続きです。
本作の神様達は、結構フリーダムです(笑)。
〜〜〜
ここで、話は少し遡る。
イザナギとマリーが正常に戻った“虚ろの森”で邂逅した後、彼らは早速行動を開始したのである。
と、言っても、イザナギの当初の予定では、マリーを“家政婦”、今風に言うと“ホームヘルパー”として堂島家に送り込む事だった。
堂島遼太郎は、菜々子の事でその事をチラッと考えていたし、天城屋旅館の一室で、たまたまそういうドラマ番組をイザナギが見た事もあった。
堂島家にマリーを配置しておけば、少なくとも菜々子の安全は保障される。
それは、今は
まぁ、現実的には細かいあれこれはあるのだが、そこはそれ、イザナギやマリーの神パワーで乗り切る事も可能な訳で、そういう方向でイザナギは話を進めようとした訳であった。
ところが、そこでマリーが何を思ったのかあらぬ方向へ突っ走っていく事となったのである。
マリー曰く、“悠は私の恋人なのだから、彼の家族のもとに滞在するのに仕事を装う必要はない”、との事で、“どうせなら、婚約者として堂島家に滞在する事にしよう”、と言い出したのである。
それには流石のイザナギも当初は難色を示していたのであるが、最終的には、“ま、いっか”、でその案にGOを出してしまったのであった。
なんだかんだ言って、この神も結構いい加減である。
こうして、鳴上悠の人生の一大事が、本人のいないところで決まってしまった訳であるがーーー。
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道化師side
「どういう事か説明して欲しいんだが・・・!?」
「あ、いや、違うんだよ、悠くん。ボクも当初は反対したんだけどね?マリーがどうしてもって聞かないモンだからさー。」
「人のせいにするんじゃない!あの後菜々子にも連絡したんだが、全く違和感がなさそうだったし、大方お前もノリノリにやったんじゃないのかっ!?」
「あ、いや、そのぉ〜。アハハハハ〜。」
俺は今、腕を組んで仁王立ちしている鳴上と、その前で大きな身体を縮こませて正座しているイザナギさまを目撃していた。
ま、鳴上のヤツの怒りも分からんではないがな。
色々な事に巻き込まれた挙げ句、いつの間にか婚約者ができましたでは、流石に納得がいかんだろーし。
っつか、その怒りによって鳴上のヤツ、いつの間にか霊力の出力が上がっていたりする。
今現在、イザナギさまは“
当人曰く、“ペルソナ召喚の応用”、との事だったが、ま、イザナギさまが普通の存在でない事や、あくまで鳴上のペルソナである事を考慮しても、他者をテレポートさせるのは中々至難の業なんだがなぁ〜。
ま、二人とも、しれっと凄い事をしておいて、内容がバカらしいのは、鳴上のヤツもこっちに染まりつつある証拠かもしれんが。
「ま、まあまあ鳴上さん。イザナギさまも良かれと思ってやった事ですし・・・。」
「そうじゃぞ、鳴上。お主は、向こうの世界では“世界”を救った英雄じゃろう?今更嫁の一人や二人、なんて事はないではないか。これでもワシも、若い頃はブイブイ言わせてたもんじゃぞ?」
「小竜姫さまと老師は黙っていて下さいっ!それに、俺はあくまで人間なんで、神様の尺度で話をしないで貰えませんかっ!?」
「す、すいません!」
「・・・すまん。」
それを見かねた小竜姫さまと老師が間を取り持とうとするが、完全に火に油を注ぐ感じになっていた。
ま、神様なんかは、一夫多妻とか早婚とかは結構普通だったりするが、鳴上の言う通り、俺らはあくまで人間だからなー。
「ナルカミ、怖いでちゅ・・・。」
「ま、本人の知らんところで婚約者ができとったら、それも当然の反応なんだがなー。」
「しかし、このままでは埒が明かないでちゅよ?」
「ま、そりゃそーだ。」
怒っとっても過ぎた事は変わらんからなー。
時には諦める事も大事である。
と、言っても、流石にそれを本人に伝えるのは酷な話なので、俺は現実的な話で鳴上を諭す事とした。
・・・ま、それを人は問題の先送りとも言うかもしれんが。
「まあまあ落ち着けよ、鳴上。婚約者云々はこの際置いておくとしても、俺らはまだ17だから法律的には結婚できんのだ。だから、とりあえず様子をみてみればどうだ?イザナギさまの話じゃ、確かにその菜々子ちゃんの安全の上では有効だろうし、いざとなりゃ、イザナギさま達の神パワーで何とかできんだろーしよ。」
「そ、そうそう、悠くん。あくまで堂島家に居る為の理由だからっ!ねっ!!それに、菜々子くんもマリーには懐いている。遼太郎くんの仕事の事も考慮すると、“ホームヘルパー”っていう
「そ、そうか、菜々子のっ・・・!」
「ちなみに、これは記念に取っておいた写真なんだけど・・・。」
「こ、これはっ・・・!!!」
おもむろにイザナギさまが取り出した写真には、7、8歳の可愛らしい女の子と、ショートヘアの美少女が笑顔で写り込んでいた。
こっちの小さな女の子が菜々子ちゃんか・・・。
って事は、こっちのメチャクチャな美人がマリーちゃん、ってコトォっ!?
