短い…
・・・
「総理っ!“OP党”の言っている事は事実なんですかっ!?」
「そ、その件につきましては、こちらでも情報を精査している段階でして・・・。」
「それって、暗に認めているのと同じでは?事実ではないのならば、真っ向から否定すれば良いだけの話ですよね?」
「こ、コメントは差し控えさせて貰います。」
「国のトップが関わっていない筈がありませんよね?それに、あの会見が公開されてから、無視できない数の人々が“記憶”を思い出している、という話もありますよ?これって、国家ぐるみの犯罪行為ではありませんかっ!?」
「わ、
「無駄だっつ〜の。コイツは当時、総理じゃなかったんだ。何も知らねぇ〜よ。」
「日本じゃトップがコロコロと変わるのは珍しくないからなぁ〜。」
ニュースに映し出されているのは、まるで鬼の首でも取ったかのような勢いでこぞって現職の総理大臣を責め立てるメディアの姿であった。
それを、横島と鳴上は冷めたような顔をしながら、そんな感想をもらしていた。
“普通の人々に政治を取り戻す党”、略して“普通の人々”や“OP党”と呼ばれる新政党の登場から、事態は急激に変化していた。
世界各国で今のようなやり取りが繰り広げられ、お茶の間ではそれ関連のニュースで溢れかえっていた。
また、世界GS協会への抗議活動も盛んに行われるようになっているし、デモ隊が治安当局と衝突するケースも増加していたのである。
また、これは一部の少数派かもしれないが、“神魔”が実在する事を受けて、悪魔崇拝が活発になった、という事象も表れ始めている。
ここら辺は、ある種世紀末のような状況になってしまった事で、それらを悲観した人々がカルト的な考え方に毒される、という事の表れかもしれない。
そして、その中でもっとも無視できない噂が、例のアプリが急速に人々の間で広がっている、という事であった。
「西条と隊長は?」
「ダメだな。対応に追われているのだろう。連絡もつかない状況だ。」
「拙者達もお声がかからんので暇でござるなぁ〜。」
「美神さんもあいかわらず目覚めないので、仕事も実質的に開店休業状態ですからね。まぁ、それでなくともこんな状況では仕事どころではないのかもしれませんが。」
「う〜ん・・・。」
美智恵は、GSであると共にオカルトGメン日本支部の実質的なトップであり、なおかつ“アシュタロス事件”では現場の指揮を務めている。
当然ながらそんな人物が、現在の状況で傍観する訳もなく(まぁ、世間がそれを認めない事もあるが)それらの対応に奔走している。
西条も、美智恵の弟子、かつ部下、かつGSの一人にしてオカルトGメンとして、彼女と行動を共にしていた。
それもあって、ほぼフルタイムでひのめの面倒を横島達で見ている状況であった。
まぁ、おキヌの言う通り、令子が昏睡状態である事もあるし、世間が騒がしい事もあって実質的に事務所は開店休業状態なので、それでも問題がない、というある種皮肉めいた結果となっていたのであるが。
「・・・しかし、彼らの狙いは何なんだろうか?単純に政党として躍進する事だけを目指しているのなら、ここまで大騒動を引き起こす必要はないと思うが・・・」
「さぁな。それを判断するにはとにかく情報が少なすぎる。世間の不安を煽って、現政権への不満を噴出させる事で自分達の評価を上げる事が狙いなのか、はたまたもっと別の計画の為の下準備に過ぎないのか・・・。ま、ただの高校生の俺らには知りようもない事なんだがな。」
「・・・・・・・・・」
以前にも言及した通り、横島も鳴上も、当然ながら突出した才能や能力を持っている。
だが、あくまでそれは個人的なスキルであって、例えば独自の情報網を持っていて情報を逐一知る事ができるとか、豊富な人脈によって情報の取得や影響を与える事ができる、などの所謂“政治的な力”は皆無なのである。
まぁ、世間一般的に見て、高校生がそんな力を持つ筈もないのでそれが当然なのであるが、それ故にこうした事態では彼らの技能は役に立たないのであった。
(もっとも、“豊富な人脈”という意味では、彼らの知り合いには大財閥規模の六道家やら、政府機関とも繋がりを持つ美智恵や西条など、実際にはとんでもない面子が揃っていたりするのであるが、先程も述べた通り、彼らは彼らで対応に奔走しているので、横島や鳴上に情報が降りてくる事もなかったのであった。)
「嫌な感じがするな・・・。」
「それについては同感だぜ。しかし、全く情報がないとなると、俺らにできる事なんてなぁ〜・・・」
