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番長side
「いやぁ~、キミのご両親は物分かりが良くて助かったよ。」
「そんな訳ないだろっ!お前、何か仕掛けなかったか・・・?」
「あ、やっぱり分かっちゃう?まぁ、
「やっぱりか・・・。」
「まあまあ、悪かったとは思うけど、キミのご両親まで巻き込む訳にはいかないでしょ?」
「それは分かるんだが・・・、それでまた海外出張か・・・。まぁ、出張はいつもの事ではあるんだが・・・。」
翌日、俺はイザナギに言われてとある山へと赴いていた。
昨日は、稲羽市を離れて都会に戻り両親との再会を果たす、というイベントが巻き起こる予定だったのだが、もちろんそれは果たされたのだが、また両親と暮らしながら都内の高校に通う、という流れにはならなかった。
まぁ、本来はそうなる予定だったのだが、昨日のイザナギから聞かされた話の結果として、神様的なパワーを使ったのかどうかは定かではないが、再会するや否や、両親は再び一年間の海外出張が決まった、との事だったのである。
いや、両親は職業柄、昔から転勤が多かった事もあるが、流石にそんな話は聞かされていなかった俺としては面食らってしまう。
そうなれば、必然的にこの同行者を疑うのが自然の流れ、というものであろう。
「まぁ、ご両親と共に過ごせなくなったのは、本っ当に申し訳ないんだけどさ。」
「・・・まぁ、それについてはもういいさ。ウチは割と放任主義だったからな。流石にネグレクト、みたいな話ではないが、特に高校に入ってからは、割とお互い自由気ままにやっていたしな。・・・そういえば、叔父さんにも“あの姉夫婦の息子にしては、まっすぐ育ったな。”って言われたっけ。」
「あっ・・・、じゃあ、元々そういう認識、って事かい?」
「・・・多分な。」
自分の両親を捕まえて声を大にしては言えないが、まぁ、結構いい加減と言うか自由奔放な両親だからな。
案外、イザナギが何かしなかったとしても、すんなり説得できた可能性も高いのである。
大変遺憾ではあるのだが・・・。
「まぁ、けど、結果オーライでしょ。」
「だが、その結果、俺は完全に住む場所を失う事となったんだが?」
「それは、これから向かう場所に行けば解決できるさ。・・・多分。」
「・・・。」
・・・本当に大丈夫なんだろうか?
若干不安になってきたが、俺は持ち前のおかん級の寛容さでそれを飲み込んだ。
まぁ、何とかなるだろう。
・・・
「ところで、何処に向かっているんだ?そこまで険しいほどではないが、こんな山中に何があるって言うんだ?」
「ああ、まだ言ってなかったね。“妙神山”ってところに向かっているんだ。」
「・・・?この山は、そんな名前ではなかったと思うが・・・?」
「まぁ、一般的には、誰にでも入れる場所じゃないからねぇ~。それに、“妙神山”、ってのも、山全体の名、ってよりは、とある拠点の名前だし。」
「ふ~ん・・・?」
よく分からないのだが、その“妙神山”という拠点に用があるのか・・・。
そんな事を考えながら、しばらく進んでいくと、少し開けた場所に出た。
「ああ、ここだ、ここだ。」
「・・・???・・・何もないが?」
「まぁ、
「・・・ふむ。」
イザナギの言いたい事はよく分からないが、神様や悪魔的な存在が認知されていないのは何となく分かる。
クニノサギリやアメノサギリ、マリーやイザナミに出会った俺達でさえ、いまだに半信半疑なのだからな。
まぁ、俺については、イザナギとの事もあって、信じざるを得なかったのだが。
俺の疑問に答えた後、イザナギはブツブツと何事かを呟き始める。
「あまたの世界へ通じる扉よ!道を開き、我らを迎え入れよ!!」
「っ!!!???」
すると、突然景色が変わった。
先程まで、穏やかで大して険しい場所ではなかったのだが、今の目の前に広がる光景は、吹雪、とまではいかないまでも、視界は極端に悪くなり、心なしか気温も下がった様に感じる。
それに、ゴツゴツとした岩肌が剥き出しの状態の、まるで別の山に来たかの様である。
「さむっ・・・!」
「少し軽装備だったかもしれないねぇ~。けど、ここまで来れば目的地はすぐそこだ。ちょっとだけ我慢してね。」
「・・・はっ?・・・・・・・・・えっ?」
身動ぎしながら、イザナギの言葉に若干違和感を覚えたのだが、すぐにイザナギが言って事が理解できた。
あいかわらず視界は悪かったが、少し目を凝らしてみると、こんな場所には不釣り合いな建物の存在が目に飛び込んできたからである。
「さっ、進もう。」
「あ、ああ。」
軽くパニック状態となった俺だったが、イザナギの言葉に促されつつ、この場所に長く留まるのは危険と判断して、その建物に歩を進めるのだったーーー。
・・・
道化師side
「いーやぁーーーー!!!」
「ええい、チョコマカと逃げ回りおってからにっ!正々堂々、正面から立ち合わんかいっ!」
「いやじゃアホーーーー!ってか、
「誰がアホじゃっ!ええい、今日こそ、その性根を叩き直してくれるわっ!!」
「あんぎゃぁーーー!」
その“妙神山”の修業場、異界に形成された広大な土地にて、二人の男が対峙していた。
一人は、トレードマークであるバンダナを額に巻き付けた軽薄そうな少年であり、中華風の道着を身に付けていた。
もう一方の男、いや、猿顔をした存在は、人民服の様な服装に身を包み、彼の身長より長い棍棒の様な物を振り回していた。
少年の名前は横島忠夫といった。
そして、猿顔の存在は、これはまさしく猿(正確には石猿)であり、また仏門における超上位の実力者にして、日本でもお馴染みの『西遊記』の主人公、斉天大聖孫悟空、その人であった。
情けなく泣き叫びながらも、そんな斉天大聖の攻撃を器用に避け続ける横島。
と、そこへ、それを応援する声が上がった。
「がんばれー、ヨコシマー!おじーちゃんも、やっちゃえーー!」
「だんだん人間離れしてきましたねぇ~、横島さん。いえ、それは元々でしたか・・・。いずれにせよ、老師の攻撃をこうもことごとくかわしきるとは・・・。」
「パピリオーーー!余計なこたぁ言わんでいいーーー!!!」
「お~、パピリオや。おじいちゃん頑張るからのぅーーー!!!」
「うぎゃーーー!!!」
「アハハハハッ!!!」
「だ、大丈夫なんでしょうか?」
チュドーーーン!
