P4GS   作:笠井裕二

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続きです。


忙しい日常

 

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番長side

 

衝撃的な新学期の幕開けから、数週間があっという間に流れた。

その間俺は、非常に慌ただしい日々を過ごす事となる。

と言うのも、何故か横島に罪を擦り付けようとした事件から、途端にオカルト犯罪が急増したからである。

 

そもそも、こちらの世界における“オカルト”とは、社会的にも認知されている一種の“災害”である。

それ故に、それに対抗する為の手段として、“GS(ゴーストスイーパー)”、つまりは、オカルトの専門家達が台頭した歴史がある様である。

 

しかしその一方で、GSというのは、ある意味危険視されている側面もある様だ。

何故ならば、これはピンからキリまであるそうだが、GSの力は、世間一般から見れば脅威でしかないからである。

 

そもそも、“悪魔”や“妖怪”、つまり、人間以上の力を持つ存在は元より、生前は普通の人々であった者達、つまりは特殊な力を持っていなかった者達でさえ、何からの未練や思いを抱いて亡くなった霊魂は、強力な悪霊となりうるそうだ。

 

彼らの力は凄まじい。

それこそ、実際に戦闘訓練を積んだ、ある意味プロである軍人はもちろん、常人の数倍努力を積み重ねたプロ・アマ問わず、格闘家と呼ばれる者達でさえ、彼らには敵わないほどだ。

そもそも、肉体を持たない為に攻撃が通用しない、という事もあるのだが、逆に彼らは、こちらに対する攻撃は可能なのである。

つまり、肉体的にどれほど強固であろうとも、ただそれだけでは彼らには通用しないのである。

 

そして、そんな彼らに対抗する術を持った者達が、所謂“霊能者”達なのである。

で、そんな危険な存在に対抗できる存在が、弱い訳がないのである。

 

もちろん、先程も述べた通り、その人のスタイルによっては力の方向性は違うのであるが、例えば美神さんなんかは、彼女のスタイルは、洋の東西問わず、あらゆるオカルトアイテムを使いこなす万能型のスイーパーで、彼女自身の身体能力も極めて高いのである。

これは、元々、彼女の運動神経が優れている事もあるのだが、“霊能力”を身体機能にも使っているので、それはもはや、人類を超越した超人のレベルにまで達している様である。

 

しかし、先程も述べた通り、その程度の力は扱えないとと、すでに人間を辞めている存在に対抗できる筈もない。

が、それ故に、世間一般から見れば、GSも十分に化け物なのである。

 

そこで、それらを管理する上でも、“GS資格”、つまりは運転免許証などと同様に、所謂“免許制度”が採用された訳である。

GSは、試験をクリアし、免許証を所持する事によって、初めてその力を商売として使用する事ができる。(力の行使自体は、これとは別に登録などをすればできるそうだ。そうでなければ、GS資格もまだ持っていない見習いなどがその力を行使した場合、違法となってしまうからだろうだ。)

 

また、いくら霊能者達が優れた力を有していたとしても、自身の力だけでは悪魔や妖怪はもちろん、悪霊に対抗できない事も多いのだそうだ。

 

先程も例に挙げた美神さんは、彼女自身の霊能力は極めて高いのだが、しかし、彼女の真価は、あらゆるオカルトアイテム、つまり“武器”を扱える点にある。

逆に横島は、自身の能力によって、それに成り代わる武器、例えば、“サイキックソーサー”や“栄光の手(ハンズ・オブ・グローリー)”(霊波刀の一種だそうだ)、“文珠(もんじゅ)”などが扱える。

つまり、武器や呪具などを持たなければ、その力が真に発揮出来ない美神さんに対して、それを自身の能力で生み出される横島の方が、あらゆる場面での対処には向いている、とも言える訳である。

 

もっとも、横島の場合は逆に、自身の霊能力を常に展開していなければならない関係で、非常に消耗が激しい、という欠点を抱えている。(もっとも、ヤツの場合は、並外れた霊的パワー、本人曰く“煩悩”が非常に強い為に、所謂“ガス欠”が起こる事もそうそうないのだそうだが。)

その点、武器や呪具さえ持っていれば、横島よりも継戦能力の高い美神さんの方が、時と場合によっては優位性がある。

つまり、どちらが良いとは簡単には言えないのである。

 

もっとも、美神さんの周囲では、自身の霊能力自体を一種の武器や攻撃手段に用いる事ができる能力者は多いのだが、美神さんのスタイルの方が実は一般的なんだそうだ。

 

言うなれば、横島らの様な能力者は一芸に秀でたタイプであり、逆に美神さんの場合はオールマイティー。

対策さえ打てば、どんな状況にも対応ができる方が、やはり商売としては大きいみたいである。

 

