P4GS   作:笠井裕二

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続きです。


なんだかんだで皆成長している

 

???

 

「それで、いきなり消えた、と?」

〈はい、その通りです。〉

「ふむ・・・。やはりXは神性の存在である事がほぼ確定だな。しかし、いきなり消えたとなると、監視を続行するのは難しいか・・・。」

〈では、我々はどうしましょうか?堂島家の監視を?〉

「いや、それも止めた方が良いかもしれん。Xと共に現れた存在からは凄まじい存在感を感じる。おそらくその者は、八十稲羽の土地神だろう。下手に手を出せば、同士諸君らは消し炭にされてしまう事かもしれん。とりあえず、一度その地から撤退した方が良いかもしれんな。」

〈ハッ、了解しました。〉

「一度体勢を立て直す必要があるだろうな。同士諸君らは、拠点まで撤退ののち、別命があるまで待機せよ。こちらで協議の末、追って連絡する。」

〈ハッ!〉

 

「動きが素早いですね・・・。土地神が復活するまで、それなりの猶予があると考えていましたが・・・。」

「おそらく、Xが何かしらの工作をしたのでしょうな。とすると、Xがもしや・・・。」

「・・・だとしたら、鳴上悠(対象)にこだわる必要はないのでは?Xが確保できれば、こちらとしては申し分ない訳ですし・・・。」

「・・・いえ、仮にそうだとしたら、余計Xには手出しできないでしょう。むしろ、神性の存在をどうこうする事は、私達には不可能な事ですし。」

「まぁ、それはそうですが・・・、口惜しいモノですな・・・。」

「ええ、ままならないモノですよ。」

「それでは、次はどの様な一手を?」

「そうですな・・・。ここは、貴方が以前仰っていたプランを採用するべきタイミングかもしれません。もちろん、ある程度時間は掛かってしまいますが・・・。」

「それでしたら、すでに仕込みは始めていますよ?どちらにせよ、影響力の確保は我々にとっては重要な事ですからね。」

「なるほど。ならば、多少なりとも前倒しはできますか、ね?」

「ええ、そちらはお任せ下さい。」

「分かりました。」

 

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番長side

 

翌朝、横島はケロッとした様子であった。

こちらとしても、あの件を長引かせるつもりはないので、こっちも普通に対応した。

案外、でもないが、切り換えの早いヤツである。

 

それはそれとして、今日は転校する予定の横島の学校関連で、美神さんに用事があったので、横島とパピリオちゃんと共に彼女の事務所に向かっていた。

 

新学期に合わせると美神さんも言っていた通り、俺の編入試験は無事に合格した様で、そうなれば、書類や、学校に通う為の一式、制服やらの新調が必要な為である。

まぁ、話がトントン拍子に進んでいる感は否めないが、ここら辺は、横島曰く、美神さんの()()が大きいのかもしれない。

 

 

「へー、アンタ、何でも似合うのねー。」

「鳴上さん。素敵ですよ。」

「ありがとうございます。」

 

事務所に着くと、いつの間にか仕入れたのか、すでに俺にピッタリのサイズの制服が届いていた様だ。

で、確認の意味も込めて、制服に袖を通してみろとのお達しから、こうして制服のお披露目をする事になった次第である。

 

「イケメンは何を着ても絵になるのー。」

「こら、ヨコシマ。あんまりひがまないの。」

「あ、いや、パピリオ。今のはただの感想なんだが・・・。」

「あ、そうなんでちゅか?」

 

昨晩の事で、パピリオちゃんは敏感になっていたのか、横島の横にピッタリくっついて、その言動にツッコミを入れていた。

横島も、何かを察していたのか、若干困った様に、しかし、それでも若干嬉しそうにパピリオちゃんの頭をポンポンと撫でていた。

 