横島や鳴上は、いや、この場にいる全員が、歯がゆい思いをしていた。
単純な戦闘力。
それだけで、世の中を渡っていく事はできないのである。
奇しくも今回の件でそれを思い知らされたのであるが、しかしそれでも、彼らの持つ力が、いや、繋がってきた“絆”が、ここへ来て意味を持ってきたのであった。
“皆さん、お話中失礼します。”
突如として事務所自体が話し掛けて来たのである。
鳴上も当初は、この事について驚いたものであったが、それは事務所自体、いやこの屋敷自体に取り憑いている(?)、人工幽霊壱号の声であった。
当然、それは彼らにとってはすでに日常的な事なので、今更驚く事もない。
「どしたん、人工幽霊壱号?」
“いえ、それが、先程からこちらを窺っている人物がいるのですが・・・”
「何っ・・・!?」
人工幽霊壱号の言葉に、横島と鳴上はそっと窓の外を窺った。
「「あっ・・・!」」
しかし、それは予想外の人物の来訪だったのであるーーー。
・・・
「いやぁ〜、助かったわい。このまま気付かれなかったらどうしようかと思ったわい。」
「いや、別に堂々と入りゃいいじゃねぇ〜か。じーさんとマリアなら、人工幽霊壱号も問題なく通すだろうに。」
それは、工事などの作業員の姿に扮したドクター・カオスとマリアの二人組だった。
「そういうワケにもいかん。お主らも、今、世間で起こってる事は知っていよう?」
「・・・それって、例の政党の話ですか?」
「うむ。ワシはその件の当事者の一人じゃ。もちろん、ワシが主導したワケではないが、少なくとも“記憶の改ざん”に手を貸した事は事実じゃからな。変な奴らに付け狙われんとも限らん。」
「じーさん、つーかマリアなら、そんな奴ら返り討ちだろ?」
「そりゃそうだが、騒ぎを大きくするのは得策ではないわい。それ故に、こんな格好をしてラボから抜け出してきたんじゃ。それに、工事業者に扮しておれば、事務所にやって来ても不自然ではないじゃろう?」
「・・・ああ、俺らにも気を使った、って事か。」
「と、言うよりも、美神さんに、だろうけどな。(ボソボソ)」
幸いな事に、“アシュタロス事件”の記録や映像がばら撒かれたとは言っても、あくまで一般的な事までである。
それこそ、魔神アシュタロスと実際に対峙したのが美神や横島であった、という記録や映像はトップシークレット中のトップシークレットであり、そもそもそんな記録も映像も残されていない事もあり、当事者のわりには事務所の周辺は静かなものであった。
(まぁ、美神令子が暗殺されそうになった事は世間にも知れ渡っているので、本来はもっとマスコミや野次馬がやって来ていても不思議な話ではないのであるが、以前にも言及した通り、美神令子は悪名の方も高いので、よっぽどの命知らずでもない限り凸って来る勇気もないのかもしれないが。)
そこへ来て、騒ぎの中心人物であるカオスが訪ねて来たとあれば、静かだった事務所周辺も騒がしくなってしまいかねない。
それ故に、こうして一芝居打った、というワケなのだろう。
幸いな事に、これが意外と功を奏した格好である。
以前にも言及したが、今現在のドクター・カオスは、横島の“
具体的に言えば、本編だと70代くらいの見た目だったのに対して、今は50代くらいか。
基本的にカオスがカオスである事には変わりないが、年齢の違いによる見た目の変化は結構大きく、よっぽど親しい者でない限り、彼をドクター・カオスである、と特定するのは難しい。(というか、本来若返る事などあり得ないからである。まぁ、カオスの頭脳ならばそうした発明品を作れてもおかしくはないが。)
それ加え、カオスもマリアも工事業者の様な格好であるから、事務所側が迎え入れれば“何かの工事か点検かな?”と思わせる事ができるワケである。
こうした事もあり、重要人物であるハズのカオス(とマリア)がラボを無事に脱出し、特に追手に追われる事もなく無事に美神の事務所に到達する事ができたワケであった。
「どうだ、鳴上?」
「ヒミコによると、特に不審な人物は存在しないな。」
念の為に鳴上は、ヒミコによる索敵を使ったが、結果は今の通りだ。
シロとタマモの嗅覚も、特に問題を感知しなかった。
二人は、ホッと息をついた。
「カッカッカ、心配性じゃのぅ、小僧共っ!」
「じーさんがノーテンキ過ぎんだよっ!それでなくとも、かなりヤバい事になってるっつーのにっ!」
「ふむ・・・。それはもしや、美神令子が昏睡状態にある事かの?」
