続きです。
・・・
魔術師side
「半グレ集団?」
「うん。沖奈市を中心に最近勢力を拡大している集団があって、どうやらそこが、この“マヨナカサイト”の噂の出処、らしいよ?」
「それはまた妙な事になってきましたね・・・。」
菜々子ちゃんの期待に答えたマリーちゃんは、神様的パワーをフル活用して、俺らにそんな情報をもたらしてくれた。
っつっても、それはそれで、また面倒な事になった訳であるが。
「っつか、ゴメンだけど、“半グレ”って何よ?」
「あれ、里中先輩知らねぇ〜んすか?ほら、あれだよ。暴走族みてぇ〜な連中っすよ。」
「あぁ〜。そういうヤツね。それならそうと言ってくれればいいのに。」
「ま、まぁ、ある意味間違ってはいませんが、正確にはちょっと違います。“半グレ”、“半グレ集団”とは、暴対法施行後に台頭してきた組織で、暴力団などの組織に属していません。暴走族や不良集団のOBで構成されている事が大半なので、巽くんの言う通り、暴走族と似た様な集団ですが、やっている事はかなりあくどいですね。例えば、近年社会問題化している振り込め詐欺なんかは、暴力団の他には、この半グレが裏で糸を引いてる事が多いですし、他にも貧困ビジネスや出会い系サイト、風俗店の運営などや、闇金融、麻薬の密売といった明確な犯罪に走ることもあります。」
「ほとんど暴力団じゃん。」
「確かに。今では、あくまで半グレとして独立しているところもありますが、逆に暴力団の事実上の下部組織となっているところもありますね。一応は、暴対法の制限を受けない、という利点はありますが、警察当局も、彼らを「準暴力団」と規定し、彼らにも暴対法を挙行できる様に処置をとるなどの対策を講じています。」
「ったく、くだらねぇ〜ぜ。マトモに働きゃいいのによぉ〜。」
「完二、お前がそれを言うかね・・・。」
「んだよ、花村先輩!俺ぁ、不良じゃねぇっつってんだろっ!!」
「はいはい、バ完二、うるさい。見た目は完全に不良でしょ?それより、何でそんな連中が、“マヨナカサイト”に関わりがあるんだろ?」
「さあ?それは分かりかねますね。ただ、先程の里中先輩のお話、“深夜にだけ現れる謎のサイトがあって、それを見付けてアクセスできた人は夢が叶う”という内容は、ある意味では半グレが得意とする詐欺行為に都合の良い内容だとも言えます。ただ単に、マヨナカテレビを模倣してそういう詐欺ビジネスを思い付いたのか、はたまた、鳴上先輩を狙う連中に操られているのか、それは定かではありませんが。」
「なるほど・・・。“夢”に群がる連中は多いもんなー。それを利用して、詐欺を働こうとしている、って事か。」
「あくまで推測ですけどね。」
直斗は、一旦そう締め括った。
(ちなみに、菜々子ちゃんとクマ、マリーちゃんは、早々に別の話で盛り上がっている。
どうやら、菜々子ちゃんの近い未来を占っている様である。)
「けど、そうなると厄介だね・・・。鳴上くんや菜々子ちゃんの事を考えると、その“マヨナカサイト”の事は気になるところだけど、半グレ集団が関わってるとなると、下手に手出しするのはかなり危険だし・・・。」
「確かにな。いくらペルソナ能力があるっつっても、俺らはあくまで普通の高校生だ。言っちゃ何だが、犯罪者集団に関わるのは危険だと思うぜ。っつか、ぶっちゃけ怖ぇ。」
「そうですね。確かに、警察当局も手を焼く様な組織に、僕らだけで対処するのは現実的ではないかもしれません。しかし、放っておく事もできませんから、何らかの手段を考える必要はあるでしょうね。」
「・・・とりあえず、まずはその“マヨナカサイト”から探ってみるのはどうだろう?」
「・・・それが、現実的な話かもしれません。言ってしまえば、自ら彼らの“カモ”になるって事ですから、彼らの警戒感も薄れるでしょうしね。それで、何らかの犯罪の証拠を集められれば、警察当局も手出ししやすくなるでしょう。」
「んなまどろっこしい事しねぇでも、奴らをぶっ潰せば良くねぇ〜か?」
「お前が言うと、マジでやりかねんのが怖ぇところだな・・・。」
完二の言葉に、俺はそうツッコミを入れた。
なんだかんだコイツは、暴走族を潰した男だからなー。
「いえ、巽くんの強さは分かっていますが、というか、おそらく僕らの今現在の力なら、巽くんの言う通り、ちからづくでねじ伏せる事はできると思いますが、それはやや早計でしょうね。暴力団と同様に、彼らにも面子がありますから、下手に手出しすると、恨みを買ってしまう可能性がありますし、それに、もしその半グレ集団が、鳴上先輩を狙っている者達と繋がりがあった場合、彼らがこちらを警戒してしまう可能性もあります。ここは、慎重に立ち回るべきでしょうね。」
「ま、直斗がそう言うなら・・・。」
あいかわらず、血の気の多い事だ。
・・・しかし、直斗くんの認識じゃ、俺らも完二と同様に暴走族くらいなら、潰せるって事だろうか?
