P4GS   作:笠井裕二

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続きです。


マジカル・ナイトメア・ツアー 3

 

???

 

「た、頼む!私達を元の世界へと戻してくれっ!」

「そりゃ、向こうの出方次第だ。それに、アンタらは“夢”を求めてこの場にやってきたんだろ?なら、普通なら体験できない事態を楽しめよ。クククッ。」

 

仮想空間にて、そんな会話が繰り広げられていた。

一人は、おそらく二十歳そこそこの一見普通の青年だ。

 

もっとも彼は、今回の事件の犯人であり、その雰囲気はどこかすでにマトモではなかったが。

 

対する彼にそう発言したのは、30代後半くらいの中年男性だった。

おそらく、家族連れの父親であろう。

その傍らには、震える女性と幼い女の子の姿もあった。

 

「な、なら、せめて女性や子供は開放してくれないかっ?人質なら、私達だけでも事足りるだろう?」

「あ〜あ〜、うっせ〜なぁ・・・。アンタ、自分の立場分かってんの?俺と取引できるとでも思ってんの、かっ?」

「ガハッ!!!」

「アナタッ!!!」

「パパッ!!!」

 

苛立った様に青年は、中年男性をしたたかに蹴り飛ばした。

そこは仮想空間とは言え、ダメージはある様だった。

 

「オメェらはただ震えてりゃいいんだよ。口答えすんじゃねぇ。」

「「「「「・・・。」」」」」

 

暴力というのは、恐怖というのは、人々を一時的に縛る効果がある。

少なくとも、普段普通の生活を送っている者達が、こうした場面に立ち会って何某かの行動を起こせる方が稀であろう。

 

実際、その場にはこの家族連れを含めて十数人のアトラクション体験者が集っていた。

つまり、客観的に見れば青年一人を取り押さえる事自体は可能だったのだが、あまりの非日常の事に、またあまりの恐怖故にか、行動に移せる者達は皆無であった。

 

いや、

 

「お、お願いしますっ!せめて子供達だけでもっ・・・!!」

 

蹴り飛ばされた中年男性だけは、まだ青年にそう訴えかけていた。

この男性、かなりの胆力の持ち主なのかもしれない。

 

しかし、その場にはおいてはそれは悪手だった。

その発言は、更に青年を刺激する事となったからである。

 

しかも、しばし忌々しげに中年男性を睨み付けていた青年は、急にその表情を歪めて笑顔になっていた。

どうやら、ろくでもない事を思い付いた様である。

 

「・・・なるほどね。アンタ、命が惜しくねぇんだな?なら、いっちょ逝っとくか?頭数が少なくなるのは惜しいんだが、ま、これで俺の()()が相手にも伝わんだろ。」

「・・・へっ?ガッ、ガアァァァッーーー!!!」

「「「「「・・・ヒッ!!!」」」」」

「見せしめ、ってヤツだ。」

 

そう言うと、青年の()から()()が飛び出してきた。

その()()は中年男性に絡みつくと、彼を締め上げ始めたのである。

 

「あ、アナタァァァッーーー!!!」

「ぱ、パパァァァッーーー!!!」

「クククッ。」

 

まさに、中年男性の命は風前の灯であった。

しかし、彼らにとって幸運な事に、青年にとっては予想外な事に、ここで変化が訪れる。

 

「な、何だっ!?ま、まさか、侵入者かっ!!??」

「「「「「・・・へっ?」」」」」

 

青年が動揺した事で、その()()は四散する。

どうやら、その()()完全にコントロールできている訳ではない様だ。

それによって、中年男性の拘束は解かれ、彼は九死に一生を得たのである。

もっとも、青年にとってはそれどころではなかった様であるが。

 

「あ、アイツら、俺を騙したのかっ!?この()()に入れるヤツなんていないって言ってたのにっ・・・!」

 

ブツブツと早口で呟いていた青年であるが、しかし、ふと自身の影から出ている存在を見やり、多少冷静になって呟いた。

 

「・・・いや、確かにこれは想定外だが、ここが俺の領域(テリトリー)である事は間違いない、か。なら、その何者かは知らんが、侵入者を排除する事も簡単にできんだろ。なんたって、今の俺には()があんだからなぁ〜。考えようによっちゃ、これは案外面白い事態かもしれん。」

