続きです。
道化師side
バシュッ!!
「どわあぁぁぁ〜!」
「痛いでござるっ!」
「きゃっ!」
「ほっ!」
「おおっ、戻ってきおったぞっ!」
崩壊寸前の空間を抜けると、見覚えのある先程のモニター室に出ていた。
もっとも、抜けた時の衝撃によって、俺はシロとタマモにのしかかられる事となり、軽くピヨっていたが。
ちなみに、鳴上のヤツはやたらとスタイリッシュに着地を決めていた。
ようやく周囲の状況を確認し、無事に元の世界に戻ってきたと認識したのは、その数秒後であった。
「簡易スキャン・開始。・・・特に心身に異常は見当たらず。横島・サン達の・無事を確認しました。」
「ご苦労、マリアよ。」
「イエス。ドクター・カオス。」
聞き覚えのある声に、そちらを見ると、カオスのじーさんとマリアがこちらを見ていた。
「イテテテテ・・・。あれ、カオスのじーさんとマリア?」
「おう、横島の小僧。無事に生還したよーじゃの?」
「何でじーさんがここにいんだ?」
「何じゃ、お主ボケたのか?ワシはこの施設の開発に一枚噛んどるんじゃ。トラブルが起きれば、当然連絡を受けるわい。」
「そういえば社長さんも、美神さんとドクターに連絡した、って言っていたよな。」
「あっ、そういやそんな事言ってたな。色々あってド忘れしてたけど。ってか、美神さんはまだついとらんのか?」
「美神令子なら、被害者の方に行っとるわい。犯人の確保も兼ねてな。それに、社長とも話し合って、今回の件の揉み消しを画策しておったわ。小竜姫とパピリオもそっちじゃ。」
「・・・あいかわらずやなー。」
「けど、あくまで犯人が悪い、って言っても、こんなトラブルが外部に伝われば、デジャヴーランドも美神さんも相当叩かれる事になるわよ。伝えるにしても、伝え方ってモンがあるし、口止めは必要でしょうね。」
「ま、前回の件もあるしなー。」
今は、ちょっとした事で炎上しかねないからな。
そりゃ、企業側も美神さんも、その事に敏感になったとしても不思議は話ではない。
「しかし、ワシらが作った仮想空間を利用して異界化空間を作り出すとはっ・・・!敵ながら天晴じゃわい。で、向こうはどんな感じだったんじゃっ!?」
「・・・じーさんもあいかわらずやなー。」
じーさんにとっちゃ、炎上とかはどうでもよいらしく、あくまで自分の知的好奇心を優先するあたり、たとえ若返ってもこの人の本質は変わらんよーだ。
「あくまで俺個人の見解ですが、おそらく何らかの手段を用いて、仮想空間を精神世界の様な場所とリンクしたのではないかと。それならば、俺の能力で入れたのも、マヨナカテレビの様な感覚を持ったのも説明できますし、それに、犯人が“影”を操っていた点も気になりますね。」
「ほぅ・・・。それは中々興味深い意見じゃな。」
そんなじーさんに、鳴上のヤツがそんな感想を伝えていた。
確かにそれなら、犯人があの空間で神の如き力をふるっていたのも納得できるが・・・、しかし、素人が一体どうやって?、という疑問は出てきてしまう。
どちらにせよ、犯人を確保して、その証言が得られない事には、今回の事件の背景が見えてこない、という事でじーさんと鳴上の意見は一致した。
「戻ったのっ!?」「皆さん!!」「みんなっ!」
「あ、美神どの。それに小竜姫どのにパピリオどのも。」
そうこうしていると、犯人と被害者の方へ行っていた美神さんと小竜姫さまとパピリオが、モニター室に飛び込んでくる。
「みんな、無事ね?」
「うっす!」
「大丈夫でござる!」
「ま、何とかね。」
「ええ。」
「そう。よかったわ。無茶言って、悪かったわね。それと、事件解決、ご苦労様。」
「「「「・・・。」」」」
美神さんの言葉に俺らは絶句していた。
あの美神さんが、俺らを労るよーな言葉を発したからである。
「な、何よ?」
「あ、いえ。・・・それよりも、そっちの方はどうっすか?」
「ええ。犯人と被害者達の意識は無事に戻ったわ。一応、検査も兼ねて、これから病院に搬送される予定よ。一応、社長と口裏を合わせて、事件の調査もあるから、この事は口外しない事を言い含めたわ。」
「そうっすか。良かった・・・。」
「それで、犯人は?」
「それが・・・、犯人らしき男は、意識こそ戻ったんだけど、ちょっと様子がおかしくてね・・・。支離滅裂な事を呟くだけで、意思疎通が全く図れない状況なの。もしかしたら演技かもしれないけど、私のカンでは、精神崩壊を引き起こしているのかも。こっちも、医師の判断待ちね。」
「そんなっ・・・!」
「鳴上の見解では、今回の件はどうやら精神世界と関連するらしいから、そうなる可能性もありえなくはないわい。しかし参ったのぅ。それが事実だとしたら、今回の事件を解き明かす大事な情報源が失われた事になる。」
「俗界のトラブルに私は顔を突っ込めませんが、私達の力でも、おそらく彼を治療する事は困難でしょうね。人の精神は複雑怪奇なモノですから。」
「神魔族でも無理っすか。」
「おそらく、治療できる存在もいるでしょうが、先程も述べた通り、特に今は“例の事件”もあって神魔族が俗界に関わる事は御法度ですからね。」
「・・・なるほど。」