「おー、鳴上どの、凛々しいでござるなー。」

「確かに。ってか、前のおキヌちゃんの時も思ったけど、何で皆一緒の服を着るんだろう?」

「さあ?ま、人狼の里でも、全く同じではなかったものの、身に付ける衣服は似たりよったりになっているでござるから、そーゆーモンなのでござろう?」

「あるいは、集団生活をするにおいて、所属を明確にする為かもしれないわね。人間は、私達と違って、ニオイで判断できない生き物だし。」

「あー。なるほどでござるなー。」

 

一方、シロとタマモはそんな事を話していた。

彼女達は、人狼と妖狐であり、人間とは違う生き物であるから、人間の生活は奇妙に映るのかもしれない。

 

ま、初めは彼女達の素性には多少驚いたが、シロは普通にシッポもあったからな。

それに、すでに神様や魔族とも会っていた俺にとっては、妖怪とは言え、普通の女の子となんら変わらなかったのである。

 

「しっかし、先生や鳴上どのを見ていると、拙者も学校に行ってみたいでござるよ。」

「そう?面倒そうじゃない?」

「いやいや、人間の社会を勉強する上では、結構重要な事だと思うでござる。」

「ふぅ〜む。」

 

そう言うと、シロとタマモはジーッと美神さんを見つめた。

 

「な、何よ、その目は。アンタ達を飼ってるだけでも有り難く思いなさいよ!」

「それに、貴女達の場合は結構特殊な立ち位置だから、現実的にはそれも難しいわねー。シロちゃんはともかく、タマモちゃんは一応令子に退治された事になってるし・・・。相互理解を進める上では、それもかなり重要な事だとは思うけど。」

「だーだー。」

「あら、ママ。」

 

と、そこへ、美智恵さんとひのめちゃんが現れた。

当たり前だが、今日はベビーシッターのバイトを請け負っていないので、今日の美智恵さんは一日フリーなのかもしれない。

 

「そうでござるかー。」

「ま、私は別に構わないんだけどね。」

 

露骨に残念がるシロとは対象的に、タマモはクールにそう呟いた。

しかし、俺の気のせいかもしれないが、タマモも実は残念がっているのかもしれない。

 

「けれど、そうね。ある種のモデルケースとしては面白いかもしれないわ。六道さんに相談して、“体験入学”って形なら実現できるかもしれないわねー。」

「ほ、本当でござるかっ!?」

「・・・。」

「そうか。六道女学院なら、『霊能科』もあるくらいだし、オカルトに関する敷居は低いとも言えるわね。けど、あそこは高校よ?コイツらは、見た目的にも精神的にも、せいぜい中学生くらいだと思うけど。」

「あくまで“体験入学”だからそこは気にしなくてもいいわよ。シロちゃんもタマモちゃんも、ひのめの事でお世話になってるし、こちら側の事情もあるから、なるべく実現できる様にしてみるわ。期待して待っててね。」

「はいでござる!」

「・・・うん。」

 

俺の制服のお披露目から思わぬ展開になったが、まぁ、シロとタマモが嬉しそうなのでそれもいいか。

“体験入学”、実現するといいな。

 

・・・

 

道化師side

 

「いいなー。私も学校に行ってみたいでちゅー。」

「お前の場合は、シロやタマモより更に複雑だからなー。望みは薄いかもしれん。が、たまにはこうして連れ出してやるから、今はそれで我慢してくれ。俺も、老師や小竜姫さまに相談してみるから。」

「っ!うんっ!!」

 

俺がそう言うと、花が咲いた様に笑顔を浮かべるパピリオ。

いつかコイツが小学校に通う光景とか、実現できたらいいなー。

 

とか、思っていると、隊長とひのめちゃんの後に、今日は非常に珍しい訪問者が現れたのだった。

 