と、まぁ、そうした観点から、武器、つまり霊能者が扱う為の呪具の需要はかなり高いのである。

 

しかし、先程から述べている通り、オカルトアイテムは一歩扱いを間違えると、非常に危険性の高い代物であるから、普通の企業なんかは扱う事が難しい。

少なくとも、オカルトに関する高い専門知識を有している必要がある。

その為に、オカルトアイテムを専門に扱う業者には“危険呪物取扱者”の資格が求められているのである。

こちらも、やはり管理の観点からも必要な措置なのであろう。

 

ところが、これは俺の世界でも同様であったが、禁止された物品が、裏社会などに出回る事も多い様だ。

例えば、禁止薬物が一般の、それも中高生の間に流行ってしまう事もある。

こうした事例と同様に、オカルトアイテムが裏で取引される事もあるそうだ。

 

もちろん、これらは取締の対象であるし、今では警察当局だけでなく、オカルトGメン(つまり、オカルトの専門組織)も存在する為に、規制は更に強化されている、筈なのだが・・・。

やはり、どんな社会にも、抜け道がある様である。

 

こうした事が社会問題化しつつある中で、それが更に手軽に手に入れられる環境、つまりは“裏サイト”、あるいは“違法サイト”が最近は台頭しつつあり、これ自体は西条さんらも把握していたそうだが、それが爆発的に増えているそうなのである。

 

更には、“催眠アプリ”の様な、一見“オカルトグッズ”には見えない様な(まじな)いの類や、サイトそのものが、一種の洗脳装置の様になっているものなど、ハッキリ言って、警察当局やオカルトGメンの人員だけでは対処できないレベルで増えてきている。

 

もちろん、彼らの名誉の為に明言しておくが、現場の警察当局やオカルトGメンに何か問題がある訳ではなく、単純に人手不足なのである。

何故ならば、サイバー+オカルト犯罪、つまりは、どちらも高度な専門知識が求められる分野であるから、単純な人海戦術やこれまで培った操作力が通用しない、という問題が出てきてしまったからである。

当然ながら、美智恵さんの様に、組織に対して、サイバーやオカルトの専門知識を持つ人材の確保を提言していた者達はいた様であるが、ここら辺はよくある話だが、何か問題が起きてからでないと、お偉方の重い腰が動かなかった、なんて事情もあるそうである。

ま、それはともかく。

 

こうした訳もあって、前以上に忙しくなってしまった美智恵さんは、もはや産休かどうとか言っていられなくなり、そして、オカルト関連の事件が多発した関係で、あくまで民間業者である美神さんにもそのお鉢が回ってくる事となり、結果、連日の様にひのめちゅんのベビーシッターを引き受けるハメになってしまった訳である。

 

こうした訳もあり、学校にバイトに修業にと、去年以上に忙しい日々を送る事となっていた訳だがーーー。

 

・・・

 

「だぁー!商売繁盛は結構だけど、流石に忙し過ぎないかしらー。」

「お疲れ様です、美神さん。どうぞ、コーヒーです。」

「ありがと。悪いわねー、鳴上くん。連日ベビーシッターを頼んじゃって。それに、こうしてお茶まで・・・。」

「いえ、もう慣れましたから。それに、美神さんの事務所を使わせて貰ってますから、これくらいは・・・。」

 

「・・・なぁ、タマモ。子守りって慣れるモンでござるか?いや、拙者達も、ある程度はひのめどのとの生活には慣れた方だと思うでござるが・・・。」

「多分、鳴上の感覚が変なのよ。アイツ、横島とは別方向でどこか変なんじゃないかしら?」

「先生は変ではござらんよっ!?」

「いや、変でしょっ!?ってか、変態でしょっ!!??」

「誰が変態じゃ、コラッー!最近は、それなりにマトモじゃわいっ!!」

「あ、先生。」

「・・・あ、聞こえてた?」

「大声で叫んでれば、そら聞こえるわいっ!せめて悪口言うのなら、声のトーンを考えろっ!」

「まーまー、先生。」

「ははははは・・・。」

 

「アイツは無駄に元気ねー。たまに羨ましく思うわー。」

「(あいかわらず若さがないなー、この人。)」

「(疲れているのだろう。そっとしておこう。)」

 

ギャーギャーと喚く横島に目線を向けながら、ズズッとコーヒーを飲む美神さん。

それに対して、俺とおキヌさんは、それぞれそんな感想を抱きながら、最近の話題となった。

 

