢であった。

 

 この次に稽古をつけてくれたのは、やる気のなさそうな白髪天パの若い男だった。*4

 

 とてもやる気なさそうな態度の割にこちらの攻撃を木刀で的確に捌き、適宜剣の扱い方に関して、こちらにも理解できるレベルで適切なアドバイスをくれてかなり参考になった。

 特に武器で相手の攻撃を弾き、相手を崩し打ち倒す技術には目を見張るモノがあった。

 稽古のあと、一緒に食事にいったら見ていだけで健康状態が不安になるくらい甘味を食べていてちょっとヒいた。

 

 

 その次に稽古をつけてくれたのは愛らしい外見だがやけに眼力強い自称美大生の女子だった。*5

 

 「どこからでもかかってきていいよ?」

 と言われたものの、流石に女子相手に拳を振るうのは……と躊躇っていたら

 「そっちが来ないならこっちからいくね?」との言葉とともに地を滑るようなステップで一瞬で背後に回り込まれ、思い切り後頭部を殴られる。

 かろうじて意識を飛ばさなかったが、余りの衝撃に膝をつくとそのまま背中から抜き手を抉り込まれるとそのまま内臓を引き摺り出されて殺された。

 その後、「あ、ごめんね?いつもの癖で流れで抜いちゃった。」と謝罪され滅茶苦茶蘇生された。

 この経験から覚醒者や悪魔を見た目や性別で侮ったり躊躇するのは実際危険と学習した。

 あと「あなたのモツ、結構好みの味かも?」とちょっと理解できない恐怖ワードを最後に告げられたのが印象に残りすぎている。

 

 

 生きたまま背中から内臓を引きずり出される衝撃体験の翌日にお世話になったのは、色白小太りの男だった。*6

 

 前の3人に比べると強くはない……それでも自分よりは遥かに強いのだが……のだが彼の教えはとても参考になるものであった。

 これまでの対面式とは違い、異界の浅い場所での実地での講義である。

 彼はスキルこそ持っているもののどれも戦闘向きではなく、またペルソナと呼ばれる特殊能力を有してはいるもののその影響で属性攻撃にすこぶる弱いという。

 だからこそ彼のそれを補うために数多のアイテムを駆使する闘い方は、スキルを持たぬ自分にとっては衝撃的かつ革命的なものであった。

 コストこそかかる闘い方ではあるが、それでも持たざる者である自分にとっては確実な力になるであろうと確信が持てる、そういう闘い方であった。

 途中、悪魔から不意打ちを食らったがそれを食いしばって耐え反撃する姿はとても頼もしかった。

 あと彼が纏めた異界や悪魔の資料や探索マニュアルにアイテムの効果や使い方の資料はすごく読みやすく滅茶苦茶参考になった。

 

 これはあとで聞いたのだが、彼は転生者(俺たち)ではない女性を複数人囲い、パーティを組んでいるらしい。

 やはり出来る男はモテるのだなと尊敬しきりである。

 

 

 次に稽古をつけてくれたのは神社に来たときにメンタルカウンセリングをしてくれた女性(異様にエロい女)だった。*7

 

 実は彼女とは初対面ではなく、は嫁式神の仕様を詰める際に何度も相談に乗ってもらっていた。

 実を言うと、この稽古もそれの延長線上であった。

 

 その内容とは【女子との接し方】であった。

 

 但野先史は前世から筋金入りの童貞である。

 尚且つ今生では亡者(ゾンビ)などと揶揄される程度にはキモメンである。

 更には男子校卒の為、殊更女子との接点が無い半生を過ごしてきた。

 

 仕事に必要な事務的な会話をする分には問題ないが、それ以外となるとどうしようもなかった。

 故に彼女から指導を受ける運びとなった。

 

 彼女はショタおじの高弟であり、スケベ部なるものを組織し、その偉容を称え歩ックスなどと称されるスケベの化身である。

 理想のお嫁さん能力を詰め込んだ上で、童貞を優しくリードしてくれる床上手な嫁式神の製作に快く協力してくれる頼りになる存在である。

 女性慣れしてなさすぎるバキバキの童貞から上手く言葉を引き出し、仕様書を仕上げていく様は女神と言っても過言ではないだろう。

 

 だがそんな彼女だからこそ、いち早く但野の危うさに気づいたのだ。

 「あっ、コイツ童貞拗らせすぎててデロデロに甘やかしてくれるえっちで床上手な理想のお嫁さん式神が家に来ても手を出せずに何年も過ごして頭おかしくなるやつだ」と。*8

 

 これのお陰で一般的な女性との接し方と嫁式神との付き合い方を学ぶことができた(直接脳に叩き込まれた)

 

 大分刺激が強い内容で、実技の提案もされてかなり心がぐらついたが童貞は死守した。

 初めては嫁に捧ぐと決めたのだ。

 

 その後も多くの先達らに教えを請い、様々な武具の扱いや闘い方を学び、少しずつ自分に合った戦い方が見えてきた。

 

