続きです。
今回は陽介達の話。
4/7 深夜
魔術師side
「ようこそ、新生“虚ろの森”へ。」
「・・・何だかスゲェ事になってるなぁ〜。」
新学期を迎えた当日の深夜。
俺らは、以前マリーちゃんから言われた通り、いきなり深夜にテレビの世界に引っ張り込まれたのであった。
まぁ、一応事前に知らされていたとは言え、また、俺らにはマヨナカテレビでの経験があったとは言え、いきなり拉致同然で連れてこられるとは思っていなかったが。
これについては、マリーちゃんと一緒にいたイザナギさまが、
「今回は“強制イベント”だよ。次回からは、任意のタイミングで入れるからねぇ〜。」
との事。
・・・うん、中々メタい発言であった。
しかし、改めて見回してみると、以前のマヨナカテレビとは雰囲気っつーのが全く異なる。
以前は、どうも陰鬱な印象があったのだが、それに比べて今のこの場所は神聖さすら感じる。
それに加えて、イザナミ戦後に見た“真の虚ろの森”の様な美しい世界であるところは変わりないのだが、何故かその雰囲気に不釣り合いな、よく分からん建物が俺らの目をひいた。
・・・っつか、何故に銭湯?
「随分、突然でしたね・・・。」
「いやぁ〜、ゴメンゴメン。
「イザナギ強引過ぎ。そんなんだから、イザナミに愛想を尽かされるんだよ。」
「うぐっ・・・!な、中々過去の傷口をエグッてくるねぇ〜。」
「一応、私、イザナミの
「・・・やはり、世間は母親の味方が多いんだよねぇ〜、トホホ。」
「そ、それはいーけどよぉー。アンタ何者なんだ?」
マリーちゃんと謎の大男(まぁ、俺は彼がイザナギさまだって知ってるけど)のやり取りに、完二がそうツッコミを入れる。
何故か、ナイトキャップとゆったりとした寝巻き姿で、であるが。
っつか、よく見たら、俺も含めて、皆思い思いの部屋着の姿であった。
俺は、スウェットの上下。
これを、俺は寝巻き代わりに愛用していた。
里中は、緑色のジャージ姿だ。
何か、ある意味イメージ通りではある。
天城は、赤を基調とした浴衣っぽい姿だった。
こちらも、ある意味イメージ通りだ。
りせは、結構攻め攻めなキャミソールと短パン。
うん、眼福眼福。
完二は、さっきも言った通り、何故かナイトキャップとゆったりとした寝巻き姿だ。
ある意味、一番女子力が高いのだが、これは今更ツッコむまでもない。
そんな完二と同じ様な格好をしているのが、ウチのクマである。
お前ら、まるで兄弟みたいだなぁ〜。
で、一番ギャップがあるのは、何気に直斗だったりする。
何だよ、そのモコモコの可愛らしいパジャマは・・・。
「ああ、そういえばこの姿では陽介くん以外初めましてだね。コホンッ、では改めて・・・。ボクの名前はイザナギ。悠くんのペルソナであり、一応はこの国の始祖神の一柱でもある。以後、よろしくね。」
「ああ、アンタが鳴上センパイの・・・。」
「ってか、花村から話は聞いてたけど、あんま信じられないよねー。」
「うん。大きいけど、普通の人間に見えるし。」
「けど、花村先輩の情報と姿形は一致するよ。割と年若く、かなりの大男だけど物腰の柔らかい男性。見た目的には、大学生くらい、って。」
「まぁ、クマ的には、ここにいる以上、普通の人間ではありえんと思うクマけど。」
「疑う余地はありませんね。まぁ、それでも中々信じられないですが・・・。」
そんな事は華麗にスルーして、真面目に挨拶を交わすイザナギさまと仲間達。
うん、まぁ、今更、いいけどさ。
「どうやら、陽介くんからしっかりと情報は行き渡っている様だね。」
「まぁ、一応は。っつっても、俺自身、まだ分からん事だらけなんスけど。」
「それに関しては申し訳ないんだけど、ボク自身もまだ全容は分かっていないからねぇ〜。不確かな情報でキミ達を混乱させるワケにもいかないから、まだ明かせない話も多いんだ。」
「それは分かります。・・・しかし、そんな中でも、鳴上先輩を狙っている勢力は確実に存在する。これについては、間違いない事なのですね?」
