続きです。
例によって、色々と独自解釈ですのであしからず。
美神さんからは逃げられない 1
5/15
番長side
こっちでも陽介達の方でも色々あったゴールデンウィークが終わり、お互いに一応の日常が戻ってきていた。
陽介達は、イザナギのアドバイスに従い、あれ以降はあまり半グレ集団やその裏に存在するかもしれない連中には深入りはしていない様である。
その代わりではないが、何かあってもいい様に、と“修業”がより一層厳しくなった、と陽介が嘆いていた。
・・・そっとしておこう。
イザナギは、あれから頻繁に向こうの世界やこっちの世界を飛び回っている様だ。
陽介に対する家庭教師も順調の様で、陽介の学力は順調に伸びている様である。
他の仲間達も、色々と頑張っている様である。
千恵は警察官になる為に、陽介とは別ベクトルだが、勉強を頑張っている様だ。
雪子は旅館の手伝いと平行して、最近は料理を本格的に頑張っているらしい。
りせは、今回の件もあり、本格的な芸能界復帰はまだ先延ばしにしたみたいだが、最近の流行りに乗っかって某動画サイトを使った活動で、何気に新たなるファンを獲得しているらしい。
元々人気アイドルって事もあるが、素のりせが垣間見える距離の近い媒体の方が、りせの魅力をより一層伝える事ができたのかもしれない。
完二は、何やら商店街やジュネスにひっぱりダコの人気者になっているそうである。
あの、独特の強面から繰り出される、ぬいぐるみや編みぐるみの繊細な技術が、案外ウケが良いのだとか。
完二的には、それで商売をするつもりはなかったみたいだが、自分の作品が認められるのは嬉しいらしく、求められるとは嫌とは言えないみたいである。
結果として、編み物教室だったり、ぬいぐるみや編みぐるみの作品を作っては売っているそうだ。
ちなみに余談だが、新たなる観光資源の一つとして、ご当地キャラクターの制作を地元商店街とジュネスで計画しているらしく、実はクマにその白羽の矢が立っている様である。
完二は、そのクマのキャラクターを作成する依頼が増えているのだとか。
そして、そのクマは、ジュネスのアルバイターとして活躍する一方で、先程のご当地キャラクターとして稲羽市をPRする事になりそうなのだとか。
クマとしては、陽介の親父さんには世話になっているので、結構乗り気なんだとか。
そして、直斗であるが、あいかわらず白鐘家の稼業である探偵業で忙しいらしい。
元々、りせと並んで大人の中に生きていた直斗だが、最近では、変な意味での肩肘を張る傾向は薄れてきた様であり、警察当局とは上手くやっている様である。
ま、元々優秀な直斗の事だ。
変に手柄に固執しなければ、それこそ警察当局としては喉から手が出るほどの人材であるから、それこそ引く手あまたなのであろう。
菜々子は、最近は色々とマリーに教わっているそうである。
家事や遊び、勉強などなど。
堂島さんが、この間菜々子の手料理を食べたらしく、珍しく涙ながらに電話を掛けてきた。
父親としては、娘の成長が嬉しかったのだろう。
・・・正直、羨ましかったのはナイショである。
そんなマリーは、神様パワーである意味何でもないできるのだが、(以前もそうだったが)人間社会への理解は疎い事もあって、そこら辺を逆に菜々子達に教わっているのだとか。
菜々子とは、まるで姉妹の様に仲が良いとか。
色々あったが、堂島家が幸せなら、俺としても非常に嬉しい。
と、なんだかんだ皆成長している中、実は俺の方でもとある変化が訪れつつあったのである。
それは、ゴールデンウィークが明けた翌々週の、美神さんの事務所での事であったーーー。
・・・
5/10
「折り入って話って、一体どうしたんすか、美神さん?」
美神さんに呼び出されていた俺、横島、シロ、タマモが揃うと、俺達を代表して横島がそう切り出した。
美神さんは、それに何やら難しそうな顔をして答える。
「ええ、ちょっとね。それよりまずは、この間の件は改めてご苦労様。メンドーに巻き込んで、悪かったわねぇ〜。」
「いえ。」
俺はそう受け答えるが、他の三人の様子は少し違った。
「あ、あの美神さんが、人にお礼をっ・・・!?」
「何か、悪い物でも食べたのでござろうか・・・?」
「アンタじゃあるましい・・・。今はおキヌちゃんが管理してるんだから、それはないわよ。・・・多分、お酒の飲み過ぎじゃないかしら?」
「アンタらは私を何だと思っとるんじゃっ!!!」
