P4GS   作:笠井裕二

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続きです。


マジカル・ナイトメア・ツアー 5

 

???

 

一方、この謎の空間に閉じ込められた被害者の人々は、かなり気まずい時間を過ごしていた。

この場にいるのは、世界的大企業が経営しているとは言え、要は遊園地に遊びに来た一般の人々だ。

それが、ただアトラクションを体験しようと仮想空間に入ったら、閉じ込められて人質にされてしまったのだから、それも無理はないだろう。

 

しかもその中の一人が、犯人と思わしき人物と、()()()交渉を始めて、しかも命の危機にさらされる、という場面も目撃してしまったのだ。

恐怖感と共に、ある種の不満が出たとしても無理からぬ状況なのであったーーー。

 

 

「ゲホッゲホッ・・・!!!」

「パパッ!!!」

「アナタ、大丈夫っ!?」

「・・・あ、ああ、何とかな。しかし困ったぞ。これからどうするか・・・。」

 

先程、今回の首謀者と思わしき青年の“力”によって、命の危機にあった中年男性は、苦しそうに咳き込みながら、何とかそう返答した。

最初に明言しておくが、この男性はかなりの胆力と道徳心の持ち主であり、家族を守る為に先程の行動に至っている。

 

だが、見方を変えると、同じく拘束されている人々から見れば、ただ単に犯人らしき人物に無計画に噛み付いた男、と映る訳で、その発言にどこからかボソリッと不満を漏らしてしまう。

 

「チッ・・・、よけーな事すんじゃねーよ・・・!」(ボソッ)

「ちょっ、高橋くんっ!?」

「「「「「っ!?」」」」」

 

おそらく、犯人と思わしき青年と同世代くらいのカップルの男性がそう呟く。

彼女と思わしき女性は、それに対して彼氏をなだめようとするが、一度漏れ出してしまった不満は留まる事はなかった様である。

 

「・・・余計な事とは私の行動の事かな?」

「アナタッ!!!」

「ッ・・・!」

 

それに対して、家族連れの中年男性は反応を返し、青年は躊躇しながらも、キッと中年男性を見据える。

 

「ああ、そうだよっ・・・!アンタ、何犯人を刺激してんだよっ?危ねえだろうがっ!」

「それは・・・、申し訳ない。だが、何もしなければ現状を変える事ができないではないかっ!」

「そんなの、警察とかに任せときゃいいんだよっ!アンタの出る幕じゃないっ!・・・それに、アンタ自分の子供を守る為に、変な取引持ちかけてたよな?」

「そ、それは、言葉のあやでっ・・・!」

「それが余計な事っつってんのっ!じゃあ、もし犯人が子供だけ開放したとしても、俺らの事はどーなんだよっ!?」

「っ!!!」

 

言い合いをする両者。

ある意味意見は平行線だが、実際にはお互いに正論ではあった。

 

素人である者が、犯人と直接交渉する事など愚の骨頂である。

それは、先程の中年男性の顛末から鑑みても明らかであろう。

変に犯人を刺激して命の危機になってしまうからである。

その末で、他の人々にも被害が及ぶ可能性もある訳で、青年の主張通り大人しくしている事はある意味当然の判断であろう。

 

一方の中年男性からしたら、自分の家族を第一優先に考えてしまう事も、これは致し方ない事であろう。

その末で、女子供から先に開放させようとするのも、大人の男性としては、ある意味当然の判断とも言える。

 

(ちなみに、こんな感じに両者がのんきに言い合いをする事ができるのは、この場に残していた筈の影を、犯人が横島らの対応に回したからである。)

 

「ちょっと、止めなよ、高橋くんっ!」

「アナタもよっ!今は争ってる場合じゃないでしょっ!!」

「チッ・・・!」

「フンッ・・・!」

 

両者のパートナーが止めに入り、一旦その場は収まった。

しかし、ただでさえ嫌な空気がより一層悪くなってしまう。

 

「・・・何騒いでんだ、テメェら?」

「「「「「っ!!!」」」」」

 

重苦しい空気の中、突如として犯人の青年が戻ってくる。

彼は彼で、横島らに追い詰められてかなりご機嫌ナナメだ。

そこに、人質が騒いでいれば、彼からしたらイライラを増す要素でしかない。

 

不機嫌そうな青年の表情に、流石に空気がピリつく。

が、先程とは違い、今の犯人には余裕がなかった。

 