「そうそう。それは間違いないよ。ただでさえ、彼は英雄的偉業を成し遂げた人間だ。まぁ、それに関してはキミ達も同様なんだけど、悠くんの場合はボクを喚び出した事+例の事件においても中心的な役割を担っていた事がやはり大きいんだ。それだけでも、それを把握していれば、利用しようとする勢力はごまんとある。しかも、彼だけはイザナミ、マリーの庇護下からハズレてしまったからねー。すでに、彼を狙った集団は、こちらでもしっかりと察知している。」
「・・・なるほど。しかし、鳴上先輩は、貴方の手引きによってすでに安全な場所、こちらもにわかには信じられませんが、この世界とは異なる
「そうそう。流石に
「ま、向こうの世界は、向こうのカミサマ達のナワバリみてぇ〜なモンだもんなー。」
「ナワバリってお前・・・。不良やヤーさんじゃねぇ〜だからさぁ〜。」
「いや、完二くんの認識もあながち間違っていないよ。通常でも、自分の管轄地域に他のカミサマや強力な力を持つ者達が出入りするのは、それに引き寄せられた悪霊なんかも出入りしてしまうリスクが高くなるから、当然良い顔はしない。少なくとも、事前に挨拶なり何なりしておかないと、トラブルのもととなってしまうんだ。それが、他の世界の者となると、その地方だけでなく、世界全体にも影響が波及する恐れがあるから、本来は問答無用で排除されてしまう。それ故に、本来はボクら神々の間では
「なるほど。そうしたルールがあるからこそ、イザナギさまは鳴上先輩を向こうの世界に誘った訳ですか。」
「そういう事。期せずして向こうの神々が悠くんの味方をしてくれるんだ。これほど心強い事はないだろう。ま、その代わり、今度は向こうでトラブルに巻き込まれる事はあるかもしれないけど、それは信頼できる者達に任せてきたから大丈夫だろう。それに、悠くんなら自力で何とかすると思うし。」
「ま、鳴上センパイならどこ行っても大丈夫だろっ!案外、すでに新たなる伝説を作ってるかもしんねぇ〜さ。」
「伝説って何だよ・・・。」
「ブフッ・・・。伝説・・・。ば、番長伝説・・・。」
「今の話にウケるトコあったっ!?」
・・・たまに天城の笑いのツボがよく分からん。
「ま、そんな訳で、悠くんの方はとりあえず心配しなくても大丈夫。一応、下宿先からは連絡を取れる様にしてもらっているし、心配なら電話の一本でもかけてあげなよ。それよりも、問題はキミ達の方だ。」
「それなんですが、詳しい事はほとんど分かっていません。まぁ、稲羽市がマリーさんの管轄である事を踏まえると、先程のお話から他の神々も容易には手出しできないのでしょうが・・・。」
「その通りなんだけど、こっちでは当然ながら“人間”を使う事ができるからねー。当然ながら、人々の往来を制限する事はできない。そうなれば、悠くんの一番の弱点ともなりうる身内に手が及びかねない。まぁ、彼の御両親はすでに国外へと旅立っているからそっちは特に問題ではないんだけど、それになんだかんだいっぱしの大人だし、結構各地を転々としている事から、防犯意識も高いみたいだしね。けど、菜々子くんに関しては、まだまだ小さな子供だ。狙われるとしたら、一番可能性が高いのは彼女となる。」
「弱いところから狙うのが、ある意味定石ですからね。しかし、それはマリーさんのガードがあるのでそちらも問題ない。」
「その通り。となると、後は遼太郎くんだが、彼は現役の警察官であり大人の男性だ。彼を狙うのはリスクが高過ぎる。何せ、場合によっては日本の警察機構全体を敵に回しかねないからねー。
「アプローチ、ですか?」
・・・うん、今更そこはいいんだけど、やっぱり直斗がリーダーの方がいいんじゃなかろうか?、などと、イザナギさまと直斗のやりとりを見ながら俺はぼんやりとそんな事を考えていた。
「うん。ある種の正攻法が難しいならば、搦め手を使えば良いだけさ。そして、皮肉にも稲羽市には例の事件によってその下地ができている。すなわち、都市伝説、ここではマヨナカテレビだったけど、の噂を受け入れやすい土壌の事さ。稲羽市は良い土地だけど、やはり若者にとっては田舎で刺激が少ない。ま、今はインターネットなんかもあるけど、それでも、刺激に飢えている若者にとっては、身近な何かに興味がそそられるモノさ。実際、例の事件においては、街全体がある種のお祭りの様になっていただろう?」
「それは・・・、確かにそうかも。」
「私達も含めて、怖いとは思っていたけど、内心面白がっていたかも。」