「しかし、本当に忙しそうですね。詳しい事は知りませんけど、GSっていつもこんななんですか?」

「まぁ、霊が活発化する時期なんかもありますから、例えば夏場なんかは一時的に忙しくなったりもありますけど、例年ですと、今ぐらいの時期はあまりそこまでは・・・。まぁ、美神さんはGSとしては最高峰レベルですから、持ち込まれる依頼も多いんですけど。」

「普段は、それでも割とセーブしてんのよ。お金は好きだけど、結局は身体が資本だからねー。依頼の難度を鑑みて、日にどれだけ仕事を入れるかは、その都度流動的に考えてんのよ。例えば、手強い相手であると分かっていれば、その日はそれ一本に集中するし、逆にザコなんかの場合は、日に数本の仕事を入れる事も多いわ。けど・・・。」

「最近ですと、私達は単独で仕事する事も増えています。それこそ、私はともかく、横島さんはすでに実力的には一人前ですし、現場経験も豊富です。逆に言えば、私達がチームで動く時は、それだけ難敵と相対する時だけですね。」

「最近の傾向だと、以前とは霊の“質”が変わった印象ね。以前ならばおキヌちゃんの言う通り、私や横島くん、おキヌちゃんが単独で動く事も増えていたわ。けど、さっきも言ったけど、最近の霊の変化はちょっと気になっていてね。それで、安全策を取って、今はチームで動く事にしてんのよ。」

「心配性やなー、美神さん。普段はイケイケドンドンやのに・・・。」

「こん、バカタレッ!前にも言ったかもしんないけど、この商売をナメんじゃないわよっ!確かにアンタは、悔しいけどもはや私を超えた力を手にしているわ。けど、それでも一瞬の油断で死んじゃう事もあんのよっ!?」

「「っ!!!」」

「・・・横島さん。美神さんが現場で強気だったり勝ち気に見えるのは、意図してそうして振る舞っているからですよ。もちろん、元々そうした性格である事は否定しませんが・・・。」

「ちょ、ちょっとおキヌちゃんっ!?」

「いえ、この際知っておいた方が良いと思います。私達は、“チーム”、なんですよね?」

「そ、そりゃそーだけど・・・。」

「クス。案外恥ずかしがり屋ですよね、美神さんて。」

「う、うっさい。・・・ま、まぁ、おキヌちゃんがそこまで言うんなら好きにすれば?」

「はい。好きにします。」

「・・・フンッ!」

「あ、あのぉ〜、どういったワケでございませうか・・・?」

 

意図せず美神さんに叱られてビクビクする横島。

そっぽを向く美神さん。

仕方ないなぁ〜、と小さく笑うおキヌさん。

 

・・・うん、案外美神さんの事務所のヒエラルキーは、おキヌさんが頂点に君臨しているのかもしれない。

まぁ、端から見れば全然分からない事ではあるのだが。

 

「横島さんもご存知の事だと思いますが、“悪魔”や“悪霊”の特性って何だと思いますか?」

「そりゃ、バカ強くて、メチャクチャ危険、って事じゃないの?」

「それも正解です。しかし、彼らの一番恐ろしい点は、人の心理につけ込んでくる事です。」

「あっ・・・!!!」

「・・・どういう事ですか?」

 

横島はそのおキヌさんの一言で何かを思い当たった様だが、生憎俺は、そちらの専門家ではないので思わずそんな疑問がこぼれてしまっていた。

 

「あ、すいません。」

「いえ。なんだかんだ言っても、鳴上さんは専門家ではありませんもんね。では、横島さんへの答え合わせも兼ねて、分かりやすく解説させてもらいます。」

 

フンス、と若干得意気に鼻を鳴らすおキヌさん。

・・・かわいい。

 

その様子は、俺や横島の一学年下ではあるが、案外彼女はお姉さんぶりたいところがあるのでは?、などと俺は考えていた。

 

「“妖怪”はまた別なんですけど、と言うか、その性質がマチマチなんで、一概には言えないんですが、“悪魔”とか“悪霊”は、人の()()()()を狙ってきます。これによって、“悪魔”は人に不利な契約を結ばせようとするし、“悪霊”は人を取り殺そう、取り憑こうとしてきます。」

「なるほど・・・。そういえば、シャドウも似た様なところがあるな・・・。」

「へぇ〜、そうなの?やっぱり、人々の精神から生まれたって意味では、シャドウや悪霊って、似た様な感じなのねぇ〜・・・。って、あっ・・・。」

 

俺の呟きに、そっぽを向いていた筈の美神さんが反応を返してしまい、若干気まずい雰囲気が流れる。

 

「もぉ〜、やっぱり気になるんじゃないですかぁ〜。自分で説明したらどうですか?」(ヒソヒソ)

「い、嫌よ。私にも“イメージ”ってモンがあんでしょーがっ!」(ヒソヒソ)