「勝手に騒いでんじゃねぇっ!大人しくしてろやっ!!」

「ギャッ!」

「ガッ!」

「高橋くんっ!?」

「アナタッ!?」

「パパァッ!!!」

 

有無を言わさず、争っていた中年男性とカップルの片割れの男性を影で殴り飛ばすと、

 

「オメェはこっちだっ!」

「き、キャアァァァッーーー!!!」

「「葵っ!!??」」

 

そのまま影は、中年男性の娘らしき少女、おそらく年の頃小学校低学年の女の子を拘束した。

 

「や、止めて下さいっ!娘には手を出さないでっ!!」

「るせぇっ!大人しくしてろっつったろっ!!」

「キャッ!!」

「ママッ!!!」

 

先程とは違った暴力行為のオンパレードに、流石にその場の者達はガタガタと震えてしまった。

すでに犯人の青年は、目がすわっている。

カップルの片割れの青年の主張通り、下手に刺激するのはマズい状況であった。

 

だが、

 

「お、お願いしますっ・・・!む、娘を離してくださいっ・・・!!!」

「「「「「っ・・・!!!」」」」」

 

かなり派手に吹き飛ばされたにも関わらず、おそらく、かなりの重症を負っている中年男性は犯人の青年の足元までにじり寄り、そう懇願する。

そこには、家族を守ろうとする男の強さがあった。

 

しかし、この場においてはそれは悪手だった。

スッと表情の抜けた犯人の青年は、

 

「チッ、ウザってぇ・・・!」

 

と、まるで虫でも見る様な目で中年男性を見下ろし、そう呟く。

 

その場に居合わせた者達はゾッとしていた。

と、同時に、その後、犯人の青年が起こすであろうアクションを幻視し、声にならない悲鳴を上げていた。

 

だがーーー。

 

「ちょーっと待ったぁ〜〜〜!!!」

「っ!?」

「「「「「っ!!!???」」」」」

「追い詰めたぞ、このヤローッ!さあ、人質を開放しやがれっ!!」

 

最悪の未来は、謎の少年(?)達の乱入によって未然に阻止されたのである。

まぁそれは、ご存知の通り、横島、鳴上、シロ、タマモの急造チームであったが。

 

しかし、そうとは知らない被害者の者達は、一縷の望みである彼らに期待の眼差しを向けると同時に、皆一様に同じ疑問符を浮かべていたのである。

すなわち、

 

「「「「「(((((・・・何故にヒゲメガネ?)))))」」」」」

 

という事であった。

 

残念ながら横島には、運命のいたずら(ってか、正確にはタマモのゴリ押し)によってか、カッコいいヒーロー然とした姿は期待できないのかもしれないーーー。

 

道化師side

 

大方の予想通り俺らが犯人に追い付くと、ヤツは被害者の人達と共にいた。

んで、一瞬ポカンッとした後に、敵ながら情けなくなるほど狼狽しなながらも、女の子を盾に俺らに脅しをかける。

 

「ひっ!く、来るなっ!こ、コイツがどうなってもいいのかっ!!」

「きゃあぁぁぁぁっ〜〜〜!!!」

 

・・・ここら辺も予想通り。

それも込みで、俺らの作戦は上手くハマッている様である。

しかし、一つだけ、こちらにも誤算があった。

 

「・・・貴様っ!!!」

「ひっ・・・!!!」

 

ビリビリッ!

普段はどちらかというと大人しい、穏やかな印象を持つ鳴上から、素人であろう犯人にも伝わるくらいの()()が漏れていたのである。

 

「お、おいっ、鳴上っ!心配すんなってっ!これも作戦通りなんだからよ。」(ヒソヒソ)

「あ、ああ、すまない・・・。しかし、ちょうど菜々子くらいの女の子が人質に取られていたから、つい頭に血が上ってしまってな。」(ヒソヒソ)

 

俺がそう声を掛けると、鳴上は幾分冷静さを取り戻した様である。

 

ま、気持ちは分からんではない。

鳴上のヤツは、その菜々子ちゃんを非常に大切に思っているのは、コイツの普段の言動からも明らかだからな。

そんな鳴上が、目の前で菜々子ちゃんと同じくらいの年回りの女の子が危険にさらされていれば、冷静ではいられないのだろう。

 

もっとも、先程から言ってる通り、これはこちらとしては想定の範囲内の事であるから、万が一にも彼女に危険が及ぶ事はない。

それが分かっている鳴上は、若干落ち着きを取り戻したが、

 

「だが、少しばかり気が変わった。彼を仕留めるのは、俺に任せて貰いたい。」(ヒソヒソ)

「お、おうふ。わ、分かった・・・。シロもタマモも、いいな?」(ヒソヒソ)

∠(`・ω・´)

∠(`・ω・´)

 

どうやら犯人は、鳴上の逆鱗に触れてしまった様である。

 

・・・っつか、シロとタマモのそれはなんやの?