「っ!?知ってたのかっ!?」
「カッカッカッ!ワシを誰じゃと思っとるっ!泣く子も黙る、“ヨーロッパの魔王”じゃぞっ!」
「情報ノ・重要性ナド・今更議論スルマデモナイ事デショウ。ソレ故二・ドクター・カオスハ・私二・新タナル機能ヲ追加シマシタ。」
「おう。お主の“
「・・・マリアはどこを目指してるんだ?」
「カッカッカ、無論、家事から戦争まで、何でもこざれのスーパー・アンドロイドじゃっ!・・・こやつがおらんと、ワシ、生活できんからのぅ。」
「「「「「・・・」」」」」
カオスの最後の呟きに、横島達は呆れたような表情をした。
実際、カオスは超がつく天才だが、もちろん弱点もある。
それは、生活能力が皆無な事である。
少なくともマリアがいない事には、私室だろうと
一応、カオスもそれは自覚しているのか、私生活においてはマリアに頼りっきりなのである。
まるで、駄目なじーさんとできた孫娘のような関係なのであった。
まぁ、それはともかく。
「ま、ジョーダンはともかく、ワシは昔から敵が多いからのぅ。もちろん今回の件に関しては、各国政府や世界GS協会、神魔族から要請を受けている、つまり、そうした者達の監視兼ボディガードがついとるワケじゃが、最悪の場合、それらが突破される可能性もあった。それ故に、いざと言う時の為にマリアの機能をパワーアップしとったワケじゃよ。」
「ま、じーさんほどの天才じゃーな。抹殺したい奴も、逆に取り込みたい奴も大勢いるだろ。実際、昔もそんな感じだったしな。」
「ま、そういう事じゃ。」
横島と鳴上ももちろんそうだが、事大局的なものの見方をするとしたら、カオスの方が重要度は高い。
先程も述べた通り、横島と鳴上は個人としての能力や才能はとんでもないが、あくまで“個人”に過ぎない。
もちろん、それでも所謂軍事的な“パワーバランス”が崩れる可能性があるほどの力を持ってはいるが、それでも“個人”である以上、何とかする
しかしカオスの場合、その頭脳から繰り出される技術が厄介なのである。
技術とは、すなわち個人の技能に左右されない力の事である。
家電などを想像すれば分かりやすいが、スイッチ一つで、ある程度同じ結果を受け取る事ができるワケである。
この、“誰でも同じような結果を受け取る事ができる”、というのがキモである。
仮にとてつもなく便利な発明品が開発され、それが普及すれば、全体としての力を底上げする事が可能なワケである。
実際、先端技術や軍事技術では、この技術競争が非常に重要である。
他より優れた技術力を持てば、それだけ他者に対して優位を取れるからである。
それらを背景に、政治的、軍事的に交渉を有利に進めたり、圧力を加える事も可能だ。
そしてカオスの頭脳は、それを可能にするだけの可能性を秘めている。
当然ながらそれほどの人物は、各方面にとっても見過ごせないほど重要人物となるだろう。
(実際、アシュタロスもその個人としての実力は当然の事として、他を圧倒するほどの技術力が厄介であった。
超兵鬼“逆天号”に“宇宙のタマゴ”、“
カオス自身もその事は自覚していたのだ。
まぁ、昔からその頭脳故に、迫害されたり、逆に取り込もうとしたりされてきた経験があるからであろうが。
まぁ、それはともかく。
「ま、当然ワシもこのままやられっぱなしでおるつもりはない。誰だかは知らんが、ワシをハメようとした者達には、キッチリ利子をつけてお返ししてやるつもりじゃ。お主らも協力せい。」
「・・・何か策があるのか?」
「無論じゃ。ワシの頭脳と技術力。マリアに施した情報収集能力に、お主らの能力が合わされば、もはや不可能はないっ!!」
「おおっ!!!」
何もできずにいた横島と鳴上にとって、それは明るい兆しであった。
たまにヘマもするが、今のカオスは非常に頼りになる存在だ。
その頭脳、技術力、情報収集能力。
更には、政治的な駆け引きや交渉力もある。
令子が不在である中で、更には他の大人達が身動きの取れない中で、ブレーンや参謀としてはこれ以上ないほどの人材であると言えるだろう。
「クックック。さてはて、面白い事になってきおったわいっ!!!」
「「・・・」」
いや、カオスはもしかしたらトラブルを面白がっているだけかもしれない。
ウキウキとしたカオスを見て、横島と鳴上だけでなく、他の面々も逆に不安に思ったのはご愛嬌であるーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると幸いでございます。