「まぁ、そこは人間の心理だからね。しかし、今ここで重要なのは、刺激に飢えている点の方だ。なんだかんだ言って、例の事件は解決に向かい、キミ達の活躍によってイザナミも倒され、マヨナカテレビも閉鎖してしまった。つまり人によっては、ある種のお祭り状態が終わってしまった事と同義だ。そこで新たなる都市伝説が生まれたとしたらどうだい?」
「それは・・・、当然、若者を中心に飛び付くかもしれないなー。」
「その通り。そして、それを防ぐ手立てはボクらにはない。言うなればそれは、人々の人生や生活に口出しするのと同義だからね。そして、おそらくそれを使って、キミ達を狙うのが
「まぁ、危険をおして駆け付けてしまうでしょうね・・・。」
「その通り。
「やな連中だな・・・。」
イザナギさまの説明に、完二は正直にそう呟いた。
ま、気持ちは分かる。
「だが、それが分かっているならば対処法はある。要はそれに、キミらが対抗できれば良いだけの話だからね。もっとも、それには、今のキミ達では不十分だ。いや、悠くんと共にイザナミを倒した実績を考慮すると、キミ達のペルソナ能力に関しては極まっていると言っても過言ではない。しかし、今回の場合の一番のネックは、
「そこで、修業ってワケっすか・・・。」
「そう。
「それで“虚ろの森”ですか。現実の世界では、どれだけ周囲に注意を払っても、情報が漏れてしまう可能性もある。
「凄い力を使える、って分かったら、下手したらモルモットだもんねー。」
「・・・けど、それだと現実世界でペルソナ能力が使える事にはならないんじゃないかな?ほら、“虚ろの森”って、マヨナカテレビみたいな世界なんでしょ?」
「それについては問題ない。ここでやる内容は、これまでのキミ達の方向性とは異なるからねー。」
「と、言いますと?」
・・・ところで、やっぱり直斗がいると話がトントン進んでいいなー。
そういや、悠がいた時も、進行役は主に直斗がしていた印象があるなー。
ま、一応俺もそうした役割をする事も多かったが。
「これは悠くんがすでに実践しつつある方法なんだが、ペルソナを“憑依状態”にすれば良いんだよ。一番のネックは、やはり現実世界でペルソナ自体を召喚する事だ。それは、キミ達自身への負担も大きいし、何より心理的ブレーキとなってしまうからね。」
「なるほど・・・。逆転の発想ですね。」
「いや、むしろこちらの方が霊能力的には一般的な考え方かもしれないけどね。日本でも、“神降ろし”って言って、神霊なんかをその身に乗り移らせて、神託や宣託を授けて貰う、なんて方法が割と有名だし。逆に、カミサマ自体を召喚する事の方が難しいんだよ。ま、キミらの場合は、キミらの心のあり方が、カミサマなんかの形を模しているだけだから、所謂“本物のカミサマ”ではなかったりするんだけどね。それでも、“もう一人の自分自身”とも言える存在を召喚する事は、やはり現実世界では負担が大きい。その分、肉体と精神なんかの境界が曖昧な“虚ろの森”、あるいは“異界”なんかではスムーズに召喚する事が出来る訳。」
「だから、僕らはペルソナ能力を行使できるのは、マヨナカテレビ限定だと誤認していたのですね。」
「そ。けど、“召喚”ではなく“憑依”であれば、ペルソナ自体を見られる心配もないから、心理的なブレーキはかからなくなるし、負担も最小限で済む。かと言って、今までと違い、能力的に劣るかと言えばそんな事もない。キミ達も気付いているかもしれないけど、ペルソナ能力に目覚めてからは、これはマヨナカテレビ限定だったけど、キミ達自身の身体能力は、それこそ超人的なレベルになっていた筈だ。これは、ペルソナの影響を受けていたからであり、まぁ、だからこそ、所謂“弱点”もついてしまった訳だけどね。“召喚”でそれなら、場合によっては“憑依”ならもっとその出力を上げられる可能性すらある。」
「あん時は夢中で気付かなかったけど、よくよく考えりゃ、“シャドウ”みてぇ〜なバケモンとガチンコでやり合ってたもんなぁ〜。」
「確かに私も、それは不思議に思ってたんよ。ほら、私ってか弱い女子じゃん?それなのに、シャドウの攻撃に対する耐久力とか、攻撃力とかメチャクチャ上がっていたのは、そうした影響があったんだねぇ〜。」
・・・か弱い?