 

「な、何ゴチャゴチャやってんだっ!!!」

「わーった、分かりましたよ!んで、どうやったら人質を開放して貰えるんだ?」

 

若干ヒステリック気味に叫ぶ犯人に、俺は了解の意を示した。

それに、多少溜飲が下がったのか、犯人は急に調子に乗り始める。

 

「は、ハハハッ!じ、じゃあ、お前とお前で潰し合えっ!そうしたら、コイツは開放してやってもいいぜっ!!!」

「「「「「っ!!!???」」」」」

 

ま、ここら辺も想定通りだ。

っつか、何でこの手のヤツってのは、思考パターンが似通ってるんだろう?

 

指名されたのは俺と鳴上だ。

俺らはお互いに顔を向け合うと、(一応)臨戦態勢に入った。

 

「だ、そうだ、鳴上。人質の為だ。恨むんじゃねーぞ。」

「そっちこそ。」

「ギャハハハハッ!この空間では、俺が神なんだよっ!おっと、そこの二人も、下手な真似はすんじゃねーぞ!?」

「クッ!」

「チッ!」

 

シロとタマモに釘を指す犯人。

 

・・・ここまで上手くハマってると、何だか申し訳なくなってくるなー。

けど、犯人は俺らの()()に全く気付いていない様である。

 

「さあ、殺戮ショーの始まりだっ!!」

 

その犯人の言葉を合図に、俺と鳴上が一斉に動き出した。

もちろん、ガチで殺し合うつもりではない。

その証拠に、俺はあらかじめ用意していた“文珠(もんじゅ)”を取り出す。

 

「喰らえっ!!!」

「「「「「っ!!!」」」」」

 

カッーーー!!

 

そこには、『閃』と書かれていた。

つまり、文字通り、『閃光』を発して、敵の目を一瞬くらませるのである。

 

当然ながら、鳴上、シロ、タマモには事前に打ち合わせをして対策済みであるから、淀みなく動き始める。

しかし、犯人や人質達は、それを知らないので、モロに目潰しに引っ掛かる、という寸法であった。

 

「シロッ!」

「了解でござるっ!」

 

俺の合図に、俺らの中で、一番素早いシロが女の子の確保に向かう。

人質さえ開放してしまえば、後は犯人をボコして終わりだ。

 

しかし、そこで想定外の事が起こる。

なんと犯人は、影を使って目潰しを防いでいたのであった。

 

「ギャハハハッ!残念だったなぁ〜?それくらいお見通しだぜっ!」

「クッ!」

 

シロの手が空を切る。

作戦は失敗であったーーー、

 

と、犯人が油断している事だろう。

 

「ハハハ、ペナルティだっ!オラッ!!」

 

ゴキッーーー!!!

 

「ギアァァァ〜〜〜!!」

「「葵ぃ〜〜〜!!!」」

 

そのまま犯人は、なんと女の子を腕を影を使ってへし折った。

どうやら、かなり常軌を逸している様である。

 

「今度逆らったら、コイツの命はねぇ〜ぞっ!!分かったか、コラッ!!??」

「コイツ・・・?()()()()()()()()()()()?」

「はあっ?」

「「「「「・・・えっ???」」」」」

「自分で自分の腕をへし折るとか、マゾなの?そういうプレイは、プライベートでやって貰っていい?」

「な、何を言ってっ・・・!」「解除。」「ギャアアア〜〜〜〜!!!」

「「「「「っ!!!???」」」」」

「まさか、影を使って目潰しを防ぐとは思わなかったけどよ。そりゃ、最初からブラフよ。本命はこっち。」

「一瞬でも気がそらせれば、私の()()を防ぐ事はできないわよ。」

「そういう事でござる。」

「っ!!!???」

 

すでに女の子は、シロが確保していた。

それに、犯人は混乱していた。

 

答えはこうである。

 

