顔面を打ち抜いた拳の一撃に【外道フーリガン】が路上へと崩れ落ちる。
続いて横合いから振るわれた農作業用のフォークをカイトシールドで
態勢を崩したところに貫き手を喉に叩き込む。
美大生ネキなら貫手で胸や腹を貫き一撃で仕留めているだろうなどと思いつつ、動きが止まったところに追撃し仕留める。
さて、チラ見したので引き換えして帰還しようと思ったら前の階層に戻るためのポイントが見当たらなかったので進むしかなくなってしまった。
武器は失ってしまったものの幸い盾はある。
レベルが上がったお陰か無手による攻撃も普通に通用している。*1
篭手の拳骨部分に打たれた鉄板も打撃力向上にいい仕事をしている。*2
常に昼間だった廃城砦と違い、夜闇に包まれた街路を薄暗くガス燈が照らす街並みは、時折聞こえる女性の悲鳴のようなものと、
主な出現悪魔は
デカすぎて飛べなくなってるし何なんだあのカラス。
。
そんな中でマスケット銃持ちがいたのはちょっとビビった。
初遭遇時は運良く当たらなかったので装填の隙に拾った火炎瓶をぶちかますことで事なきを得た。
アギストーンと同等の威力があるってどんな油使ってるんだろうかこれ……。
ちょっとデカい
大鉈持ちとデカいレンガで殴ってくるやつがいたが
盾で受けてしっかり対処すれば恐れることはなかった。
デカいカラスはデカくなりすぎて飛べなくなった悲しい生物だった。
悲しすぎて簡易のアナライズシステム*3でも種族が凶鳥であるのはわかったが何の悪魔かわからなかった。
何だったんだこいつ……。
全体的になんか獣臭い場所である。
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「行きたくねえけどあそこしか道無いんだよなあ…」
そうボヤく但野の視線の先には、広場でキャンプファイヤーを楽しむ市民の姿、ではなく、柱に貼り付けにした人型の何かを火炙りにしている
「魔女狩りの再現か何かか…?」
大きな戦があった場所や凄惨な出来事があった場所に出来る異界は、その戦や事件を再現するような形で顕現することがあると先輩覚醒者に聞いたことがあるが、恐らく前の階層やここもそういったものを再現した異界なんだろう。
物影から様子を伺う但野に
しかしどれか1体にでも気付かれれば叫びながら総出で襲い掛かってくるだろう。
更に運が悪いことに幕末志士戦法に適した狭い路地もない。
ならばやることは1つ、機先を制して初動で出来るだけ数を減らすことである。
道中で拾った手に持って念じるだけで着火するマジカル火炎瓶を投擲する。
一投目は馬のいない馬車の上にいるマスケット持ちへ、間髪入れずに二投目をキャンプファイヤー()の側でたむろしている集団に投げ付ける。
投擲された火炎瓶は狙い違わずマスケット持ちに直撃し、二投目も3体の
瓶投げ上手男と呼んでほしい。
そのまま駆け出し、突然の襲撃に狼狽える農具を持った
この装備を作ってくれた安藤さん*4直伝のシールドアタックだ。
よく考えなくても鉄板の角で殴られたら痛いのは当たり前であるが言われなかったら防御か、面で叩く以外の用法は思いつかなかっただろう。
続いて松明を棍棒代わりにして近くにいた暴徒の頭をフルスイングで仕留める。
そこに
その後は流れで1体ずつぶん殴ってどうにかなった。
やればできるもんだ。
それにしてもようやくショタおじの言ってた「基礎ステが高い」の言葉もようやく実感出てきた気がする。
恐らく同レベルの覚醒者だとスキル無しでは切り抜けるのは難しいのだろう。*5
まあスキルあったらそんなに悩まずに蹂躙できるのだろうけど……。*6
やっぱり欲しいよなあ、スキル。
あらかた殲滅してドロップ品を回収する。
目玉は先程も大活躍した火炎瓶だ。
というかほかにろくなものがない。
他のドロップ品は怖くて絶対使いたくない謎の輸血パックとか銃がなくて使えない銃弾とか使い所がないものばかりなのだ。
何かしら武器が欲しいところだが前の階層と違って全然武器がドロップしない。
松明は先程の流れで犬に突き込んだせいで使い物にならなくしたのは失敗だった。
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薄暗い街路を進み続けると、どんどん血と獣の臭いが濃くなってくる。
階段を昇った先にいたのは2体の人とも獣ともつかぬ悪魔が2体。
「汝は人狼なりや、ってかァ!?」
右の
これをなんとか右の手甲で受け止めるが今度は牙を剥き出しにして噛みつき。
爪爪牙*7なんてこんな序盤にやってくんじゃねえよという思いを込めて思い切り腹に前蹴りを入れることで無理矢理引き剥がし噛みつきを阻止。
連撃を連撃で返され動きが止まった
初手の火炎瓶で火だるまになってた
盾+徒手格闘という変則的なスタイルだがかなり形になって来た気がする。
稽古を付けてくれた徒手格闘系の先輩たちや盾の使い方を教えてくれた安藤さん、アイテムの扱いを教えてくれたスライムニキには帰ったらお礼をしなくては。
まあちゃんと武器あったら武器使うから徒手での戦闘はこれっきりにしたいところではあるが!