アシュタロスの事件の影響で、神魔族も色々ゴタゴタしとるよーだからなー。
「まぁとりあえず、トラブル自体は解決したワケだし、後はデジャヴーランド側と警察当局に任せましょ。」
「・・・やれやれ、とんだゴールデンウィークになっちまったなー。パピリオ、すまなかったな。」
「仕方ないでちゅよ。それに、今日は色々遊べて楽しかったでちゅ!」
「・・・なら良かった。」
俺が、パピリオにそう謝罪すると、パピリオはニッコリとそう答えてくれる。
うぅ、ええ娘やで・・・。
ーーーその後、犯人と被害者は病院に搬送され、現場検証などに訪れた警察当局やオカルトGメン(西条)に色々説明したりして、夜遅くになってようやく俺らは開放された。
本当に、とんでもない一日になったモンであるーーー。
???side
「
「みたいっスね。まぁ、思いの外早く事件は解決されたみたいっスけど。」
「確かにそれは流石に想定外だった。現場に、GSが居合わせた事も、それに、異空間に介入できる存在がいた事も、な。」
「私も、それを見た時は驚きましたよ。ネットワークを介して、デジタル的・システム的に介入するんじゃなく、まさか生身のまま仮想空間に入れる能力者がいるなんて・・・。」
「ふむ・・・。多少、計画の見直しが必要となるかもしれん。その能力者は今後も要注意だな。」
「んなもん、さっさと消しちまえば良くないっスか?」
「・・・いや、おそらくそれはかなり危険だ。不確かな情報ではあるが、彼、鳴上悠は、神魔族の加護を受けている様だから、彼に手出しした瞬間、奴らが黙っていないだろう。神魔族の介入は絶対に避けなければならん。」
「ほぇ〜。神様や魔族の加護を受けてるとか、一体ナニモンなんスかね、ソイツ?」
「分からん。が、下手に深入りしない方が良いだろう。しかし逆に言えば、彼に手出ししない限り、神魔族が現世に介入してくる事もない筈だ。」
「だといいっスけど。」
都内のとある場所にて、以前にも登場した謎の男達がそんな会話を交わしていた。
一人は、ごく普通のサラリーマン風の男。
一人は、多少風変わりだが、大学生風の男。
この二人は以前にも登場していたが、今日はこの場に、作業着をきた技術者風の男が加わっていた。
年齢層はバラバラ、その会話の内容はかなり怪しげだが、幸いな事に、その会話を盗み聞きしている者はいなかったので、端から見る分には特に怪しい点はなかった様である。
「んじゃ、今後はどう動くっスか?」
「イレギュラーはあったものの、計画は概ね順調だ。
「ほぇ〜。」
「おおっ・・・!では、いよいよ?」
「うむ。この腐った世の中に、一石を投じる時がいよいよ訪れるだろう。」
サラリーマン風の男が、声高にそう宣言すると、大学生風の男と技術者風の男は、声こそ出さなかったものの、一方は面白げに、一方は陶酔した様な表情を浮かべていた。
「楽しみだなぁ〜。」
「ですね。これまでの苦労が浮かばれる、というものです。」
「ただ、これは言わずとも分かっていると思うが、注意はしてくれよ?足がついては元も子もない。」
「わぁ〜ってるっスよ。前も言いましたけど、こっちはこの道のプロっスから。」
「私も了解ですよ。」
「うむ。では、引き続き準備を進めてくれたまえ。」
「うっす!」
「了解!」
そう言い残すと、サラリーマン風の男は立ち上がり、ゆっくりと立ち去るのだったーーー。
「しっかし、あの人はナニモンだろーな?見た目はごく普通のオッサンだけど。」
「お互いの詮索は無しですよ、“オペレーター”さん。」
「分かってるっスよ、“プログラマー”さん。それはそうと、
「それは問題ありませんよ。
「・・・こわぁ〜。」
「そうですか?これは、彼が選んだ事ですよ。身の丈に合わない“力”を欲したのですから、それ相応の代償は必要でしょう。たとえそれを知らなかったとしても、それはその人の自己責任です。」
「それって詐欺じゃないっスか?」
「否定はしませんが、もちろん騙す方も悪いですが、騙される方にも問題があると思いますよ?簡単に儲けようとか、簡単に力を得よう、なんて、普通に考えれば無理は話なんですから。」
「そりゃそーだ。別に、今更俺もそんな事で怖じ気づくつもりはねぇ〜スけどね。」
「ふふ。」
「ああ、それと、アンタは大丈夫なんっスか?デジャヴーランドの従業員なんっスよね?」
「そちらも問題ありません。私は、別にデータなんかを持ち出した訳ではありませんから。」
「えっ・・・?け、けど、さっきアンタ、映像を見せてくれたじゃないっスか。」
「・・・覚えておいて下さい、“オペレーター”さん。GSだけが、何も特別な存在じゃないんですよ。」
「っ・・・!」
「では、私もこの辺で・・・。」
「う、うっす!お疲れ様っス!!」
「おもしれーじゃん。もしかして、マトモな人間って俺だけなんかねぇ〜?」
技術者風の男が立ち去った後、大学生風の男は、そんな事をひとりごちながら愛用のノートパソコンをいじるのであったーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると嬉しく思います。