年内最後の投稿になると思います。
インフルエンザなども流行っていると聞きますので、体調管理には十分注意して、楽しいクリスマス&お正月をお過ごし下さいませ。
序章
7/10
・・・
美神令子は、超がつく大金持ちである。
元々この世界における
また、本人もお金が大好きな事もあって結構無茶なギャラ交渉をする事もあるが(もちろん、それも相手の懐事情を鑑みた事ではあるが。)、こうした事もあって、儲かる職業であるGSの中でも、トップクラスに稼いでいたのであった。
まぁ、それが行き過ぎた結果、世間一般的には守銭奴や金の亡者のような印象を持たれているのだが(まぁ、それも間違いではない。)、実際にはこれは本人のトラウマから来る事でもあった。
と、言うのも、彼女の家庭環境は極めて特殊だったからである。
彼女本人が言うように、元々母子家庭であると認識していたのであるが、実際には父親、公彦が存在していたのである。
しかし彼は、事故の影響によって強力な“
“
まぁ、色々あって心を通わせた公彦と令子の母、美智恵であったが、その結婚生活は非常に特殊なものになってしまったのである。
一般社会では生きていけない公彦だったが、幸いにも彼は大学で専攻していた動物行動学で多大な功績を上げ(普通なら想像もつかない生物の思考を“
一方の美智恵は、一流のGSとして令子を育てながら一般の社会で生活していた訳である。
言ってしまえば、当初から別居生活をしていたのである。
まぁ、親同士が納得していた事であるから、当人達はそれでも問題なかったのだが、子供である令子からしたら、それは到底納得の出来ないものであった。
ある程度大人になった今の令子なら、二人の選択を理解する事は出来ても、精神性の幼い子供が、何で一緒に暮らしてくれなかったのか、という疑問を抱くのは至極当然の事だったのである。
結果として、令子にとって公彦は、父親であると同時にある種他人に近い感覚だったのだ。
その他人が、信頼する母親と親しい事も輪をかけて気に食わないところだったのである。
そうした複雑な家庭環境を経て、それでも順調に成長した令子であったが、中学の時、後に“アシュタロス事件”が要因だったと判明したが、その信頼する母親を亡くした(実際には死んでおらず、公彦のもとに身を寄せていた。)事によって、彼女は頼れるものが無くなったのである。
もちろん、まだ父親である公彦は健在であったが、馬の合わない父親に、特に思春期頃の複雑な時期にそちらに頼る気もサラサラなかった訳である。
となれば、女性が一人で生きていく上で“お金”が非常に重要になっていった訳である。
こうした事もあり、もちろん本人が元々お金が好きだった事もあるが、一見異常とも呼べるほどお金に執着するようになってしまった訳であった。
まぁ、それはともかく。
そんな訳で、両親から受け継いだ霊力の高さや本人の才能、あるいは商才なんかもあって、令子は齢20歳そこそこで、多大な成功を納める資産家になっていた訳であるが、その根底にあるのは、彼女の淋しさや脆さをお金で支えていた、という裏事情も存在するのであった。
さて、そんな超がつく大金持ちの彼女であるが、実は今現在、その居住地は非常に質素なものとなっていた。
いや、質素というのはやや語弊があるが、つまりは以前のような超ゴージャスな生活をしている訳ではないのである。
具体的には、今の彼女は自身の事務所に住んでいたりする。
(ちなみに、ここには、おキヌとシロ、タマモも一緒に住んでいたりする。)
もちろん、バカほど稼いでいる割に、結構ケチなところがある事も否定しないが、GS本編での彼女は、一般市民ではとても手が出ない、所謂“億ション”に住んでいた、ハズである。
しかしここで、“アシュタロス事件”の影響が尾を引いていたのであった。
実は彼女、過去に事務所を崩壊させている。
もちろん、これは彼女の責任ではなく、直接的な要因は敵対していた魔族の仕業であったが、それでもそんな事を仕出かした人物が自分の所有するビルに入居するなど、オーナー側からしたらたまったものではない。