・・・里中が?
ありえん。
が、前までの俺と違って、それを口に出すのは止める事とした。
フッ、俺も成長しているのだよ。
ま、そうした軽口を滑らせて、結果いつも痛い目にあってきたからなー。(遠い目)
「ま、まぁ、その練習、あるいは修業をこの場で行おう、って事ですね?“召喚”ではなく“憑依”であるから、この場での練習でも、現実世界へとフィードバックする事ができる、と。」
「そうそう、その通り。と、まぁ、長々と語ってきたけど、そうした事もあって、今回この“修行場”にキミ達を連れてきた、って訳だね。ああ、一応確認だけど、別にこれは強制ではないからね?」
イザナギさまの発言に、俺らは顔を見合わせて、心外だという表情を向けた。
ま、確かに厄介事ではあるが、俺らの中に仲間を見捨てる様なヤツはいないのである。
「もちろんやるよっ!あったりまえじゃんっ!!」
「私も協力するよ。鳴上くんにはお世話になったし、菜々子ちゃんの為でもあるもん。」
「もちろん私もやるよっ!センパイの為だもんっ!ま、私の場合は、どこまで戦力になるか分かんないけどねー。ほら、ヒミコやカンゼオンやコウゼオンって、戦闘向きのペルソナじゃないしさー。」
「それでも、りせさんのサポート能力はチームにとっては重要ですよ。」
「フォローありがと、直斗くん。」
「いえ、事実ですから。もちろん、僕も協力します。」
「ったりめーよ。鳴上先輩の敵は俺らの敵だ。んなフザけた連中にゃ、キッチリ落とし前つけさせなきゃなんねぇ〜しなっ!」
「クマもやるクマー!センセイとナナチャンに手を出すヤツは、しっかりとお仕置きしてあげなきゃダメだクマからねー!」
「・・・って事っすよ。イザナギさま。もちろん、俺も協力するっすよ。」
「うんうん。悠くんは本当に仲間にめぐまれたねぇ〜。」
「・・・もしかして、泣いてんの、イザナギ?」
「どうもこの年になると、涙腺が弱くてねぇ〜。」
「そ。ま、私ももちろん協力するし。悠の敵は私の敵だし。」
大きな身体を震わせて男泣きをするイザナギさまに、マリーちゃんが素っ気ないながらもそうフォローした。
そんな光景を何だかホッコリ眺めながら、俺らは、新たなる戦いの気配に一致団結するのだったーーー。
「ところで、何故に“銭湯”なんっすか?」
「スビビィーッ!あ、ああ、それはね。
「へ、へー。凄いセンスだねー・・・。」
「けど、まぁ、マヨナカテレビも、結構ワケ分からん世界感だったし、あまり違和感はないかもしんねぇ〜な。」
「そうクマねー。雪ちゃんのお城とか、完二のサウナとかあったクマからねー。」
「それは早く忘れろっつったろっ!」
「クマさん、本当にしつこいよ・・・。」
クマの発言に、完二と天城が不機嫌になった。
ま、あんま人に見られてぇ〜トコじゃないしなー。
クマのヤツは、ただ単に面白がってるだけで、他に他意はないんだろーけど。
「・・・天城先輩。“修業”っつー事で、協力してクマのヤツボコしませんか?」
「いいね。“修業”なら練習相手は必要だもんね。」
「そっすよ。ハハハ。」
「だね。ウフフ。」
お城クマー。
サウナクマー。
と、バカっぽく叫ぶクマを尻目に、何やら黒い完二と天城が結託した様である。
・・・合掌。
to be continued
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後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、よろしければそちらの方も、本作共々チェックして頂けると嬉しく思います。