確かに、マヨナカテレビでの戦闘経験や、最近の修業もあって、かなり強くなってる自覚はあるんだが。
「オッケー。んじゃ、“マヨナカサイト”の方を探ってみればいいんだね?」
「ええ。お願いできますか、久慈川さん?」
「一応、ある程度の情報は分かったワケだから、多分いけると思う。来て、カンゼオンッ!」
そんな風に一応の方向性が決まると、りせがカンゼオンを憑依させるのだったーーー。
っつか、やっぱ俺、リーダーじゃなくね?
・・・
陽介達が話題にあげていた半グレ集団、『
半グレ集団が厄介な点は、暴力団とは違い、暴対法の制限を受けない点である、というのはすでに直斗か指摘していた点であるが、それ以上に厄介な点は、一般社会への浸透率である。
実際、とある半グレ集団が起こした事件の中には、普通の大学生、それも所謂“名門大学”と呼ばれるほどの敷居の高い学校に通う学生が、実行部隊として加担していた、なんて事例もあるぐらいだ。
それだけに限らず、最近何かと話題にあがる“闇バイト”なんかの元締めが、この半グレ集団である、なんて事もあるのである。
社会経験に乏しい若者を騙す事など簡単な事である。
もっとも、旧来の暴力団などは、カタギに手を出さない、というポリシーを持っていたりしたのだが、それが衰退した今となっては、それこそルール無用の無法者が暴れ回る事となってしまった訳である。
当たり前だが、上手い話には裏がある。
簡単には稼げる方法など、それこそ人の嫌がる事をするか、人を騙す事でもないと不可能な訳であるから、そういう話には飛び付かないのが賢明であろう。
ま、もっとも、それも断れない可能性もあるのかもしれないが、一つだけ言える事と言えば、友人はよく選んだ方が良い、という事であろうかーーー。
・・・
???side
最近の俺はかなり気分が良かった。
というのも、先輩に紹介された“バイト”が、めちゃくちゃ儲かるからである。
やっぱ、なんだかんだ言っても世の中金である。
金さえあれば、高いモンも食えるし、良い物も手に入るし、ついでに友達や女の子に良い顔ができる。
それは、比較的普通の人生を歩んできた俺としては、かなり大きな変化であった。
ちなみに、その“バイト”というのは、ただ噂を流すだけの簡単な仕事だった。
“マヨナカサイト”。
昨年隣町である稲羽市にて流行った、“マヨナカテレビ”と似たような感じである。
ま、何でそんな話で儲かるのかは多少疑問だったが、世の中には知らなくても良い事はある。
先輩は、ちょっと悪い噂の聞こえてくる人だった。
下手に探りを入れて、ヤバい目にあってもつまらないので、俺は何も聞かず、ただ言われたまま噂を流し続けていたのである。
ただ、中にはその噂を聞き付けてきたヤツが、俺に接触してくる事もある。
そうした時は、先輩に紹介する手筈となっていた。
そいつが、その後どうなったのかは知らないが、ま、あんま気にしないのが身の為だろう。
と。
「あ、あのっ・・・!」
「んっ・・・?」
そんな事を考えながら、いつもの様に沖奈市の繁華街をうろついていると、そんな風に声をかけてくるヤツがいた。
俺にとっては、最近では見慣れた光景である。
ただ、いつもと違ったのは、地味めな格好をしてはいるものの、間違いなく美人などこかの女生徒であった事だろうか?