好き勝手な事を言う三人に、美神さんはキレ気味にそう言った。
「何って、ねぇ・・・?」
「拙者の口からは何とも・・・。」
「ワガママでゴーマンな冷血守銭奴クソ女じゃないんすか?って、ぶぅぅぅぅーーー!!!」
「殴るわよっ!!??」
「あががががっ・・・!な、殴ってから言わんでくださいよっ!!」
「ま、まーまー。」
いつものコントが始まり、横島が盛大に殴られたところで、俺は二人の間を取り持った。
おキヌさん直伝の、所謂“緩衝役”である。
今、この場にはおキヌさんがいないからな。
このままでは一向に話が進まないので、ここは俺が間に立つほかなかった。
・・・考えてみれば、随分この事務所の雰囲気にも馴染んだものてある。
「ま、いいわ。このままじゃ、話が進まないからね。」
ブチブチと文句を言っていた美神さんだったが、俺の言葉にその矛を収めてくれる。
横島の方も、あいかわらずの超回復力で、しれっと復活していた。
「それで、結局世間にはどう発表したんすか?」
「アンタ、ニュース見てないの?どうもこうもないわ。そのまま発表したわよ。人気アトラクションを狙ったオカルト的なテロだってね。世間的には、私もデジャヴーランドも被害者、って感じに伝わってる筈よ。・・・もっとも、テロを許した件については賛否両論だけどね。ま、それも、再発防止策を素早く打ち出す事で、ある程度は納得させられるでしょ。ただ・・・。」
「ただ?」
「犯人の精神が崩壊してしまっているから、詳しい背景が分からないのが私としても世間的にも残念なところでしょーね。世間的には興味深い話題だもの。」
「あ、結局ダメだったんすね。」
「ええ。医師の見解じゃ、ほとんど植物状態よ。オカルト的には、ママや西条さんの話だと、“向こう側”に持ってかれた、らしいわ。ま、犯人は霊能者じゃなかったみたいだから、無茶な力を使った代償でしょうね。そうじゃなくても、精神に関する事は、私達霊能者でも扱うのは難しい分野だもの。素人なら言わずもがな。自業自得よ。」
「ま、そりゃそーだ。」
厳しい美神さんの意見に、横島はさもありなんと納得する。
二人は、これでもプロだからな。
俺なんかは、変に犯人に同情しそうなところだが、二人にとってはそこにどんな事情が存在しようとそれはその人が選んだ事であるから、同情の余地はない、という事なのだろう。
ある意味、大人な意見であった。
「それと、現場にたまたまGSが居合わせた事。彼らが事件解決に尽力した事も公表されているけど、アンタ達の名前は伏せさせたわ。少なくとも、アンタらは未成年だし、個人情報もあるからね。」
「よくそれで通りましたねぇ〜。」
「もちろん、タダじゃないわよ。被害者達には、お見舞金と口止め料を支払ったわ。ま、マスコミの方は、ママと西条さんが手を打ったから、そこまでの出費じゃなかったけど。」
「・・・あ、あのぉ〜。それは、わたくしどもの給料から差っ引かれるのでせうか?」
「そんな事しないわよ。どっちかって言うと、ウチのイメージの問題だからね。偶然とは言え、私が関わったアトラクションのトラブルに、
「・・・なるほど。」
確かに、ゴシップネタとしてはこれほど都合のよい情報もないだろう。
この件が、マッチポンプ、自作自演だ、などとありもしない事を面白おかしく記事にされたら、それこそ美神令子事務所としては大打撃だからな。
「ただぁ〜、その代わりと言っては何だけど、令子、お願いしたい事があるのよねぇ〜?」
しかし、そこで急にニマーと笑う美神さんの猫撫で声に、俺は薄ら寒いモノを感じていた。
・・・これは、絶対に良からぬ事を考えているに違いない。
「ま、まさか、金を払う代わりに、俺のうら若き肉体を差し出せ、とっ!?ど、どうぞ、痛くしないでね・・・!」
「アホかぁっーーー!どこぞのオッサンじゃあるましい、私がそんな事望むワケないでしょーがっ!!!」
「あんぎゃーーー!!!」
横島のボケに、美神さんの渾身の
当然横島は、壁とキスする事となる。
「で、では、もしや俺の肉体で手を打つ、とっ!?す、すいません、美神さん。俺には彼女がっ・・・!」
「アンタまで横島化しなくていいからっ!!それとも、アンタも殴れたいワケ?」
「すいません。オチャメな冗談です。」
「ったく。」
一度ボケてみたかっただけなのだが、美神さんのひと睨みに俺はすぐに前言撤回した。
こ、こわぁ〜。