 そして初めての異界探索。

 修行用異界の最低層ということもあり然程強い悪魔は出てこない。

 強さで言うなら覚醒修行のときの悪魔の方が強いまである。

 基礎能力(ステータス)基礎能力が高い分、軽く探索して帰ってくるくらいなら楽勝だろうといろんな人から太鼓判まで押してもらえた。

 だがこれまで格上相手に正面からのガチンコでタイマンの経験ばかりなのが仇となった。

 

 新品のライダースーツの上からプロテクターをつけ、軍用ヘルメットを被り異界の門をくぐった先は戦で敗れ滅んだ中世の廃都といった様相だった。

 至るところに亡者(ゾンビ)がおり、生者を探しさまよっている。

 

 とりあえず乱戦になることを避けるため少し外れた場所で壁に向かって唸り声を上げている亡者(ゾンビ)に向かって背後からの一撃(バックスタブ)を加えんと棍棒(クラブ)*9を振り上げ駆け寄った。

 そして廃墟の間から出てきた別の亡者(ゾンビ)に横合いからショートソードで斬りつけられ怯んだ隙に別の亡者から殴られ、そのまま袋叩きにされて死んだ。

 

 神社の修行用異界は修行用と銘打ってるだけあってサポートが手厚い。

 さらに低層なら死んでもほぼ確実に入り口で復活させてもらえるのだ。

 中層までなら一定階層毎に帰還用ワープポイントや安全な休憩地点まで完備という至れり尽くせりっぷりである。

 まあ中層まで行くと魂を悪魔に囚われたりして復活できないリスクが伴うので迂闊には死ねなくなる。

 ならばリスクを伴う闘い方を学ぶなら低層にいる間しかない。

 ということで復活したら即座に再突入することにした。

 

 盾を構えながら慎重に、周囲を確認しながら進む。

 特に物陰や建物の間などは亡者(ゾンビ)が潜んでることが多いのでより注意深く進む。

 

 注意深く進み、完全に1対1の状況であると確認し戦闘を開始した途端屋根の上から飛んできた火炎瓶で全身が燃えのたうちまわってる間に物音に気づいてよってきた亡者(ゾンビ)共に寄ってたかって殴られて2度目の死となった。

 

 屋根の上からの攻撃、そういうのもあるのか。

 

 その後も上方からの攻撃への対処に苦慮し、バランスの良い山本選手が天内の空中攻撃に対応できない理由を思い知らされたり、遠距離から弓でヘッドショットされたり、敵の攻撃を回避しようとして足を踏み外して高所から落下死したりと色んなシチュで10回程死んだものの、その日の最後の挑戦では念入りに隅々まで探索しつつタイマンを心がけ、複数に襲われた場合は路地へ誘い込むことで1体ずつ地道に倒す幕末志士戦法により確実に殲滅し、無理なときは拾った攻撃用アイテムをフルに使い、回復アイテムを惜しまぬことで切り抜け、最終的に武器防具はほぼ全損し、代わりに亡者(ゾンビ)から奪ったボロボロの武器と木板の盾に粗末な革の鎧を装備していた。

 

 

 

 

 対峙するは全身鎧(フルプレートアーマー)を身に纏い、大剣を携えたこれまでの亡者(ゾンビ)とは明らかに別物の雰囲気を漂わせる羽の生えた騎士(アークエンジェル)のような悪魔だった。

 戦場は狭い路地、上方にはアーチ状の屋根があるため相手は飛行できない。

ここまでの敵は全て殲滅したが故に乱入の心配も多分無い。

 強者との1対1の状況に不思議と笑みが浮かぶ。

 撤退の選択はない。

 背中を見せた瞬間一撃で殺られる、そう確信するだけの殺気をそいつは放っていた。

 

 こちらを視認した騎士が動く。

 それに合わせて最後の攻撃アイテムである毒壺(デビルポイズン)を投げるつける。

 

 これまでの亡者とは明らかに違う、技術を感じさせる動きであった。

 毒壺(デビルポイズン)をものともせぬ勢いでの重く速い踏み込みからの刺突。

 木板では受けきれないと判断し咄嗟に盾を捨て一歩踏み込み両手持ちした手斧(ハンドアックス)で剣先を全力で叩き刺突をどうにか弾く。

 

 完全に逸しきれなかったが革鎧の肩の部分が浅く抉られただけでダメージはない、更に一歩踏み込み脇腹に斧を叩き込むも、厚い装甲に阻まれ多少衝撃を与えただけに留まった。

 

 次の瞬間、騎士の蹴りが飛んできたが、これは致命傷にならぬと判断し敢えて受けて後方に転がされることで距離を取る。

 それに対して逃さぬとばかりに踏み込んで今度は下段からの斬り上げを繰り出して来るがこれも更に後ろに下がることでどうに凌いだ。

 

 先の攻防で一撃を入れたが手応え的には覚醒修行の悪魔を素手で殴ったときよりはしっかりダメージが通ってる感触があった。

 つまりは勝てるということだ。

 

 今度はこちらから踏み込み、騎士の胴へ向かって手斧を()()()

 それに対し騎士は大剣での防御を選択した。

 腰に下げていた予備の手斧を手に取りつつ投擲を防御した騎士の大剣に全力で蹴りを入れる。

 最近一気に増加した全体重を乗せた全力の蹴りに騎士も態勢を崩した。

 そのまま大きく踏み込み剣を持つ腕に対して斧を叩き込むと流石に堪えたのか僅かに怯んだ様子を見せる。

 そこを好機と見て更に追撃を試み数発手斧を叩き込むが、力任せの薙ぎ払い (ヒートウェイブ)で弾き飛ばされ仕切り直されてしまった。

 

 騎士が攻撃をしかけ、それを手斧でどうにか弾いて捌くという攻防が幾度か続いた。

 だが先程の腕への攻撃が効いているのか、最初の刺突と斬り上げよりも心持ち弾きやすい気がする。

 ならばいけるか……!