「邪魔するぜ。今日は随分賑やかだなー。」

「あれ、お前雪之丞じゃねーか。」

「よう、横島。しばらくぶりか?」

「そうでもねーぞ。()()()からは、世間的にはそんなに経ってないからなー。」

「ああ、そういやそうだったか。ま、いいや。それより、美神の大将は今日はいるかい?」

「何だ、美神さんに用事か?珍しい事もあるモンだなー。」

「本っ当に珍しいわね、雪之丞。で、私に何の用事よ?言っとくけど、お金なら貸さないわよ?ま、ご飯ぐらいなら食わせてやってもいいけどさー。」

「違うわっ!人を何だと思っとるだっ!?」

「年中貧乏な自称最強のアウトロー、じゃないの?」

「・・・。」

 

・・・いや、無言でこっちを見るな。

それに、それは否定できんだろう、お前の場合。

 

「初めて見る顔だな。横島や美神さんの知り合いか?」

 

そんなバカなやり取りをしていると、鳴上がそう尋ねてくる。

 

「ああ、一応な。コイツは伊達雪之丞。まぁ、俺のダチの一人だな。」

「伊達雪之丞だ。アンタは見ない顔だな。・・・だが、かなりデキそうだ。」

「気を付けろよ、鳴上ー。コイツは生粋のバトルジャンキーだからなー。」

「・・・そうなのか?」

「ちげーよっ!人をどこかのヤサイ人と一緒にするなっ!お前の方こそ、ヤサイ人の王子みたいな声してるくせによー。」

「おい、メタい発言はやめろっ!それに、それは俺の専売特許だろーがっ!」

「ハハハ。仲が良いんだな。俺は鳴上悠だ。よろしく。」

「ああ、よろしくな。アンタとも一度手合わせ願いたいが、今は別の用事がある。」

 

そう言うと、雪之丞は珍しく、でもないが、真面目な顔をして美神さんに向き直った。

 

「美神の大将。アンタを“男”と見込んで折り入って話があるんだっ!」

 

バキっーーー!

 

「あたしは女よっ!」

「ぐはぁっーーー!」

「ま、まーまー。」

「まー、確かにそこら辺の男に比べたら、よっぽど男っぽい事は否定せんが。スタイル以外。」

「あんっ!?」

「いえ、何でもないっすっ!」

「・・・何で余計な事言うんだ、横島?」

「ったく、手の早い事。一体誰に似たんだか・・・。ひのめはお姉ちゃんみたいになったらダメですよー?」

「あーう。」

「美神どのは男でござったかー。いやー、そーじゃないかとは思っていたでござるが・・・。」

「シッ、黙りなさいシロッ!」

「ゴフッ!・・・い、良い当て身でござる・・・。」

「ここは今日も賑やかでちゅねー。」

 

 

しばらくして、すぐに復活した雪之丞は、美神さんに土下座を敢行していた。

・・・コイツがこんな事をするなんて、よっぽどの事だな。

 

「で、本当に何の用なのよ?」

「それがだな、いや、ですね・・・。」

 

どうも歯切れの悪い雪之丞に、美神さんはイライラとした調子で先を促した。

 

「ハッキリ言わんかいっ!あたしは暇じゃないのよっ!?」

「・・・今日は、特に仕事はなかったと思いますけど・・・。」

「シー、おキヌちゃん。」

「あっ・・・。アハハハハ〜。」

 

ジロッと睨む美神さんに、俺とおキヌちゃんは慌てて誤魔化した。

 

「大将っ!いや、美神さんっ!!俺をアンタの弟子にして下さいっ!!!」

「「「・・・へっ?」」」

「・・・。」

「あーう?」

「「「「・・・???」」」」

 

弟子?

弟子っつったのか、今?