やはり、美神さんと横島のコミュニケーションには、余人が割って入る事はできない様である。
「・・・何で余計な事を言ったのよ、アンタ。」
「あ、いや、一度やってみたかっただけだ。」
「中々チャレンジャーでござるな、鳴上どの。」
「そこは、別にチャレンジする意味はないからね?」
「・・・その様だな。」
・・・
「で、お願いって何すか美神さん?」
「別に、横島くんやシロ、タマモに言ってるワケじゃないわ。どっちにしろ、アンタらはこれからも丁稚としてコキ使う予定だし。」
「誰が丁稚ですかっ!!」
「鬼っ、人でなしっ!!」
「無駄よ、シロ。美神さんに人の心なんてあるワケないじゃない。」
「うっさい、黙れっ!・・・ったく、話が進まないじゃないの。」
「誰のせいですか、誰のっ!!」
ま、半分は冗談なんだろう。
もう半分は・・・、まぁ、あの美神さんがタダで金を払う訳はないしな。
・・・嫌な信頼だが。
「って事は、俺に何か頼みがある、って事ですか?」
「ええ、そうよ。単刀直入に言うけど、鳴上クン。アンタ、今度のGS試験を受けなさい。」
「・・・は?」
・・・GS試験?
それって、アレだよな。
プロのGSになるには必須の試験であり、それに合格し、その後師匠から認められて、晴れて一人前のGSになれるモノだ。
その為の、最初にして最大の難関。
それが、以前に説明を受けたGS試験だった筈だ。
「いやいや、突然何言ってるんすか美神さん。鳴上は異世界人っすよ?確かに、ペルソナ能力者だし、今は霊能者としても修業を積んでますから、多分ラクショーで試験には合格できるとは思いますが、元の世界では意味のない資格でしょーに。」
横島の言う通りだ。
この世界においては、GS資格を持つ事はある種のステータスになるかもしれないし、色々と重宝する資格の一つだろう。
少なくとも、これを所持していれば、開業するにしても事務所に所属するにしても、あるいはオカルトGメンやらの警察当局に所属するにしても、あって困る事はないだろうし。
しかし、それはあくまで“こちらの世界”の話だ。
最終的には向こうの世界に戻るであろう俺にとっては、資格を取ってもそれを活かす事ができない。
何故ならば、向こうにはGSの様な存在は、少なくとも世間一般的には認知されていない存在だからである。
それ故に、美神さんや横島の様に、大っぴらに商売をする事はできないし、そもそも向こうにはそうした資格が体系化されている訳ではないからな。
そうした訳もあって、一応はペルソナ能力を有する事やひのめちゃんのベビーシッター、オカルトGメンへの捜査協力もあって、霊能力使用の許可は得ているが、GSになるなどと、これまでは考えてもみなかったのである。
「もちろんそれは分かっているわよ。けど、その理由は大きく分けて二つあるの。一つは、少なくとも“オカルトグッズ”を扱うなら、これがもっとも手っ取り早い手段なのよ。」
「・・・と、言いますと?」
真面目な表情の美神さんに、俺も横島も茶化す事なく真剣に続きを促していた。
「この話はまだオフレコで頼みたいんだけど、それに、まだ確証がある訳ではないから何とも言えないんだけど、アンタ達、ちょっとは不思議に思わない?」
「えっと・・・、何がっすか?」
「アンタ達の周囲で、立て続けに事件が起こってる、って事よ。それも、どちらも原因は不明のままよ?」
「「あっ・・・。」」
・・・確かに、考えてみればおかしな点である。
編入してすぐに、学校で事件が起こってる。
それも、オカルト絡みの事件だ。
その後、一ヶ月もしない内に、今度は
こちらも、オカルト絡みの話だった。
まぁ、学校の件は横島、つまりはオカルト関係者が絡んでいたし、デジャヴーランドの事件も、美神さんというオカルト関係者が絡んでいたからあまり不思議に思わなかったが、考えてみれば、ただの高校生(世間一般的には)の俺が、立て続けに事件に巻き込まれるのはあまりにも不自然だ。
「これが、ただの霊障、霊災ならありえなくないわ。特に、アンタらの学校は、前にも言ったかもしれないけど霊的な存在が多く集まってるから、ザコ霊なんかがそれに惹かれて集まる事はありえるからね。また、デジャヴーランドにしても、毎日お祭りをしている様な場所だから、それに惹かれるザコ霊がいたとしても不思議じゃない。けど、明らかに
「「・・・。」」
可能性はゼロじゃない。