と、その声に発奮した斉天大聖は、少し手加減を忘れてやる気を見せてしまう。
たまったものではないのは横島である。
先程とは桁違いの威力の攻撃に、ボロ雑巾のごとく吹き飛ばされていた。
そんな様子に、しかし、その声の主は、面白そうに笑い声を上げていた。
見た目、小学生低学年くらいの幼女の姿の存在、横島と同じく中華風の道着に身を包んだ彼女はパピリオ。
こう見えて、魔族である。
一方、横島、パピリオとまた違う中華風の道着に身を包んだ美女、見た目二十歳そこそこのオレンジ寄りの赤髪の女性は、その様子をハラハラとしながら見守っていた。
彼女は小竜姫。
こう見えて、斉天大聖と同じく仏門の守護者であり、竜神族の一員。
つまり、平たく言うと立派な神様の一柱なのであった。
「ヨコシマの頑丈さなら平気でちゅ。」
「まぁ、それはそうなんですけど・・・。はぁ、老師ったら、パピリオには甘いんだから。・・・おや?」
「ん?どうしたんでちゅか、小竜姫?」
「いえ、どうやらお客さんの様ですね・・・。老師っ!!!」
「うむ、気付いておるわ。横島、一旦修業は中断とする!」
「ふぃー、た、助かったぁーーー!」
普通なら即死していてもおかしくない攻撃、更にはその余波をモロに受けながらも、また、身に付けていた服がボロボロになりながらも、横島は五体満足で立ち上がりそう呟いた。
「・・・じゃが、ワシをアホと言った事については折檻しておこう。」
「あべしっ!」
「キャハハハッ!」
「もはや不死身ですよね・・・。気になるのは、横島さんはともかく、身に付けていた服なんかも時間が経てば元に戻る事ですけど・・・。」
それは気にしてはいけない。
・・・
番長side
「着いたよ、悠くん。ここが、“妙神山”さ。」
「こんなところに、こんな立派な建物が・・・。」
イザナギの言う通り、二・三分歩くと、目的の場所に辿り着いていた。
俺は、こんな場所には不釣り合いなその圧倒的な存在感のある建物を見やり、一瞬寒さも忘れて呆然としてしまう。
「さ、いつまでもこんな場所にいては、ボクはともかく悠くんの命が危ない。さっさと中に入ろうじゃないか。」
「あ、ああ。」
イザナギにそう促されると、俺はハッとしてイザナギの後に続いた。
すると、
「待たれよ!」
「な、何だっ!?」
突然、制止の言葉を放たれ、俺は当惑する。
何処から声がするんだ?