 

 格下相手に幾度も攻撃を弾かれ、痛打もくらい、更には毒に冒されている。

 その状況に焦れたのか、騎士は再び仕切り直さんと力任せの薙ぎ払い (ヒートウェイブ)を放つ

 

 が、焦りから放ったその一撃は横の壁を擦ってしまい速度と威力を僅かに減じる。

 

 ここだ!

 

 壁により僅かに生じた隙に全力で手斧を振るい大剣を大きく弾きカチ上げると、その勢いに引っ張られ騎士が大きく態勢を崩した。

 

 そして斧をカチ上げた勢いのまま身体を回転させガラ空き腹部にフルスイングを叩き込むと胴鎧が大きくへこみ騎士の身体がくの字に折れる。

 だがまだ倒すには至らない。

 ここ確実に仕留める。

 強い殺意の元にくの字に折れた騎士をすり抜けるように……あの眼力の強い娘ほど速くはないが……ステップで背後に回り込む!

 

 騎士の背に蹴りを入れ、翼の根元に手斧を叩き込む。

 一撃では切り落とせず半ばで刃が止まる。

 そこに更に拳を叩き込み刃を押し込むことで今度こそ完全に切断が成った。

 

 あの偉丈夫曰く、天使の翼をもがれたり切断されるのは、堕天させられるのを思わせる行為であり、その存在自体に大きくダメージを与えるという。

 

 これがトドメとなり、断末魔とともに騎士の身体がMAGへと還元され、その場にはどこか神々しい力を感じる鉱石の欠片*10が落ちていた。

 大剣をドロップして欲しかったが今回は縁がなかったのだろう。

 

 

 それにしても習ってて良かった、階級別天使の翼のもぎ方。

 

 そして無事帰還ポイントに到着した。

 

 隅々まで敵を倒して回っていたせいか、異界から出たら丸1日ほど経過していた。

 見かけた悪魔は全て殲滅したおかげでアイテム用の鞄は拾ったフォルマや魔石でパンパンだ。

 これによる利益を考えると自然と笑みが浮かんだ。

 

 意気揚々と神社に帰還するとここでの生活で顔見知りになった人々が驚いたような顔でこちらを見ていた。

 

 普通、はじめての異界探索なんてものは様子見程度で1~2時間、長くても3時間程度で、それもパーティを組んだり、それでも式神と一緒に潜るときの話である。

 それが完全ソロで何度か死に戻りで蘇生されたあと丸1日戻ってこなかったせいで、悪魔に魅入られ囚われたか、悪魔に魂を食われたなどの復活不能の状態になったか、もしくは何らかの異常が低層で発生しているものだと判断され調査隊を編成するかどうかという話になっていたらしい。

 

 長期間潜る場合は事前に入り口で管理式神に申請して欲しいし、せめて式神でもアガシオンでもいいから完全ソロは推奨しないと異界の出入りを管理している式神経由でショタおじに怒られてしまった。

 

 確かに言われてみれば長期で出かけるのならばそれの申請と報連相を怠るのは社会人として失格である。

 次からはちゃんと申請してから潜りますと謝罪と反省の意を伝えると何故か周りの人達から珍獣を見るような目で見られたのが印象的だった。

 

 

 

 

 

*1
覚醒修行とは別に初期段階のハマ、ムドは習得の為のノウハウが確率してるので覚醒やレベル上昇とは別に習得する者も多いらしい

*2
ショタおじ「ステ高めだからそうでもないと思うんだけどなぁ…」

*3
霊視ニキ

*4
糖尿病予備群

*5
こんるる~♪

*6
スライムニキ

*7
ンミナミィ

*8
ちなみに但野限った話では無く、これまでにも何人もそういうやつがいたので、そういうのを見つけたら指導することにしている。ついでにスケベ部にも勧誘する。

*9
粗末な木の棍棒。

に見えるが実はガイア連合製造班がそこそこ良い材質の木材をわざわざ粗末な見た目に仕立て上げた一品。

マッカではなく一般貨幣で買えるガイア製の武器の中では安くて丈夫で使いやすい品なのだがその見た目から人気は無い。

刃によらない単純な打撃武器は苦手が少なく、盾受けを崩すこともできる。

また、空振りは大きな隙になるためしっかりと間合いをとる必要がある。

*10

それは神の原盤から剥がれた薄片であるといわれ

武器に刻むことでその武器を強化する。




アークエンジェル戦の状況は大体不死街の黒騎士

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