結果として、どこも彼女に貸してくれる者はなく、一時は事務所が見付からない、という事態に陥っていた。
もっともこれは、今現在の事務所が見付かった事で無事に彼女達は仕事を再開にこぎ着けたのであるが、そうした悪い噂が完全になくなる訳ではないのである。
そこへ来て、“アシュタロス事件”を経て、今度は彼女自身の自宅を完全崩壊させるハメとなってしまったのである。
もちろんこれも、当然ながら彼女自身の責任ではないのであるが、本人も述べていた通り、前の事務所に続いて自宅も崩壊させては、誰も彼女に土地も家も売ってくれなくなった、という訳である。
もっとも、ここら辺は神魔族、各国政府や世界GS協会の思惑なんかもあって、ドクターカオスらの協力もあり、“アシュタロス事件”そのものが隠蔽された影響もあって、世間的にはそんな事件はなかった事にされた訳であるが、あくまで操作されたのは人々の記憶と記録だけであり、実際に起こった事、例えば、アシュタロスの手によって復活した魔族などの襲撃で命を落とした人々や壊れた建物などが元に戻る訳ではない。
つまり、原因は不明ながらも、どうやらあの悪名高い美神令子が、今度は自宅を全壊させた、らしい、という話だけが残った訳である。
かくして、本人が述べていた通り、金ならあるにも関わらず、誰も彼女に土地も家も売ってくれなくなる、つまり、住む場所がなくなってしまった、という訳であった。
まぁ、幸いな事に、事務所自体は無事であったし、元々おキヌらも住み込んでいた事もあって、生活する環境は整っていたのでホームレスになる事態は避けられたのであるが、それなりに広い事務所とは言えど、女性(?)4人が共同生活する、という状況に陥ってしまった訳であった。
とは言えど、彼女の性質はともかくとして、その根底に根ざしたトラウマから言えば、騒がしくも人の温もりを感じる環境に身を置く事は、そんなに悪くない話でもあったのであるが。
まぁ、それもともかく。
さて、そうした訳で、今は一部改築などして(元々それなりに古い建物だった事もあるし、妹のひのめの能力に対処する為にも防火、耐火設備が必須となった為である。そのついでに、居住区の拡張、具体的には事務所の屋上に豪華なペントハウスを建て、令子の自宅代わりとしたのであった。)令子、おキヌ、シロ、タマモがお互いのプライベートを守りながらも共同生活を送っていた訳であるがーーー。
・・・
女帝side
「・・・何だが今日は静かねぇ〜・・・。」
私がペントハウスで過ごしながらポツリと呟くと、建物そのものから“声”が聞こえてきた。
“美神所長、お忘れですか?本日は、おキヌさんが友人宅へとお泊りに、シロさんとタマモさんは、西条氏の要請でオカルトGメンに出張中ですよ?それもあって、本日は仕事をいれられなかったのではないですか。”
「人工幽霊壱号。そうだったわね・・・。」
人工幽霊の言葉に、私は今の状況を再認識していた。
最近は、おキヌちゃん、シロにタマモ、それに横島くんや鳴上くん、ママにひのめと、誰かどうかいた事で騒がしかったのだが、今日は珍しく私一人なのである。
以前なら、仕事はともかく、プライベートは一人でいる事が普通だったのだが、変われば変わるものである。
まぁ私自身、それを悪くない、と思っていたのだが、たまには一人の時間も必要よね。
「んじゃま、久々にシャンパンでも開けようかしら?確か、良いお酒が手に入ったのよねぇ〜。」
“余暇をどう過ごされるかはご自由ですが、あまり飲みすぎないで下さいよ?明日は普通に仕事の予定があるのですから。”
「うっさいわねぇ〜。アンタは私のママか、っつーの。」
“これは失礼。黙ります。”
「ふんっ!」
そんな、一般人からしたら奇妙な会話を交わしつつ、私は一人の時間を楽しむ事とするのだったーーー。
・・・
それからしばらくして、手早くつまめるものを作って、どこぞのテレビ局のバラエティを流しながら、一人シャンパンを嗜む私。
けれど、やっぱりつまらない、と感じるのは致し方ない事であろうか?