「凄く、いい笑顔だ・・・。そうか、菜々子の幸せの為、だもんな・・・。」
「そ、そうそうっ!それにさ、想像してごらんよ。さっき横島くんが言ってた通り、キミはまだ17だから今すぐには無理だとは思うけど、後数年してさ、いっぱしの社会人になったとしてさ、そしたら、家に帰ればこんな素敵なお嫁さんが、こんな素敵な妹さんが居る生活、ってヤツをさ。」
「っ!!!???」
「完全に落としに来てますねー。」
「ま、悪いこっちゃないからワシはこれ以上口出しせんがの。それに、鳴上のヤツ、案外怒ると怖いんじゃもん。」
「ろ、老師・・・。」
「わぁ〜、私と同じぐらいの娘でちゅよっ!カワイイでちゅねー。お友達になりたいでちゅっ!」
「・・・・・・・・・。」
「ん?どうしたんでちゅか、ヨコシマ?」
「・・・どうだい?」
「ま、まぁ、悪くは、ない、かな?」
「まあまたぁ〜!キミも満更じゃないでしょ〜?」
「う、うるさいぞ!・・・ま、しかし、そ、そういう事なら、ま、今回は許してやっても・・・。」
「ゆ"、ゆ"る"さ"ん"っ・・・!!!」
俺は、血の涙を流しながらそう叫んだ。
「「「「「へっ・・・?」」」」」
「鳴上ぃ〜!お前の事はいいヤツだと思っとったが、それもこれまでじゃっ!!こぉ〜んな美人の嫁がおって、何が不満なんじゃーーー!!!贅沢言いおってからにぃーーー!!!」
「ど、どうしたんだ、横島?」
「やはり、イケメンは敵じゃぁーーー!!!喰らえ、正義の鉄槌ィィィーーー!!!」
「ぐ、ぐはぁあああーーー!!!」
嫉妬の炎に焼かれた俺は、どこからともなく取り出した藁人形を打ち付けていたのだ。
「こ、こら、やめさない、横島さんっ!!!」
「だ、大丈夫でちゅか、ナルカミ!?」
「・・・ま、横島には刺激が強すぎたかもしれんのぅ〜。」
「横島くんも、モテそうなモンだけどねぇ〜。」
「あやつの場合は、朴念仁+異常に自己評価が低くてのぅ〜。自分が密かにモテとる事を知らんのじゃよ。ま、単純に羨ましいのもあるんじゃろうがのぅ。」
「なるほどねぇ〜。」
・・・
番長side
「・・・すまん、少々取り乱した。」
「い、いや、こちらこそ、何かすまなかった。」
小竜姫さまが止めてくれたお陰で、俺は謎の胸の痛みから開放されていた。
ってか、一度経験している事とは言え、横島のアレはどういう原理で効いているのだろうか?
まぁ、横島が盛大に暴走してくれた事により、逆に俺は冷静に戻っていた。
マリーとは間違いなく恋仲になっているし、少し早い気もするが、将来的にそうなったとしても、嬉しくはあっても不満などない訳だし。
まぁ、それをいきなりやられたから取り乱しただけで、確かに横島の言う通りそれは贅沢な悩みなのかもしれない。
流石にやりすぎたと思ったのか、横島は気まずい様子で部屋へと戻っていった。
すると、それを気にしていたパピリオちゃんが、おずおずと話しかけてくる。
「あの、ナルカミ。ヨコシマの事、許してあげて欲しいでちゅ。多分ヨコシマは、ナルカミの事が羨ましかったんだと思うでちゅ。」
「・・・羨ましい?」
いや、確かにマリーは、端から見ても可愛くて綺麗な女の子だ。
女性に対して、並々ならぬ興味を抱いている横島がそれを羨ましく思ったとしても不思議な話ではない。
・・・ないのだが、確かに横島の様子はいつもとは違った様に思える。
まぁ、まだそこまでの付き合いがある訳でもないので、断言はできないのだが。
「・・・ナルカミならいいかな?実はヨコシマには、将来を誓い合った恋人がいたんでちゅ。」
「恋人が、・・・
「うん。私のお姉ちゃんみたいな存在で、ルシオラって言うんでちゅけど、とある事が原因ですでに亡くなってるでちゅ。」
「あっ・・・。」
・・・そういう事か。
「もちろん、私もヨコシマも、現実は受け入れてるでちゅ。それに、ルシオラちゃんはいなくなっちゃったけど、完全に別れた訳ではないでちゅから。だから、ヨコシマも表面上は元気に振る舞ってまちゅけど、本当はさみしいんだと思うんでちゅ。私もそうだから・・・。」
「・・・そうか。」
パピリオちゃんのお姉さんという事は、おそらくそのルシオラさんも魔族なのだろうが、まぁ、俺も相手は神様みたいな娘だから、そこは特に問題ではない。