今時珍しく、三つ編みにメガネ姿で、それでも隠しきれない美貌に、思わず俺は見惚れていた。
「え、えっと、すいませんっ!○○さん、ですよね・・・?」
「えっ・・・?あっ、ああ、そうですけど・・・。」
俺の反応に、訝しげな表情でそう確認してくる女子に、俺は我に返ってそう返事を返していた。
いかんいかん。
完全に、ただの変な人になっていたぜ。
「ああ、良かった。ようやく見付けた・・・。」
そう呟く彼女に、俺はピンと来ていた。
「で、俺に何か用ですか?」
ある程度察しはついていたが、俺はあえてそう聞いていた。
一応、これは通過儀礼みたいなモンだ。
下手にこっちから話を振って、勘違いだったら目も当てられないからな。
「・・・あ、あの。“マヨナカサイト”の噂を聞いたんですけど・・・。」
ビンゴ。
どうやら彼女も、“マヨナカサイト”の噂を聞き付けて俺に接触して来た一人の様である。
「ああ、それっすか・・・。」
「けど、どこをどう探しても、そんなサイトは見付からなかったんですよね・・・。」
「・・・。」
そりゃそーだ。
あまり俺も詳しくは知らないが、“マヨナカサイト”ってのは、実はただの“撒き餌”、らしい。
実際にはそんなサイトはなく、どこをどう探しても、そんなサイトが見付かる筈がないのである。
では、何でそんな噂を流してるんだ、と言われると、正直俺も分からないのだが、ま、先輩やその仲間達にとっては重要な事なんだろう。
「で、あの、私、どうしても叶えたい“夢”があるんですよっ!それで、散々友達を辿って、ようやく貴方に辿り着いたんですけどっ・・・!」
「・・・オーケー。んじゃ、こっち来て貰えますか?」
「は、はい・・・。」
そう言うと俺は、繁華街の路地裏を指差した。
人通りの少ない場所に、若干警戒した女子だったが、ま、俺が何かするつもりは毛頭ない。
ただ、これも先輩からの指示なのだ。
「少しの間、黙ってついてきて貰えますか?」
「は、はぁ・・・。」
そう言うと、俺はスタスタと歩き始める。
それに、やや遅れて、その女子は俺についてくる気配が感じられる。
しばらく無言のまま、俺は色々なルートを通る。
途中、俺はおもむろにとある店の中に入った。
後ろにいる筈の女子も、それに遅ればせながら中に入ってきた様である。
「いらっしゃい。おや、○○くん。」
「お疲れ様です、マスター。すいません、ちょっと通らせて貰いますけど・・・。」
顔見知りのマスターが、愛想よく挨拶をしてくれる。
それに、俺がそう言うと、マスターはチラリと女子の方に顔を向け、訳知り顔で頷いた。
「・・・オーケー。また、今度ゆっくりしてってよ。」
「はい。また今度にでも。」
短くそうやり取りをすると、俺は慣れた様に、入ってきた場所とは別の店の出入り口から出て行く。
店を出ると、開けた空間と、細い路地の先に表通りの明かりが見えた。
そこで俺は、スマホを取り出して連絡する。
「あ、もしもし、○○です。先輩、例の件で、一人ツレがいるんですけど・・・。はい、はい、分かりました。いつものところでお待ちしています。」
「・・・あ、あの・・・?」
「あ、すいません。色々連れ回してしまってすいませんでした。ちょっと込み入った事情がありまして。でも、心配ありませんよ。これから、貴方のご要望の件に詳しい人と合流しますんで。こっちっす。」
「あ、わ、分かりました。」
その後、俺と女子はとある喫茶店に入った。
そこで、先輩と合流し、俺の“仕事”は終わりを告げたのだったーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら、御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿していますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々チェックして頂けると嬉しく思います。