と、
「あらあら、とってもお高そうなお酒でございますわね。一つ、
「いやよ。これ、結構したんだからね。」
「まぁ、貴女様は結構いけずなんですわね。羽振りが良さそうに思えますのに。」
「それとこれとは話が別よ。私は他人に奢ってやる趣味はないんだから。飲みたかったら自分で買いなさい。」
「確かに、それも一理ありますわね。」
突如聞こえた声に私はそう反応した。
・・・何の違和感も感じなかった。
が、流石に変だと私の霊感が囁く。
そして、一拍どころかかなり遅れて、私は臨戦態勢に入りながら叫んだ。
「誰よ、アンタッ!?」
「・・・はい?」
明らかにおかしかった。
先程、人工幽霊壱号との会話でも、今日の私は一人だったハズだ。
しかも、来客の予定もない。
なのに目の前の人物は、至極当然のようにここにいて、しかも私が何の違和感も警戒感も抱かなかったのである。
ってか、その人工幽霊壱号すら、全く警告を発さなかったのにも今更ながらに私は気付いていた。
目の前の人物は、きょとんとした表情を浮かべている。
・・・見た目は、まぁ、普通ではない格好だが(ってか、全身真っ青な制服ってどこに売ってんのかしら?)人間の範疇に入る姿形だ。
しかし、その内に内包している霊力は凄まじかった。
とは言えど、その人物からは敵対心が感じられない。
もし、彼女が敵であったのなら、とっくに私は攻撃を受けているハズである。
のんびりした口調で、こちらも一拍どころか、かなり間を明けてその口を開いた。
「ああ、そういえば、
「・・・
「似た様なものでございますが、それらとは似て非なるものでございます。それに、
「んじゃ、何の用があってここに来たっての?」
エリザベスと名乗ったエレベーターガール風の真っ青な衣装を身にまとった女と対峙しながら、私は油断なく会話を続けていた。
「
「私の、保護・・・?」
以前、ワルキューレに初めて会った時も、魔族が私の護衛についた事があった。
今回もそれに似たような事かしら・・・?
けど、例の事件の後、神魔族は人間界にあまり干渉しないようになったハズ・・・。
それとも、一部の過激派がまた何かやらかそうって事かしら?
「・・・詳しく聞かせてもらっても?」
「ええ、もちろんでございます。・・・ただ、残念ですがここでは何ですから、一旦貴女様を
「なっ・・・!?」
やはり会話はブラフだったかっ・・・!?
「申し訳ございません。それも含めてご説明させていただきますので、しばらくご容赦下さいませ。」
エリザベスが軽く手を振ると、私の意識は急速に薄れていったのであった。
私は臨戦態勢だったのに、この女、やはり、かなり、デキ、るーーー。
・・・
7/11
番長side
「だからよぉ〜、夏休みを利用して、お前も一緒に運転免許取っちまおうぜ。合宿とかなら、結構早く取れるみてぇだし。」
「いや、そうは言ってもだな。俺はこっちの世界の人間じゃないんだ。仮に運転免許を取得しても、あまり意味はないんじゃないか?」
「バッカおめー、そこら辺はイザナギさまが何とかしてくれんだろ?そもそもそれを言ったら、お前がこっちの世界で学校に通ってるのも無意味になっちまうだろ。」
「あっ・・・。」
・・・そういえばそうか。
“世界”としては繋がっている訳ではないので、普通なら俺が“こっちの世界”で高校に通学していても、“元の世界”では単位が取れていない=卒業資格を得られない事となってしまう。
しかし、そこはイザナギの神様パワーで何とかする、って話だったな。
まぁ正直、公文書だか私文書だかは分からないが、それの偽造と大差ない様でもあるが、イザナギ曰く“嘘じゃないから”という事で話はついていた。
流石に俺も、思うところはあるまでも、親の手前、留年、という事態は避けたいので、それに渋々同意した訳である。
そしてそれと同様に、仮にこちらの世界で運転免許を取得しても、“元の世界”で取得した事にはならないので無意味だ、と言ったのであるが、学校の話と同様にそれはイザナギに何とかしてもらえ、と言う事か。
「俺は高校卒業したらすぐに就職しちまうからチャンスは今しかねぇのよ。ま、仕事しながら取る人もいるんだろうが、結構大変って聞くしな。それに、職業柄、早めに持っておいて損はねぇ。霊障ってのは、それこそどこで起こるか分かったモンじゃねぇしな。」
「だったら俺は関係ないんじゃないのか?俺の進路は大学進学な訳だから、お前と違ってまだまだチャンスはあるだろう?」