 

「いや、意味が全然分かんないんだけど、ちゃんと一から説明しなさいよ。」

「あー、実はだなー・・・。」

 

 

「あー、そういう事ねー。考えてみれば、確かにアンタは正式なGSじゃなかったわね。元々メドーサの配下だった訳だし。」

「けど、確かに香港での一件で、日本GS協会のブラックリストからは外されたんじゃなかったでしたっけ?」

「それでも、一度そっち側に行った俺を面倒見てくれる奇特なヤツなんていやしないさ。ま、それでも俺にとっちゃ別に不都合なんかなかったんだがな。俺くらいの実力があれば、他にいくらでも稼げるアテはあるからな。」

「それが、今になってどうして美神さんの弟子になりたいって話になんだよ?」

「あー・・・。」

「多分、“師弟制度”の話じゃないかしら?雪之丞クンの実力なら、改めてGS試験に臨んだとしても合格するのは容易い事よ。けど、正式なGSになる為には、師匠からの保証が必要になる。私の時は、“見習いとして100匹悪霊退治すれば一人前”って割と緩い条件だったけど、それでも六道さんや唐巣先生のお世話になったからねー。」

「つまり、お前、正式なGSになるつもりなのかー。んで、どんな悪評もものともしない美神さんを頼った、と。」

「ま、そんなトコだ。」

「こら、アンタ達っ!あたしを何だと思ってるのよっ!?」

「「・・・えっ?」」

「ま、まぁ・・・。」

「・・・コホンッ。」

 

美神さんの疑問に、誰もが同じ事を考えながらも、そこはそれ、余計な事を言うと痛い目に合うので言葉を濁していた。

が、まぁ、多分皆思った事は、“神も悪魔も恐れない、究極の守銭奴にして冷血女”、ってところだろう。

ま、これでも、見た目の美貌だったり、スタイル、それに、内面的にも案外寂しがり屋で情がアツいところもあったりで、可愛げのある(ひと)でもあるんだが。

 

「ま、まーそれよりもさ。何だって今更GSになりたいんだ?オメーもさっき言ってた通り、別に困りゃーしないんだろう?ま、確かに正式なGSって方が、肩書的にも安心ってのはあるんだが。」

「あー・・・。」

 

俺らにとっちゃ、法律違反など、今に始まったこっちゃない。

美神さんにしても、一応は世界最高峰のGSの一人ではあるが、それと同時にヤクザよりヤクザな悪徳高利貸しみたいなモンだと世間からは思われとるし、脱税の常習犯でもあるからなー。

 

「・・・あの、もしかしてですけど、それって弓さんと関係のある話じゃないですか・・・?」

「っ!?」

「・・・弓さん?」

 

・・・弓さん、っーと、確かにおキヌちゃんのクラスメイトで、超美人の()だよなー?

 

そういや、コイツ、クリスマスの時に顔を合わせてるし、何なら例の事件の時も一緒にいた、っつーか、デートしていた様な・・・。

 

おキヌちゃんの指摘に、ダラダラと汗を流して沈黙する雪之丞。

・・・うん、わかりやすいヤツだ。

 

しかし、()()俺のキャラ的には、ここでツッコミを入れとかないとならんだろう。

 

「テメー、俺の弓さんとデートだけじゃ飽き足らず、他に何かあるってのかっ!?」

「えっ、いや、そのー・・・。」

「吐け、こら雪之丞っ!って、ぶぅーーー!!!」

「ええい、話が進まんっ!・・・で、キッチリ話してくれんでしょーね、雪之丞!?」

「あ、ああ。」

 

俺の暴走に、美神さんが強めのツッコミを入れて、ようやく話は進展する様である。

俺は、壁とキスしながら、そんな事を思っていたーーー。

 

 