 

異形の存在が青年に安心感を与えたのか、彼の動揺はみるみる内に回復していった。

と、同時に、彼の内側からまた()()が溢れ出してくる。

 

「「「「「ひっ・・・!!!」」」」」

 

彼に捕われた被害者達は、そのあまりの非現実的な現象に恐れおののく。

しかし、青年の意識が侵入者に向かっていたからか、それらに襲われる事はなかった。

 

「さて、と。ちょっと用事ができたから、オメェらはここで大人しくしてな。侵入者を排除したら、また戻ってくるからよ。おいっ、コイツらを見張ってろっ!」

「ギギィ・・・。」

「アー・・・、ウー・・・。」

 

だからと言って、状況が改善した訳でもないが。

まぁ、先程は目の前で殺人が行われる寸前だった事を鑑みれば、今の方が幾分かはマシかもしれなかったが。

 

複数の蠢く影に取り囲まれながら、青年が消えていく様子を見ながら、被害者達は一心に祈っていた。

 

ー誰か助けてくれっ・・・!ー

 

その思いが届いたのかどうかは分からないが、時を同じくして、鳴上、横島、シロ、タマモの急造チームは、この空間に足を踏み入れていたのであったーーー。

 

道化師side

 

「何だか、不気味なところに出たなー。」

「先程のアトラクションとは、全く別物の様に感じるでござるよ。」

「そーね。」

「・・・どことなく、マヨナカテレビに似てるな。」

「ほーん。やっぱ、お前の能力で入れたって事も考えると、似た様な場所なのかもしれんなー。」

 

美神さんの後押しもあって、俺らは意を決して異界に飛び込んでいた。

で、気が付くと、この空間で出ていたワケであるが、先程アトラクションを体験した身としては、さっきとは別物の空間に軽く戸惑っていたりする。

まぁ、端から見れば、緊張感がない様に感じるかもしれんが。

 

もちろん、油断はしていないのだが、一応は修羅場には慣れている事もあって、必要以上に取り乱したりはしない。

以前に美神さんやおキヌちゃんにも指摘されたが、動揺は相手に付け込む隙を与えかねないからなー。

 

「ホッ、と。・・・どうやら、ここでは俺らの霊能力は使えるよーだな。」

「その様でござるな。タマモはどうでござるか?」

「問題ないわ。普段通り使える。鳴上は?」

「俺もだ。さっきの神通棍も中々面白かったんだがな。」

 

一通り現状を確認する俺ら。

自分達の能力が使える事が確認できたので、ひとまずは安心だ。

以前の時は、霊能を封じられていたからなー。

 

「それでは、探索を始めるでござるよ。」

「あー、その前に一応役割を確認しておこう。なんだかんだ言っても、鳴上は素人だからな。もしかしたら、この空間については鳴上の方が詳しいかもしれんし、いざとなれば切り札となるかもしんが、一応霊能絡みの専門家としてはお前を矢面に立たせるのはどうかと思うし。」

「異論はない。俺もでしゃばるつもりはないからな。」

「助かる。とりあえず、前衛は能力を考えるとシロと俺が適任だろう。後衛はタマモと鳴上、って感じでどうだ?」

「了解でござる。露払いは任せるでござるよ。」

「まぁ、それが無難でしょうね。私の能力は近接戦闘には向かないもの。」

「了解だ。俺は、索敵とサポートに徹しておく事とするよ。」

「オーケー。なら、早速探索を始めよう。」

 

短く打ち合わせを終えると、俺らはこの場の探索を開始する。

とりあえず、捕われた人達を見つけるのが先決だ。

まぁ、その過程でこの事件の首謀者と遭遇する可能性も高いが。

 

と。

 

「っ!?何か来るっ!」

「「「っ!?」」」

 

発言通り、早速ペルソナを呼び出して索敵に徹していた鳴上がそう呟いた。

それに、俺らも油断なく臨戦態勢に入る。

 

ズプンッ。

 

次の瞬間、黒い影が現れてヒトガタに形を取った。

 

『これはこれは。ようこそ、侵入者諸君。招いた覚えはないが、一応歓迎しよう。』

「・・・アンタが犯人か?」

『さて、どうだろうな?それに、それを知ったとしても無意味な事だ。何故なら、お前らはこの場で死ぬのだからなっ!!』

「「「「っ!!!」」」」

 