そんなことを思いながら進んでいくと橋の上に出た。
だがその先は門で閉ざされており行き止まりのようだった。
仕方なく引き返そうとすると、突如、女性の金切り声のようなものが響いてきた。
この階層に入ってから時折聞こえていたものだが、これまでよりもかなり近い。
近いどころじゃなかった、声の主が門の向こうから直接跳んできたわ。
全身が長い体毛に覆われているがそこから覗く胴体は肋骨が浮き上がる程に痩せている。
対して左腕だけは大きく肥大化し分厚い筋肉に包まれており、その手を地面に着き巨体を支えていた。
アナライズの結果は
同じ種類の悪魔でも個体差があるってのは知ってますけどいくらなんでも個体差大きすぎない?
そんなこちらの感想を他所に
それをバックステップで躱し下がってきた頭部に拳の一撃。
あまり堪えた様子も見せずに左腕で薙ぎ払ってくるがそれは懐に潜り込むようにステップで回避し足に盾で攻撃を加えるが長い獣毛に阻まれ余り有効打となる感じはしない。*8
やはり狙うべきは獣毛の薄い顔面か。
懐に潜られている状況を嫌ってか
流石にこれには堪えたのか顔を抑えて蹲る
一瞬の硬質な手応えのあと、ぞぶり、となんとも言えない感触が肘まで包み込むが、気にせず視神経を掴み引きちぎる。
甲高い悲鳴をあげながら仰け反る
腕に阻まれて顔に当てられなかったがダメージの足しにはなった。
怒りの咆哮を上げながら両腕を振り回し暴れまわる
細い右腕の攻撃、盾で弾く。
肥大化した左腕の攻撃、受けきれないので懐へ踏み込んで胴体へ攻撃。
長い獣毛のせいでいまいち効いている気がしない。
だが無効化されてるわけでもないので死ぬまで殴れば死ぬだろうと根気よく殴り続けるしかない。
両腕での叩きつけをギリギリの位置で回避し低い位置に来た頭部を狙う。
そういった攻防を幾度も繰り返す。
言うのは簡単だがそれを完璧に実践し続けられる程の達人ではない。
細かいタイミングのズレや読み違いでこちらにもダメージが蓄積していく。
致命的な攻撃はまだ受けていないが長期戦ともなればどうなるかはわからない。
残り少ない魔石を砕き回復する。
互いに余裕はない、そう思いたいところだが相手のHPが見えるわけでもないので後どれくらいで倒せるかなんて見当もつかない。
不意に
これまでにない行動に判断が迷いが出る。
だが盾で受ければ即死はないだろうと盾を構えようとして両手で掴まれ持ち上げられた。
人では無いが、獣でもない。
その手は掴むことだってできる。
それを完全に失念していた。
咄嗟に首をひねり頭を丸かじりされることは避けたが右肩喰らいつかれ激痛が走った。
どうにか脱せないか身をよじる。
ギリギリと右半身に牙が食い込んでくる。
「…ッらぁ!!」
盾の分だけ拘束に隙間があった左腕を無理矢理引き抜く。
「片方だけじゃバランスが悪いよなぁ!!」
最期の力を振り絞り
だが俺自身も最早身体が動かず意識が遠退いていった。
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「相討ちかー。」
修行用異界の入り口で蘇生されて目を覚ます。
回収、蘇生用式神*9が、またコイツか……みたいな目で見ている。
一反木綿タイプなのに随分と表情豊かなことである。*10
以前に比べたら全然死んでないので大目に見て欲しいところでだが手を煩わせていることは確かなので徴収分とは別に大量にある輸血パックを渡すと、えぇ……みたいな表情をしながらも*11しっかり受け取ってくれた。
ゲンキンなやつである。
フルネームは
涼し気な名前に反してムキムキモジャヒゲのドワーフめいたおっちゃん。
神社のある富士山の近くで「
カイザーナックル相当のハードレザーガントレットが実質セスタスみたいなものなの実質武器無しでもなければ半クリモトチャレンジでもないし、素手で悪魔ぶちのめす人がいる世界なのでステ高ければそれだけ素手でも強いというアレ。
一反木綿表情感情を感じてるのは多分啓蒙が上がったから
栗本チャレンジは4モツが最高記録で未達です。
女性の金切り声みたいな咆哮は「聖職者の獣 ぼっちちゃん」で検索して出てきた動画を見るとわかりやすいかも