「悠くん悠くん。目の前、目の前。」
「・・・・・・・・・は?」
「・・・コホンッ!我らはこの門を守護する鬼なり!何用でここに参ったっ!?」
「許可なき者は、何人たりとも通す事はまかりならんぞっ!?」
「も、門の装飾がしゃべっているっ・・・!?」
「違う違う。彼らは本物の鬼だよ。まぁ、所謂仏門に帰依している鬼だから、善い鬼、なんだけどね。」
「・・・ほう、我らの事を知っておるのか。」
「お主、ただ者ではないな?」
「まあね。で、ボクらはここの管理者に用があるんだけど、通して貰えるかな?」
「・・・ただで通す訳には参りませんな。」
「・・・ならば、どうするのかな?」
「我々と手合わせ願おう。勝てば門を開こうではないか。」
「ふむ、“試練”、ってヤツだね。OK、分かったよ。」
「「では、いざ、尋常に勝負っ!!」」
「くっ!!」
「悠く~ん。頑張れー!」
「お前は助けてくれないのかっ!?」
「これは“試練”だからね。この中に入る資格があるのかを試すテスト、ってヤツさ。で、神様であるボクが手助けしてしまうと、フェアじゃないからね。キミの素の実力と、ペルソナ能力でどうにかするんだ。」
「素の実力ったってっ・・・!」
門の両脇に設置されていた首なしの金剛力士像の様な二体の像が動き出し、俺に襲いかかってきた。
とは言え、俺はあくまで普通の高校生である。
まぁ、運動神経は、多少人より優れている自覚はあるものの、それでも本物の鬼と戦う事などできよう筈もない。
「何言ってるんだい。“マヨナカテレビ”では、散々シャドウと戦ってきただろ?ヘーキ、ヘーキ。」
「お前、他人事だと思ってっ・・・!」
意外なほど俊敏な像の攻撃を掻い潜りつつ、しかし、言われてみればイザナギの言う通りである。
シャドウと戦い続けてきた経験のお陰か、俺は二体の像の動きについていける事に気が付いた。
「ペルソナ能力者は、集合的無意識と繋がっているから、達人と呼ばれる者達の技術や経験をフィードバックさせる事ができるんだよ。キミ達も不思議に思わなかった?ペルソナ能力自体は特殊な能力だけど、しかし、キミ達はあくまで普通の高校生だった。にも関わらず、キミ達はペルソナ能力なしでも、シャドウと戦う事ができていたよね?それは、その恩恵によるものだよ。もっとも、いくら技術や経験をフィードバックできると言っても、あくまでそれだけだよ。例えば、サッカーをした事もない人が、サッカーのプロフェッショナルの技術や経験をフィードバックしても、すぐに同じ様に動ける訳じゃない。通常と同じ様に、それら技術を模倣したり習得したりして、少しずつ自分のものにしていくんだ。もっとも、キミらは人に比べたら加速度的に成長が早い訳だけどね。つまり、一年間を通して戦い続けた結果、キミ達の戦闘技術は、達人と呼ばれる者達に限りなく近付いているんだよ。まぁ、普段は戦う機会なんてないだろうし、キミ達が自覚していないのも無理はないんだけどね~。」
「そ、そうなのかっ・・・!?」
そんな場合ではないとは言え、俺は二体の像の攻撃をかわしながらもイザナギの言葉に耳を傾ける余裕があった。
まぁ、正直、イザナギの説明が全て飲み込めた訳ではないが、今、この場面では、やれる、って事が一番重要だった。
「おのれ、チョコマカとっ・・・!」
「しかし、攻撃しない事には“試練”は終わらんぞっ!?」
・・・確かにその通りである。
とは言え、今この時点では、俺は武器のたぐいを持ち合わせていなかった。
流石に素の実力がかなりついているとは言え、(おそらく)石像相手には、素手ではこちらの身体が傷付きかねない。
ならばっーーー!
「オベロンッ!」
カッーーー!
「「っ!!!???」」
「マハジオッ!!」
「うぎゃぁぁぁーーー!!!」
「ぐわぁぁぁーーー!!!」
「どうだっ!?」
一か八か、ペルソナを召還してみる。
が、“マヨナカテレビ”の様にアッサリ成功し、若干肩透かしを食らったのであるが、それはそれ、ボーとしている暇はないので、即座にマハジオ、雷属性の全体攻撃を加える。
それは二体の像に直撃し、効いた様に見えた。
「・・・お見事です。この勝負、貴方の勝ちですね。」
と、そんな事を考えていると、門が開き、中から人がゾロゾロ出てくる。
その中の一人、綺麗な女性がそう俺に賛辞を贈ってくれた。
「アババババッ、お、お言葉ですが小竜姫さま、我ら、まだまだやれますぞっ!?」
「し、しびれるー、み、『右の鬼門』に同じくっ!」
「いやいや、“試験”だからな?マジにやりあってどうするんだよ。」
「そうは言うがな、横島。これは、我らの面子に関わる事なんだっ!」
「『左の鬼門』の言う通りだっ!これでは、我らがまるで弱いみたいじゃないかっ!」
「もちろんお前らは弱くはねぇーけどよぉー。」
「横島さんの言う通りですよ?ここはあくまで修業の場。力を示した以上、彼らには中に入る資格があります。」
「「・・・御意。」」
「まぁ、お主らのプライドも分からんではないがな。やられっぱなしと言うのは、男として立つ瀬がないしのぅ。」
「老師・・・。」
「よちよち、二人ともがんばったでちゅよ。」
「「とほほ・・・。」」
「た、タフだな・・・。」
「普通は、雷の直撃を食らって立てる筈もないんだけど、彼らは鬼だからねぇ~。あの程度、大したダメージじゃないのさ。」
「そうなのか・・・。」
俺の中の常識が音を立てて崩れていくのを、俺は微かに感じていた。
「とりあえず、中に入りませんか?お客さんが困っていますし。」
「「「「あっ・・・。」」」」
「ど、どうも。」
to be continued
誤字・脱字がありましたら、御指摘頂けると幸いです。
後、他サイトで恐縮ですが、「小説家になろう」さんや、「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル作品を執筆しておりますので、本作品共々、チェックして頂けるとありがたいです。