まぁ、俺は元々こちらの世界の住人ではないので、狙われる心当たりはないのだが、もしかしたら横島は、その心当たりがあるかもしれない。
・・・特に、俺も詳しくは知らないが、ちょくちょく話題に上がる、“例の事件”絡みで、とか。
「ま、あくまで仮定の話だけど、もしそうなら、自衛できるに越した事はないわ。で、横島クンの場合は、その能力的に武器を必要としない。いざとなれば、“
「・・・しかし、俺は霊能力行使の許可は得ていますが?」
これは、ベビーシッターやオカルトGメンへの捜査協力の為に、美神さんや美智恵さん、西条さんなんかが手続きを済ませてくれている。
「
「それは・・・。」
無理だ。
俺はシャドウとの戦闘においては、刀剣を使用していた。
つまり、無手での戦闘経験が全くないのである。
いや、やろうと思えばできなくはないかもしれないが、それに、老師のもとで横島と組み手の稽古はしていたりするが、まだまだ素人に毛が生えた程度である。
とてもじゃないが、実戦に耐えうる代物ではないだろう。
確かに、いざ何かあるとなると、武器がないのはかなり心許ないかもしれない。
「そこで、GS試験、ってワケよ。もちろん、厄珍の様に“危険呪物取扱者”の資格を取る事でそれを代用する事もできるけど、こっちの方がハードルとしては高いわね。そもそも、“オカルトグッズ”に関する知識や法令に関する知識も身に付けなければならないからね。その点、GS試験は、学力に関する試験は一切ないわ。霊能力を持ち、実技試験で試験者同士の試合にある程度勝てば、晴れてGSの資格を取得する事ができるもの。もっとも、一人前になるなら、それこそ横島クンもやっている見習い期間を過ごさなければならないけど、ま、これは鳴上クンにはあんまり関係ないわね。」
「なるほど・・・。で、もう一つの理由は?」
俺が納得して続きを促すと、美神さんは待ってましたと言葉を続けた。
「アンタがGS資格を持てば、大っぴらに現場に連れて行く事ができるのよ!!」
「「・・・・・・・・・はっ???」」
「デジャヴーランドの件の報告書は読ませて貰ったわ。もちろん、これまでもママや西条さん、横島クン達から話は聞いていたけど、アンタの、そのヒミコ?、いえ、カンゼオンだかコウゼオンの能力は凄まじいわ。少なくとも、敵の弱点を即座に看破したり、心霊治療なんかも同時に行えるなんて、私は聞いた事もないからね。ただ、今までは霊能力行使の使用許可だけしか持っていなかったから、大っぴらに現場に連れて行く事は不可能だったの。デジャヴーランドの件に関しても、緊急事態だった事もあるけど、現場にGS資格を持つ横島クンがいたから、何とか誤魔化すことはできたんだけどね。けど、それもアンタがGS資格を持てば、全く問題じゃなくなるわっ!」
「なんだかんだ理由をつけて、結局アンタが利益を得たいだけっすかっ!!」
「何よ、悪いっ!?さっきも言ったけど、デジャヴーランドの件じゃ、かなりの金額を使ったんだから、これくらいはいいじゃないっ!それに、これは鳴上クンにとっても悪い話じゃないでしょっ!?」
「それはっ・・・、そうっすが・・・。」
「だったらいいじゃない。ね?鳴上クンはいざと言う時の備えができるし、たま~にちょろっと手伝いをしてもらえれば、私も助かる。イザナギさまだって、老師だって、小竜姫だって、鳴上クンが自衛する手段が増えれば歓迎するでしょ?」
「・・・確かに。」
ニマーと笑う美神さん。
確かに納得はできるのだが、まるで美神さんの手の上で転がされているみたいで居心地は悪かった。
流石は、横島をして悪知恵が働くと言わしめたお人である。
「・・・分かりました。俺、今度のGS試験を受けてみます。」
「鳴上クンは理解が早くて助かるわぁ〜。じゃ、決定って事でっ!!」
さっきも言ったが、若干、美神さんにハメられた感じは否めないが、こうしてなし崩し的に俺はGS試験を受ける事となったのであるーーー。
to be continued
誤字・脱字がありましたら御指摘頂けると幸いです。
後、私事で恐縮ですが、「小説家になろう」さんや「カクヨム」さんにて、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」というオリジナル小説を執筆&投稿しておりますので、もしご興味がおありでしたら、本作共々そちらもチェックして頂けると嬉しく思います。