そう影が呟くと、俺らの周りに他の影が現れて俺らに襲いかかってきた。

 

『お前ら、そいつ等を排除しろっ!では、侵入者諸君。運が良ければ再び会おう。フハハハハハッ!』

「あ、おい、待ちやがれっ!!」

 

と言って、待つはずがないのだが、一応これはお約束だからな。

 

「数が多いな。それに、やはりシャドウに似ている気がする。まぁ、厳密には違うんだろうが。」

「これは、ちっと骨が折れそうだなー。」

「面倒でござるなー。」

「どーしてあの手の手合いって、バカの一つ覚えの様に、初手大量投入してくるんでしょーねー。」

「ま、数は脅威だからな。それで終われば良いし、そうでなくとも俺達を疲弊される事ができる。」

「ま、ボスがいきなり出張(でば)ってくるのもどーかと思うしなー。」

 

ヒトガタの影が消えると、不定形のうねうねした大量の影が俺らを取り囲んでいた。

それに対して俺らに焦りはなかったが、面倒な事態である事には変わりなかった。

 

「とりあえず、各個撃破でいいか?」

「いや、ちょっと待ってくれ。ヒミコっ!」

 

カッーーー!

 

俺の作戦とも言えない作戦に、鳴上が待ったを掛けた後、先程呼び出していたペルソナの名を再び呼んだ。

・・・これは見た事がないペルソナだ。

いや、コウゼオンにどこか似ている気がするが。

 

「どうやらここでは、俺のペルソナ能力は制限される様だ。先程もコウゼオンを召喚しようとしたんだけど上手く行かなかったからな。」

「ほーん。そうなのか。」

「だが、ほとんど問題はない。確かにコウゼオンはりせの持つ現時点での最終進化系のペルソナだが、そもそもその前の段階のヒミコやカンゼオン自体、とんでもない性能を持っていたからな。例えば、ヒミコっ!」

 

鳴上の呼びかけに、神々しく鳴上の後ろに控えていた女性型のペルソナは、スッと鳴上に何かを被せる。

ヘッドディスプレイみたいなモンか?

 

「よし、分かった。この敵には炎がよく効く様だぞ。」

「・・・は?・・・え?弱点が分かる、のか?」

「ああ、そうだが・・・?まぁ、今の状態だと、仲間の誰かが弱点属性に効果的な攻撃手段を持っている事が条件、だった様な気がするが。コウゼオンなら、そんなモン関係なく“フル・アナライズ”が使えるんだがな。」

「いやいや、チートやろそんなんっ!普通、戦闘しながらそういうのは探ってくモンだぞっ!」

「まぁ、気持ちは分かるけどな。けど、中には弱点属性がない敵も多いから、チートってほどのもんじゃないさ。」

 

いや、どう考えてもチートだろっ!

いかにも当たり前、みたいな顔でのたまってる鳴上に、俺は心の中でそうツッコミを入れる。

 

しかし、よくよく考えてみれば、これほどのチート能力持ちが仲間にいても、鳴上の話では事件解決に相当苦労したそうだから、どこの修羅の国からやって来たのやら。

しかし、今はそれはいい。

これで、相当戦闘がやりやすくなったからな。

 

「ま、まぁ、今はそれはいいや。聞いたか、タマモ。」

「オーケー。全部燃やせばいいのね?」

「そうだ。そうすれば、コイツらはダウンする。そこに、シロや横島が追撃すれば、すぐに片が付くだろう。」

「だ、そうよ。シロ、横島、準備はいい?」

「オーケーでござる。」

「いつでもいいぜ。」

「了解。んじゃ、『狐火』!」

 

タマモがそう呟き、彼女の十八番(オハコ)である狐火が、俺らを取り囲んでいた不定形の影に一斉に飛び散っていく。

すると、鳴上の言う通り、不定形の影達は拍子抜けするくらい一斉にひっくり返っていた。

いくら狐火とは言え、大したダメージにも見えんかったのだが。

 

しかし、これはチャンスであった。

こんな隙を見逃す俺とシロではない。

倒れた影を俺らは追撃すると、割とアッサリと片が付いたのである。

 