タマモには様々な妖力があった。

その中でも代表的なのが、“狐火”や強力な“変身能力”、そして“幻術”がある。

この幻術は、俺自身も体感した事があるが、マジで強力かつ抗う事が難しい。

おそらく、今の俺の精神力と霊力ならば防ぐ事はできるかもしれないが、それも油断していなければ、という前提条件がつく。

 

それ故に、力を持っただけに過ぎない素人なら、簡単に引っ掛かると思っていた。

ま、色々と想定外の事はあったが、結果としては大成功であった。

 

「クッ、ま、待てっ!俺の負けだっ!!大人しく投降するっ!!人質も開放するっ!!!だ、だからっ・・・!!!」

 

流石にこの場では“神”を自称するだけあって、謎の回復力によって自分の腕を元に戻し、しかし状況は自分に取って不利と見たのか、そんな命乞いを始める犯人。

・・・うん、少しばかりそれは遅いんだが。

 

「あぁ〜、俺らはそれでもいーんだが、アイツがキレちまってるからよぉ〜。ま、自業自得だと諦めてくれや。」

「・・・・・・・・・へっ???」

「『チャージ』・・・。」

 

俺が鳴上を指差すと、ヤツから武者姿のペルソナが顕現していた。

このペルソナからは、メチャクチャ強力な力を感じるなー。

一応、鳴上には忠告しておこう。

 

「おーい、鳴上ー。言っとくが、殺すんじゃねーぞ?」

「分かってるさ。しかし、少しくらい痛い目にはあってもらうぞ?」

「ひっ・・・!?」

「ヨシツネ、『八艘跳び』だ!!!」

 

ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ!!!

 

「んぎゃあぁぁぁぁぁっ〜〜〜!!!」

「え、えげつねぇ〜。」

 

ヨシツネと呼ばれたペルソナは、脅威の8連撃を犯人にぶち込んだ。

しかも、その一つ一つの威力が強力で、文字通り犯人はボコボコとなって気を失っていた。

 

「ま、まるで妖刀『八房』のよーでござる・・・。それを、自力でやれるでござるかー。」

「・・・鳴上は、なるべく怒らせないよーにしよう。」

「そーでござるな。」

 

「お、おいおい鳴上。流石にやり過ぎだろ?」

「そんな事はないさ。これでも、まだ手加減しているぞ?本来ならここに、『ランダマイザ』と『ヒートライザ』も重ねがけして、もっと高威力を出すところだし。」

「お、おうふ。まだこれよりも威力が上がるんかい・・・。」

 

犯人をボコして鳴上は幾分気が晴れたのか、いつもの調子に戻ってあっけらかんとそうのたまった。

・・・タマモの言う通り、鳴上のヤツを本気で怒らせないよーに気をつけた方がいーな・・・。

 

「おっ・・・?」

 

そんな事を考えていると、この空間を支配していた犯人をシバいたからだろうか?

まるで、光の粒子の様な物が、空間や捕われた人々から放たれ始める。

おそらくこれで、彼らは現実世界に戻れるのだろう。

 

「おお・・・。」

「キレイでござるなー。」

「・・・それはいーんだけどさ。よくよく考えてみたら、この空間が崩壊したら、私達はどうなるのよ?」

「あん?そんなの、犯人や被害者達と同じで、元の世界に戻るだけだろ?」

「けど、彼らはあくまで精神だけこの空間に囚われていたからよね?私達は、鳴上の力で自分自身の肉体でこっちに来てるんだけど・・・。」

「・・・あっ。」

 

・・・そういやそうだった。

俺が、ギギギと鳴上の方に視線を向けると、ヤツはバツが悪そうに言った。

 

「・・・多分、空間が消滅すると、俺達はここに閉じ込められてしまうと思う。」

「なんじゃそりゃー!!!」

「落ち着け。そうなる前に、この空間に入った場所から脱出すれば問題ない。」

「って、それってスタート地点じゃねーかっ!!おい、シロ、タマモ、聞いたなっ!さっさと脱出するぞっ!こんなトコでお陀仏なんてゴメンだからなっ!」

「了解でござる!」

「やれやれ・・・。」

「急ごう。」

 

 

その後、敵はいなくなった事は幸いだが、崩壊する空間を俺達は必死にマラソンするハメになったのであったーーー。

 

 

to be continued




誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。

後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしよろしければ、本作共々チェックして頂けると嬉しく思います。
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