しかし、すでにその人を亡くしている身としては、俺の悩みなど、本当の意味で贅沢な悩みに見えたのだろう。
ーーーまた少し、横島の事が分かった気がする。
「だから・・・!」
「・・・。」
「あっ・・・!」
一生懸命伝えようとしてくれるパピリオちゃんの頭を、俺はポンポンと優しく撫でた。
「もう伝わったよ、パピリオちゃん。俺は横島の事を怒ってないから、心配しなくても大丈夫だよ。」
「ほ、ホントでちゅかっ!?」
「もちろんさ。・・・君は優しいんだね。」
「そ、そうかなぁ〜。えへへ・・・。」
・・・カワイイ。
不安げな顔から一転して、はにかんだ笑顔は年相応の少女のそれであった。
「さ、今日はもう遅いからそろそろ部屋に帰ろう。」
「うんっ!」
「・・・ああ、それと、もしできたとしたらだけど、いつかパピリオちゃんを菜々子に紹介したいんだけど、どうかな?」
「っ!!うん、私と菜々子ちゃんに会ってみたいでちゅっ!」
「そうか。なら、俺もそれを実現できる様に、何とかやってみるよ。約束だ。」
「分かったでちゅ。約束でちゅよ?」
そういって、俺とパピリオちゃんは指切りをする。
その後、部屋の前で別れ、俺も俺の部屋へと戻るのだった。
「ならボクも、より一層頑張らないとならない、かな?」
「・・・頼む。いきなり呼び出して悪かったな。」
「いや、いいさ。こっちも、キミに何の相談もなく進めてしまったからね。これでおあいこ、って事で。」
「ああ・・・。しかし、今後はなるべく相談してくれると助かる。ってか、お前とはどの様に連絡を取ればいいんだ?」
「以前のままならスマホしかなかったけど、残念ながら今のボクは所持していない。けど、今のキミなら、“念”で会話する事ができるだろうね。ああ、一種のテレパシーね?」
「そうなのか?」
「キミの霊力の出力が上がっているからね。元々キミとボクは心で繋がってるからできる事でもあるんだけど。当然だけど、他の人とは不可能だよ?キミは
「何かよく分からんが、とりあえず分かった。なら、今後は大事な事は、その“念”で連絡してくれ。」
「了解。」
・・・
世界side
「まったく、お主もムチャをするのぅ。」
「おや、孫くん。」
「わざとではなったのは事実だろうが、そのマリーを
「あ、やっぱり分かる?」
「ワシを誰だと思っとるんじゃ?」
「ハハハ、そうだったね。けど、この程度は構わないさ。ボクは自分の存在を存続するつもりはないからね。」
「やはり、根源へと還るつもりか・・・。」
「最終的にはね。そもそも、ボクが存在するから、悠くんに迷惑を掛けてる訳だからね。それに、ある程度悠くんの“徳”も消費しておいた方が、今後何かと都合が良いからね。」
「・・・“英雄”の末路、か。」
「そうそう。横島くんもそうだけど、“英雄”では最終的には幸せな結末を迎える事ができない。ならば、“人間”に戻してあげないとね。」
「・・・耳が痛いな。」
「それでも、時と場合によっては、“英雄”が必要となるからままならないんだけどさ。」
「そうじゃのぅ〜。」
「じゃ、そろそろ向こうに戻るよ。いきなり悠くんに呼び出されたモンだから、ボクを監視していた連中も慌てふためいている事だろうし。」
「それは・・・、大丈夫なのか?」
「まぁ、連中にはボクが普通の存在じゃない事はバレちゃったと思うけど、それも今更さ。元々そう疑っていたのが、確定しただけの話だからね。むしろ、より一層ボクへの監視が強まるならば、他へのリソースは疎かになる、ってモノだよ。」
「ふん、あいかわらず抜け目ない事じゃな。」
「そうでもしないと、古き神などやってられないさ。じゃ、またね。今度は、ちゃんと戻ってくるよ。」
「そうしてくれ。・・・ああ、後・・・。」
「・・・ん?」
「新作のゲームと酒を忘れるでないぞっ!」
「あ、ああ、そうだったねっ・・・!」
「・・・お主、もしかして忘れておらんかったか?」
「アハハ〜、そ、そんな事ないさぁ〜!じ、じゃあ、まったねぇ〜!!」
「・・・。」
危ない危ない・・・。
正直、素で忘れてたよ・・・。
to be continued
誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿していますので、こちらも本作とあわせて御覧頂けると嬉しく思います。