「実は、俺と弓、かおりは、一応正式に付き合ってるんだが・・・。彼女は、その実家があれだろ・・・?」

「ああー、彼女、“弓式除霊術”の跡取り娘だったわねー。当然、どこの馬の骨とも分からない男と付き合うのは、親としてはいい顔はしないわよねー。」

「それで、謎のプータローではなく、正式なGSであるっつーハクが欲しい、っちゅーわけか。」

「・・・ちょっと言い方が辛辣じゃないか、横島?」

「いや、まー、間違っちゃいない。彼女の親から見たら、俺の存在なんかその程度のモンだろーからな。」

「・・・確かに、雪之丞クンの実力は私達には分かっているけど、世間一般からしたらモグリの霊能力者、って印象しかないでしょうね。」

「それで、弟子入り、ってワケね・・・。さっきママも言ってたけど、アンタの実力ならGS試験は余裕でも、正式なGSを名乗るには師匠の存在が不可欠だからねー。」

「ま、そんな訳さ。で、引き受けてくれるかい?もちろん、礼はする。」

「あー、悪いんだけど、お断りだわ。」

「・・・。」

「えっ?」

「そ、そんなっ・・・!」

「そんな顔しないでよ、おキヌちゃん。何も、私もイジワルで言ってるワケじゃないの。ウチには、すでに横島クンやおキヌちゃんが居るから、これ以上面倒は見切れない。それに、シロやタマモもいるしねー。」

「確かに令子の言う通りね。“師弟制度”は、基本的に師匠一人に対して弟子一人が基本よ。ま、令子は横島クンとおキヌちゃんを弟子にしているけど、これは二人が優秀だからであって、ここに更に弟子を増やすのは難しいわね。単純に、従業員として雇い入れるのとは訳が違うもの。」

「仮に、横島クンとおキヌちゃんが独立すればそれも可能になるけど、今のところは不可能よ。そんな事は、アンタも分かっていたんじゃないの、雪之丞?」

「ま、そうだろーとは思ったけど、ダメ元でな。さっきも言ったが、俺を受け入れてくれるよーな奇特なヤツは、そーはいねーからなー。」

「ま、それはそうだけど・・・、でも、例えば唐巣先生とかはどう?先生はママや私の先生だし、日本GS協会の重鎮でもあるわ。今はピートがいるけど、彼もすでにほぼ一人前だから、実質的には不可能じゃないと思うけど?」

「いや、一応唐巣のダンナも当たってみたが、断られたよ。ダンナも、もういい歳だからな。」

「・・・なるほど。先生も、まだまだ現役だけど、師匠としては歳的にも不安があったのね。特に、GSは体力勝負なところがあるし・・・。」

「それに、考えてみたら先生じゃ、ピートはともかくアンタの金銭面の面倒は見切れないかもねー。」

「あー。あの人、生活能力は皆無ですもんねー。」

「ピートは実質的に食費なんかほとんど掛かんないけど、雪之丞まで増えるとなるとより多くの生活費も掛かるわ。弟子となる以上、今までのモグリ行為は御法度だけど、先生の性格を考えると、いきなり大金を要求する事なんてできないでしょーし、その辺りの事もあったんじゃないかしら?」

「そういう事だ。悪いね、と言ってアンタを紹介した訳だが・・・。」

「私もダメって事ねー。」

「な、何とかならないんですか、美神さん!?」

「こればっかりは、雪之丞の経歴が特殊すぎるわねー。まー、後、一、二年待てるなら、私が面倒みてやってもいーけど。」

「そ、そんなに経ったら、弓さんが卒業しちゃうじゃないですかっ!!・・・あ。そういえば、弓さん。卒業したらお見合いをするとか何とか・・・。」

「・・・あー、そういう事ね。霊能者にとっては、相手選びは重要な事だわ。特に、名門と呼ばれるところは、有力な霊能者と婚姻を結ぶ事も多い。跡取り娘としちゃ、ワガママも言えないわよねー。そっか、アンタが急にそんな事を言い出したのは、その事もあんのね?」

「・・・。」

 

ポリポリと照れ臭そうにうつむく雪之丞。

・・・案外、コイツも真剣に将来の事を考えていたんだなー。

 

しかし、実際問題としちゃ、これは難しい問題だな。

いや、俺としちゃ、いい女を誰かに取られるのは多少腹立たしいが、ま、ダチの一人としちゃ、応援もしなくなる。

なんだかんだ、コイツにゃ世話になっとるしなー。

 