「片付いたわね。」

「みんな、お疲れ様。」

「割と弱っちかったでござるなー。」

「・・・確かにそこまで強力ではなかったが、これは鳴上の能力のお陰だ。普通に戦ってたんじゃ、もう少し手こずってもおかしくなかったぜ?そもそも、数だけは多かったからなー。」

「役に立てて良かったよ。それに、ヒミコの能力はそれだけじゃない。」

「へ?」

「こっちの世界だとどれほどの効果があるかは分からないが、ヒミコには戦闘終了時、体力とSP、つまり精神力、いやこっちだと霊力か?を、ある程度回復する能力があるんだ。」

「・・・そういや、結構暴れ回ったのに大して疲れていないよーな。」

 

ま、俺らの力が増しただけ、ってのも否定しないが、確かにそれが本当なら、継戦能力が格段に上がる事を意味する。

敵の弱点が分かるだけでもチートじみた能力だが、体力と霊力の回復効果もある、となると、これを美神さんが知ったらさぞ大喜びしそうな能力である。

 

「悪い事は言わん、鳴上。美神さんには言うなよ?」

「・・・何故だ?」

「もし、お前がそんな能力を隠し持ってると知られたら、あの人の事だ。あの手この手を使って、確実にお前を取り込もうとするに決まっとるからだよ。」

「そ、そうなのか?」

「まー、これだけ便利な能力じゃーねー。」

「否定はできんでござるなー。」

 

鳴上は結構美神さんを好意的な目で見ているが、断言しておく。

まぁ、可愛らしい一面があったり、案外情に厚かったりする事は否定しないが、基本的にあの人は生粋の女王様気質だからなー。

それ故に、油断すると、すぐ利用されてしまう事も否定できないのである。

 

「忠告はしたぞ?んじゃ、とりあえずさっきのヤツを追いかける事としよう。今のところ、さっきのヤツが一番の手掛かりだからな。」

「了解でござる。」

「ん。」

「り、了解。」

 

先程の俺の言葉に鳴上は戸惑っていたが、今はこの状況を何とかするのが先だと思い直したのか、ワンテンポ遅れてそう返事した。

 

その後俺らは、鳴上の先導のもと、この不可思議空間を攻略していく事となるのだがーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで鳴上。お前、いつの間にメガネなんてかけてたんだ?目、悪かったっけ?」

「あ、いや、いつもの癖でな。マヨナカテレビだと、このメガネがないと霧のせいで周囲が見渡せなかったんだよ。ま、今考えると、所謂“霊視”を補強する為の道具だったんだろうけどな。あ、それと何か気合が入るんだよ。」

「ほーん。“霊視ゴーグル”みてーなモンか。っつーか、お前何でも様になるなー。ケッ、これだからイケメンは・・・。」

「はいはい、ひがまないの。」

「何だかオシャレでござるなー。」

「よかったら、皆もかけるか?クマから餞別に、結構貰ってきてるんだ。俺にはいつものやつがあるから、気に入ったやつがあればプレゼントするぞ?」

「えー、いいでござるかー?実は、こういうのに憧れていたんでござるよ。げーのーじんみたいでカッコイイでござるからな。」

「ま、貰える物は貰っておくわ。それに、私達は普通に霊視できるけど、確かにこの空間は特殊かもしれないからね。便利なアイテムは使わない手はないわよ。」

「あー、俺はその手のヤツは似合わねーと思うからパス。」

「まーまー、そう言わずにアンタもかけなさいよ。これなんかどーよ?」

「あっ、それはっ・・・!」

「あ、おいっ!!」

「アハハハッ!に、似合ってるわよ、横島。」

「クククククッ!せ、先生。いいでござるよ。」

「・・・プッ。」

「い、一体何だっつーねんっ!って、これ、ヒゲメガネじゃねーかっ!!」

「く、クマがジョークでくれたんだよ。し、しかし、お前、異様に似合ってるぞ。」

「キャハハハッ!よ、よし、決めたっ!じゃあ横島は、そのヒゲメガネをかけてこの空間の攻略をしなさい。」

「な、何でじゃーーーー!!!」

 

 

その後、不気味な不可思議空間に、スタイリッシュなメガネ姿の男女と共に、コテコテの芸人の様な大阪人の姿がそこにはあったのだったーーー。

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、よろしければ本作共々チェックして頂けると嬉しく思います。
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