「いやいや、ところがそうでもねぇみてぇだぞ?俺も、大学生って暇なんだろうなぁ〜、なんてイメージを持っていたが、聞いた話じゃ結構忙しいってよ。少なくとも、今の俺らよりかはな。特にお前は、民俗学を専攻するつもりなんだろ?聞いた話だと、民俗学の基本はフィールドワークが中心らしい。そもそも数学とかそっち方面とは違って、地域に根ざした学問だからなぁ〜。座学で教える事にも限界があんだろ。どっちにしても、慣れるまでにはそれなりに時間がかかるだろうし、ま、お前の場合はすぐに順応しそうだが、それなりに時間がある内にやっといて損はねぇ〜と思うぞ?」
「ふむ・・・。」
一理あるな。
まぁ、本来ならば受験生である俺が、大事な夏休みにそんな事をやってる余裕はないとは思うんだが、イザナギの発言ではすでに俺は大学合格ラインの学力を保持しているそうだ。
個人的にも、それなりに勉強しているしな。
だからここで横島に付き合っても良いような気になっていたが、しかし若干違和感もあった。
短いながらもそれなりに濃い付き合いをしてきたからか、俺はすでに横島の人となりを何となく察している。
そんな横島が、ただの親切心からこんな事を言うようなヤツじゃない、って事もな。
「・・・で、何が狙いだ?」
「うぐっ・・・!?な、何が?」
俺がそう切り返すと、分かりやすく横島は動揺する。
「お前が悪いヤツじゃない事は分かってるが、だからと言ってそこまで熱心に人を誘うようなタマでもないだろう。お前が一人じゃ不安だ、っていう事もないだろうし、何か狙いがあるんじゃないのか?」
「っ・・・。」
「当ててやろうか?教習所の受付か先生に、美人がいるんじゃないのか!?」
「な、何故それをっ!!!???」
嘘がつけんヤツだな・・・。
多分、コイツの言うように普通に自分だけ免許を取る為に教習所に申し込みに行ったんだろうが、たまたまそこに美人がいた。
そして、何らかの営業(お友達も誘って下さいねぇ〜、的な感じ)を真に受けて、良いところを見せようとこうして俺を誘っている、ってところだろう。
この分では、もしかしたら他の人達にも声をかけているかもな。
「お前、エスパーかっ!?」
「お前が分かりやすいだけだよ。」
俺がそう推論を述べると、横島は驚愕の表情を浮かべていた。
「チッ・・・、ピートとタイガーはこの手で上手く行ったんだがな・・・。(ボソッ)」
何やら横島のひとりごとが聞こえたが、おそらくその二人は俺よりもコイツとの付き合いは長いので、気付いていながらもあえて何も言わなかったに違いない。
ま、実際コイツの営業トークは的外れでもないしな。
ピートとタイガーは、やはり高校卒業後は就職する組だから、今の内に免許を取得する事はメリットこそあれデメリットはない訳だし。
「あれ?雪之丞は誘わなかったのか?」
「アイツはもう免許持ってんだわ。どうやったか謎だが、ま、元々裏稼業だったヤツだからなぁ〜。」
「ほぉ〜。」
サラッと恐ろしい事を言われた気もするが、まぁ、美神さん関連の人々に今更法令云々の話をしても無駄だしな。
・・・俺も、結構毒されているようにも思えるが。
「ま、色々言ったが、俺も免許を取る事にするよ。」
「なぬっ!?ホントかっ!?」
「あ、ああ。実際、免許は取っておいて無駄にはならないだろうし、お金ならあるしな。」
「よっしゃ、お前はやっぱいいヤツだっ!」
交渉決裂か、と思っていた横島に俺はそう返答をした。
確かに俺は、コイツらとは違って進学組だが、時間がある時に免許を取っておいて損はないだろう、という判断である。
幸い、“マヨナカテレビ”やひのめちゃんのベビーシッターのバイトで、自力で教習所に通える程度の持ち合わせなら余裕である訳だしな。
小躍りする横島を尻目に、俺達は美神さんの事務所に向かうのであったーーー。
・・・
「言っておくが、吉田さんは俺が先に目をつけたんだからな?お前は手を出すんじゃねぇ〜ぞ?」
「いや、俺、一応彼女いるんだけど。」
すっかり開き直った横島にそうツッコミを入れつつ、もはや通い慣れた事務所のドアを開いた。
と、
「美神さんっ!しっかりして美神さんっ!!」
「令子っ!目を開けなさい、令子っ!」
そこには、そんな叫び声を上げるおキヌさんと美智恵さんの姿があった。
ーーーどうやら、とんでもない事態が進行しているようであるーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら本作共々チェックして頂けると非常に嬉しく思います。