だが、今の俺にできる事などほとんどないと言っていいだろう。

特にこれは、家の話なども絡んだ複雑な事情だからなー。

 

と、多少暗い雰囲気になる中、何かを考えていた鳴上が、おずおすと口を開いた。

 

「あの、ちょっといいですか?」

「何、鳴上クン?」

「あ、いえ、これはGSの事も、複雑な事情も分からない素人考えと思って聞いて欲しいんですが、その、弓さん?、のご実家に、伊達が師事するのは無しなんですか?」

「っ!!!」

「・・・何言ってるのよ、鳴上クン。アンタは知らないかもしれないけど、雪之丞の経歴は特殊で・・・。」

「それに、名門にゃ、デントーやらしがらみも多いだろーしなー。」

「それは何となく分かるが、俺の経験上の話だが、そういったモノも大事だろうけど、そこに縛られていると、いずれ破綻すると思うぞ?状況は常に変化しているんだ。時代に合わせた変化も、時には必要だろう。」

 

・・・そういや、イザナギさまの話だと、鳴上達の遭遇した事件は、土地神として祀られていたイザナミが、時代の変化によって伝統やら神事が廃れた結果、暴走したって話だったか。

 

「いや、そうは言ってもだなー。」

「・・・いえ、令子、横島クン。鳴上クンの意見は一理あるわ。」

「・・・へっ?」

「・・・どういう事、ママ?」

「確かに、元魔族の配下であった経歴は特殊なモノだけど、そこは小竜姫さま達のお墨付きで何とでもなるわ。もっとも、何にも知らないGSからしたら受け入れは困難でも、弓さんのご実家なら話は別よ。彼女の家は仏門で、小竜姫さま方は仏法の守護者だからね。その後の雪之丞クンの活躍を踏まえてしっかりと事情を説明すれば、少なくとも納得はしてくれるでしょう。それに、仮に闘龍寺に師事が叶えば、すぐに雪之丞クンの実力は分かる。これは、弓さんのご実家としても渡りに船な話になるわ。跡取り娘と恋仲の、しかも弟子の一人なら、ご実家としては今後が安泰となるもの。」

「・・・なるほど。って、妙に詳しいわね、ママ。」

「ま、前にも言ったけど、オカルトGメンの人手不足は深刻な問題だからね。有力な霊能者の情報は一通り押さえているのよ。で、場合によっては、弓さんの卒業と同時に、婚約、なんて話にもなりかねないわね。」

「こ、婚約っ!?あ、いや、そこまではまだ考えてなかったんだがっ・・・。」

「例えばの話よ、雪之丞クン。けど、どちらにせよ、雪之丞クンほどの実力なら、弓さんの親も取り込みたいと思ったとしても不思議ではないわね。流石、鳴上クンね。私達にはない視点だったわ。」

「あ、いや、俺のはただの思い付きですから。」

 

確かに、鳴上が異世界人って事もあって、俺らには考えつかなかった様な思考が可能なのだろう。

それに、なんだかんだ言って、コイツも俺ら並みに色々経験してるみたいだしなー。

 

「ま、そういう事ならこちらとしても協力するわよ。将来的には、色々と良い手札になりそうだしね。もちろん、後は雪之丞クンと弓さんの決断次第だけど。」

「あー・・・。」

「雪之丞。まー、大人しく話に乗っとけ。オメーも、そろそろ落ち着いてもいい頃だろ。それに、一人の女の子を幸せにできるかもしれないんだぜ。悔しいけどな。」

「雪之丞さん。お友達の一人として、弓さんの事、よろしくお願いします。」

「・・・。」

 

 

その後、ひょんな事から始まったその騒動は、とりあえず隊長の図らいによって雪之丞が闘龍寺に入門する事でひとまず落ち着く事となった様だ。

 

ま、今後どうなるかは、雪之丞と弓さん次第だろう。

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら、御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんと「カクヨム」さんにて「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしよろしければ、本作とあわせて御覧頂けると嬉しく思います。
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