「横島さんなら、今更気にしないと思いますけど。あ、後、鳴上さんもシロちゃんやタマモちゃんだって。」(ヒソヒソ)

「い、いーから、おキヌちゃんが説明しなさい。」(ヒソヒソ)

「はいはい。」(ヒソヒソ)

 

・・・うん、丸聞こえなんですが・・・。

 

「コホンッ!と、この様に、“悪魔”や“悪霊”に対峙する場合、この点を注意しなければならないのですよ。弱点を付かれると単純に命の危険がありますし、場合によっては仲間割れが起こる可能性もあるからですね。」

「ふむふむ。」

「で、その上での対処法は、平常心を保つ事です。下手に怖がったりや焦ったりするのは、相手の思うつぼですからね。まぁ、それが一番難しかったりするんですが・・・。」

「獣同士のケンカも、先に目を逸らした方の負けでござるからなー。」

「・・・そういう話?」

「う〜ん。まぁ、間違ってはいないかなぁ〜?つまりは、相手に付け込む隙を与えない様にする、って事だから・・・。」

「なるほど・・・。少しずつ、話が見えてきました。つまり、時には虚勢やハッタリが大事、と言う事ですね?」

「そうですそうです。で、話はもとに戻るんですが、美神さんはその事を熟知していますから、現場では強気な態度や勝ち気な態度を崩しません。これはもちろん、相手にナメられない様にする、って意図もあるんですが、仲間、つまり、一緒にいる私達に不安を与えない様に、って言う二重の意味があります。」

「そうかっ!当然ながら、リーダーが不安そうだと、チームは混乱してしまいます。それは、現場では命取りとなる。それに、不安や疑念があると、まさしく相手に取っての付け込む隙となる。そうした態度は、生き残る為の知恵、なんですね?」

「・・・おそらく。」

 

チラリと美神さんを眺めながら、おキヌさんは首を縦に振った。

なるほど。

もちろん、おキヌさんが事前に断った通り、それが美神さんの素である事も否定はできないが、そうした心構えがあった、って事か・・・。

 

一応は俺も、自称特別捜査隊のリーダーを務めていた事もあって、そこに感じ入るものがあった。

 

「ですから、美神さんがそういう態度なのには意味があるんです。そして、これはあまり言うと怒られてしまうかもしれませんが、それ以上に美神さんは勉強家で、事前調査を怠りません。何故ならば、現場では不測の事態は常に付き纏う問題だからです。しかし、そうなったとしても、あらゆる知識を身に付けているおけば、更にどういうトラブルがあるのかを事前にピックアップしておけば、生存率が上がるからですね。」

「・・・。」///

 

そっぽ向いてるが、美神さんの耳が真っ赤になっている事に俺は気が付いた。

案外、影で努力している事を知られるのが恥ずかしいのかもしれない。

・・・また一つ、美神さんの事がわかった気がした。

 

コミュランクアップ。

・・・とはならなかったが、理解は深まったかもしれない。

 

ってか、美神さんがのアルカナって何だろう?

やっぱり、“女帝”、かな?

 

などと、割とどうでもよい事を考えていると、おキヌさんは最後に横島に向き直った。

 

「横島さん。確かに、美神さんも言った通り、今の横島さんはそれは強くなりました。もはや、私達とは次元の違うレベルで、です。けれど、それでも、元・幽霊の私から言わせれば、人はいつか死んでしまうモノなのです。そうならない様に、そうさせない様に、私達はここにいます。何故なら、アナタは私達にとっても、大切な人だからです。」

「・・・おキヌちゃん・・・。」

「・・・アンタも、強さだけじゃなくて、もう少し勉強もした方がいいわよ。ま、アンタでも頭はついてるんだし?」

「・・・美神さん。・・・その、ありがとうございますっ!」

「フン・・・。」

 

その様子を、俺とシロ、タマモは微笑ましく見ていた。

 

なんだかんだ言っても、やっぱり美神さんは横島の師匠だんだなぁ〜、と思ったりもした。

また、若干二十歳そこそこでその境地に至っている美神さんを、改めて凄い人だと思いながらも、同時に照れ屋で素直ではないところのある人である事も再認識したのであったーーー。

 

 

to be continued




原作でも触れられていましたが、美神令子は案外勉強家です。
後半の方では、横島に実力的には抜かれてしまいますが、やはりその知識などにおいては横島を上回っており、その重要度が下がる事もありませんでした。

現実でも、現場経験豊富で幅広い知識を持ち、冷静な判断力を持つ指揮官の存在は頼りになりますからね〜。

誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、よろしければ本作共々チェックして頂けると嬉しく思います。
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